田植えだ、田植え。
横一列に並んだ4人、それぞれの手には若緑がそよぐ。
「おっしゃ、始めるぞ!」
「言っとくけど、出来るだけまっすぐに植えるんだからね」
陽射しの緩やかな朝七時。
「まっすぐな」「もちろんだ」
「…ナミ、無茶だと思うぞ」
「あ、やっぱりそう?」
水に満たされた大地に向き直り、一歩を。
「おい」
踏み出そうとしたときだ。
今日も新たに降ってきた声に、振り返る。
「サンジ!」
青いシャツの袖をまくった男が、ウソップの声にニヤリと笑って見せた。
「遅ェじゃねェか!」
「テメェがおにぎり100個とか言うからだ!」
ぷわぷわと揺れる白い煙の合間から覗く髪が、朝の光にやわらかく照らされている。
「あら、サンジ君じゃない」
「うはーんナミすわんっ、がんばるキミのために
おやつ作ってきたよホホォ〜〜v」
誰だお前、と聞くと
ナミとウソップが説明してくれた。
村に1軒ぽつん佇む、草葺屋根のメシ屋。
昼は蕎麦屋、夜は呑み屋という奇妙なその店を、その男は一人で切り盛りしてるんだそうだ。
ちなみに酒も料理もびっくりしたなぁもう級、とんでもなく美味いらしい。
「クソ美味い弁当つきの手伝いだ、米1tで。どうだ?」
確認することはただひとつ。
「大盛だろうな?」
「当然」
鼻歌が伸びてゆく。
「おっ、ウソップ、なんだその歌」
「だって田植えっつったら歌うだろ」
「お前メロディ違うだろ、こうだこう、」
「おれ様のはハモリなんだもーん」
「民謡にハモリもクソもあるか」
若緑のがよたよたと、5列揺れながら伸びてゆく。
「なあなあ、次おれ歌うぞ」
「ぼへー」
「どしたのゾロ、気分悪いの」
「・・・・・」
休憩に食った山ほどのおにぎりは、アゴが外れるかと思うくらい美味かった。
なので、全てが終わった次の夜は、牛肉とみかんとざるそばで大宴会をした。