嗚呼青春の一頁


i :寮長代理コビーによる懇切丁寧な紹介




ど、どうも初めまして!
…緊張するなー、こういうのは。
こういうときこそ、あの鋼の神経を持つ寮長がやればいいのに。
寮長、いつもいつもうまくトンズラするんだから…

おっと失礼、つい日々の思いがこぼれてしまいました。

 ともあれ、ようこそ我らが学府、「偉大航路大学」へ!
うさんくさいセンスがちょっと恥ずかしいので、以降は
「GLU」―Grand Line University-
と略させていただきますね。

 我が大学は、知名度の低さゆえか何なのか、世界中から興味深い人格の持ち主が集まってしまう、小さなおかしなところです。
一応総合大学なんだけど、誰が何を勉強してるのか、本人もあんまりよくわかってないってところがポイントかな。

 入学時期は、世界各国の教育事情に合わせて春と秋に設けられてるんです。
が、過ごすうちにどうでもよくなってきて、卒業時期を間違えるやつもいるとかいないとか。


え、入試?
んー、それはどうぞ学生課にお問い合わせください。





 さてこのGLU、世界中から愉快な学生が集まってくるんですけど、
当然学生にはそれぞれ家庭事情があり、国の事情がありますよね。
 そういう点を踏まえて、大学の構内には格安で住める学生寮が設けられているんです。
男子寮・女子寮がそれぞれいくつかずつあるんですけど、またそれぞれにカラーがあるんですよ。

 例えば、美女ぞろいのココヤシ女子寮は、ほとんどが刺青バリバリの元ヤンだから、恐くてなかなか野郎共は声をかけられないんです。
 一方バロック女子寮は、かわいい顔して癖のある子がばっかりで、いっつもにこにこ企んでるから、やっぱり野郎共は声をかけられないんです。
面白いでしょう?


 今日ご案内させていただくのは、数々の寮の中でも、
とびっきり 嫌になるくらい 
もうええっちゅうねんというほどに元気で、
めちゃくちゃな奴らばかりがなぜか集まってしまう、
そんなぼくの男子寮、「ゴーイングメリー寮」です!

「Going Merry Dorm」だから、「GMD」って呼んでくださいね。






 GMDは一部屋に2人が生活するタイプの寮で、12の部屋があります。
それぞれの部屋がまたそれぞれの趣味と事情があって面白いんですよ。
ま、それはおいといて。
 小さなキッチン、洗濯場、洗面所や物置等生活に必要な設備もあれば、
みんなの談話室やマンガ部屋など、寮ならではのものもあります。

 自慢は大きなお風呂!
野郎4人が横一列に並んで入ってまだあまる広さなんです。
日向ぼっこやお月見にもってこいの屋上も、寮生からとっても人気がありるんです。


 共同生活だから、トイレや廊下の掃除は分担してやってるんです。
サボった奴は倍返し、さらにサボるとテスト中掃除の刑が待ってますので、
男子寮といえど、たまにはきれいになるんですよ。たまには。
 



 

 おっと、言い忘れてた。
 この寮に君臨する「無敵四天王」について。

 この4人、入学から1年もたってないのにすでにしたい放題大暴れ、
何と4回生まで従えている有様なんです。
 気を付けてくださいね、彼らキレると本当に恐いんで。


 まずは去年の9月に入学した、ロロノア・ゾロ。
 目つきが悪い、口が悪い、態度が悪いと至れり尽くせり。
売られたケンカは脊髄反射で買ってます。
…売ったヤツは結局ボコボコです。
 そんな彼が、寮の軒先にいるノラ猫と真顔で戯れてることや、
未だに講義棟に行くのに迷子になってることは、
GMDに住んでる面々しか知らないんだろうなぁ。

ちなみに講義棟までは徒歩40秒です。


 次に、ゾロと同じ時期に入学した、サンジ。
ガラが悪くてケンカっ早いのはゾロとそっくりだけど、この二人、とっても仲が悪いんだ。

 サンジは女の子が大好きで、ゾロはとにかく女性が苦手。
 おしゃれなものが好きなサンジに対して、ゾロはシブ好み。
でもそんなんじゃなく、お互い似てるところが気に入らないのかなぁ…
と思ったりもするんですけど、命が惜しいので誰も言いません。

 別名「キッチン大魔王」。
キッチンを通るとサンジがいるってくらい。
仕送りもバイト代も尽きて栄養失調になった寮生は、みんなサンジに助けてもらったみたいです。
そんなときにやっとみんな、「あ、コイツ優しいんじゃん」って気付くんです。
 ただしキッチンを汚したり食材をほったらかしたりしてると、
魔王と化した彼に蹴っ倒されるから気をつけて下さいね。



三人目は、この4月に入寮したばかりのウソップ。
4天王の中では、一番普通に話ができるような気がするんだけど、
だんだん奴のペースに巻き込まれて、論点は宇宙の彼方へ消えてしまうから要注意です。
 彼は大ボラ吹きなんです。すごいのは、彼の嘘がバレバレすぎて
誰からも憎まれないところですね。

 機械工学の傍らアートをかじってる、インドアに強い彼だから
あんまり腕っ節のあるほうじゃないんですけど、
なぜかめちゃくちゃ強いゾロやサンジに物怖じすることもなく、むしろ彼らにツッコミ入れたりして仲良くやってるので、
彼らを恐れる学生たちから 尊敬されていたりします。


 この無敵の面々を仕切ってるのが、現寮長、モンキー・D・ルフィです。
パッと見は「サル」、ちょっと話して思うのは「アホ」、もっと付き合えばなんと「尊敬」に至るという、ありえない器の人間です。
 この4月に入寮したばっかりのくせに、もう寮長として取り仕切っているって事実が、彼のことをよく物語っていると思います。

 彼の専攻が哲学だってことは、ごく一部にしか知られていません。
知っている一部の人間は、彼自身がむしろ一個の哲学だろうと考えています。
 鋼の神経、ゾロやサンジに劣らないその強さ、
そして何より そのずば抜けたアホのセンスが、GMDの面々を惹きつけてやみません。
きっと他の学生は、ただのサルとしか考えてないんでしょう。
勿体ないことです。



彼ら4人、1回寝たら何があっても起きず、
どんな状況でも雑草のように生き延びる、まさに寮生活のための生態を持っているのですが、
いかんせん彼らのペースに誰もついてゆけないため、
彼らの部屋は彼ら同士で住まわせてます。
 組み合わせは今のところ、ルフィ+サンジ、ゾロ+ウソップ。
まあまだ一番ボロの出ないコンビでしょう。

実は、ついこないだまでは、ルフィ+ゾロ、サンジ+ウソップという組み合わせだったんです。

 んが、後者はまだしも前の二人はほとんど動物ですので、
授業に行かない・片付けしない、ゴミは捨てない・モノは食う…
とうとう部屋が壊滅状態になってしまったため、
緊急措置として部屋替えが行われたのでした。


あの日。
部屋替えの日。
僕は一生忘れることができません。


寮中に響き渡る、怒号の波を…




「いいかルフィ!おれの部屋に来るからには
 食べかすだけは絶対散らかすなよ!!」
「あー。」
「なんだよその返事!」
「あー…あ、肉♪」
「…といいながらショウユこぼすなぁ!」
「あれ、なんか踏んだ?」
「がぁー!おれのシャルムーズのシャツがぁ〜…」



「うおぉぉぉ!何じゃこりゃあ!」
「お、来たなウソップ。」
「何でカップにカビが生えてるんだよ!」
「ああ、生えてるな。」
「何でゴミの合間にネズミがいるんだよ!」
「ああ、いるな。」
「…お前ら、病気か?」
「いや。」
「いやおかしいから、それ! 人として!!」


たっぷり15時間、怒号は鳴り止むことなく響き続けました。

二人にはひそやかに、GMDの面々から深い深い涙が贈られました。



まあ、今はどの部屋も仲良く、楽しくやってるようです。







え、もっと覗いてみたいって?



じゃあ、遊びに来てくださいよ!

彼らのおかしな青春の日々が、たくさんあふれていますから。







*****
あーあ、やっちゃった・・・
おいら自身、大学で寮生活してました。
まあ、合う合わないは個人によって全然違いますが。
ちなみに私 めちゃめちゃ楽しんだ人でした。
なのできっと、そういう話になります。

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