嗚呼青春の一頁


vi:風が吹くとき





東南西北。
風は流れ。
春夏秋冬。
因果はめぐる。


白い壁の家。
その中に住む、おれたちと。




「ぎぃやああああああ!!」
「あ、嫌いだと見つけんの早ェな、ゴ」
「その名を呼ぶな、クソッ鼻!」
「最後まで言ってねェだろ。」
「言うな、最後までなんて絶対言うな、絶交するぞ!」
「ガキかお前は。」

普段、夜中の物音にびびるおれを嘲笑う男は、今 モップ握り締めて涙目で震えている。
新聞紙でくるんで、おれはキッチンを駆け抜けていたブリリアントG氏(命名)を捨てた。



なあサンジ、知ってるか?
嫌だイヤダって思ってることって、絶対またおこりやがるんだ。
だってほら。









ぽと。





「・・・ウソップ君。」
「どした、サンジ?固まって。」
「ぼぼぼぼ」
「ボ?」
「ぼぼ、僕のうなじを散歩してるのは、いいいたずらな冬風かな?」
アホかと突っ込んでやろうと、白い首に目をやった。

「・・・深呼吸してろ。」







「よし、取れた、ク」
「モって言ったらお前殺すからな!」



・・・いたずらな冬風さんを、おれはまたそっと表に捨てた。





なあサンジ、知ってるか?
不幸ってのは、とことん重なるまで離れてくれねぇんだぜ。
だってほら。





「いやああああああ!!」
「ぎゃあぎゃあ喚いてんじゃねェ、さっさと皿洗えよ!」

「のわあああああああ!!」
「…サンジ君、抱っこされるとおれさま掃除できない。」

「ごわあああああああ!!」
「わかった、わかったから落ち着け!」





キッチンを襲うのは、どこまでも伸びゆく悲鳴。



トイレを襲うのは、猛烈な頭痛だ。








おれたちもいい歳だからな。
それほど、何つーか、失敗…することもねェし。
失敗したところで、バレるのが恥ずかしいから後始末して立ち去る、くらいの分別は持ってるつもりだ。
だからそこまで便所も汚れるわけじゃねェよ。
便器磨きなんか易いもんだ。・・・別に好きでしたくなるもんでもねェけど。

ただ、だな。

お前ら、もうちょっと何というか、きちんと管理をしてもいい気がするぜ。

あ?何が言いたいかだと?



肴の始末はしてけってこと。


どいつもこいつも、テメェのエロ本はちゃんと持って帰れっつうんだ。

やたら女教師ものが多いのはどういうわけだ。
人妻ページだけよれよれしてるのはどういうわけだ。
そして誰だ、「誘惑の幼女」とか持ち込んだやつは。
大学より先に病院行った方がいいぞ。
そもそもなんでこの中にまぎれて「さぶ」があるんだ。
何なんだ。なんなんだ。







ヤロウ共の便所の中、冬風は通り過ぎてゆく。


ほんとはいい奴らばっかりなんだ という弁明の嵐に、
なお襲い来るとんでもないタイトルたちに
"にっかつグラフィティ"にちょっと反応してしまった自分に、

ゾロは少し泣いた。







恐怖と苦悶が渦巻く寮の中、
勝った二人だけは、

「勝負って恐いんだな。・・・甘っ!」
「んめー♪」

でっかいプリンのプロローグに舌鼓を打っていた。







白い壁の家。
その中に住むおれたち。

なにものにも懲りることはなく。
發發。





東南西北。
風は流れ。


春夏秋冬。
季節はめぐる。






もうすぐクリスマス。
休暇までもう少し。

食費を失った3人ほどの呻きが、長ーく長く伸びるのも、もうしばらくの間だけ。









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