外は雪がはらはらと、舞い落ちて、本当に真冬の寒さだった。 犬は、自分が「風邪を引く」と言うのを、聞き入れないまま雪遊び。 千種は付き合わされていて かく言う自分は、それを温かい室内の、窓から眺めている。 「骸さんっ、赤!」 ふと、秋の頃が思い出された。 「…ただの紅葉だよ…。」 「クフフ、まぁまぁ。ほらあちらは黄色ですよ。」 紅葉にはしゃぐ犬と、呆れながら実は嬉しかった千種。 それを眺めながら、楽しい気分でいた自分。 今はもうすでにそんな時期はすぎて、紅葉していた葉は落ち朽ちてしまった。 もう一年が終わろうとしている。なんとも早いものだ。 あの時…全てを壊して…監獄のような、 地獄と言える場所から脱出し…何年たっただろうか。 もうずいぶんと時はすぎて、一年はいつも早くて、 楽しいことは犬と千種に出会って知った。 張り付いた偽の笑みだけでなく本当に笑うこともできる。 慕ってくれる彼等を心から愛しく思うし、特に犬には…特別な感情を、抱いている。 毎夜毎夜の睦言はいくら紡いでも足りないし、いくら紡いでも飽きない。 それは偏(ひとえ)に犬が毎回違う反応、面白い行動をしてくれるからだが、 それだけ思う心があるということでもあろう。 世界に絶望していた自分がなんということか。 愚かだとは思わない。だが可笑しくはあった。 幸せか聞かれたら迷うことなく幸せだとそう答えられる自信がある。 そんな自分があまりにも昔とかわりすぎていて、 どんなにか犬や千種を大切に思っているのかわかりすぎて。 一人でクフフ、と笑ったら、窓に近づく犬がいた。 千種は仕方ない、という顔をして、それに倣(なら)いこちらへ来る。 コンコン、とノックされてすぐに、窓を開けたなら 犬の笑顔と、千種の微笑みに迎えられて 自分もにこりと、微笑み返した。 →Next