「「あ。」」

思わず声が漏れた。

道でばったりなんて、映画でもあるまいに。

それでも事実、出会ってしまったのだから
なんともいえないこの偶然に、どうにもできるわけもなく。


「良くなったの。」

以前気まぐれにディーノに会いに行った際に出会った彼は、
重傷だったはずだ、と雲雀は思い、目の前に対峙するスクアーロに聞いた。


「まぁ、なぁ…。」

まだ完治ではないのか、曖昧な笑みを浮かべたスクアーロは、
辺りを見回して、少し焦ったように、足早に去ろうと、した。

何故か引き留めた手は、普段なら振りほどけただろうが
先ほど雲雀が思ったことは間違いではないらしく、それほど力が加わることもなく。
あっさり、本当にあっさりと、手を引く雲雀に
スクアーロは、ついて行く羽目になって。


「貴方。」

「な、んだぁ…?」
「あれでしょ。実は治ってなんて無いんでしょう?」
「や、そんなことは…」

ねぇぞぉ。との呟きなんて雲雀は聞いていない。
もとより聞いていたとしてもバレバレすぎて、当てになんてしなかったろうし。

「大方」

動けるようになったから、目を盗んで抜け出してきたってとこじゃない?


その予想は当たりすぎていて怖いくらいに当たっていた。
スクアーロがわかりやすいだけかも知れないが。

そう、まったくその通り、スクアーロは抜け出して来たのだ。
安静と言われて、かつ身を隠さなければならないにもかかわらず。
スクアーロが何故抜け出してきたか、はわからないものの
危険を理解していないと言うことはないだろう。そこまで馬鹿ではない。

ならば、何故か。

ディーノの好意は、もしも…ヴァリアーに見つかったならば、無になると言っても等しい。
スクアーロ自身も見逃してくれるなんて、期待していないだろう。
ただ、ついて行くと決めたザンザスに このまま、裏切るということは
スクアーロの誇りにとって許せないことで

死にたいわけではないだろう。
ただ、始末をつけてもらおうと思ったか
或いはせめてヴァリアー側として、動こうと思ったか…


「貴方が何を思っているのかは知らないけど。」

そんな状態で何かできると思う?

無駄死にするつもり、と、
極めて真っ直ぐに、直球に、遠回しにすることなどなく…
雲雀はスクアーロに、言ってのけた。

スクアーロは何も返せないまま黙り込み、一言、「離せ」とだけ。







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