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2008/3/3 稲嶺智晴 オレら三兄弟で一番もてたんは、実はヒロ兄や。 高校三年間、甲子園のヒーローで、 弟のオレも憧れるぐらいヒロ兄は輝いてた。 彼女もつねにいる状態やったけど、何故か長続きせず、 いつも最終的には振られてたな。 なんか人間的に問題があるのかと心配してたけど、 今の同棲してる年上の彼女とは長く続いて安心や。 よっぽどできた女性なんやと思う。 |
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2008/3/5 小姑有働 先生の部屋はミルフィーユや。 ラーメンがこぼれた。拭かずに上に雑誌を置く。その上にゴミが。その上に服が… と、何層にもなっててキリがない。 「これ以上ほっといたら虫がわく!はい!今日は掃除の日!!」 パンパンと手を叩いて窓を開けたら 「え〜ッ!!!」 先生が競馬新聞から顔を上げた。耳には赤いペン。 「また今度でええやん」 「今度今度言うて、数ヶ月が経ちました!!」 「仕事せなあかんもん」 いかにもこれは採点用の赤ペンです、といわんばかりに耳からペンをとる。 「いますぐ掃除したら午後から仕事ができます。綺麗部屋、仕事、はかどる」 「でもお腹すいたなぁ」 「掃除せぇへんと昼ごはんも夜ご飯もつくらへんよ」 「・・・・・・・・・・」 先生は唇をとがらせて、しぶしぶ腰をあげる。 「じゃあ、まずこの本のかたまりを整頓して」 指示すると、大人しく本の整理をはじめた。可愛いな… 「…って!本を右から左に移動させてるだけやんか!! ちゃんと本棚にしもて!!ほら途中で本を読まない!」 「うっさいなぁ〜も〜」 「次、服たたも」 まったく!どっちが年上やねん。 「アカンアカン! 掃除っていうのはクローゼットになんでもかんでも押し込むこととちゃうで!! なんでゴミはゴミ袋に入れんと奥にしまい込むん?!」 ゴミ袋を渡すと今度はなんでもかんでも詰め込みはじめた。 「ああああ!!燃えるゴミと燃えへんゴミはわけんとアカン!!」 「なんで?」 「なんでて…ゴミ分別、知らんの?」 オレは大変な人と将来住むことになるんかもしれへん…。 |
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2008/3/6 きつねうどんにトラウマの稲嶺智晴 「キングオブ意味不明」なんは、当然アキ兄や。 真面目で長男らしい言動ができる反面、 何が好きで、何が嫌いで、誰と付き合っててとかいう情報が 身近な家族にも一切わからへんかった。 知っててやってるのか天然なのかもわからへん…。 ※京風たぬきうどん 油揚げを刻んで、だしに水ときかたくり粉をいれてあんかけにする |
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2008/3/13 有働 止まったら終り。 もし一歩が出たら、二歩も出る。 |
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2008/3/16 有働 いよいよラグビーシーズンも終りやけど 実はこれからが大切や。 次の秋からのシーズンを迎えるまでに 春にチームをかためて、夏に体力をつける。 ここでさぼってると、次のシーズンにモロ響くから また地味な練習に戻るんや。 |
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2008/3/18 有働 |
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2008/3/20 三年生 「おい有働、いい加減、泣き止めや」 その泣き顔にアイアン・クロー。 「イタタッ!…でも…」 今日はオレらの追いコンや。(追い出しコンパ) 卒業する三年生チームと新チームとで試合をすることになった。 「絶対手加減すんなよ」 有働の頭にチョップすると、その衝撃でまた目からポロポロ涙がこぼれ落ちる。 「ええか、有働雄哉!いくらお前が ラグビーの特待で入ったて言うたかて下級生は下級生や!」 一年前、有働が入部したとき、まずはじめに言うた。 「この先、お前がどんなすごい成績上げようが、 オレら先輩の言うことは絶対やど!」 実際に特別扱いはせんと、厳しく接してきた。 有働にとっては鬼のような先輩やったと思う。 でも、一番泣いてるのは有働や。 おい、アホの有働。 大学では敵になるかもしれんけど、また一つのボールを追える事を楽しみにしてるで。 「よしッ!行くど!」 ボールを高く蹴って、オレらは走り出した。 |
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2008/3/24 後継者有働 「では、皆様の幸せと健康を祈って、最後にアレを披露します!!」 すでに半裸でボロ泣きの寮長が割り箸を持って立ち上がった。 「ええ〜ッ!寮のお別れ会のシメがそれですかぁ?」 オレもボロ泣きしながら、つい口に出すと、 「この寮に代々伝わる秘技の後継者がなんちゅうこと言うてるねん!」 デコを割り箸でしばかれた。 「勝手に継がさんといてください。イヤです!」 食堂の寮生は全員泣きながらも、うんざりした顔をしてる。 「ラガーマンは脱ぎたがりや」 と先生はいつも馬鹿にするけど、言い訳できひんほど 寮長である塩田先輩はすぐに脱いだ。 つねに半裸で寮内をウロウロしていて、誕生日会とかで 場が盛り上がったら、酒も入ってへんのに必ずフルチンになった。 脱がんと盛り上がらへんと思ってるのか 盛り上がったら脱ぐという刷り込みが出来てるのか… あまりに酷いので、寮母さんに「二度と脱ぎません」 て誓約書を書かされてたぐらいや。 その塩田先輩は最後やから堂々とパンツを脱ぎ、 皆にケツを向けて 「皆、三年間有難うな!この馬鹿馬鹿しくも 素晴らしい寮生活を、オレは絶対忘れへん!!」 泣きながらそう叫んで、尻に割り箸を挟んでバキッと割った。 |
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2008/3/28 有働 家で仕事をする先生を見てるのは好きや。 先生は多分、すごく頭のいい人なんやと思うけど 普段そんな素振りを微塵も見せへんし、日常の奇行っぷりに どうしても自分と同じレベルに見てしまう。 でも採点してる時のペンの運ぶスピードや、 テスト問題を考えるときのすごい速さで本をめくる姿は、 頭がいい人っぽく見えて、ちょっとカッコイイ。 |