2008/4/1

イガグリ(伊賀)中学二年の春


「すいませ〜ん!」
サッカーボールを足で止めてくれた人に走っていく。
「あ…」

ラグビー部の有働雄哉や。

サッカー部とラグビー部は近くで練習をしてるから、
いつもチラチラと見てる。
近くで見るとさらにでかい。そしてカッコイイ。

「いつもマルコメの練習見てるけど」
マ…マルコメ?
オレはつい自分の頭をさすった。
「キックうまいなぁ!」
「…え…」
きっといまオレの顔は真っ赤やと思う。
「そ…そうですか…有難うございます」
いつも見てるのはオレの方やから。
「うち、キックうまいヤツおらんし、しんけんほしいなぁ」
「ええッ!?」
「無理やと思うけど、ラグビー部、考えとってよ、マルコメくん」
ニコッと笑って、サッカーボールを手に持ち、
ラグビーのパスのように渡された。

うそ…
うそッッ!!!
うそ〜〜〜〜ッッッ!!!!



もしかして

あの有働雄哉に

スカウトされた!!??
2008/4/3

イガグリ(伊賀)中学二年の春


自分がラグビーをする。

幼い頃からサッカー一筋やっていたから、
そんなこと、考えたこともなかった。

はじめは有働雄哉に憧れて練習のときにチラチラ見てた。
でもそれをキッカケにラグビーに惹かれていったのも事実や。
球技よりも格闘技みたいで、カラダでまるごとぶつかっていく
熱いスポーツに、オレの中の「男」が魅入られた。

・キツイ
・汚い
・怪我が多い

3Kでもいい。
あの泥臭い絆の中に自分の青春をぶつけてみたい…!!

さんざんグラウンドをウロウロして、
サッカーボールをチョンと蹴って、そして遠くへ蹴って、
オレは三年生の校舎に走り出した。
2008/4/6

イガグリ(伊賀)中学二年の春



三年生の教室の前、緊張しながらもハッキリ言うた。
「ラグビー部に入ろうと思います!」
有働先輩はオレの勢いに一瞬キョトンとして、
「うん、そうか、うん」
嬉しそうに笑った。
「サッカー部の顧問やキャプテンにはオレからもうまいこと言うとくさかい」
オレの頭をガシガシ撫で回し、
「よろしくな、マルコメくん」
抱きつかれた。
「ああああの、ぼくの名前、伊賀っていいます」
「伊賀ぁぁぁぁ??????!!」
有働先輩の驚きに驚いた。
「そっか!イガか!ちょうど髪の毛も伸び始めてるし、
 ほな、マルコメ改めイガグリな!!」
また頭を撫で回された。
2008/4/9

有働


桜の花びらが先生の前にヒラリ。
男というのは基本的に狩人や。
先生はつい両手でパンッとつかまえようとした。
…が、ゲットできず。

オレの前にもヒラリときたから、同じように両手でパンッ。
手の中には花びら。
それを見た先生の闘争心に火がついた。

公園の桜の下、男二人無言でパンッパンッパンッ。
男というのは基本的に闘う生き物なんや。

延々パンパンやってたから、それだけで意味なくデートは終わったけど、
幸せな時間はこういうものかもしれん。

(ちなみに手の大きいオレの圧勝)
2008/4/15

有働ねえちゃんズ


高校生になったゆうちゃんは、いろんな言い訳して
できるだけ家に帰ろうとせぇへんけど、
小学校に入学した日は、家が恋しくて
学校にいる間、ずっと泣きっぱなしで
担任の先生を困らせたんやから!!

そう思うと可愛かったなぁッ!!
2008/4/17

稲嶺長男


「ハルちゃん、学校の勉強はどうや?」
「たしざんとかひきざんはかんたんやけど、
 りんごとかたろうくんはむずかしい」
「???」
「たろうくん、さんじのおやつにりんごなんやって!
 ぜったいうまいぼうのほうがおいしいやんな」
「…勉強、わからんことがあったら、お兄ちゃんに聞きや」
「うん」
2008/4/19
2008/4/26

伊賀(イガグリ)


またいっしょにプレーしたい。
ただそれだけ。

親元を離れ、憧れの先輩を追って、こんなに遠くに来た。

まだ何も言うてない。
ゆうちゃん先輩、びっくりするかな。