「うわぁーかっこいい!!」
「そう?」
「うんっ」
 朝ごはんを終えて響が洗い物をしていると、着替えを終えた咲斗がリビングに戻ってきた。いつものスーツ姿だろうと思って顔を上げた響は、思わず咲斗の姿に感嘆の声をあげた。
「へぇ〜浴衣。すっごい似合う」
 響の素直な感嘆の言葉とそのまなざしに、咲斗の顔に自然と甘い笑みが広がってしまうのは仕方のない事だろう。
 それはブルーグレーのなんとも言えない渋い色地にロウケツ染めの物。柄が、水が流れるように綺麗な曲線を描いていて、そこに淡いブラウン系の博多帯がキュっとしまってあって、なんとも言えない男っぽさと色っぽさを漂わせていた。
「それで出勤?」
「うん。今日は浴衣dayなんだよ。それでね。あまりフロアには出ないとはいえ、上客の方もお見えになるから、俺も由岐人も今日は浴衣」
 年に1度のこの日。
 咲斗と由岐人が経営する店はどこも満員御礼になる。しかも、ほぼ常連の得意客で埋まってしまうため、咲斗も由岐人も今日ばかりは店をはしごして顔を出して回らないわけにはいかないのだ。
 そして、今日は咲斗も由岐人も一人しか客を取らない。その今日をキープするのは至難の業で、何ヶ月も前から客の間には熾烈な駆け引きがあって。たった3〜4時間の為に一体いくらのお金が使われたのかなんて事は、響にはまったく考えもつかない世界の話。
「ふうん」
 咲斗にとっては、いつもとわからない仕事の日なのだが。
「何?」
 なんとなく、少し響の顔が変わった気がして咲斗は首を傾げる。けれど、響はなんでもないと首を振っていつもの笑顔に戻っている。
「じゃぁ・・・今日は忙しいんだ?」
「まぁね。帰りもちょっと遅いかもしれない」
「わかった」
「あんまり冷やして寝ると風邪ひいちゃうから、設定温度は高めにしてね?」
「うん」
 つい先日、響は夏風で少し体調を壊したばかりなのだ。それも冷房で冷やしすぎてが原因。帰ってきて、苦しそうにしてる響を見た時は咲斗は心臓が止まるかと思うほど驚いたのだ。
 もうあんな思いはしたくない。
「アイスの食べすぎもダメだよ?」
「・・・うん」
 それに関しても前科があるので、響は素直にうなずく。
「食欲なくても、ちゃんと夕飯は食べること。いいね?」
「わかってる」
「本当に?作るのが面倒なら、出前頼んでもいいからね?」
「わかってるって」
 夏風邪を引き起こしたのも、食欲がなくて、アイスばっかり食べて夕飯を食べてなかったりしてたのも原因。体調崩しておなかも壊して唸っていた自分に、咲斗は傍から見ててもおろおろして、凄く心配をかけてしまった自覚は響にもある。だけど、それ以来咲斗は鬱陶しいくらいに心配性で、ちょっと困っていた。
 響としては、もういい加減にして欲しいくらいなのだが、原因は100%自分にあるだけに、言い返しにくい。
 そんな思いがもろに顔に出て思わず拗ねた様になっている事に、響の自覚はない。そんな顔をさせたくて、ついつい小言が一つ多くなってしまう咲斗の思いにも到底気付かない。
「こっち向いて・・・」
 拗ねさせたご機嫌を取るように、響のあごに咲斗に指が添えられて。
「え?―――んっ」
 優しく唇を、押し付ける。
「もう、行かなきゃいけないから」
「うん」
 優しく、ついばむようにキスを繰り返して。
「抱き締めてくれないの?」
 背中に回されない腕に、咲斗は抗議の声を上げる。
「だって、浴衣。着崩れる・・・」
「いいから」
 少し、深く入ってきた舌は、響が背中に手を回した途端に、遠慮なく響の口腔内を荒らしてく仕草に変わって。その苦しいキスに、遠慮がちに回されていた手がしっかりと浴衣を掴むと、痛いくらいにその体を抱き締め返す。
 由岐人からの電話が鳴るまでの僅かの時間、2人は言葉もなくキスを交わした。





「結局これ、着たんだ?」
 由岐人は、からかいを含んだ口調で言いながら、響によって崩されてしまった形を直してやっていた。
「ああ。仕方ないだろ。今日のお客様は笹原様だ」
「そーなの!?あんだけ嫌そうだったのに」
「由岐人」
 たしなめる声に、だってと、笑う由岐人の声は駐車場内によく響いた。
「これ着て、一緒に花火に行きましょうって言われたんでしょ?そっちはどうしたの?」
「断ったよ。そんな暇はないし・・・第一花火を見る相手はもう決まってる」
「ま、確かにね。さぁて、出来たっと」
「ああ、ありがとう」
 由岐人が帯を軽く締め直して、綺麗に着崩れを直してやった。
 その由岐人はといえば、グレー地に深い草色が立てラインに流れるような線を描いた少し斬新なデザインの物に、濃い茶の帯を締めていた。もちろんこちらも頂き物。
「由岐人はいい?」
「僕は着崩れるような事はしてないからねぇ」
 たっぷりと含みを持たせて笑うと、由岐人は車のドアに手をかけた。
「咲斗さんっ!」
 その時、 駐車場内に突然響の声が響いて、咲斗はびっくりして振り返った。
「――っ響!どうしたの?」
「良かったぁー間に合って。これ、忘れ物かなって思ってさぁ。リビングに落ちてたから」
 そう言って響は手に持った扇子を、咲斗に差し出した。
「あっ」
 それはやっぱり咲斗に必要だった物らしく、咲斗は思わず懐に手を入れて確認する。それは浴衣とセットで渡されたモノで、忘れて行っていたら面倒になる代物だったのだ。キスに夢中になっていたとはいえ、らしからぬ失態だった。
「ありがと。助かった」
 咲斗は思わずホッとして、それを受け取るべく手を伸ばすと、響は扇子を咲斗の手の中に押し付けてきて。
「ううん、良かった。―――じゃぁ、ね」
 ぎこちない笑顔を浮かべて、響は慌てたように走り去った。抱き締めて、お礼のキスしようとして上げられた咲斗の手をするりと避けて、行ってしまう。
 そのあまりのわかりやすすぎる態度に、咲斗だけでなく由岐人の口からも思わず苦笑が洩れた。
 後ろ姿が咲斗の視界から瞬く間に完全に消え去るまで、眺めて。
「―――聞かれた、かな」
「間違いないね」
 ―――――あんな顔、させてしまった。
「なんで笑ってるの?」
 由岐人が、呆れた気持ちを隠さない声で言う。それぐらい、咲斗の顔には甘い笑顔が隠しようもなくにじみ出ていて。
「ん?笑ってる?」
 ―――――微かに、指が震えていた。
「笑ってる。しかも、すっごく、底なしに、うれしそうだよ――――ああ、いいよ言わなくて。ノロケは聞きたくないから」
 由岐人は付き合い切れないと言い捨てて、少々乱暴の車の扉を閉めた。その態度に咲斗は軽く肩をすくめて、続いて車に乗り込んだ。
 素晴らしい1日に感謝しながら。












 いつもよりも、やはり少し遅い時間に帰宅してきた咲斗は、扉を開けて吃驚した。
「・・・寒っ」
 スーツより浴衣の方が涼しいのかもしれないけれど、それにしたってこの室内の冷たさは尋常じゃない気が、咲斗にはかなりした。
 ―――――あれほど、冷やしすぎるなって言ったのに。
 その言葉に対するあてつけの様に、帰宅してきた室内は冷え切っていた。玄関までにもその冷気は流れ込んでいるのだ。当の部屋はどれくらい冷たくなってるのか。
 きっとベッドにもぐりこんで、布団に包まって寝ているに違いないその姿を想像して、やれやれと寝室の扉を開けてみる。
「・・・・・・いない?」
 そこには、予想された姿はなくて、それどころか誰かが寝た形跡もない。咲斗は微かに眉根を寄せて慌ててリビングの扉を開ける。
「うわっ寒っ」
 本日2度目のその言葉が自然と洩れて。
「―――何コレ・・・・・・」
 目の前の惨状に思わず呟いてしまった。
 そこには、ソファにぐったりと身を沈めている響の姿があって、ひとまずそれにはホッとしたけれど。その回りには無数の缶チューハイの空き缶と、缶カクテルの空き缶が転がって、数本の瓶も紛れている。食べ散らかされたおつまみの類も、袋やら食べ残しやらがあちこちに散らばっている。
 咲斗は、床に転がっている缶を踏みつけないように避けながらそっと響の側に近寄ってみると、そこに涙の後を見つけて。
「響・・・」
 微かにかける声には反応など返ってこない。
 ―――――泣かせるつもりはなかったのに・・・・ごめんね。
 そんな事ならちゃんと引き止めて話をすれば良かったと、後悔の思いが湧き上がってくる。どんな思いで、この何時間を過ごさせてしまったのだろうかと申し訳ない思いで一杯になるのに、それでも、少し・・・いやかなりうれしいと咲斗は思ってしまう。
 指を伸ばしてそっと頬に触れると、異常なほど冷え切っていて。惜しげもなくさらされた肩や足も恐ろしいくらいに冷たかった。
 酔って熱くなってどんどん下げられたであろう冷房の設定温度は18度になっている。
 咲斗は慌てて設定温度を28度まで上げて、風呂を沸かす。風呂が沸くまでの僅かな時間にとりあえず足の踏み場を確保して。
 沸き立った知らせの電信音に着ていた浴衣を脱ぎ、―――作家には大変申し訳ないが、もう2度と腕を通される事はないだろうから適当に放り投げて、咲斗は響の身体を抱き上げ風呂場へと急いだ。

 ちゃぷん、と水の音が響く。

「・・・っ・・・」
 なんとなく押し付けられるこしょばいような、気持ちのいい感覚。何かに抱き締められている、安心感。
 ―――――あったかい・・・・・・
「あ?目が覚めた?」
 くすくすと笑う声を、響は耳元に感じる。起してしまったというような反省めいた響きもなく、確信犯のような笑い。
「あれ・・・・・・お風呂・・・?」
 響は、後ろから抱えられるように抱き締められて、湯船に身を沈めている。だから、咲斗がしゃべるたびに、耳元に息がかかってなんだか変な気分が背筋を這い上がってくる。
 もちろん咲斗はそれもわかってやっているのだけれど、そこまで思い至るほど響の頭は覚醒していない。
「正解。帰ってきたらリビングは凄い惨状だし。真ん中で寝てる響は凍死しそうなくらい冷えてるし。だから、とりあえず一緒にあったまろうかなって思って」
「―――あ・・・」
 響がしまったっという顔をする。
「なーに?なんでリビングはあんな事になってるの?」
 耳に息を吹きかける様に言うその言葉は甘く濡れていて、でも容赦はない。
「・・・・・・」
「響?」
「・・・・・・」
「もしかして、黙秘権?」
「・・・・・・」
 響は上手い言い訳が思いつかないのか、眉間にしわを寄せて難しい顔を作る。それは僅かにもたらされる快感を、耐えているようにも見えてそんな響の顔も咲斗には愛しさが募る。
「じゃぁ・・・しゃべらせる為に俺はがんばらなきゃね?」
「え?・・・あっ」
 咲斗は、耳に寄せていた唇を開き、耳たぶを甘噛みしてから中に舌を差し入れた。ねっとりと耳をいたぶってくるその刺激に、響の身体が少し揺れる。
 その反応に目を細めて、前に回した手で響の身体を撫で回し始めれる。その手をわざとの様に乳首に掠めて通ると、響の身体はすぐに反応を返してくる。
「やめっ・・・」
「だぁーめ」
 しばらく遊んでいた手を胸の周りに這わせて、ゆっくりと乳首に近づけて、その回りを指でやわやわ円を描くと、響の身体が逃げようとくねり出す。
「気持ちいい?」
 今度は指の腹で、とがってきた先端をぷつりと潰したり揉んだりしてやると響の口からは堪えきれない甘い吐息が漏れ出す。
 響は、どんどん下肢に溜まる快感に眉根を寄せて元凶であるその手を止めさせるべく咲斗の腕掴もうとすると、逆にその手を咲斗に絡め取られて、頭をもたげ出した中心に導かれる。
「やだぁっ」
 咲斗の意図を察したのか、響が鋭い声をあげる。
「じゃぁ、白状する?」
「・・・っ・・・」
 手を添えて、響の指を響自身に絡めて行って扱いてやると、途端に先端から蜜がこぼれ出した。強制的な、自慰行為。
「あぁ・・・っ・・・、いっ、んん・・・ああ・・・」
 自分の指と、咲斗の指と自分の意思と咲斗の意思が相まって、4つの手に包まれてばらばらと動かされる刺激に、響か咲斗の腕の中でビクビクと震え出す。
「もう、トロトロだね」
「・・・っ・・・ああ、ふぅん・・・・・・、ああ」
 幹裏からスッ−っと撫で上げて、先端を指の腹で虐めると響の腰が跳ねた。
 咲斗は、響の片方の足をバスタブの縁にひっかけるように上げさせる。
「やだっ」
 足をひときわ大きく開かされる格好に響は恥ずかしさに抗おうとするが、中心を握られ摩り上げられればその快感にまた身が咲斗の腕の中に身を沈める。
 そんな痴態に咲斗は含み笑いを漏らして、一方の手をもっと奥へと進めていく。
「ああっ、だめぇっ」
 咲斗の指が、響の襞をゆっくりさすっていく。その快感に響は身をよじって耐える。
「ヒクヒクしてる。―――欲しい?」
 咲斗の肩に後頭部をを預けて、思いっきり喉をさらして喘ぐ響の姿に咲斗は満足そうな笑みを浮かべる。
「響?どうする?」
 咲斗は意地悪く聞いて、指を入り口付近を摩るばかりで中には入ってこようとはしない。ぐりぐりと押し付けて、ゆっくり摩り上げる。そのじれったい刺激に響の奥は甘く疼き出している。
「・・・れてぇ・・・、もう・・・っ」
 絶えられなくなった響は、うわごとのように甘い言葉を呟く。
「じゃぁ、どうしてリビングはあんな状態なの?」
「・・・っ」
「欲しくないの?ここに」
 そう言うと、咲斗は人差し指を僅かに中に差し入れる。しかし、離すまいと襞が絡みつく前に抜き去ってしまう。
「あぁ、んっ!」
「質問にちゃんと答えられたら、いくらでも響の欲しいだけあげるよ?―――なんでリビングはあんな状態なの?」
「・・・・・・っ・・・飲み、たくてっ」
「わざわざ、買いに出たんだ?」
「うん・・・っ、ああぁ!」
 咲斗は、指を奥へと滑らしていった。奥まで埋めて、けれど決して動かす事はしない。
「なんで飲みたい気分だったの?しかも、あんな数」
「っ、それは・・・咲斗さんがっ」
「俺が?」
「―――・・・浴衣っ・・・ああぁ、もう・・・動かしてぇ・・・」
 襞が絡みついて締め付けるが、動かない指のもどかしい快感に響はねだるように咲斗の腕に自分の指を絡めてねだる。
「似合ってたんでしょ?」
「似合って・・・ああ・・・ないっ―――」
「そう?」
「あんなのっ、似合わない・・・・・・っ、ひぃっ」
 咲斗の前を握っていた指が、筒状にされて1度大きく摩り上げてた。その快感に響は胸を反らす。けれどそこでまた動くのを止めてやると響は無意識のうちに自慰行為を始める。
 咲斗はその根元に、指を絡めてしっかりとせき止めた。
「やぁっ!―――やだぁ・・・離してぇっ」
「浴衣のことで、お酒飲んだの?」
 咲斗が聞くと、響は水を含んだ髪を重そうに横に揺らす。
「―――もう、イカせてっ・・・・」
「響」
「だって・・・お客さんからって・・・その人の為に、着っ・・・・・・て・・・」
「うん」
 分かっていた言葉。
 けれど本人からもたらされるだけで、もっともっと極上の媚薬を含む。その甘い嫉妬の言葉だけで咲斗はイキそうになる。
「―――・・・それに・・・花火・・・」
「え?」
 微かに続いた言葉を、聞き取れなかったと咲斗が聞き返すと、響が僅かに頭を上げて潤ん瞳を咲斗に向ける。赤く頬が色づいて濡れた唇も扇情的で。
「もう・・・欲しいよぉ・・・」
 めったに聞けない甘い言葉を囁いて響から口付けをされては、咲斗の方が限界を超えてしまった。
 遊ばしていた指を響の中から一気に引き抜く。
「ごめん、あんまり慣らしてないからつらいかも・・・でも、我慢できないっ」
「いーから・・・来てっ」
 濡れたその言葉に、咲斗は自分のモノがドクっと脈打つのを感じて、性急な仕草でその腰を抱え直して。
「あああぁぁぁっ!」
「―――ごめん」
 もう1度謝って、それでも止めてあげる余裕がなく少し乱暴な仕草で中へと入り込んだ。
「へー・・・き。――――っ、あああああぁぁぁぁ―――っ・・・・」
 奥まで入り込んでくる衝撃に、背中を震わせて、咲斗の回される腕に爪を立てて耐える。
「・・・今日は、記念日だね」
 馴染むまでの僅かな時間、咲斗が甘く告げてくる言葉に、響はわからないと微かに視線だけで訴える。
「響が初めてヤキモチやいた記念日」
「なっ!」
 その言葉に響の顔に思いっきり朱が走って、思わず動いてしまった反動に中のモノをリアルに感じて、大きく腕の中に沈み込む。
「大丈夫?」
 少し慌てたように言う咲斗を響はなんの迫力もない視線で睨みつけて。
「誰の所為―――っ、ああぁ・・・ふっ」
 上げた抗議は、咲斗が緩く動き出したことで、喘ぎに変わる。
「だって―――焼きもちやいてる、いつも俺の方だから・・・」
「そんなのっ。ああっ・・・俺だって・・・・・・いつだって心配・・・ふっ、んん」
「え・・・?」
「咲斗さんっ・・・絶対、ああぁ・・・、モテるのっ、ひぃ・・・、んん・・・なんてわかって――れの、ほぅ・・・あああ・・・がぁ・・・・・・」
「響」
 思いもしなかった告白に、咲斗は自身のモノが大きく脈打って早くも限界を知らせてくる。
「あああぁぁ・・・っ」
「ほんとに?―――ほんとに、響も・・・」
「っ、はぁ・・・おれの・・・っ、って、あああ!」
「・・・うん」
「ああぁ・・・うっ――もう、・・・もうだめ・・・・・・」
「うん」
 咲斗は後ろから抱えた響の腰を掴んで激しく動かす。下からのひときわ大きな突き上げに、響の背中は思い切りしなって。
「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――っ・・・・・!」
 湯に白濁としたものが混じっていく。
 響の中に咲斗が達した瞬間、響の身体は軽く弛緩してそのまま倒れこんだ。
「響!?」
 完全に脱力した身体の重みに咲斗が慌てて顔を除き込むと、さっきとは違う種類に顔が真っ赤になっていて。
 ぬるま湯の半身浴とはいえ、お酒を許容範囲以上に飲んだあとの風呂場のセックスで、響は完全にドロップアウトしてしまっていた。
 咲斗はまたも慌てて、響を抱えあげた。







 次というか、今日の午後。
 咲斗は結局一睡もしないままに出勤していった。
 帰宅してそうそう寝る間もなく身体を繋げて、自分の所為でのぼせて倒れた響の面倒を見た所為だから、自業自得。
 もちろん咲斗は上機嫌で出かけて行って。寝られないならと2ラウンド目もされた響の方がぐったりな、7月の終わり。



 










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