+ 7+




 響は冷蔵庫の中を覗いて困ってしまった。
 ―――――食料が・・・ない・・・・・・
 これは大問題だ。
 最初は満杯だった冷蔵庫も、毎日の食事で徐々に減っていってしまい、今となっては鮭が2切れにうどんが半玉。野菜のはぎれが少々と、かなり心もとない状態になってしまった。パンも無い。
 ―――――あ、冷凍の餃子が1袋あるなぁ・・・でも、肉系は無いなぁ。ミートソースの缶詰があったから、後はパスタかぁ・・・
 これだけでは、後1日・・・頑張って2日しか持たないだろう。その上響ままだまだ食べ盛り育ち盛りなのだ。肉が無いというのは寂しい。
「どうしたの?冷蔵庫見て唸ってるけど」
 そこへ一緒にお茶でも飲もうと出勤前スーツを着込んだ咲斗がやって来た。
「咲斗さん・・・」
 その咲斗を響は情けなさそうな目で見上げる。それはまるで、お預けを食らっている子犬の様で咲斗は思わず笑みを浮かべてしまう。
「どうしたの?そんな顔して」
 声はなだめるように甘く、手は響の髪を優しく掻き揚げた。
「あのね・・・食料が無い」
「え?本当に!?今日食べる分もない?」
「ううん、それはなんとかなるけど、持っても明日までかなぁ・・・1週間で結構減っちゃって・・・」
「そっかぁ。そうだよね、ちゃんと家で食べるしね。じゃあ明日一緒に買い物行く?明日は仕事休みだし」
「ほんと!?俺も行ってもいいの?」
 久しぶりに外へ出られるのが嬉しいらしく、響の顔に笑顔が広がる。その顔があまりにかわいくて、思わず咲斗はその額にキスを落としてにっこり笑う。
「いいよ。2週間も閉じ込められっぱなしじゃ飽きたでしょ?一緒に買い物行こう」
「やった!あ、でも服・・・・・・」
「俺の、適当に貸してあげる。パンツもちゃんと買い置きがあるから安心して」
 そう言うと、咲斗は今度は響の口に軽いキスを落とす。
 それは初めはついばむような軽いキスを繰り返しだったのに、だんだん深いものに変わっていく。舌で歯列を割り開き、中を蹂躙して征服していく。おずおずとだされる舌がなんだか嬉しくて、絡めとって吸い上げてやると背中が震えた。飲みきれなかった唾液は、頬を伝って流れ落ちる。
「はぁ・・・」
 最初は嫌がるばかりだったのに、2週間の教えの賜物なのか。無意識の中で苦しそうに眉根を寄せながらも、必死で受け止めようとする響がひたすらに可愛くて仕方がない。ゆっくり唇を離し、その瞳を除くと煽情的に濡れていた。
 頬に触れ、指で唇を指でゆっくりこすると少し震えてわなないている。
「・・・咲斗、さん」
 なんとも言えない危険な空気を感じ、思わず呼んでしまった声も微かに上擦っている。その響に反して咲斗は余裕の笑顔を浮かべていた。響はその笑顔にさらに危険をはっきり認識したのか、思わず逃げようと後ずさるが後ろには冷蔵庫があって既に逃げ場がない。
 しかも、すっかり咲斗に慣らされた響の身体は咲斗のもたらすちょっとした愛撫や刺激にも、敏感に反応してしまう。
 その様子を楽しそうに咲斗は愛でていた。
 実は咲斗は、最近忙しくてなかなかその身体を抱けない欲求不満を、こうしたちょっとした戯言で晴らしていたりするのだけれど、響はその度にビクビクしているのだから可哀相なものである。
「お茶、でも入れようか?」
 響はなんとかこの状況から切り抜けたいと、じりっと身体を横ずらしながら提案してみるも。
「うーん、お茶より今はこっちかな?」
 咲斗はふつふつと湧き上がってくる欲求に忠実に、逃げようとする響をそのまま冷蔵庫に押し付け、耳にキスをする。そしてその耳たぶに軽く歯を立てると、響の身体がビクっと反応した。
「咲斗、さん・・・っ!」
 そのまま舌で耳を犯しながら、一方の手で尻を軽く揉む。
「あっ・・・!やぁっ・・・」
 咲斗のイタヅラに本格的に響は身をよじって逃げようとするが、咲斗が逃がすはずも無い。
「最近シテないけど、自分でシタりした?」
「しない・・・っ」
 なんて事言うんだと、思う。第一あれだけした後なのだから4日や5日しなかったからといって欲求不満になったりなんかするわけがない。
「本当?」
 それなのにからかう様な口調で咲斗は言うと、さらに尻を揉んでいた指をもっと奥、蕾の入り口をゆるゆると襞を確認するように撫でていく。
「はっ・・・やめ・・・・・・っ」
 その刺激に響の眉根が寄せられ、息が乱れる。咲斗のスーツがしわになるのもかまわず、響はその肩を掴んだ。そうでもしないと、足ががくがくしてきて上手く立てない。
「ヒクヒクしてる」
「あ・・・んん、言うっ、な・・・」
 咲斗はそのまま首筋に下を這わせ、鎖骨に後を残す。後ろの回していた手を前に回し、勃ち上がってきたモノに指を絡めて行った。
「前も勃ってきてるよ。すっかりエッチな身体なったね」
「誰っ・・・の、あ・・・せい・・・・・・んん」
「んー俺?」
 くすくす笑いながら耳元で聞く。そのかかる吐息にすら響は感じてしまう。
「濡れてる」
「や、言う・・・なって・・・」
 いちいち自分の状況を言われるのは死ぬほど恥ずかしいのに、咲斗はそれがわかってるからわざと口にする。そういうところが本当にムカツク。
 咲斗は響のモノから零れ落ちた滴で手を濡らし、後ろに塗り込めて行く。何度も何度もその行為を繰り返す。そのたびに、後ろの蕾は物欲しげにヒクヒクと開くけれど、咲斗はそれを無視して、ただ、ふちをゆっくり撫でて濡らすだけ。響が焦れて泣き出せば良いとでも言うようにただそれだけ。
「――――っ」
 その咲斗の罠にもにた行為に、響はいとも簡単に滑り落ちていく。その先を知っている身体が、そんなものじゃ納得出来なくて、そこに欲しくて中が疼きだすのだ。
「はぁ・・・・・・ああっ、さ、きとぉ・・・っ」
 完全に勃ちあがったモノの先走りで、咲斗のスーツが汚れていく。
「なーに?」
 咲斗の愛撫に翻弄されて息も絶え絶えなのに、咲斗は余裕の笑顔を浮かべて涼しい顔だ。
「・・・・・・っ」
 それを口にするのは、響はまだ抵抗があって唇を噛む。咲斗はそれがわかっているから、言わせたい。
 言わして、乱れさせて、鳴かせて――――堕としたい。自分の手の中から出ていけないように。張り巡らせた蜘蛛の糸にがんじがらめになって逃げられない蝶の様に。
「どうして欲しい?」
 響の耳元に甘く囁く。
「・・・っ・・・」
 限界に近いと思うのに、響はなかなか言葉に出来ない。何度も恥ずかしいその言葉を言わされたけれど、それでも馴れる事は難しくて、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。その頬を蒸気させて、苦しそうに咲斗を上目使いに睨みあげる。精一杯の抵抗のつもりのそれは、色っぽ過ぎてたまらないとしか咲斗は思わない。
 咲斗はもっと虐めたくなってしまう。もっと鳴かせたくなってしまう。その思いのままに、指を中に差し入れる。
「ああっ!・・・んん、いっ」
 先走りでぬらされた指はさした抵抗感もなく入ってくる。それをことさらゆっくりゆっくりと、指を根元まで入れて掻き回す。
「ひぃっ、ああ・・・あ、いやぁ・・・・・・、さきっ・・・、と・・・っ」
 響の感じるところをわざとかすめて、中を蹂躙していく。指を2本に増やして中で鉤の形に曲げてばらばらに動かすと、ぐちゅぐちゅという音がした。
 その音に一層の羞恥心を煽られた響の目から涙がこぼれる。
「はぁ・・・やめ、ああ・・・だめぇ―――っ、ね、がい・・・」
 響のモノはだらだらと滴を垂れ流し続けている。そこはイキたくて仕方がないのに、咲斗は響の中を蹂躙しながらも響の感じるポイントを微妙にずらし、決定的なものを与えない。
 いっそ自分で触って出したいと思うけれど、そんな事をしたらどんな目に合うか考えたら怖くて出来なくて、なんとか耐えようと響は頭をぱさぱさと振る。
「あぁ・・・っふ・・・い、んん・・・」
 中の指を自分のいいところに当てようと、無意識に響の腰が揺れる。その淫らな仕草に咲斗は笑みがこぼれた。
「も、やぁっ――・・・ぁぁ・・・きとさ、ん・・・もう・・・・・・っ!」
「もう、なに?」
 咲斗は仕上げとばかりにTシャツの上から胸の突起に歯を立てた。
「ひぃ―――っ、ああっ・・・・・・ああぁぁぁぁ」
「響、どうして欲しい?」
 イキたい。頭の中がそれだけに支配されていく。
「あ、あう・・・っ、イ・・・キたい・・・よぉ――・・・」
「いいよ?イッても」
 咲斗が意地悪く言う。
「無理・・・足り、ない・・・・・・」
 快感が足りない。
「じゃぁ、どうして欲しいの?」
 あくまでも言わせたい咲斗は、イカないように中の指をことさらゆっくり上下させながら、響の感じるトコロをわざと突いた。
「ああぁぁ・・・!!」
 しかし指はすぐ離れてしまい、また緩慢な愛撫に変わる。その愛撫に中がじんじんと痺れ、もっと強い刺激が欲しくてもっと奥に感じたくて、中が疼いて腰が揺れるのを止められない。
 勃ち上がったものは、咲斗の服に擦れて一層に滴が流れていく。
「ね、がい・・・イれて。もっと掻き回してぇっ」
「それだけ?」
「前も、触って・・・」
「いいよ」
 甘いおねだりの言葉に満足した咲斗は響の身体を反転させ、響の望むものをあたえるべくファスナーを降ろした。
「いくよ」
 咲斗だって我慢していたらしい、雄雄しく勃ち上がったモノを今まで指が入っていたところに押し当て、一気に挿入していった。
「あああぁぁぁぁ――――っ!!」
 その質量と衝撃に、響の口からは悲鳴に近い声が洩れ、耐えていた響はそれだけで上り詰めた。
「イっちゃった?」
「あ、めん・・・なさい・・・」
 涙と涎でぐちゃぐちゃになった顔を冷蔵庫に貼り付けて、つるつるした表面に爪を立てて響は自分の身体を支える。腕や足には力が入らなくて、後は響の身体を支えているのは後ろに刺さる楔だけ。
 それを確認さすように、咲斗が腰をゆすり上げてくる。
「あぁっ・・・ひん・・・ふぁっあ、ああ、だめぇ」
 咲斗はさらに響のモノを扱いていく。後ろから揺すり上げられ、前も刺激された響のモノはすぐに硬さを取り戻し勃ちあがってきた。
「はぁ、ん・・・あん・・・さ、きとぉ・・・っ」
 後ろも咲斗のものを締め付けるように、うごめいていく。
「響」
 その中の動きに気を良くした咲斗は響の肩に優しくついばむようなキスをする。
「動くよ」
「まっ、ああっ―――ん、いっ・・・・・・」
 響は顔と胸を冷蔵庫に押し付け、腰だけを咲斗に突き出すような体勢で、後ろから激しく咲斗に攻め立てられる。
 ぎりぎりまで抜き出されては奥までたたきつけられて、指ではとどかななかった奥まで咲斗を感じる。さらに感じるところを攻め立てられては、ひとたまりもなかった。
 響はすぐに高みへと追い立てられて。
「あああぁぁ、ダ・・・メェ・・・も、ああ・・・」
 前を触られていないのに響のソレは限界まで勃ちあがり、反り返っている。
「イク・・・・・・もう、いいっ・・・あぁぁ・・・・・・っ」
 咲斗が響の腰に手を添えて一層激しく打ち付け来る。
「ああぁぁっ・・・ひぃ―――ん、もう、イ、クッ・・・・・・っ!」
「いいよ、一緒に、いこ」
 咲斗の声も感じているのか、擦れている。その声に反応したかのように、ぎゅっと締まる。
 そして、仕上げとばかりにソコを思いっきり突かれた。
「ヒィッ、あああぁぁぁぁぁ――――っ!!」
 響が白濁を飛び散らかした瞬間、咲斗も奥に己の欲を吐き出した。その感覚に響の背中が震え、咲斗が中から出て行くと、支えを失ったその身体はその場に崩れ落ちた。
 一瞬意識が軽く飛びそうになったが、頬に押し付けられた冷蔵庫の冷たさがなんとか意識を繋ぎとめる。
「大丈夫・・・?」
 そんな言葉を言うくらいなら、多少手加減して欲しいとは思っていても今は億劫すぎて口を開く気にもなれない響は、ただ黙って目を閉じた。
 今はまだ、この冷蔵庫の冷たさに浸っていたい。そう思ったのに。その時、チャイムの音が鳴った。由岐人が迎えに来たのだ。
「あ」
 ―――――まずい。
 咲斗は自分の姿を見ると、スーツは着乱れぐちゃぐちゃで、さらに響のモノで汚されている。
「早く、着替えて、来い、よ」
 その様子に息も絶え絶えの響が言った。こないだみたいにいきなり入って来られて、こんな状況を見られるのは耐えられない。
「あんま遅いと、入ってくる、から」
「ああ、それは大丈夫。合鍵取り上げたから」
「そう、なの?」
 それは、良かった。とりあえずほっとした。
「うん。だから待たせても平気だから、ベッドまで運ぼうか?」
「いい、シャワー浴びたいし・・・」
 響の身体は、咲斗以上にもっとぐちゃぐちゃだった。Tシャツは自分が飛ばしたもので汚れているし、前もぐちゅぐちゅに濡れている上、後ろからは咲斗のモノが腿を伝って流れ落ちてくる。あの状況で突入したから仕方のない部分もあるけれど、ホントにゴム使って欲しいと響は切実に思う。
 けれど咲斗はその姿をまったく違う印象で見ていた。
 ―――――色っぽすぎる・・・
 その姿は目に毒、しかも猛毒だった。咲斗は今出したばかりの自分のモノがまた熱くなってくるのを感じる。もし由岐人のチャイムが無かったら間違いなく2ラウンド目突入していただろう。
「な、に?」
 いつまでの動かない咲斗に響が問いかけると、咲斗はにやりといやらしく笑う。
「そのままの姿でそこに縛り付けていたいな」
「はぁ!?ふざんけな!!」
 その言葉に、ぐったりしていた響も流石にキレた声を出す。
「だって、凄い色っぽい・・・」
「さっさと、着替えて行けっ!!」
 響は咲斗の言葉を最後まで言わさず怒鳴った。ちょうど、の時、再度チャイムが鳴ったのも幸いして、咲斗は慌てて着替えに行った。
 その後ろ姿を眺めながら、響はため息をついた。
 ―――――色っぽいってなんだ!?男に言うセリフじゃねーつうの
 ただでさえいきなりのセックスでぐったりなのに、咲斗の言葉でさらに気力を奪われてしまった響は、気持ち悪くて早くシャワーを浴びたかったのに、まだ動く気力が取り戻せずその場でしばらくボーっとしていた。
 そのままずるずるとフローリングに寝転がっていると、着替えが終わった咲斗が戻ってきた。
「じゃぁ、行ってくるけど、本当に大丈夫?」
「・・・大丈夫」
 心配してくれる気があるなら、朝っぱらからこんなとこでしないでくれ!!と思いっきり叫びたかったが、今の響はその気力もなく、仕方が無いので思いつくだけの文句を心の中でぶちぶちと言う。
 が、所詮心の中では咲斗には聞こえない。
「じゃぁ行ってきます。帰ったら続きしよーね」
 ―――――はっ!?
 咲斗は笑顔で鬼にような事を言うと、その足に鎖をきっちりはめて、その頬にキスをしてから上機嫌で出かけて行った。響が我に返ったときには、既に咲斗はエレベーターの中。
 ―――――っ帰ってくるなっ!!!
 一人取り残された響の心からの叫びは、当然咲斗には届かなかった・・・





next    top    novels