嘘 3
最寄り駅について、俺は電車を降りて階段を降りて改札を通り過ぎた。出口に近い場所に乗っていた冬木達はどうやら先に―――――――― 「あ・・・」 行ってしまったんやろうと思ったら、駅前のレンタル屋さんの前に電話をしている東城がいた。冬木の姿が見えへんけど、中かな。二人でなんか借りて帰るんやろか。 東城は何かを話しながら笑顔を浮かべていて、俺はその前を通り過ぎながら一応会釈なんかしてみると、・・・なんや、にやぁ〜って笑って手を振ってきた。 な、な、なんなんやろ。 そんな嬉しい電話相手なんやろか。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 !!!もしかして!? 電話の相手って圭ちゃうやんな!? 俺は思わず東城を振り返ると、丁度電話を終えて中に入ってくところ。その姿を見て、確かめたい!!という強い衝動に突き動かされるねんけど、もしちゃうかっらたなんや墓穴やし。 ど、どーーーーしよっ!!! 俺は迷い迷いしながらも、ひき戻る事は無くて、ものっすごいゆっくりやけど前を向いて歩き出した。 で、でも!!! もし圭やったら。 いやいや、東城がそんな人の事チクったりするわけない。そうや、そんなんするわけないわ。 うん、うん。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ほ、ほんまに!? も、もしかしたら、面白半分とか、なんかあの2人の事やから協定とか結んで、なんかあったら教えあってるとか、・・・・・・否定出来へん!!! あぁ〜〜〜〜!!! どっちや、どっちなんや!!!やっぱり聞いてきたら良かった。 でも、ちゃうやん!! 俺別にコンパって知ってて行ったわけちゃうし、行ったらそうやったってだけやし、しかもなんか俺に気ぃーある子とか俺はちゃんと放って帰って来たし。 それって結構あれやん、男らしいって感じやん? そ、そうやん・・・な。うん。 そんなドキドキしたり、慌てたりする事無いやんな。 やましい事なんかなんもないねんもん。・・・・・・・・・・・・ちょ、ちょっとせがまれて2人で歌歌ったくらいやん。 でも、東城が、そ、そんなんまでは知ってるはず無いっ。 いや・・・・・・・・・冬木がなんかの弾みで話してる可能性も、ゼロとはちゃう。 ゼロとはちゃう!? ・・・・・・・・・ゼロとはちゃうが・・・ 可能性は低い。うん。 ・・・・・・・・・・・・・・・けど。歌とか、一緒に歌ってるんは、マズかったかな? ううう・・・、どうしよう〜俺!!! 「あ・・・」 悶々とグダグダと悩んでるうちに、家に――――――着いてしもた。 ど、どうしよ・・・ 俺は思わず門の前に立ち尽くしてしまう。けど、いつまでもそうしてるわけにはいかへん。ずっと立ってたら変に思われるし、それこそめっちゃ怪しいやん。 な、なんもないのに!!! そ、そうやん!!! よ、よし!! 大丈夫や、俺!! 俺は意を決して(って意を決するのも変やねんけど)、ドアを開けた。 「た、ただいまぁ!!」 大きな声で言って、俺はとりあえず部屋着に着替えるべく上にあがろうと階段に足をかけたところで、圭の足音が聞こえてきた。 「あ、着替えてくるわ」 俺はやましくないねんから、圭の顔をちゃんと見てそう言った。 したら、なんか圭の顔がちょっと、ん?ってなったけど、――――――なに!? 「早かったですね」 「・・・・・・え?」 「もっと遅くなるのかと思ってましたよ。―――――楽しかったですか?今日」 手にしてた鍵がガシャンと音を立てて床に落ちた。 今、なんと? 「そ、そ、そ、そんな事あるわけないやろ!!!」 心臓がエグい音をたてて噴火寸前に唸りを上げた。 「そうですかぁ?・・・でも―――――」 「で、でも!?」 ふっと俯いた圭の視線が、遠慮がちに俺に向けられて、今日の事が圭を傷つけたのだと嫌でもわかった。 普段滅多に見ないそんな暗く悲しそうな顔を、俺がさせてしもたんやろか。 「いえ・・・、ただ今日の集まりを楽しんでたって」 東城のアホーーーーーーー!!!!!! 「ちゃ、ちゃう!!」 「――――」 「ちゃうやん、そんなんちゃうって。全然ちゃうやん!!行ったらコンパやってんって。俺が頼んだわけでもないし、それ知ってて出かけたんちゃうって」 「・・・・・・そうですか」 「そうやでっ。アキが勝手に」 ああ、どういえばええんやっ。 「それに俺、適当に切り上げて帰ってきてんで?お、俺だけちゃうやん、冬木もおったし」 「譲くんも?」 「うん。俺も冬木も知らんくって」 「ええ」 「行ったらそういうことでっ」 「そうですか。大体わかりました」 なるほど、と頷いた圭に俺はパニック寸前の頭をなんとか落ち着かせて、ほっと胸を撫で下ろした。 良かった、誤解は解けたらしい。 「ナツと譲くんは、青木君に誘われて出向いたら、そこには女の子もいて、コンパがセッティングされていた、と」 「う、うん。そう」 そうやで。そうそう。だからな、俺はなんも悪くないで。 「それで?」 えぇ!? 「そ、それでって、それだけやん」 「それだけって事は無いでしょう?」 「な、なんでやねん。それだけやって。6人でカラオケ行って歌っただけやん」 「へー6人でカラオケ、ねぇ。歌っただけ?」 そう言って俺を見る圭の瞳が、なんかもう全部知ってるんだけど?って言ってて、ものっそ冷たくて、見透かしてて、俺はもう生きた心地無し。 まったく無し。 あぁ〜、俺のアホーーーーっ。なんで、なんであの時っ。 「ナツ・・・?」 「い、一曲だけ!!」 もう俺は観念して、両手を合わせて高く掲げて頭を下げた。 「・・・・・・」 「デュエットしてもーたん」 「一曲」 「うん」 僅かばかりの沈黙に俺はもう耐えられへんくって、恐る恐る視線を上げると、圭がしょうがないなって顔でため息をついた。 「それで全部ですね?」 呆れたような苦笑が、俺の知ってるいつもの圭の顔で、俺はもうほっとしてうれしくなって、首の骨がおかしくなったみたいに、カクカク何度も頷いた。 「そんなに振ったら、バカになりますよ」 いい、いい。圭が許してくれるんなら、アホでもバカでもなんでもええ!! 「とりあえず、着替えて来たらどうですか?」 「う、うん!!」 やった。許してくれた!! ガバって顔上げて圭見たら、ニコニコ笑ってくれてる!! そーやんそーやん。俺はなんも悪くないし、素直に白状したし、怒られるわけ無いやん。るんるんやん。 「ご飯は!?」 「ちゃんと用意してますよ。でも、まだ早いでしょ?」 「でも腹減ったのにーっ」 俺はもうウッキウキしながらそんなこと言って、部屋に戻ってスッキリ〜って気分で夕飯なんやろーってワクワクしながら服を脱いで、楽ちんTシャツに手を伸ばした時。 ガチャって扉の音がして。 「け、い?」 音に振り返ったら、圭がいた。 「はい」 笑顔。 「えーっと、何?」 笑顔なんだけど。 「夕飯までには、時間がありますので」 「うん」 確かに、まだ5時過ぎで、いつも6時半ごろからの夕飯にはちょっと時間があるけど。 だから? 「お仕置きを先にしようかな、と」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 お、し、お、き? お仕置き!? 「なんで!?」 なんで!? 「コンパでデュエット。当然でしょう」 圭はそういうと、俺が逃げる隙も言い逃れる隙も与えず、忍者みたいに一瞬で俺の傍に来て腕を掴んで、着ようと思って手にしていた楽ちんTシャツを投げ捨てて、よくわからない早業で。 ドサって音がして。 俺は気づいたら、ベッドに仰向けに押さえ込まれてた。 なんでやーーーーーーーーーー!!! |