第零話 逃亡

0.4:夜道


北へという大雑把な目標の中
ボクはただ歩き続ける
街の中心、民家それすらが歴史ある建物のような古風な住宅街
そこへたどり着くにはもう夜も遅くなっていた
ボクは、博士からもらったキーホルダーを握り締めながらただ歩く

「博士・・・」

と、ボクが思い出すように呟いたときだった
ボクの中の何者かがボクの意識を支配していった

「おい、そこのお嬢さん」

半分意識が朦朧としていると
若い2人組みの青年が近寄ってきた

「おじょうちゃん、こんな夜中に危ないぜ」

2人組は下卑た笑いをうかべながらワタシを呼び止めた

「そうだね」

ワタシは今の気分を邪魔する声に冷たい口調で返し
何事も無かったかのようにまた歩き出した

「ねぇ、おじょうちゃん。いいことしてあげるからこっちへおいで。」

2人組の一人がそういった

(全く、うざいったらありゃしないわ。軽く相手してあげるわ。)

「いいわよ」

2人組はうっすらと笑いを浮かべワタシに近づいていった。

「じゃ、じっとしててね」

2人組が同時にボクの服に触れた。
ワタシは抵抗もせずに2人組の手を許した。
一人が押さえつけもう一人が服を脱がそうと手を伸ばす
その行動一つ一つがあまりにもおろかにみえワタシはつい笑みを浮かべる
そして2人組が同時にワタシの肌に触れた時。
片手で2人組を持ち上げワタシはもう片方の手でキーホルダーをかざした

「飽きたわ。お遊びは終わりよ。」

ワタシがキーホルダーを2人組にさらに近づけると
するとあたり一面に強い光が発生し、塩酸水でなにかを溶かした時のように泡を立てて消えていき
新たなキーホルダーに代わる。
キーホルダーからはふわりと二人分の血液が水玉模様のように空中で一度とどまり
ゆっくりと下降し、池を作っていた

「これが博士がくれた宝物の一つ。こんな愚かな者へ使うのも嫌だけど
いい実験台になったわ。
そうそう、声はワタシにしか聞こえないけど、人間としての感覚はのこっているわ。
ちゃーんとおなかも空くし、キーホルダーに針を刺すと痛みだって感じるわ。
ただ、動けないけどね。
あら、雨が降ってきたわね、貴方たちのような変態のために
胸ポケットにでも入れてあげようかしら
長い時間口の中に水が入り込むからそれどころじゃないだろうけど。
密閉されてるからそれどころじゃないかもしれないわね?
まぁ。空腹でそれどころじゃないかもしれないけど。ふふっ。」

ふっと意識を元に戻すとカタリと物音がした

「いけない!追っ手が来るわ」

ワタシはつぶやくと路地裏へと逃げ込んだ。
こっそりと覗くと警察官が数人と救急車数台
そしてなぜか消防車数台が現場へとたどり着いていた

「雨だわ。あったかい場所がほしいわね・・・」

ワタシは捨ててあったダンボールで屋根を作り
古雑誌と古新聞の毛布でその場で一眠りすることにした



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