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第一章 第一話



 月曜日である。夜明けから二時間程度は経っているのだろう。朝日が眩しい。
 だが、俺はまだ寝ている。動けないのだ。
 この時期、布団の中は最高だ。睡眠の魔力しか感じない。
 そんなものが本当にあるのかどうかは知らないけど。

「んぅ、もう少しだけ夢を見させてくれ……」
「駄目よ、悠真。起きなさい」
「……ハッ!?」

 それは聞き慣れた声。
 だが同時に、俺の心を切り裂く恐怖でもある。
 目を開けると逆さに映る見慣れた顔……その表情は非常に険しい。

 でも基本的に、こいつは可愛い女子の部類に入る。
 まず顔立ちが良い。
 見慣れてるせいもあるのか、とにかく俺の好みをすべて満たしている。
 喋らなければ。

 黒髪に近い茶色い髪も綺麗だし、髪型も好きだ。
 いつも身なりは整ってるし、少し冷たい印象はするけどしっかりしているところも助かってる。
 喋らなければ、なお良い。

 胸のサイズは多少改善を要するところだが、触ったことはないが柔らかそうでいい。
 一緒にプールに行ったときは、平静を装うのに苦労した記憶がある。
 全体のバランスを考えれば文句のつけようがないと言えるだろう。
 お前本当はいい女じゃないのか? 喋らなければ。

 心なしか顔が赤くなってきたような気もするが……こいつ、まさか俺の心を!?

「……思っていることは口に出さないほうが良いわね」
「あ、はい」
「さっさと起きなさい。遅刻は許されないわ」
「し、志穂ぉ……お、おま、何故ここに……」

 言い忘れたが、こいつの名前は仲川志穂(なかがわしほ)。いわゆる幼馴染だ。
 幼稚園の頃から俺の個人情報をしっかり握っている数少ない人物。
 近所に住んでいるというだけで、人間ここまで厚かましくなれるものだろうか。

「忘れてるのかも知れないけど、ここは俺の部屋」
「だから何?」
「……」

 こいつ、全く動じない。昔からこうなんだ。
 どこか甘美な響きを伴う幼馴染とは程遠い、まるで管理人……そう、ビルやアパートの管理人さんって、こんな感じじゃない?
 問答無用で俺の領域に入り込み、涼しげな瞳で蹂躙する。

「ですから、ここは俺の――、」
「おばさんから入室許可はもらっています。むしろアンタのこと、好きにしていいって」
「好きにしていいって……いやいや、ちょっと待とうよ。明らかに越権行為だろ!?」
「んー、そうかしら?」
「そうに決まってんだろ。例えば俺が明日の朝、お前の部屋に居たらどうすんだよ!!」

 我ながらとんでもない喩えだが、ほんの少しだけこいつの動きを止めることに成功した。

「悠真が私の部屋に……? それは許されないわね」
「だろ! だよな!? だったらお前のするべきことは一つだ。今すぐ回れ右をして俺の部屋から……あ、あれ? 何をなさるので」

 すると志穂は少し考えてから、逆さになったまま俺の両肩を押さえつけてきた。

「でもまあ、その時はこうするでしょうね」
「え、あの、動けないんですけど」

 さらに志穂は体を翻し、よいしょと言いながら俺の腹の上に乗ってきた。
 逆さだった顔が正面から俺を見つめている。
 髪が揺れていい匂いが降り注いでくる。

「あ、あの……!?」
「不法侵入と寝坊、どっちが重い罪かしら」
「比べられないと思うけど……」
「じゃあ私の勝ちね。優しく起こしてあげる」

 降り注ぐ甘い香りに惑わされ、志穂の笑顔をぼんやり見つめていると、不意に下半身が反射的に跳ね上がる。

「あら」
「ま、待って……見るな! 見ないでえええええぇぇぇ!!」
「何をいまさら」

 志穂の柔らかな手のひらが俺の股間の膨らみに、静かに添えられていた。
 そして意地悪な瞳のまま、彼女は俺の目を見ながらゆっくりと手を動かしてみせた。

「はぅぅ!!」
「相変わらず敏感ね。朝は特にそうなっちゃうのかな?」

 志穂の手のひらがゆっくりと上下に滑るたび、小さく喘がされてしまう。

 可愛い、可愛いんだ……

 制服姿の志穂は、やっぱり可愛い!

 幼馴染だとかそういうのは抜きにしても、いや幼馴染だからこそ興奮するのかも知れない。
 俺が感じるところを見透かした上で、焦らすように、優雅な手付きで股間をギュッギュと刺激してくる。
 時々指先を曲げて亀頭の溝を擦るようにされると、本当にどうしようもなくなってしまう。

「悠真、気持ちいいんだ」
「は、ひゃい……!」
「ほら、もう従順になったみたいよ」

 うっとりする程の甘い刺激を与えられながら、綺麗な顔立ちの志穂に見つめられていたら、どんな男でも従順にされてしまうだろう。
 ドキドキはずっと続いたままだし、彼女は俺の悶える姿を見て少し興奮しているようにも見える。

「くぅ、く、そぉ……朝からなんで、こんな辱めを!」
「ふん、気持ちいいくせに」

クニュウウウッ!!

「う、うますぎる……あああぁぁぁ!!」
「その声、好きよ」

 硬くなりきった棹を、まるでピアノでも弾くように志穂の指が軽やかに踊る。
 が、我慢汁……これ絶対にやばいやつだ。

「う、あっ、あああ~~~~それええええええええええええ!!」

 こちょこちょと、人差し指と中指が交互に俺自身をくすぐり続ける。
 こんな刺激を繰り返されたら虜になっちまう!

「恥ずかしい声。もっと聞いていたいけど……」

 志穂の顔と、空いている手のひらが俺に迫ってくる。

「ふぐうううぅぅ!?」
「こういうふうにされるの好きだもんね? 悠真」

 口元を志穂の手のひらで覆われ、俺はさらに悶絶した。
 呼吸を、喋ることすら封じられ……ペニスは妖しげな刺激にさらされている。
 幼馴染が起こしてくれるシチュとしては最高、い、いや! これは流石にやりすぎだろう。

「ほら、興奮してる……ドキドキドキドキ♪」

(ふあ、あああぁ、しほぉ……しほおおぉぉ!!)

「ふふふ、なぁに?」

 優しい笑顔。たまらない……また我慢汁がドプドプ溢れてりゅううう!
 口を抑えられ、ペニスを嫐られ、俺は悶え続ける。
 心の中で志穂の名を連呼しながら悶えるしか選択肢がなかった。

 それから数十秒後、口元に置かれていた手のひらが離れ、Tシャツの下へ潜り込んできた。
 志穂の手のひらが俺の右胸をサラサラとなでながら、乳首を探り当てた。

「幼馴染として、寝坊したらどうなるかをキミの体に刻み込んであげないとね」
「ま、まって……しほぉ、気持ちよすぎて、腰が……」
「へぇ、それは大変ね」

 小悪魔のような微笑みと同時に、志穂の指先が動き出す。
 左手は俺の右の乳首をかき鳴らし、右手はペニスを弄ぶ。しかも今度は――、

くちゅくちゅくちゅっ♪

「あ、あっ、ああああ!」

しこ……しこしこ、くちゅくちゅくちゅんっ!

「いぎひいいいいいいいいいい!!」

 甘すぎる刺激に腰が跳ね上がり、口からは涎と喘ぎ声が飛び出す。
 足の先までピンと張り詰めて、恥ずかしい顔を志穂に見られて、しっかり見られてるうううう!

「見ないで、志穂っ! はずかしい、はずかしいからあああ!」
「だから何? もっと恥ずかしくなって見せて」

クチュクチュクチュ、クニュクニュッ!

「ひゃうっ、それっ、それだめえええええええ!!」
「ほらほら、もう後がないわよ」

 いつの間にか俺の手は無意識にシーツを握りしめ、目は堅く閉じている。
 それなのに与えられる刺激はますます甘く弾けて、瞼の裏には志穂の顔しか浮かんでこない。

「ほら、こっちを見て? 悠真……」
「えっ」

 どこか優しく感じる彼女の声に、一瞬気を許してしまう。
 そして目を開けて彼女と視線が交差した瞬間、

くちゅううううううううううううううううっ!!

「あ、ああっ、ああああ、これええ、イク、イっちまうううう!」
「イきなさい♪」

 これでトドメとばかりに、志穂が人差し指で亀頭をピンと弾いたのと同時に俺は爆ぜた。

ビュルルルッ、ドクッ、ドクンッ!!

「か、はああぁぁ!」

 射精している最中も彼女は責めの手を緩めない。

しこ、しこしこしここ……♪

「いいっ、それいいよおおぉぉ!」

 悶える俺を両手で押さえつけながらの愛撫は、さらに数分間続いた。



「はい、終了」
「あ、ああぁぁ……」
「早く顔洗ってきなさい。週の始めから遅刻とか私が許さないから」

 後始末を終えた志穂が俺に言う。
 弱みを握られたような気持ちのままで、俺は彼女に言われた通りにフラフラと体を起こした。



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