――次の日。
僕はベッドの上で両手を交差したまま動けなくなっていた。
「こ、これけっこう締め付けが凄い……」
「ふっふー、動けないでしょ。思ってたより強力?」
覗きこんできたのは優美ちゃん。昨日に引き続き楽しげな表情だ。
「うん……でも本当に僕が『やめて』と言ったら、すぐ解放してくれるんだろうね?」
「もちろんよ、おにーちゃん。約束したでしょ?」
「それならいいけど……」
◆
――話は数分前に遡る。
僕は自室のベッドで一人、赤ん坊のようにうずくまっていた。
「ああ、優美ちゃん……ぅうぅ」
自分でもいけないことだってわかってる。親戚の、しかも年下の女の子を思ってオナニーだなんて異常だ。
昨日彼女が僕をくすぐってみせたのは性的な衝動ではなくて単なる遊び。
自分にそう言い聞かせたつもりなのに、体のほうはまだ優美ちゃんの指先にくすぐられることを求めてる。
細くて柔らかい指がゆっくりと体を這いまわる感覚が残ってる。
白くて長い脚が伸びて、かかとがズボン越しにペニスをノックしてきた感触が忘れられない。
ああぁ……優美ちゃん、優美ちゃん、優美ちゃ…………
ガチャッ。
「おにーちゃん♪ 今日も来ちゃった」
突然ドアが開いて、満面の笑みを浮かべた美少女が無許可で入室してきた。
「えっ、本物っ! ゆゆゆ、ゆ、優美ちゃあああぁぁん!?」
「そんなに慌ててどうしたのぉ……」
「なんでもないんだ! 気にしないでッ」
毛布をかぶっていたことと、体がドアの方を向いていなかったのが不幸中の幸い。
もう少しで無様な姿を彼女に見せるところだった。
急いで身づくろいをして優美ちゃんのほうに向き直る。
「あのね、今日は王様ゲームしよー?」
「な、なんだってー! どこでそんな危険な遊びを覚えてきたんだ……」
優美ちゃんは不思議そうに僕を見つめている。
そうか、王様ゲームとは名ばかりの別のゲームかもしれないな。
「ルールはねー、じゃんけんして5回連続で勝った人が王様~」
「くじ引きじゃないのね。でもそんなの勝負つかないよ……?」
脅かしでも何でも無く僕は純粋に面倒くさいと感じていた。
その回数を連勝する確率は極めて低い。
「じゃあ~、おにーちゃんが5回連続で負けて?」
「それはべつにいいけど……って、ちょ、ちょっと待って! 王様ってことは何か相手にさせることができるの?」
危うく大事な部分を確認せずに勝利を捧げてしまうところだった。
「もちろん。おにーちゃんはぁ、あたしのいうこと何でも聞かなきゃダメー!」
こちらに向かってVサインを出す優美ちゃん。
すでに勝たせてもらう気でいるんだな……ソッチがその気なら!
「わざとなんてつまらないでしょ。本気でやるさ」
「えー」
「僕はじゃんけん強いんだよ? じゃあはじめようか」
王様ゲームとやらがスタートした。
――そして数分後。
「おにーちゃん意地悪! なかなか勝負がつかないよ~」
「だから言ったじゃない」
予想通り勝負の行方は見えない。たまに4連勝までならいくんだけど。
(あと何回か続ければあきらめるだろ……)
そんなことを目論んでいたのだが、じゃんけんを再開する直前に優美ちゃんがささやいてきた。
「ねえねえおにーちゃん? あたし次はグーを出すよ?」
「マジか」
その言葉通りグーを出す優美ちゃん。僕はパーを出して当然勝つ。
「次はパーを出そうかな」
「嘘だろ……」
そしてまた僕の勝利。
「次はチョキね」
「……」
僕の勝利。優美ちゃんが何を企んでいるのかわからないのが怖い。
「ぶー! これで三回連続負け!!」
「そりゃそうだよ。なんで先に答えを言っちゃうの?」
「おにーちゃん……あのね……」
その質問を待ってましたとばかりに、優美ちゃんが身を乗り出してきた。
(このあと全部あたしに負けてくれたら、こないだの続きしてあげるヨ)
いたずらな一言に背筋がゾクッとした。
「なっ、続きって何のこと!?」
「えへへ……続きは続きだよぉ♪ きょうはどうやってコチョコチョしよーかなぁ……」
彼女が僕の目の前で両手を握ったり開いたりしてみせる。
自然に指先に注目してしまう。
(ずるい……! そんなことを言われたら僕は……あぁぁ、あの指にまた……)
ゴクリと唾を飲み込む。
無邪気な誘惑に対してどうするべきか迷う。
じゃんけんにわざと負ける口実を彼女は僕にくれたのだ。
このまま負けてもいいし、負けなくても良い。
でも見透かされてる気がする。
そこまで深く考えてのことじゃないかもしれないけど。
「次はグーを出すよー。じゃあいくよ、じゃーんけーん、ぽいっ!」
彼女の手が元気良く振り下ろされた。
◆
かくして僕は5回連続で負けてしまった。
王様となった優美ちゃんからの命令は、両手をガムテープでグルグル巻きにされたままでくすぐりに5分耐えることだった。
「準備完了! おにーちゃん動いてみてー」
「ぐぎぎぎ……」
「あはっ、イモムシさんみたーい。ちょっとカワイイかも?」
本気でちぎろうとしてもビクともしない! しかも優美ちゃんは紙テープじゃなくて布製のガムテを使いやがった。
引っ越しなどで使うためのものだから強度が桁違いだ。
「うくっ、だいたいなんで僕は裸なの!?」
「だっておにーちゃんが自分からシャツを脱いじゃったから……」
「ぅ……」
これは僕のミスだった。
命令された時、なぜか自然にシャツを脱いでしまったのだ。
「えへっ、でもあたしはそのほうがくすぐりやすいけど」
「はっ、やっぱり服を着るッ!」
「ダ~メ!」
どすっ。
優美ちゃんが馬乗りになってきた。
仰向けに押し倒されたまま下から彼女を見上げる体勢。
「今からじゃもうお洋服を着れないでしょ? このまま5分間コチョコチョしてあげるぅ」
言葉よりも早く、指先がワシャワシャと蠢きながら迫ってくる!
優美ちゃんの指の動きを見てるだけでお尻の奥がムズムズして拒否したいのに逃げられない。
触手に犯されるゲームの主人公ってこんな心境なのかも。
「ちょ、ちょっと……あ、ああぁぁぁ!」
ぴとッ♪
妖しく微笑む優美ちゃんを制止しようとしたけど無理だった。
彼女の指先が僕に触れてしまったから。
「昨日ぶり~♪ 元気にしてた」
「あ、あああぁぁっ!」
指先がくにゅっと触れただけで悶絶しそうになる。
まだ全然くすぐりは始まっていないのに……。
「えへへ、いい感じで敏感になってるよぉ……今日は優美も本気出しちゃうよ!」
「ほ、本気って……」
「うん。昨日は様子見だったの。おにーちゃんがくすぐられるの平気な人かどうか試しただけ」
「そんな……」
あれはお遊び程度だったというのか。
こちらはトラウマになってオナニーしてしまうほど体中を犯されたというのに!?
くにゅくにゅっ♪
「おっぱい可愛いい~、ちょんっ♪」
「んはあぁぁ!」
優美ちゃんの人差し指が真上から乳首を押しつぶしてきた。
まるでボタンでも押すようにグリグリと何回も!
「んあっ、なんで……ふああああぁぁ!」
「えいえいえいっ!」
首を左右に振ってイヤイヤする僕を見ながら、優美ちゃんはしつこく何度も乳首をクリックしてくる。
反対側の手で脇腹を優しく撫でながら、僕に反撃する力を与えてくれない。
(み、見られてる……!)
もがき苦しむ僕をじっと観察している彼女の視線。
驚くほどクールな目で、優美ちゃんが僕を見下ろしている。
うっすらと笑いを浮かべて、次はどこを責めようか考えてる……。
じっとりと体の表面に汗が浮かび上がる頃、やっと乳首を支配していた指先の感触が消えた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
「あはっ、本当に感じやすいんだ……これはちょっと我慢強くならないと生きていけないね、おにーちゃん」
そんなことを言いながら優美ちゃんは僕をの体を起こしつつ背後に回った。
「じゃあ昨日の復習からしよーね?」
「えっ……まさか!」
両腕を固定されて動かせない僕を抱きしめながら、優美ちゃんは小さな両手で胸板をくすぐり始める。
「上から下へ~、下から上へ~♪」
ちっちゃな手が僕の視界の隅から隅まで動きまわる。
「ひいっ、い、いやあああぁぁっ、あああぁぁ、ひいいいい!」
十本の指を僕の肌に立てるようにおいて、そのまま愛撫……まるで十本の筆先が体中を這いまわるような感覚。
「もがいても逃さないよ、おにーちゃん」
あまりのくすぐったさに思わずジタバタしてしまう。
それでも彼女の手が離れてくれない!
まとわりついたまま立て続けにくすぐったいポイントを容赦なく刺激して、僕をますます狂わせる。
「はひっ、ああ、あががが……」
「たまぁ~に、コリコリきゅっきゅっきゅ♪」
「ぎひぃぃぃっ!」
呼吸が整わなくなってきたところで、急に鋭い刺激。
乳首を強めにつねられ、優しく転がされてから再び引っ張られる。
僕の体が刺激によって硬直すると、優美ちゃんはやさしいタッチで筋肉を緩ませる。
そして再びくすぐったいポイントを何度もツンツンしてくる。
「おにーちゃんってだらしなーい! まだ柔らかタッチだよぉ?」
「ぅ、うそ……ぉ……!」
「ここからがホンバンってこと!」
ペロペロッ……
優美ちゃんが僕の顔を抱きしめて、首筋を軽く舐めあげる。
もはやそれだけでもくすぐったい。
さらに背後から細長い足が伸びてきて、僕のおへその辺りで交差する。
「集中責めいくよ? 優美の指をずっと見ててネ……」
「うっ!!」
思わず体が震える。
優美ちゃんの親指が脇の下にそっと配置された。
そして左右合計8本の指たちは左右の乳首に狙いをつけて――、
「おにーちゃん、頑張ってー!」
こちょこちょこちょこちょこちょこちょ♪
「わひっ、ふがあああぁぁっっ、ゆひ、ゆみひぃぃ!」
今までで一番のくすぐったさに数秒も経たないうちに悶絶する僕。
その体を両手と両足でガッチリと拘束したままくすぐり続ける優美ちゃん。
「きゃはははは、おにーちゃんサイコー!」
僕の体中に湧き上がった汗に指先が滑る。
それがますますくすぐったさを増して、呼吸することすら僕に許してくれない。
このままでは無邪気なくすぐりテクニックに発狂してしまう。
「ひゃが、ああぁっ、ゆ、みちゃ……」
枯れた声で名前を呼ぶと、魔性のくすぐりが一時停止した。
「んふふ、思ったよりも可愛いお声♪ もっともっと大きな声を出させちゃうもん。その前にぃ……」
優美ちゃんは僕の後ろでモソモソと何かを取り出そうとしている。
「おにーちゃん、アーンして?」
「ん…………ん、んうううぅぅ!?」
言われるがままに口を開けると、小さな布切れのようなものを突っ込まれた。
「ハンカチとかタオルがなかったからこれでいいよね? うふふっ」
(まさか、これ……!)
布切れの正体を瞬間的に想像したおかげで、ペニスが一気に膨れ上がる。
「これで大きな声を出しても平気でしょ? 息もできるはずヨ」
困惑する僕を放置して、再び彼女のくすぐりが始まった。
こちょこちょこちょこちょこちょ~~♪
「んぶううっ、んんんん、んー!!」
さっきよりも更にくすぐったい! もはや我慢できず両手の拘束を外そうと必死で腕に力を込めるけど、全然剥がせない。
「おっぱいとおへそだけクーリクリ♪」
今度は人差し指だけで僕を責めはじめる優美ちゃん。
特におへその縁をなぞられると、なんとも言えないくすぐったさが滲み出てくる。
「おにーちゃんっておへそ好きなんだ? へー、じゃあもっとホジホジしちゃう~」
「んぐ、んー!(違う、やめて!)」
優美ちゃんは両手を乳首よりも下、おへそ周辺の集めてからいっそう激しく指を動かし始める。
カリカリカリッ
「んふひいいぃぃ!」
「きゃはっ、おにーちゃん悶えてるぅ! でも今度は脇腹もくすぐっちゃうよ」
おへそをクニクニ押し続けていた指が浮き上がって、ちょうど腰のくびれ付近を這いまわる。
ここは指で抑えられてるだけでもモジモジしてしまい、くすぐったくなる場所!
もちろん彼女は容赦なく何度もそこを責めてくる。
「んっ、んんんんー!!」
「骨と骨の隙間をツツツーって……んふふふふ」
次に昨日と同じく肋骨のあたりを丁寧に指先でなぞってきた。
くすぐったいのはもちろんだけど、次にどうやってくすぐられるか想像してしまうと我慢できなくなる。
そして優美ちゃんのくすぐりは、残酷なほど僕にそのパターンを刷り込んでいた。
何もされてないのにすでにくすぐったい。
そして何かされればくすぐったさが加算されるというくすぐり地獄。
「手が下ろせないね? おにーちゃん、困った困った♪」
すっかり汗だくになった僕をいたわるように優美ちゃんが何度も頭を撫でてきた。
犬や猫を撫でるように何度も何度も繰り返す。
彼女自身は無意識だろうけど、年下の女の子に支配された屈辱感が僕にのしかかってくる。
優美ちゃんは正面に回ると、優しく僕を押し倒した。
ベッドに背をつけたことで安堵するまもなく、今度は彼女の小さな頭が首筋に迫ってきた。
「かわいいおっぱいとおへそとぉ……あとはここを同時にぺろぺろしちゃうのぉ……」
「!!」
「いっぱい感じてネ……おにーちゃん」
優美ちゃんの顔が少しだけ沈む。
そして首筋から顎にかけて、小さな舌先がチロチロと往復し始めた。
(あ、ああぁぁ……優美ちゃんにペロペロされてるうぅぅ!)
これだけでも極上の心地よさ。
僕の中の何かが溶かされてゆくのを感じる……。
くすぐったいのを通り越して彼女に身も心も委ねたくなってしまう。
コロコロコロ……
「んううぅぅっ!」
突然乳首を優しく転がされた。
優美ちゃんは両手を僕の胸に当てて、人差指と中指の間で乳首をきゅっと挟みこむ。
そのままゆっくりと円を描きながら、他の指も使って胸全体をくすぐってきた。
くすぐったさのせいで湧き上がる笑い声は、首筋ペロペロによって封じ込まれている。
さらに口に詰め物をされてるおかげで叫ぶことも泣くことも出来ない。
ツツツツー……
「んふ、おにーちゃん可愛いよぉ……もっとくすぐってもいーい?」
左胸を刺激していた手のひらが、ゆっくりとおへその方へと向かってゆく。
そして…………
ツプウゥッッ!
「ふぐぅぅっ!」
これは恐らく小指……細くてちっちゃい指が僕のおへそを貫いた。
そして耳かきをするみたいにおへその中をカキカキしてくるうううぅぅぅ!
「あはっ、これはちょっとキツいかな?」
あまりのくすぐったさに暴れ出しそうになるのを見計らって、優美ちゃんが体全体で僕を抑えこんできた。
「あ~~~ん……」
かぷっ♪
「ふうぅぅっ!」
首筋を這いまわっていた舌がそのまま乳首へ降りてきた。
思わずビクッと体が震えてしまう。
小さな体が正面から僕に覆いかぶさって、両足の踵を僕の膝にフックさせた。
(逃げられないいいいいいぃぃぃ!!))
両手で僕の上半身を責めながら下半身も決められてしまった。
これで優美ちゃんのくすぐり三点責めから脱出することは不可能となった。
悶えすぎて痙攣し始めた僕を無視して、優美ちゃんのくすぐりは続く。
一箇所への責めに耐性が出来かけると、また他の場所をくすぐられ休ませてもらえない。
汗でヌルヌルになった指先が僕の体の表面を這いまわるたびに体力が搾り取られてゆく。
「優美のくすぐりおててがそんなに好きぃ? 汗でいっぱい。それに体がフニャフニャになってる~」
(もう無理ッ、許してええええぇぇぇ!!)
ピピピピピピピピピピピピピ!
僕の心の叫びが通じたのか、タイマーの音が鳴り響いた。
「はい、五分でーす! おにーちゃんおつかれさまっ」
にっこりと微笑みながら僕を解放する優美ちゃん。
本当に良かった……壊れる寸前までくすぐられた気がする。
ぐったりしたままの僕は、それから十分ほど身動きができなかった。
◆
「はさみでチョッキン♪」
彼女がガムテープに切れ目を入れると、あっけなく僕の手首が自由になった。
こんな危険な遊びなら承諾するべきじゃなかった。後の祭りだけど。
「優美ちゃん……誰が王様ゲームなんて教えてくれたんだい?」
「んっとぉ、ママだよ! ママが昔やってたんだって」
「えええっ!?」
「たまにおうちでもやるんだよ。二人でコチョコチョコチョ~って」
「お、お母さんもやるの!?」
親子でくすぐりあいをしてるんだ。だからあんなにくすぐり上手なのか。
「おにーちゃーん……もしかしてママにくすぐられたいの?」
「それはない!」
「ママは優美よりもくすぐったいの上手だよぉ?」
「・・・いやいや、絶対にないからっ!!」
優美ちゃんのお母さんって、そういえばすごく綺麗で年齢も若かったような。
一瞬だけお母さんにくすぐられるのを想像してしまったのは内緒だ。
「あやしいな~……じゃあ今度はママも連れてくるからね。ばいばーい♪」
(えっ……マジですか)
意味深な言葉を残して、優美ちゃんは上機嫌で僕の部屋を出てゆくのだった。
もどる
つづく