次の日もその次の日も、この部屋に優美ちゃんはこなかった。


三日前のノリなら、連続で来てもおかしくないと思っていたのに……

何よりも困ったのが、定期的に体が疼きだすことだ。
自然に下腹部に手が伸びてしまう。

「ううぅぅ、優美ちゃん……」

まるで麻薬中毒みたいに彼女を求めてしまう。

しかもその周期はじわじわと短くなってきてる。
一昨日よりも昨日、昨日よりも今日……体の疼きが激しくなってゆくのを感じる。

優美ちゃんにくすぐられて悶えた記憶が僕の体中に刻まれてる。

可愛らしい舌先で喉元をぺろぺろされたり、乳首をいじられたこと。

細い指でおへその中をかき回されて悶絶させられたこと。

身動きの取れない状態で全身愛撫されたこと。

ダメだ……妄想に歯止めがかからない。

再び股間に手が伸びる。

新しいティッシュを二枚引き抜いたその時だった。


コンコン。


「あ、は……ふぁいっ!」

慌ててズボンを履いてから返事すると、カチャリとドアノブが回った。


「失礼します」

「優美ちゃんっ!」

待ち望んでいた少女の出現に思わず叫んでしまう。
目の前には僕のくすぐり天使・優美ちゃんが立っていた。

こないだまでと違って髪を下ろしている。
それになんとなく服装も落ち着いているように感じる。

「ご無沙汰しております」

ペコリと頭を下げる彼女を見て、軽い違和感がこみ上げてきた。


「どうしたの? そんな丁寧な言葉づかいなんていつもの優美ちゃんらしくないというか……」

普段ならニッコリ笑って僕に飛び掛ってくる勢いの彼女が妙に大人っぽく感じる。
明らかにおかしい。体調が悪いのだろうか?



「私、優美ではありません!」

「ぅぇっ!?」

少しだけキリリとした表情の彼女を見て、僕は違和感の正体に気付いた。


「あっ、も、もしかして…………!」

「やはりお忘れでしたか。優美の母です。名前は似てますけどね」

そう、彼女は優里(ゆり)さんだ。
以前彼女のご主人が亡くなった時に、一度だけ顔を見たことがあったけど……
あの時は白粉と着物姿のせいでずいぶん年上に見えたのだが。

今日はまるで優美ちゃんと瓜二つ。親だから当たり前なのかもしれないけど。
でもよく見れば顔立ちも引き締まってるし、体のラインも女性のそれとわかる。
たしか僕よりも5歳ぐらい年上だったはず…………それにしても童顔だ。

「すみません! 本当にすみませんでした! なんていうか、その……」

「その……なんです?」

ニコッと微笑む優里さんだが、目が笑ってない!

「あ、いや……お若いですね、相変わらず」

僕がやっとの思いで絞り出した言葉を聞くと、優里さんの雰囲気が元に戻った。








部屋のソファにちょこんと腰掛ける優里さんにペットボトルのお茶を出す。
今日はこの家には僕しかいないのだ。

「それで今日はどんなご用向きで……」

恐る恐る切りだすと、申し訳無さそうな表情で彼女が頭を下げた。


「先日は優美がご迷惑をお掛けしたみたいで……お詫びに参りました」

「迷惑だなんてそんな! 優美ちゃんは元気にしてますか?」


「ええ、とても。昨日も今日も『おにーちゃんに会いたい』といって大変でした」

そうか、この二日間の静寂は優里さんのおかげだったんだ。
僕に気を使ってくれたんだな。


「あの子、あなたのことをとても気に入ってるみたいで……私の言うことを聞かずに連日こちらにお邪魔してしまったようで……」

「ははは、僕は別に気にしてませんから」

むしろこの二日間は寂しく思えたほどだ。
それ以上に、優里さんにこんなに気を使わせてしまって申し訳ない。

目の前で小さくなってる彼女を見ると、本当に幼く見える。
仮に僕と一緒に街を歩いていたら絶対に妹にしか見えない。

むしろロリコン扱いされてしまう可能性だって……実際は歳上なのにね。


「優美に……何か、ヘンなことをされませんでしたか?」

その一言で、ほのぼのモードだった僕の脳内が凍りついた。
まさか優美ちゃん……家で僕のことを話したのか。


「……ヘンなこと、というのはなんでしょう?」

「あっ、いえ……あの子、何もしてなければよかったのですが……」


「…………」

気を紛らわすために僕は手持ちのペットボトル飲料に口をつけた。
かすかに指先が震えてる。


「優美は大好きな人ができると、その人をくすぐって困らせてしまうようなんです」

「な……っ!」

くすぐりが愛情表現だって……あんなのを受け続けてたら体がいくつあっても足りない。

でも心の底では優美ちゃんのくすぐりを欲している僕がいる。
どんなに呼吸が苦しくなっても、あの小さな体にのしかかられて容赦無いくすぐりと拘束を受けていたい。


スッ……

そう、このほっそりとした魅惑の指先にくすぐられて――


「はっ!?」

いつの間にか目の前に優里さんの人差し指が迫っている――!?



「優美に、こうやってくすぐられたりしませんでしたか?」

どうしていいか判らず固まっている僕に向かって優里さんは言う。

綺麗に切りそろえた爪には透明なマニキュアが塗られているようだ。

「あ、ああぁ……!」

僕より年上の優里さんの顔もさっきより近くなってる。

(やっぱりこの人、すごく綺麗だ……!)

今更だけど僕は優里さんの美しさに感動していた。
よく見ると薄く化粧をしてて、チークも可愛らしい。年齢を感じさせないメイク上手。
目のラインや唇の艶がすごく色っぽくて、何よりも優美ちゃん以上に真っ白で細い指が魅力的だ。


「失礼しますね……」

その白魚みたいな指先で、優里さんが僕の顎をゆっくりとなぞってきた。


「ああ、はぁぁ……」

ほんのりした柔らかさを感じた瞬間、頭の先がジワリと痺れた。
それだけじゃない、優美ちゃんにくすぐられたあとみたいな脱力感に包まれて――、


「やはり……あなたもくすぐられてしまったのですね」

憂いを含んだ表情のまま、優里さんは人差し指だけではなく中指をも伸ばしてきた。
長く美しい二本の指先が僕の顎を支えながらくすぐってきたのだ。

「ゆ、優里さ、あ、あふ、ぅ、ああぁぁ…………っ!」

「可哀想に。もう手遅れみたい」

顎に添えられた指先がゆっくりと左頬へとスライドしてきた。
それはあまりにも心地よすぎる感触。
白い指が触れた場所が徐々に熱を帯びてくる。

体の表面だけでなく魂までそっと撫で回されたように筋肉が弛緩してしまう。
彼女の指先は絹糸みたいな肌触りで、抗うことが出来ない。

優里さんは愛おしげに僕の顔を何度か撫でてくれた。


(まるで「魔法の指」……優里さんにくすぐられたら大変なことになる気がする……)

大げさではなく恐怖すら感じるほど彼女の指使いは滑らかすぎた。
仮にあの手のひらでペニスを包まれたら……それだけで射精してもおかしくないと思う。

そして数秒後、ようやく解放された僕は……すでに腰まわりに力が入らなくなりかけていた。


「少し触れただけで、過敏に反応してしまうなんて。優美に徹底的にくすぐられたのではなくって?」

「え、ぁ……はひぃ……」

きっと違う。
今の僕が反応してしまったのは、くすぐり後遺症のせいではない。
優里さんのせいだ……と言いたいのに、あの「魔法の指」の余韻のおかげで言い返せなかった。







僕を解放して、姿勢を正した優里さんが再び頭を下げた。


「重ねてお詫び申し上げます。優美が迷惑をかけて本当にすみませんでした」

むしろさっきまでの数分間のほうが僕にとっては刺激が強すぎて天国……じゃなかった、迷惑というか色々危険に思えた。


「優里さん、本当に僕は大丈夫ですから……」

「本当でしょうか? ずいぶんご無理をなさってるように見えますけど?」

そう言ってから優里さんが心配そうに視線を落とした。
僕の目をじっと見つめていた彼女が、今見つめているのは…………


「あ、ああぁ、これはぁ……!」

優里さんは僕の下腹部付近を注視している。
情けないことに、ズボンの上からでもはっきりわかるほど勃起した状態。
内部にシミができてるのが見えないのが唯一の救いだった。


「もしかしてさっきの…………」

「はい……」


「すでにくすぐり中毒、ということでよろしいのかしら?」

「……はぃ」

自分でもどんどん声が小さくなってゆくのがわかる。

すると優里さんが静かに立ち上がった。


「そう。昨日と一昨日はつらい思いをなさったのね……では私があなたの心と体をラクにして差し上げますわ?」

「えっ……ちょ、優里さん!?」



「……じっとしてて下さいね。すぐに終わりますから」

僕の隣に腰掛ける彼女との距離は、すでに30センチ以内だった。

優里さんは細い腰を捻って僕の方へと向き直ると、さっきと同じように両手をそっと持ち上げた。

声をあげることも出来ず、彼女の動きをドキドキしながら見つめていることしかできない。

柔らかい手のひらが僕の顔を挟み込んだ瞬間、僕の腕がだらんと垂れ下がった。

(こ、怖い…………! これから僕はこの人に……)

触れられただけで脱力させられてしまった。
やはり優里さんの手は「魔法の手」に違いない。

このまま優しく撫で回されたら理性を保つことなんて不可能だろう。

相手は優美ちゃんの母親だというのに……絶対欲情してしまう。

「フフッ、怯えないで……全てわかっています。今すぐにでも体中をくすぐり漬けにされたいのでしょう?」

「は、はぃぃぃ」

もはや自分の気持ちに嘘がつけない。素直に答えを引き出されてしまった。


「でもそれはダ~メ」

「な、なんで……ですか……」


「直接くすぐられなくても、私の手にかかれば気持よくなれますから。信じて……」

慈愛に満ちた優しい目。

微笑む彼女の瞳に吸い込まれるように、僕は自然に頷いてしまった。



「膝立ちになってくださる?」

「はぃ……」

催眠術にかけられたみたいに、いわれるがままにベッドの上で膝立ちにされる。
彼女は逆にベッドから立ち上がった。

目線の高さは優里さんが少しだけ上の状態。
その柔らかな手のひらで僕の顔を挟み込んだまま、彼女が少しだけ体重を預けてきた。

二人の顔の距離が縮まって、もはや数センチ以内となった。
少し背伸びをすればキスが出来る距離。

「恥ずかしそうにして可愛い。優美でなくてもイタズラしたくなっちゃいますね。ふううぅぅぅぅ~~♪」

不意に甘い吐息を吹きかけられた僕は、思わず膝がガクンと折れそうになった。


「あなた、くすぐられやすい性格だと思います。いわゆるM気質といいますか……女の子を強気にさせるのが上手みたい」

優里さんは柔らかく微笑みながらそう言った。

「そんなことを言われても僕は……」

「わかってます。無意識ですもんね? だからこそ罪深いのよ……」

優里さんは僕を見つめたままで、両手を動かし始める。
包み込んだ手のひらはそのままに、親指で頬骨をクリクリと刺激したり、中指を耳の穴にそっと差し込んだり……

「んああぁ、ああ~~!」

「くすぐったい? 耳の周りは誰でも感じやすいのよ」

たまらず声を上げた僕を見て、クスクス笑い出す優里さん。
その可愛らしい表情は優美ちゃんのものとは一味違う女性らしさがある。

優里さんがさらに顔を寄せる。

(あの子の代わりに私がこのまま抜き取ってあげますね……)

鼻先が触れ合う距離で、たしかに彼女はそう言った。


「優美があなたにしてくれたことを思い出してごらんなさい?」

静かな口調。
しかしサディスティックな冷たさを感じさせるそれは、まるで優美ちゃん本人からの命令のようだった。

両手で優しく顔を固定されたまま優里さんの顔を見ていると、三日前の出来事が心のなかに浮かび上がってきた。

優美ちゃんの指先でくすぐられて、悶えた体を弄ばれて……

足で体を締め付けられながら首筋を舐められたり……


「あぁ…………」

「今度は私にくすぐられるところも想像してみて。フフッ♪」

初めて見る意地悪な微笑み。



目の前にいるのは優里さんなのに、優美ちゃん本人に目で犯されてるみたいに感じてしまう。

少し大人びたクールな視線が容赦なく僕を射抜いてくる。

(優里さん、優里さんにもくすぐられ……たぃぃ……!)

自然にペニスを触ろうとした僕の右手を、彼女の左足が踏みつけた。


「自分で触るのはダメって言ったでしょう?」

「で、でも……はうぅぅ!」

右手首をグリグリと押さえつける彼女の膝。


「エッチな想像するのがそんなに気持ちよかったの? 頭の中を優美にくすぐられたのかしら。それとも……私?」

自然と体の密着度が増して、花のような香り……彼女の体臭に包まれる。

(い、痛いのに……何だか気持ちいい……)

右手を封じられたまま、僕は必死で何かをこらえていた。

目の前では相変わらず美しい優里さんの顔が微笑みを浮かべている。


「苦しいのもあと少し。今からあなたの心が弱くなってるところをくすぐってあげる」


すると、優里さんの指先が少しだけ動き出した。

(あ、ああぁ……何これ……ぇ……)

小さな手が僕の顔を撫ではじめる。

今度は左右対称にではなく不規則に、左手は顎を支えるように撫でながら右手は僕の左耳を愛撫している。


「もっともっと心地よくなりますよ……」

まるで天女のような優しい微笑み。
優里さんは触れるか触れないかのタッチで、手首を柔らかく使って何度も僕の顔を撫でる。

上質な羽毛が舞うような感触と、見ているだけで妖しげな気持ちになる手つきが僕を狂わせてゆく。


「ああぁぁ、優里さん……ひ、ぅぐっ!」

「うふ……」

今度は片方の手を顎に添えたまま、首筋をちょろちょろとくすぐり始めた。

這いまわる指先が一本、二本と増えるたびに僕の声も大きくなってしまう。

いつのまにか優里さんの膝は僕の右手首を解放していた。
すでに僕の両腕は全く力が入らない状態になっている。

「指先が少し動いただけでも感じるでしょう? もうあなたは抜け出せないわ……」

抜け出せない……優里さんにそう言われ、何故か僕のペニスがビクビクし始めた。

理由は自分でもわからない。

ただはっきりしているのは、彼女の手の動きの虜になりかけていること……。

恍惚とした表情をしてるであろう僕に、優里さんはささやく。


「このまま続けられたらどうなると思う? こうしてお顔や首を撫でられているだけであなたは――」


ツツツ……


首筋をくすぐっていた指先が少しだけ下がって、僕の鎖骨を焦らすようになぞってきた。


「あっ、ぅあああぁぁぁ~~~ッ!」

体中がくすぐったい! いや、くすぐって欲しくて一斉に悶え始めたみたいに熱いいいぃぃぃ!

今まで我慢出来てた部分が、優里さんの指先一つでリセットされてしまったみたいだ。

ほんの少し鎖骨を撫でられただけなのに、全身の性感帯をくすぐられたように僕は震えだしてしまった。


「クスッ、夢見心地みたいね。そろそろ仕上げかなぁ……」

優里さんはすっかり息の上がった僕を抱きしめるように、額と額を合わせてきた。


「すっかり堕ちましたね。じゃあ刷り込んであげる……」

すると、不意に彼女の体が僕から離れた。離れたと言っても10センチ程度なのだが。



「気持ちよくなるお手伝い……」

そう言いながら優里さんが後ろを向いて、少しだけスカートの裾を上げる。
真っ白な太ももがあらわになって、しかも――!


「シュッシュッシュ……くすっ、いかが?」

張り詰めた股間をかすめるように何度かお尻をフリフリしてきた。


「あっ、あああぁぁ――!」

突然やってきた直接攻撃。
カチカチになったペニスの芯が優里さんの太ももとお尻の感触で蕩けてしまう。

しかも彼女の姿を目で追っていた僕は、その美しい顔だけでなく細くて真っ白な脚や、小ぶりで引き締まったお尻、程よく膨らんだ胸や色っぽい腰のラインなどを頭の中に焼き付けてしまった。

再び優里さんの密着。そしてささやき……。

(好きにしていいのよ? あなたの頭の中にいる私を……)

耳の中をくすぐるように僕を誘惑しながら、さっきと同じ手つきで顔を撫でまわしてきた。

下半身だけでなく全身が震えてる。

一瞬だけ遠ざかった「魔法の指」の感覚が蘇り、再び僕は悶え始めることになる。

しかも今度は優里さんの全身像が頭の中をグルグル回り続ける。。

彼女の肌に触れたい、柔らかそうな洋服の下にも手を伸ばしたい……


「優里さん、僕は……あああ、優里さん、優里さんっ!」

名前を連呼する僕の顔を彼女は優しく撫で続ける。


自分から手を伸ばせば触れられる距離なのに、両腕が脱力して持ち上がらない。

もどかしそうに身を捩る僕を見ながら優里さんがクスクスと笑う。


「自分からはこないのですね。もしかして私を好きにするよりも、『私の好きにされたい』のですか?」

「ッ!!」

少し嘲笑を帯びた優里さんの声を聞いた瞬間、僕の股間から何かがジワリと漏れだした。

「あっ、あ、ああっ!」

不意にガクガクと震え出す僕の顔を、優里さんはぐいっと持ち上げる。

そして目と目を合わせた状態で、薄く笑いながら静かに告げた。


「クスッ、終りね。そのまま果てて」

「あがっ、ぁ、あああぁぁー、出…………ぅうううぅ!」


ビュクッ、ビュル、ビュルルッ!


優里さんの両手に顔を挟まれ、彼女に見つめられたままで僕は果てた。

両腕に力が入らず、膝立ちにされたままで何度も何度も射精してしまった。


全く手を触れられていない状態での射精は、言い換えれば起きた状態での夢精……。自分の意志で起こしたものではなく、優里さんの言葉に導かれての射精は今まで味わった中では最高の快感だった。


「あ、ああぁ…………また……うぅぅっ!」

目をそらすことも許されないまま、残った雫まで優里さんに搾り取られてゆく感覚。


「今のお顔、可愛かったですよ」

緩みきった顔を彼女に見つめられながら、僕は一分近く断続的に精を漏らし続けたのだった。








「ごめんなさい。あなたが可愛かったからつい……悪乗りしてしまいました」

「いえ、僕の方こそ……なんていうか……」

極上の快感を与えられ、すっかり骨抜き状態になった僕を優里さんは膝枕してくれた。

このまま泥のように眠ってしまいたい……柔らかくていい匂いのする彼女に抱かれたまま休みたい。


「ところでお休みはいつまで?」

「……えっ」

優里さんに不意に尋ねられて、僕は体を起こしてしまう。

そういえば休みっていつまでだろう? 

来月の初旬までかな。


「もし宜しかったら……今度は泊まりがけでうちへ遊びに来ませんか」

「優里さんのところへですか!?」


それってどんな意味ですか、と聞き返す前に彼女が僕の耳に軽くキスをしてきた。


(優美と二人がかりで、思いっきり……シテあげる♪)

恥ずかしそうにつぶやく優里さん。

こんな危険な誘惑、跳ね除けないと大変なことになる……でも、今の僕に拒むことができるだろうか。



「良い返事を期待しているわ」



パタン――

僕の返事を待たずに、優里さんはこの部屋を後にした。


(第一部  了)







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