「新人さん割引?」
いつも通っているソープで黒服からこっそり耳打ちされた。
普通の人間ならまだ寝ているであろう、超早朝割引の時間帯なので他に客の姿はなかった。
「キャストに経験を積ませて頂く代わりにお安くしておきますので」
「でもなぁ……」
これはありがちなことなのだが、店側が推してくる嬢は地雷が多い。
それが新人ならば、さらに危険度が増す。
価格はその分手頃になるのだが、補って余りあるリスクが有るのだ。
「私からもオススメしますわ」
「貴女は、このお店のナンバーワンの……麻衣さん!」
何度か肌を重ねた相手。ただ今日は彼女と触れ合う気分ではなかった。
元々お得な時間帯、そしてナンバーワンのお墨付き。
僕は黒服に新人さん割引の適用をお願いした。
数分後、案内されたのはお店の三階。人気上位の女の子が使うフロアだった。
この時間だから新人さんでも使用許可が降りるのかもしれないなと思いつつ待合室を出ると、薄桃色のキャミソール姿の女性が僕を待っていた。
「はじめまして。よろしくお願いします」
礼儀正しいお辞儀を見て少しだけ安心する。
初々しさと健気さが同居しているような可愛らしい嬢だ。
そこからは一緒に手を繋いでエレベーターに乗る。
当然のように唇を重ねられる……ほのかに甘いキスにまた少し安心する……。
部屋に入るとこちらの着ていた服を丁寧に脱がせてくれた。
そして彼女はキャミソールを脱いで下着だけの姿になる。
何故自分を指名したのかを問われたので素直に答える。
「麻衣さんからオススメされたから」
「えっ、お師匠様が! じゃあ私も頑張らないと」
にわかに彼女の表情が引き締まる。大きく目をパチパチさせているのが可愛く思えた。
次に常連なのかと尋ねられ、首を横に振る。この店はそんなに気楽に通えない。
そして彼女は僕の体を優しく撫で回してきた。すべすべの手のひらが心地よく、思わず身を任せてしまう。
すると不意に耳元でこう囁いてきたのだ。
「お客様、隠しているけどマゾなんですよね?」
少しだけ声を低くして、耳の奥をくすぐるように彼女は言う。
可憐な見た目とのギャップに驚き、同時に背筋がゾクゾクしてきた。
ベッドに座らせた僕に正面からしがみつくように抱きついて、ギュッと体を寄せてくる。
「そうでなければオススメされませんから」
柔らかなバストを押し当てられ、彼女の心臓の音を感じる。興奮してる……彼女も、僕も。
軽く耳を舐められた後、舌先が耳孔を犯してきた。思わず声を漏らすほどの快感。
さらにそこから少しだけ体を離すと、今度は目を細めて口付けをねだってきた。
ちゅううぅぅ……っ!
唇が重なる瞬間、彼女の方から吸い付いてきたような気がした。
十秒以上の長いキスを経て、再び彼女と見つめ合う。
「キスもお上手ですね。受け身の男性特有の味、もっと犯してあげたくなっちゃう」
キラキラした目で微笑む彼女に、僕は魅了されていた。
こんな可愛い子に犯されるなんて……この時点で僕の新人さん割引への疑念は消滅していた。
きゅうっ……
柔らかな刺激に思わず溜息がこぼれた。
視線を落とせば、小さな手が僕のペニスをコリコリと刺激していた。
「おちんちんは思った通り敏感。いつでもイかせてあげられそう」
スッ……と、ためらいなく亀頭を包み込み、粘液を指にまぶして絡ませてくる。
無理やり擦り付けてくることもなく、指先だけで焦らすような手コキに悶絶させられる。
やがて手コキを続けたままゆらりと腰を上げ、彼女は膣口で亀頭を包み込んできた。
先端だけ数回、慣らすように腰を上下させてから両手を僕の肩に置く。
そしてゆっくりと体重をかけ、二十秒くらいかけてペニスの根本が見えなくなるくらいまで深く結合した。
じゅぷっ、クチュ……
官能的な音と、それ以上に男を惑わすような暖かな感触にまたもや喘がされてしまった。
柔らかな肉が淫らな締め付けを繰り返し、僕に我慢を許さない。
こんなエッチな気持ちでセックスするなんて久しぶりだった。
「……ほら、出して♪」
震える僕を抱きしめるようにして彼女が誘惑してくる。
腰を激しく振ることもなく、じっと動かないままで僕をイかせようとしているのだ。
そして僕は、その誘惑にあっさり負けてしまった。
「すごかった……ま、また次も指名するよ!」
60分後、すっかり彼女に骨抜きにされた体を起こしながら僕は言った。
一発目は挿入直後の誘惑で発射し、そのままもう一度今度は妖しげな腰振りでイかされた。
そこから体を洗ってから手コキとフェラ、そして名残の挿入で……一時間で四回射精はキツい。
「ありがとうございます。近いうちに必ず、来てくださいね♪」
帰り道で彼女にもらった名刺を見る。
にこやかに僕を見送った嬢の名前は「まゆ」さんと言うらしい。
(了)