『ふたりのひみつ』



 12月と聞いて、多くの人たちは頭の中に何を思い浮かべるのだろう。
 年の瀬、雪国、クリスマス……色々あるだろうけど、今の僕たちが思い出すのはただひとつ。

 二人が結ばれたあの日のことだった。

「カズ兄、入ってもいい?」
「ん……」

 もう入ってるじゃないか。事後報告は良くない。
 妹の陽菜(ひな)はノックもせずにまた部屋に入ってきた。
 兄として一応説教しなきゃならないと思い、溜息を吐いて僕は振り向く。

 するとそこにいたのは、いつもと様子が違う妹だった。
 普段は着るものにこだわりがないと言うか、ラフな格好が多いはずなのに今日は……

「おかーさん、おでかけだってさ。さっき『一翔(かずと)に伝えて』って言われたから伝えにきたよ」
「あ、ああ……そう。じゃあ親父は?」
「わかんない。いつもどおりじゃない?」

 いつもどおりというのは、仕事で遅いという意味だ。
 サービス業は土日が特に忙しいらしい。
 妹の口調は普段どおりだが、僕はいつになくドキドキしていた。

 まず髪がツヤツヤしてる。普段なら外に向かって跳ねていることもあるのに今日は違う。
 長袖のニットも、黒いミニスカートもどこかよそ行きの服装っぽくて、いつもの陽菜と違う。
 それにスラリと伸びた足の先の爪まで、きれいに塗って……

「ねえ、おにいちゃん……」
「えっ」
「抱きしめて」

 自分に見惚れている僕に気づいたのか、陽菜は自信たっぷりに言い放つ。
 そして座っている僕の膝の上に、まるで自転車の後ろに腰掛けるみたいにして体重をかける。

「ひ、陽菜……」
「はやくぅ♪」

 そう言いながら僕の首に腕を回してきた。完全におねだりモードになってる。
 陽菜の体重はそれほど重くない。
 むしろ適度な圧迫感で僕はますます興奮してしまう。

 震えながら妹の細い腰に手を回す。

「こ、これでいいか?」
「んぅ、違う~! 外側からじゃなくて」

 すると陽菜は不満そうに、今度は正面から僕を抱きしめてきた。
 脇の下に腕を通して背中でギュッと手を握る。
 柔らかい髪の香りと、胸の感触がもろに伝わってくる体勢。

「わかった? こういう感じ」
「こ、これは恥ずかしいよ……」
「どうして?」

 陽菜が不思議そうに尋ねてくる。
 耳元で甘い言葉をささやかれ、それだけで僕は背筋がゾクゾクしてしまう。

 ほんのり温かくて、甘い香りで、柔らかい体と僕好みの服装をした妹……
 実は一ヶ月くらい前から、僕たちは急接近した。
 兄弟の関係ではなく、男女の関係として。

「恥ずかしいよ、胸が……」
「ふふ、おにいちゃん嘘ついてる」

 お互いに思春期を越えた後で、気持ちに変化が現れた。
 それぞれ好きな相手と別れたのが同じタイミングだったのも、急接近した原因の一つかもしれない。

「おっぱい好きなくせに」
「そりゃ……」
「好きだよね?」

 陽菜の言葉に僕は逆らえない。
 否定する材料がないのだ。答える代わりに、僕は細い腰を抱き寄せ、背中を手のひらで愛撫した。

「あ、んぅ……」

 気持ちよさそうに陽菜が吐息をこぼす。
 確かな手応えと満足感。
 こんなに僕の気持ちをわかってくれる相手が近くにいたんだと、あらためて嬉しく思う。

「ねえ、おにいちゃん……二人っきりだよ」
「ああ」

 僕は陽菜と一緒に立ち上がり、部屋のカーテンを閉めた。
 陽菜は照明を暗くした。
 それでも昼間だ。お互いの顔が見える。安心する。

「カズ兄、名前で読んでいい?」
「いいよ」
「じゃあ……カズくん♪」
「っ!!」

 わかっていても、何故か心臓がドクンと大きく脈を打つ。
 興奮しながらお互いに無言で衣服を脱がせ合う。
 衣擦れの音だけが二人の間で響いている。

「うふふ、どんな気持ち?」
「なんていうか、くすぐったいな……」
「妹じゃなくなったみたい、でしょ」
「!」

 そう、まさにそのとおりなのだ。
 たった一言で全てが変わったみたいで、そして全てが許されるようで。
 陽菜は確実に僕の心を読んでいる。

「わかっちゃうんだよ……カズくんが考えてること」
「どうして……」
「甘えたいんだよね」
「そう、だな……」
「だから、今から甘えさせてあげる」

 両手を広げた妹は、もはやいつもの妹ではなかった。
 ふらふらと吸い寄せられるように、笑顔を浮かべた陽菜の胸元に顔を寄せた。

「あ……」

 気がつけば乳首を口に含んでいた。
 あったかい、ただそれだけの味。とても安心する。
 陽菜の心の暖かさを固形にしたような、たまらなく心地よい感触。

 さらに、陽菜は僕を抱きしめながら股間に手を伸ばしてきた。

「んううぅぅっ!」
「ずっと触ってるから、これもわかっちゃうんだぁ」

 妹に情けない声を聞かせたくなくて、おっぱいに深く顔を埋めた。
 でも我慢できず、甘い声を漏らしてしまう。

 陽菜はそんな僕を許してくれる。ゆっくりと指先で亀頭を包み、撫で回す。
 その手の動きが僕をとても喜ばせる。
 感じるところだけを探り当て、何度も何度も何度も……

「カズくんの気持ちいいところ、全部私が開発してあげたんだもん」
「ひ、ひなぁ! こんなのずるい、きもちよすぎて、あ、あっ、ああああ!」
「ふふふ♪ 自分で触るよりも気持ちよくて、優しくて、病みつきになっちゃうように」

 耳に染み込んでくる淫らな言葉の通り、僕は陽菜の手の動きに合わせて腰を振るだけで精一杯だった。

「ねえ、私に調節されてたんだよ? うふふふ」
「ちょう、せつ? まさか……」

 その言葉を聞いて、また僕の背中がゾクゾクし始める。
 今日より一週間くらい前にも陽菜の手でイかされた。
 徹底的に寸止めされたあとで、思い切り精液を吐き出したから目がくらむような快感だったのだ。

「あのときのこと……?」
「うん、そう。だから今日も、いっぱい白いの出しちゃおうね?」

 そしてまた手のひらが動き出す。
 たまらず僕は陽菜にすがりつく。手のひらで形の良いおっぱいを掴もうとした。

「ああああああああああああああああぁぁ!!」

 しかし、その手はやんわりと抑え込まれてしまう。
 指と指を絡めながら、陽菜は僕の顔を覗き込んだ。

「あん……急に触るのなしだよぉ」
「だって、こんなに」
「そうだよ? だからもっと我慢しようね、カズくん」

 残酷な、おあずけ状態だった。
 密着した状態で一方的に高められ、快感を蓄積させられてしまうのだ。

 いつから妹はこんなにエッチな女の子になったのだろう。
 前に付き合っていた彼氏のせいだろうか。
 否、その彼とは肉体関係には進まなかったと聞いている。

「ひな、たのむ……おっぱい、さわらせてよぉ……!」

 反対側の空いている手で乳首を触ろうとした。
 今度は陽菜も邪魔をしなかった。
 指先にコリッとした手応えを感じた。

「うううう、ほら! ひ、ひなだって! こんなに固くしてるじゃないか」
「興奮してるんだから当たり前じゃない。
 でもそんなに触ると、カズくんのここにそのまま返ってきちゃうよ」

 くすっと笑ってから、陽菜は手のひらを僕の胸に当ててきた。

「同じように触ってあげる……」

 ニヤニヤしながら、陽菜が指先を折り曲げる。
 僕の乳首をカリカリと爪で軽くかきむしり、刺激してきた。

「うあ、ああああっ、うまいいいいい!」

 苦し紛れの僕の愛撫と違って、陽菜のそれは的確だった。
 指先で乳首を転がしながら、僕の顔色に合わせて爪での刺激を調節してくる。
 そう、また調節されてるんだ……そう思うと、妹にセックスで上位に立てない劣等感が快感に置き換わる。

「ねえ、最後は入れたいんだよね」
「い、いれ……」
「私の中に入って、クニュウウウってされたいんだよね」

 混乱したままの僕に妹が問いかける。
 顔を寄せ、唇をチュッチュと鳴らしながら誘惑する。

「あああああぁぁぁっ!!」
「ヌルヌルのアソコに閉じ込められて、ゆっくり腰を振られて、切ないお顔にされて~」

 いつの間にか乳首への愛撫に連動して、ペニスも同じようにこねくり回されていた。
 こんなの続けられたら、絶対射精する!

「ひな、だめ! 出るっ、でる、でるううううううう!!」
「いいよ~。最後はこうやって、チュウウウウって……♪」

 陽菜は手のひら全体でペニスを包み、筒のようにしたままゆっくりと上下にしごく。
 そしてカリにひっかけるようにして、小指で何度も刺激する。
 それは射精へと繋がる快感だった。

「うああああああああああああ、イくうううううう!!」

 叫びながら腰をヘコヘコと上下させる僕を、妹が優しく抱きしめる。

ビュルルル、ビュル~~~~!!

 断続的に何度も射精するうちに、僕は声が枯れてしまう。
 陽菜はそんな僕を抱きしめ、口づけを交わす。

「あ……」

 目の前に妹の顔がある。
 すっかり一人の女として、魅力を備えた笑顔だった。

「ふふ、気持ちよかったんだ?」
「ごめん、僕だけ……」
「別にいいよ、カズくん」
「っ!!」
「恋人同士なんだから」

 思っていたこと、伝えたかったことを先に陽菜に言われてしまった。
 こうして僕はいつも先回りされてしまうんだ。
 この可愛いくて大好きな妹に。

「ね、もういっかいしようか? 今度は長持ちするよね」

 盛大に爆ぜたペニスをいたわるようにタオルで清めながら、陽菜は微笑むのだった。




次へ










※このサイトに登場するキャラクター、設定等は全て架空の存在です
【無断転載禁止】

Copyright(C) 2007 欲望の塔 All Rights Reserved.