1・攻め続けて最後に逆転を狙う
確かに相手の解析能力は脅威だが俺の全てが通じないわけではない。
このまま手を出し続けることで活路を見出すことができるはずだ。
かわされても気にせず攻める。
まずはあの涼しげな顔を曇らせてやる。
トールはそう信じて拳を振り回すのだが……
「オラアアアッ!」
「パンチに体が振り回されてますよセンパイ」
ミリアは左右にステップを刻みながらトールの攻撃を回避し続けた。
たまに距離が近づきすぎると突き放すように軽いジャブを放ち自分の距離を確保する。
次第にトールのほうが痺れを切らし、ますます攻撃は単調なものへと移り変わってゆく。
「くそっ、これならどうだ!」
「おっと」
突然リズムを変えてミリアに肘打ちを食らわそうとしたトールだったが、左フック一発で打撃をずらされてしまう。
さらにバランスを崩されながらもトールが追撃すると、今度は押しのけるだけでダメージを与えないように威力を加減した前蹴りで突き放されてしまった。
「な、なんだと!」
「動きが見えていればなんとでもなりますよ。今度はこちらの番です」
そこから逆襲とばかりにミリアのジャブが連打する。
隙のない構えから速射砲のようなパンチが疲弊したトールの頬を弾く。
「ぶっ、こ、このォ……!」
「えいっ」
「ッ!!」
たまらずクリンチしようと近づいてきたトールを、ミリアは抱きしめるようにして先に組み付いてしまう。
「あはっ、私も遠慮なくセンパイの体を使わせてもらいますね」
「くそ……」
疲れを回復するための手段としてクリンチするつもりだったのに、タイミングを少し狂わされたせいで逆効果になる。
ミリアに抱きつかれながらトールは自分に有利なポジションを探すのだが、
「トールさん、そんなに動き回ったら疲れちゃいますよ」
「うぐっ、離せ……」
左右に動きながらミリアは彼の逃げ道を塞ぐようにジリジリとコーナー付近へと追い込んでゆく。
このままブレイクになればロープを背負うのは確実にトール側だ。
「クリンチされるのはお嫌いですかぁ?」
「そんなこと、し、知るかッ!」
そしてレフェリーが二人の体を剥がし、再び両手を交差して試合続行を促した。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「クスッ、まるで私に体力を吸い取られちゃったみたいですねぇ」
彼女の言葉のとおり、トールはうまく回復できなかった。
逆にミリアは余裕たっぷりの表情を崩さないまま、なぜか顔を赤くしてモジモジしていた。
「……何をしてる?」
「控室の時のあなたを思い出して濡れちゃいました」
「ふざけ……、……あっ!」
トールが怒りをあらわにする寸前、急にミリアが距離を詰めてきた。
すくい上げるように両手をトールの脇へと滑らせ、正面からホールドした。
「隙あり、ですよ? このまま一緒に落ちましょう」
次の瞬間、トールの体が持ち上げられ、頭からマットめがけて急降下することになった。
フロントスープレックス。柔軟なミリアは腰のバネを効かせて彼を抱き込み、そのまま後方にブリッジしながら技を完成させた。
「がああああああッ!!」
突然のことでトールは受け身を取るのが精一杯だった。
マットに大の字になり照明を見上げる。
痛みに耐えながら自分の体が動くかどうかを確認して立ち上がろうとする。
しかし彼が動き出す前にミリアはすでに次の技へと移行していた。
「右手、もらいますねー」
パシッと音を立てて彼の腕を取ってそのまま後ろへ全身を反らせる。
それが腕ひしぎだとわかった瞬間、トールは体を丸めようとしたが手遅れだった。
ギリリリッ!
「うぎゃああああああああああああっ!!」
ミリアの両足が邪魔をして体をひねることもできない。
その状況で右腕の力だけで耐えようとする。
(肩が、外れちまいそうだ……でも返さないともっとやばいことに!)
グリグリと体重をかけてトールを追い込んでゆくミリアだが、一分間を過ぎた頃に腕を離して、今度は右足に狙いを定めた。
「順番に虐めてあげますね」
そしてアキレス腱固め。ふくらはぎをロックしたまま手首をグニグニと動かしてトールに痛みを与える。
悲鳴を上げる彼を楽しそうに見つめながら、予告通り順番にミリアは彼に技をかけ続けた。
「あー、楽しい!」
「ぐ、あぁ、うう……は、はぁっ、はぁ……」
「もう少し嬉しそうな顔してくださいよ」
全身を痛めつけられて呼吸が整わない彼を見下しながらミリアが笑っている。
「疲労が蓄積してもう満足に動けないでしょう」
値踏みするようにトールの手足を観察するミリア。
彼女が言うとおり、苛烈な打撃や関節技を受けてうっ血した手足。
場所によってはビクンビクンと痙攣している。
さらに気力が削がれたように虚ろなトールの表情。
準備は整った。
ツゥーッ……
彼の上に馬乗りになり、指先で汗まみれの胸板をなぞる。
乳首を軽く引っ掻いてみるとトールの顎が跳ね上がった。
「くっ、ど、どけ……」
「ダメです。このまま犯してあげます」
「ッ!!」
はっきりと犯すと言われてペニスが反応してしまったトール。
その様子を満足そうにミリアは眺め、舌なめずりをした。
(まずいぞ、今の俺は……抵抗できない……)
トールの胸に絶望感が広がってゆく。
全身を嫐られたあとで、何故かペニスが膨らんでいた。
今までも彼にはこういう事があった。
無自覚ながらも責められて興奮してしまうのだ。
心ではそれを否定しているのだが、体は抗えなかった。
「怖がらなくていいですよ。優しく抱いてあげるだけですから♪」
全てお見通しだとばかりに彼女は笑う。そしてトールは全身を包み込まれた。
柔らかなミリアの肌が擦れ、快感が生み出される。
(こいつの体、悔しいが、気持ちよすぎる……)
控室での情事を思い出すとますます体がこわばってしまう。
だが努めて冷静さを保とうとしてもこの状況では難しかった。
「トールさんの体、抱きしめるとすごく気持ちいい……私のほうが感じてきちゃうくらいに」
年下の後輩であるミリアは手慣れた様子で彼を抱きしめ、籠絡していく。
耳元で甘く囁かれるだけでも興奮してしまうのに、全身で彼を受け止め肯定していく。
わかっていても興奮させられてしまう。興奮したらなすがままに犯されてしまうというのに。
「私のこと嫌いですかぁ?」
「うあっ、だ、だれがお前なんかに……」
「ふふ、その割には随分いい反応してくれてるじゃないですか」
ゆらりと身を起こし、魅力的な微笑みを彼に浴びせるミリア。
騎乗位で彼を見下ろしながら楽しげに笑い、腰を前後に滑らせてペニスを甘やかしてくる。
(こんな、真面目そうな顔をしてるくせにエロすぎる……!)
トールは認めざるを得なかった。
自分が興奮していることも、見上げている女性が魅力的であることも。
だが心だけは最後まで抗うと決めていた。
そんな彼の意地を溶かすようにミリアは次の手段を講じてくる。
「約束通り、控室での続きをしましょうね。んっ……♪」
そっと握りしめた肉棒を優しく自らの秘所へと導く。
すっかり濡れそぼった場所へといざなわれ、拒絶できる男性などいない。
「もらっちゃいますね? お・ち・ん・ち・ん」
ニュプッ……
「く、くそおおおおおっ!」
どうすることもできず、トールはその光景を見せつけられる。
自分自身がゆっくりと彼女に飲み込まれていく。
断固たる決意で快感を拒む、拒もうとする……だが、勝手に口が開いてしまう!
「あああああああああーーーーーーーーーっ!!」
じれったくなるほどゆっくりとミリアにしゃぶられ、トールはついに叫んだ。
ガチガチと歯を鳴らしながら快感をこらえる。
先端がとろけて一つになり、彼女に神経ごと支配されていく。
途中で膣内のツブツブがペニスをそっと撫でてゆくのがたまらなかった。
「はぁっ、すごい……カチカチで、暴れまくってるみたい! でも」
パァンッ!
「んああああああああっ! それは、だめだああああ」」
ミリアに打ち付けられた腰の一振りがあまりにも淫らで、トールは喘いだ。
一秒遅れで背筋がゾクゾクと震えた。
ペニスはすでに射精寸前にまで高まり、彼女の腰使いを待ちわびている。
(おさえろ、おさえろ、声を出すなっ! これ以上はもう――)
我慢の限界だった。
それはとうの昔にミリアにはわかりきっていたことだが。
「トールさんの手足と同じで、今は自分から動かせないでしょう? だから私から――」
そのうえで彼女は優しく振る舞った。
男の意地を包み込み、彼の体も包み込み、抵抗する気力を奪い去る。
「ふふふ、たっぷり感じてくださいね。勝負なんて忘れちゃうくらいに」
自分を抱きしめるミリアの表情を見つめてしまうトール。
目を見つめたまま彼女はゆっくりと腰を振り始めた。
(あああぁ、だ、めなのに、これ、気持ちよすぎる……)
クチュクチュクチュクチュクチュクチュという音が断続的に耳に響く。
ペニスが彼女にしゃぶり取られていることを強く意識してしまう。
時々全身がブルッと震えてしまうが、その直後に優しく抱きつかれると安心してしまう。
自分の下で恍惚とした表情を浮かべる彼を見つめながらミリアは小さく笑う。
「このまま私の膣内でしゃぶられてるだけでもイっちゃいそうですけど、たとえば他の場所でしゃぶられたらどうなっちゃうんでしょうね」
それは息も絶え絶えの相手を堕落させる一言。
現在行われている膣内での淫らな咀嚼を思い浮かべながらトールは問い返す。
「ほ、ほか、って……」
「うふっ、たとえば私のお口、とか?」
ニマッと広がる唇を見てトールは唾を飲み込んだ。
「フェラされてみたくないですか? 憎い女の口を占領してみたくないですか」
頭の中を駆け巡る彼女のフェラがトールの脳内を桃色に染めていく。
至近距離で可愛らしい異性に囁かれてはたまらない。
「もちろん他の場所でもいいですよ。おっぱい、とか? フフフフ♪」
彼女の指が自分のバストの輪郭をなぞる。
見事に視線を誘導された。
「たくさん想像しちゃったみたいですね。おちんちんますますカチカチになっちゃって」
そっと股間を撫でられ、甘い声を漏らしてしまうトール。
ミリアはその手を上げて彼の後頭部へ滑り込ませる。
ぐいっと彼を引き寄せ、目を合わせながらつふやく。
「素直に言えないなら、たっぷりじらしてあげますよ……ジュプッ、レロォ」
そのまま鼻先を合わせ、顔をわずかに傾けながら口づけをした。
(なっ、なんで、このタイミングで、キスなんてされたらああああ!)
トールは突然のキスに目を白黒させていた。
ミリアに唇を奪われ、思考までがぼやけてくる。
快感漬けにされかけているのにキスまでされたら戻れなくなる。
本能的にトールはミリアを恐れた。だが彼女は容赦なく口づけを続ける。
「ンッ、チュルルル、唾液いっぱぁい……ふふっ、もう体全体がおちんちんみたいですね」
すりすりと全身を手で撫でられ、トールは悶え狂う。
だが逃げられなかった。
キスをされながらの全身愛撫ほど男が耐えにくいものはない。
しかも今は挿入までされているのだ。
「うあああっ!」
「少し触っただけでイっちゃいそう。キスハメされて、もう天国ですかぁ?」
見下したような問いかけにも言い返すことができないほどトールは気持ちよかった。
試合であることを忘れてしまうほど彼女に溺れていた。
「じゃあそろそろ逆らえなくしてあげます。
これから先もトールさんは私を見るたびに思い出すんです。
私の顔も、声も、体つきも、キスの味も、オマンコの具合良さも、そして今日の射精も」
甘いキスを繰り返し、ぎゅっと彼の手を握り密着度を高め、全身を小刻みに動かして自分の味を刷り込んでいく。
そうすることで丁寧に一つずつ彼の希望を黒く塗りつぶしていくミリア。
上体を倒して彼の耳に口づけをするようにしてささやき続けてゆく。
「我慢しないで? 好きなだけ出させてあげますよ。マットの上で気絶するまでずっと」
気づけば二人はリングの中央で絡み合っていた。
会場の観客に見やすい画面に大きく映し出されていた。
ミリアは冷静さを保っていたが、組み敷かれたトールは息も絶え絶えであり、誰の目から見ても優劣は確定している。
だがすでにトールはどうすることもできない。彼女の囁きに抗えない。
「トールさんの好きなキスで心をトロトロにしてあげたり、おちんちんを知り尽くした指で手コキしてあげたり、おっぱい同士を合わせて乳首だけでイかせてあげることだって私なら……」
「うあっ、ああああ、言うなああああああ!!」
全力で否定しようとするトールをミリアの手がやんわり押さえつける。
同時に膣内に捕獲したペニスも同じように締め上げた。
「くすっ、じゃあ静かにイキまくってみますか? 私の膣内で」
きゅっ!
「んひあああああああああああっ!」
ヌルヌルの襞肉が彼自身を包み込み、優しく握りつぶす。
それだけで彼は天国を何度も味わった。
ヒクついたペニスを甘やかし、たっぷり焦らしながら膣圧だけで彼を屈服させようとしている。
「ね? もう負けちゃいましょうよ」
快感を味わいながら彼女に抱かれ、そっと甘く囁かれるたびに気が狂いそうになってしまう。
負けてはいけない最終選考であることが頭の中から流されていく。
「私の中で気持ちよくなって、喘いだ声も飲み込まれちゃって、皆が見てる前で乱れちゃいましょ?」
相変わらず手足は動かせず、抑え込まれたままの自分にこの誘惑に抗えない。
弱々しく腕を上げようとしても無駄だった。
「ほぉら、こわくないよ……手も握ってあげる」
そっと握りしめられた手のひらのせいで全身が麻痺してしまう。
彼女はトールの心まで完全に掴みきっているようだ。
そしてまた彼に向き直り、微笑みかける。
「キスしたらミルクを出してね? トールくん♪」
呼び方が変わっている、と彼は一瞬だけ気にしてみたものの、すぐに思考がかき消された。
「んっ……」
ゆっくりと近づいてくる形の良い唇。
もはや心の殆どを埋め尽くしている魅力的な女性の唇。
「や、やめろ、やめてくれ……こわ、れる……」
「心配しなくていいよ……壊れてもまた直してあげるから」
ミリアはそう言い切ると、何度目かわからないキスで彼の呼吸を塞いだ。
ちゅ……
「んっ、んんんんんんんんんーーーーーーーっ!?」
ビュクビュクビュクウウウウウッ!!
それは全身を震わせながらの搾り取られるような射精だった。
トールが溜め込んでいたもの全てが逆流してくる。
しっかり握った手がぎゅっと握り返されるたびに捧げてしまう。
キスされた唇の中に彼女のしたが侵入してきた。
ジュルッ、クプ……
「んちゅ、まだイけるよね?」
ぎゅうううっ!
キスと同時に腟内が収縮し、さらなる射精を促してきた。
先端と根本を同時に締め上げられたトールが歓喜の声を上げた。
「んひゅっ、あっ、あああああああああああああああーーーーーっ!!」
ビュクンッ! ビュウウウウウウッ!!
そしてまた射精。
彼の口の中を荒らし、心までたっぷりしゃぶり尽くすようなセックスに観客も歓声を上げた。
やがてトールの目が泳いで立ち上がれないと判断した審査員が大きく白旗を振って試合が終了した。
「条件付まで完了。このキスでもうおしまいだね、トールくん♪」
レフェリーから勝利宣言を受けたあと、ミリアは会場の全員にお辞儀をしてから控室へと戻った。
トールは最終選考に落ちただけでなくミリアに負け癖を付けられてしまった。
彼女と対戦するたびに彼は黒星を増やし、理由がわからない敗北を何度も味わい、そのたびに彼女を思い出してオナニーをしてしまうのだった。
(了)
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