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 物珍しそうな目で俺を見つめる美女、仲台さんはモデル「美鈴アンナ」として活動しているらしい。
 仕事のための体型維持と自分の趣味を両立させている上にボクシングでは今の俺より強かった。
 色仕掛けをされたせいと言えなくもないが、それは単なる負け惜しみだ。
 わずか2ラウンド6分でボコボコに打ちのめされた俺と、目立った傷や痣もない綺麗なままの彼女。
 こうして向かい合っているだけで何とも言えない気持ちが込み上げてくる。

「もう1ラウンドですか。私は構いませんけど結果は見えてると思いますが。私を倒せなかったのがそんなに悔しいですか?」

「そうじゃない、けど……お、おねがいします……」

「ふぅん、男の意地ってやつですね。そういうの嫌いじゃないですよ」

 フフッと笑いながら念入りに俺のプライドを痛めつけてくる彼女。
 腰に手を当ててこちらを覗き込むようにしながらじっと見つめてくる。
 そのポーズすら様になっていて、見られているだけでドキドキしてしまう。
 悔しい気持ち、それに彼女に対する劣等感。初めて体験する感情だった。
「さすがにこのままじゃ収まりがつかないですよね」

 当たり前だ。俺は唇を強く噛みしめる。

「じゃあもう一回勝負しましょう。ただしボクシング以外で」

「えっ」

「私、格闘技も好きですけど他での勝負はもっと好きなんです」

「他の勝負?」

「はい。バトルファック♪ 私としませんか」

「な……え、バトルファック? ……って言いました? 今」

 聴き間違いだと思って問いただす。しかし彼女は静かにうなずいた。

「はい。ここだけの話ですけど、一生懸命な男の人をボクシングで負けさせたり、逆にバトルファックで相手を気持ちよくして恥ずかしい声を出させるのが得意なんです」

 悪びれもせず彼女は言う。とんでもない性癖の持ち主だ。
 さらに聞けば数ヶ月前から時々見かける俺に目をつけていたのだという。
 やはり舐められていたのか。

(こ、この女……俺を嫐るつもりだったんだ! しかもバトルファックで)

 おそらく今日は始めから彼女は俺に勝てると確信していたのだ。
 格闘技でも、その後のバトルファックでも。
 そう思うとさっきまで萎えかけていた闘争心がグツグツと湧き上がってきた。

 口には出せない怒りに肩を震わせる俺に顔を寄せて彼女が続ける。

「ボクシングでは勝てなかったけどエッチならあなたに勝ち目があるかも知れませんよ」

「し、しかし……バトルファックとは……」

「あら、自信がないのですか? 私とのエッチ勝負」

「ッ!!」

「クスッ、生意気な年下女をセックスで虜にして屈服させるチャンスです。まさか逃げませんよねぇ?」

 自信たっぷりに彼女は言う。
 もう1ラウンド勝負を持ちかけたのは俺だがこんな展開になるとは予想していなかった。

(彼女とセックスできるのは魅力的ではある……)

 正直な気持ち、かすかな期待はある。もし勝つことができたら満足度は高いだろう。

「お望み通りにしてやるよ。後悔するなよ!」

「はい。では後片付けして着替えましょうか」

 タオルで汗を拭きながら微笑む彼女が妙に色っぽく感じてしまう。
 俺はこれから彼女とセックスする。
 そこで圧倒することができればこのモヤモヤした気持ちも吹き飛ぶに違いない。
 このときの俺はそう信じて疑わなかった。



 着替えを終えた俺たちはジムをあとにした。

 幸いというか、このジムは繁華街の中にある。
 俺たちは近くにある手頃なラブホへ移動していた。

「雰囲気出していきましょう」

 エレベーターの中、そう言いながら彼女のほうから手を握られると急に恥ずかしくなってきた。
 何より頭の中でさっきの試合のことを思い出してしまう。
 激しく揺れ動く彼女のバスト、わずかに見えたピンク色の乳首、それに可愛らしい投げキッス……

(そんな相手と俺は今から……くそっ、これも勝負なのに、興奮が収まらない!)

 股間が疼き始めた。
 葛藤する俺を見て彼女は密やかに笑っていた。

 部屋へ入りシャワーを浴びて身を清め、お互いにバスタオル一枚となる。
 予想はしていたが彼女はスタイル抜群だった。
 見ているだけで股間が再び熱くなる。
 汗を流した肌はどこまでも白く、ほっそりした手足は女性としての魅力をさんざん撒き散らしていた。
 首筋から肩にかけてのラインも艶やかで、バスタオルで隠された胸元と足の付根を見つめるだけで漂う色気にクラクラしてしまいそうだ。


「始める前に簡単なルールを決めましょう。2本勝負にしませんか」

「それは先に2回相手をイかせればいいという意味?」

 向き合って問いかけると彼女は首肯した。
 互いに持ち時間を決めて勝負しましょう、とも言われた。

「選ばせてあげます。どっちにします?」

「どっち、というのは……」

「先攻と後攻です。」

 なるほど、だったら先手必勝だ。
 先にイかせてしまえば俺が有利になるのだから。

 そう告げると彼女は自らベッドの上にコロンと横になった。

「じゃあ今から10分間、大橋さんからどうぞ」

 余裕たっぷりの笑みで俺を迎える彼女。
 じつはエッチで勝負ということ自体が初めてだ。
 戸惑いながら俺はバスタオルに包まれたその体をむき出しにした。

「やんっ……」

 色っぽい声を出す彼女。
 だが、俺の目はその美術品のような肉体に釘付けになっていた。

(アソコの毛がない。ツルツルにしてるんだ)

 引き締まった肉体に不釣り合いな大きなバストより先に長い足の付根に目が行ってしまう。
 恥ずかしそうに内股になった彼女の膝に手をかけて開く。
 乳首以上にピンク色をした秘所の入り口がしっとりと濡れて震えていた。
 無意識に顔を寄せ、舌を伸ばしてオンナの蜜を舐め取る。

ピチャッ

「んっ……」

 くぐもった声を上げる彼女。
 指先で膣口を開き、内部に舌を突き刺すと頭の上で色っぽい吐息が漏れるのを感じた。

 しばらく舌で彼女を味わった後に注意深く人差し指を奥へと突き刺してみる。

(こ、これは……きついな、ずいぶんと)

 挿入された指が内部でキュウウッと締め付けられるのを感じる。
 体つきのみならず彼女の持ち物もかなり良さそうだ。
 申し分ない締め付けにこの後のことを想像してペニスが硬さを増した。

 夢中になってしばらく指を抜き差ししているうちに俺はふと気づく。

「もしかして気持ちよくない?」

「ううん、でも、ちょっと、痛いかな……って」

 顔を上げた俺に向かって彼女が申し訳無さそうに言う。
 自分の配慮不足を恥じた俺は彼女のバストに手を当ててゆっくり揉み回すことにした。

「あっ、それ、すごくいい……優しくて好き……」

 直ぐに彼女の反応が変わる。

「あ、ああぁん、きもちい……!」

 美巨乳を柔らかく包み、揉みながら乳首をつまむ。
 それと同時にクリトリスをコリコリと弄ぶと彼女の声の質がまた変化した。

(本気で感じているッ!)

 確かな手応えを得た俺は気を良くしてその愛撫を続けるのだが……

「ふふっ、もうすぐおしまいですね? 持ち時間」

「え? ……ああっ!」

 気づけばタイマーの数字は残りわずか。
 俺は彼女を責めきれないまま貴重な先攻の権利を手放すことになる。


「はぁ、はぁ、気持ちよかった……じゃあ今度は私の番です」

 攻守交代でベッドに大の字になった俺に対して彼女が微笑む。
 いったいどんな責めをしてくるのか気になるが、それ以上に俺のペニスが彼女との接触を待ちわびているかのようだった。

(まずいぞ、たっぷりと彼女を味わったせいで興奮がさっきよりも……)

 ここへ来て俺は自分の選択が失敗だったのではないかと思い始めていた。

「タイマーをセットしました。いきますよ?」

 彼女は四つん這いになって俺を真上から見下ろしていた。
 柔らかい髪が俺の顔を撫で、ゆっくり彼女の顔が近づいてくる……

「どうしようかな~」

「くっ……!」

「まずはごあいさつから」

チュッ

「ッ!!」

 軽く触れ合うだけのキス。
 それなのに俺の興奮は一気に頂点に達してしまう。

「ドキドキしちゃいますね?」

 さらにそこから彼女は俺の顔を抱きしめ、まるで恋人にするような頬ずりを何度もしてきた。

「うっ、うっ……!」

 首筋を舐められたせいで声を漏らしてしまった。
 舌の先が耳元を舐め、そこから甘えるようにささやいてくる。

「こういう優しいセックスも好きですけど、適度に激しくされるほうが私は好きかな?」

「あぅ、そ、そう、なのか……」

「激しいのと痛いのはちょっと違うんですよ。今から私が教えてあげます」

 ピッタリと体をすり合わせてきたので彼女のバストが俺の胸板で形を変えてゆく。
 その柔らかさは先ほどの試合でのクリンチを思い起こさせる。
 だがそんなことはお構い無しで彼女の全身愛撫は続いていた。
 長い両足を俺の足に絡みつかせ、わずかに腰を浮かせてから片方の手をその隙間へと忍ばせてゆく。
 次の瞬間、俺の下半身に快感が襲いかかってきた。

「うああっ!」

「まずは見つめたままの手コキ。この子をもっと硬くしてあげます」

 じわりと広がっていく快感。細い指先が一本ずつ肉棒に絡みついてくる。

(う、うまい……なんだこれ……)

 密着したまま彼女はそのテクニックで俺の敏感な部分を探っているようだ。
 すでに我慢汁をにじませている先端をいたわるようにクリクリと彼女は指の腹で刺激してきた。

「このままイかせちゃおうかな? なーんて」

 いたずらっぽく笑う彼女だが、これは本当に極上の手コキだった。上半身を抑え込まれ、片足を拘束されたまま味わう彼女の手の動きは今まで味わったことがない甘美な男殺し。
 俺は無意識に腰を跳ね上げ次の刺激を求めてしまう!

「あっ、ああああーーーーー!」

「いい反応。でもまだ落ちないでくださいね」

ちゅ……

 柔らかすぎる唇。二度目のキスで頭の中が再びかき混ぜられる。
 下手な風俗嬢よりも確実に染み込んでくる性的な興奮に俺はおかしくなりそうだ。

「もっと楽しませて?」

クニュクニュクニュクニュ……

「ひっ、そ、そこは……あああああーーー!」

 手のひらをゆっくりと回すようにしてペニス全体を撫でさすってくる彼女。
 その動きに合わせて俺の腰もわずかに揺らめいてしまう。

「そろそろいい感じに硬くなりましたね」

 いったん手コキを止めてゆらりと上半身を起こし、俺の顔の脇に手をついてきた。
 美しい顔とその下で揺れるバストに目が釘付けになる。

(きれいだ……)

 俺は確実に見とれていた。
 それが勝負に大きな影響をもたらすとわかっていても目が離せない。

 よいしょ、と声をかけながら彼女が俺の足を割り広げてくる。
 そのまま腰を持ち上げられてパイズリされるかと思ったがそうではなかった。

 彼女は口の中にためた唾液を手のひらにとって指先を湿らせ、両手の指を見せつけるようにしながら静かに下ろす。
 すでに天を仰いでいた肉棒がゆっくりと細い指に包み込まれてゆく。

「ふふっ、この状態でどれくらい持つかなぁ~」

ピチャ、シュル、シュルル……

「うあっ、あああ、なにを!」

「ふふふふ……しっかり気を張ってくださいね」

 それは両手の人差し指から薬指を使った六本指の手コキだった。
 パンパンに張り詰めた亀頭を揉みほぐしゆっくり降下させてゆく技術。
 撫でられた場所に残る優しい刺激がたまらなく心地よい。
 決して強く握らず、先端から中腹までを時間をかけて往復する動きのせいで射精感が一気に高められてしまう。
 単純な往復の合間にこちょこちょと小指の先が裏筋をくすぐったり、親指がカリの輪郭をなぞってくるのも憎らしい演出だ。

「ここがいいの?」

「……ぁっ」

「腰が動いてますよ。ほらほらぁ」

 数分も経たないうちの俺はその淫らすぎる手コキの虜になりかけていた。
 彼女がタイマーを見る。残り時間はまだ7分弱。

「もう出ちゃいそう……ほら、こんなにビンビンです」

 優しい声で心を折りにかかってくるその笑顔は勝利を確信しているように見える。

「うあっ、ま、まだ、俺は負けない……ッ!」

「ですよね。じゃあ続けます」

 普通ならここで一気に激しく肉棒をしごいたりするだろう。
 だが彼女は違った。
 柔らかすぎる刺激を重ねることでこちらの忍耐力を根こそぎ奪い去ろうとしているのだ。

(我慢できないっ、腰が、おかしくなるううううう!!)

 足の先までピンと張り詰めた俺の体を見て彼女がくすくす笑いはじめる。

「エッチなおねだりしちゃってますよ」

「ちがうっ、ちがううっ!」

「でも優しいのは気持ちいいけど、すごくもどかしいでしょ? だから……」

 肉棒からスッと離れる指先。一瞬の安堵。

 しかし彼女の指先は静かにペニスの一点を狙っていた。

「えいっ!」

ピシィッ

 軽く曲げた中指を親指で抑え、彼女が裏筋付近を強めにデコピンで弾いた。

「痛っ……!」

 当然やってくる痛み。
 だがそれはすぐに消えて代わりにムズムズした感覚が下半身全体に広がり始める。

「ふふふ」

「え、えっ、なんで……ま、まって!」

 自分では止められない震えがペニスに襲いかかってきた。
 困ったことにそれは決して不快なものではなく、待ち望んでいた最後の刺激。
 射精へのトリガーだった。

「ふぅん? まさか痛くされてイっちゃうんですかぁ」

「ちがう、おれ、はっ、イかないいぃぃ!」

「無理しちゃって。優しい刺激のあとで虐められると男の人は我慢できなくなっちゃうんです。ここでさらにこうすれば……」

 彼女の手が、左右から肉棒をフワリと包み込む。

シュル、シュルシュルシュルシュル……

「さっきよりも気持ちいいでしょ」

「あっあっ、それだめっ、だ、だめああああーーーーー!」

 デコピンのあとに彼女が施したのは先ほどまで俺を悩ませていた極上の手コキ。
 複数の指先がソロリソロリとペニスを表面を這うような動きだった。

(こんな、羽が舞うような動きが今は物足りなくて、それなのに気持ちいいなんて!)

 身悶えしながら必死で抵抗する。
 このままでは細い指先の虜にされてしまう。
 風俗嬢みたいにガシガシしごいてくる方が何倍耐えやすいことか。

「私の手コキ、優しすぎて腰が勝手に動き始めちゃうでしょ」

 彼女が言うように熱い精液が漏れ出しそうになる。
 もう完全に我慢が効かない。

「で、でるっ、でちゃう!」

「ほらほら、もう少し耐えれば私に反撃できますよ」

 すでに彼女は手コキを止めていた。
 そして再びデコピンをしようと指を折り曲げ構えていた。

「ふふふふふ……最後は優しくしてあげる♪」

ツツツツゥー……カリッ!

 美しい指先が、ピンク色の爪がカリを弾いて裏筋を引っ掻いた。
 それは痛みを伴わない、デコピンとも呼べない軽いタッチ。

「イっちゃえ♪」

 彼女の言葉とその刺激に俺は我慢できなかった。

「うあっ、あがあああああああーーーーー!」

ビュクウウウウウウッ、ドピュドピュウウ!

 ガクガクと腰を震わせ、俺は彼女の目の前で射精してしまう。
 吐き出した精液がピチャリとシーツに飛び散った。

 一回、ニ回、三回目の射精でようやく下半身の力が抜け落ちた。

「いっぱい出ましたね」

「はぁっ、はぁっ、が、はぁ! は、ぁ」

 まだ呼吸が整わない。
 ちらりとタイマーを見れば残り時間はたっぷりある。

(そんな……セックスで負けたのか、俺は……)

 悔しさが込み上げてくる。本番ならまだ諦めが付いた。  フェラでもパイズリでも彼女の指先に俺は完敗したのだから。
 魅惑の指使いで撒き散らされた精液が砕け散った男のプライドのように見える。
 自分の体に付着したそれが惨めさを上乗せしていた。

「まずは一本。こっちでも私に負けちゃいましたね」

 体中の疲労で未だ動くことができない俺の顔を彼女は覗き込む。
 指先にネットリとすがりつく白濁を舌で味わいながら笑う。

「どうします? まだやりますか」

「え……」

「残り時間、あなたの好きにしていいですよ」

 意外な申し出に視線を上げると、彼女が足を大きく広げて目を細めていた。





(2023.10.03 一部修正) 次へ










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