Elbereth
「蟹臭い味噌臭い。臭いがうつるから寄らないで」
「すぐにお洗濯いたしますので……」
寝惚けた頭で昼食をとっていたら蟹の味噌汁をこぼしたことが原因だったのか。
偶々精神状態の波が低調だっただけなのか。
それとも己には知れぬ原因だったのか。
高校時代の仲間と飲み会があったのだが、一向に楽しい気分にならなかった。
しかし、僕以外全員は実に楽しそうだったので、これはあくまでも僕自信だけの原因で僕だけが楽しめなかっただけのことに違いない。
2次会はカラオケだと盛り上がる一同に別れの挨拶も満足にせずに去った。
これ以上、こんな陰気な輩の声を聞かせたら申し訳ない。
(卑屈だ)
変わりたい。変わりたい。変わりたい。
ある時からずっと願っていた。
もっと尖りたい。
(……何か、ずれが生じているのだろうか)
帰宅途中、友人の言葉を思い出していた。終始ほとんど言葉を交わさなかったが、そのやりとりだけは胸に引っ掛かっていた。
友人はほろ酔い加減で僕の隣に腰掛けると、唐突に切り出した。
「小説、進んでる?」
「……いや、全然」
「そうだよねー。なんか駄目だよね、最近」
「…………」
「何で昔はあんなに書けたんだろう。わからん」
点と点が線にならないとか何とかぼやき合いつつ、その話題は有耶無耶のままに終わった。
嗚呼、迷っている。
……本当は変わりたくないのかもしれない。
Elbereth
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