第63話


日本近海の海底………ヴァリム共和国軍強行侵略偵察部隊ヘルキラーズ小隊秘密基地。

呪術実験室………

「準備できましたで」

床に薄っすらと光っている呪法陣の前に立つ千草。

「フフフ………見ものね」

心底楽しそうな顔を浮かべるヴェル。

「けど、ホントにできんのか? 死者を蘇らせるなんて………」

その隣で、懐疑的な顔をしているビックボム。

「任しとき。関西呪術協会の書物庫からちょろまかした禁書に書いてあったとおりにやっとる、成功率は100%や」

自信満々に言う千草。

「ほな、いくで………」

と、千草が呪式に入ろうとした時、

「ちょっと待ちなさい」

部屋の扉が開き、2メートル半はある長刀を持ったフォルセアが姿を見せる。

「フォルセアはん。どないしました?」

「これを媒体にして呪式を行なってもらうわ」

長刀を千草に差し出しながら言うフォルセア。

「えっ!? でも、媒体を通して反魂を行なった場合、人格が完全に呼び覚まされて、下僕として使うことはできまへんで」

「構わないわ、やりなさい」

フォルセアは、拒否を許さないといった目で千草を見る。

「は、はい! ただいま!!」

千草は、慌てて長刀を受け取ると、呪法陣の中央に置く。

「フォルセア、あの刀は?」

「ガイアセイバーズとやらのデータを見直していたら、面白い人物を発見してね。それで持ってきておいたの」

「面白い人物?」

「ジン・ミスラトルという男よ」

「ミスラトル………なるほど、考えたわね」

納得した顔になって言うヴェル。

「お! 始まるぜ!!」

ビックボムがそう言った瞬間、千草が呪印を始め、呪法陣が怪しく光る。

「黄泉路の国に眠りし魂よ………今こそ蘇ってその恨みを晴らせ!!」

呪法陣から人の形をした怪しい光の塊が出現し、長刀がその手に納まる。

やがて光が弾けると、そこには1人の肩当のついた漆黒のロングコートを着たロングヘアの銀髪の男の姿があった。

「!! なっ!?」

「テメェは!?」

それを見て驚く千草と、ダイナマイトを取り出すビックボム。

「落ち着きなさい、2人供」

しかし、ヴェルは冷静に2人を宥める。

「私を呼んだのはお前達か?」

男は凍るような微笑を浮かべて言った。

「ええ、そんなところね」

それに臆しもせずに答えるフォルセア。

「ほう………何が望みだ」

「簡単よ。貴方のやろうとしたことをもう一度やってもらいたいだけよ」

「手始めに、この麻帆良って地に行ってもらおうかしら」

ヴェルが、麻帆良の地図を差し出して言う。

「断る。どこへ行くかは、私自身が決めることだ」

「貴方を殺した男がそこにいると聞いても?」

「何?」

男は一瞬、僅かに驚いた表情を見せると、麻帆良の地図を引っ手繰った。

「フッ………よかろう。アイツには1番に絶望を送らねばならぬと思っていたところだ」

「機体は既に格納庫に用意してあるわ」

「では、行って来なさい………ミスラトル」

フォルセアにミスラトルと呼ばれた男は、ジンと瓜二つの姿をしていた………











そして、麻帆良では………

「………懲りん奴等だ」

ジンが何時ものように、生徒に絡んでいた不良達を叩きのめしていた。

「チクショー………」

「強すぎる………」

そんな呻きを背で聞きながら、ジンはその場を立ち去ろうとした。

と、その時!!

ゾクリッ!!

「!?」

全身の血液が凍りつくような感覚に襲われ、ジンは慌てて辺りを見回す。

(こ、この感覚は!? いや、まさか………アイツは確かに俺が!!)

内心酷くうろたえながら、ジンは隈無く周辺に注意を払い、異常が無いのを確認すると大きく息を吐いた。

(やはり気のせいか………そうだな………アイツがここにいるはずがないか………)

そう自分を納得させると、早足気味にその場を去った。











同時刻、学園外近くの大橋では………

「ここが麻帆良か………」

大橋の中間の柱の頂上に立つジンに瓜二つの男。

「なるほど………平和な街だ………徹底的に破壊し尽したくなるほどな………」

男が左手を天に翳すと、2メートル半ほどは有ろうかという長刀が出現する。

「フ………」

男は微笑を浮かべると、長刀を逆手に構え、自分が立っている柱に突き刺した。

途端に、刺された場所から柱に無数のヒビが走り、やがて柱を中心に大橋が崩れ落ちた!!

「わあぁぁぁーーーーーっ!!」

「キャアァァァーーーーーッ!!」

橋を渡っていた人達が次々と水中に没していく。

ジンに瓜二つの男は、右背中から漆黒の片翼を羽ばたかせ、中に浮かびながらそれを眺めていた。

「フフフ………ハハハ………さあ、ジンよ。早く来い。さもなくば大勢の人間が死ぬこととなるだろう………」











機甲兵団ガイアセイバーズ基地………

ネギ達が非常召集を受け、作戦室へと集合したのは、大橋が落ちて間もなくのことだった。

「機龍さん!!」

「大変なのよ! 学園外近くの大橋が!!」

慌てた様子で事を伝えるネギとアスナ。

「落ち着け! そのことは聞いている」

それを宥めながら話を切り出す機龍。

「皆も知っていると思うが、先ほど学園外へ繋がる大橋が突然崩壊した。幸い、偶然にも人通りが少なかったことと魔法協会の迅速な対応の御蔭で死者は出なかった」

その報告に、幾許か安心するネギ達。

「だが、重症を初めとした多くの負傷者が出た」

しかし、その報告を聞いて再び身を強張らせた。

「現場に向かったレッディーさん、ゼラルドさん、アルバトロス大佐、レイ、レイク軍曹からは、橋の崩壊は人為的なものだという報告が来ているが、今のところヴァリムの襲撃なのか、テロ行為なのかは不明だ。万が一に備え、機甲兵団ガイアセイバーズはこれより第1級戦闘配置に着く」

「「「「「「了解!!」」」」」」

全員が敬礼する。

と、そこへ、

「監視カメラの映像が回ってきました!」

「大橋が崩れる瞬間の映像を発見! メインモニターに回します」

オペレーター席の方から声が挙がり、メインモニターに大橋が崩壊する前後と瞬間の映像が映し出される。

「コレだけか?」

「殆ど一瞬のことだったので、これだけしか映像が取れなかったようです」

「コレじゃ殆ど分からないですね………」

難しい状況に閉口する一同。

「ん?」

と、機龍が何かを発見したような表情をする。

「どうしました、機龍さん?」

「崩壊する瞬間の映像をもう一度出してくれ」

「あ、はい」

モニターに大橋が崩壊した瞬間の映像が映し出される。

「コレがどうかしたんですか?」

「大橋中央の柱の上の方を拡大できるか?」

「はい、拡大します」

映像が拡大されると、そこにはピンボケしていたが、漆黒の片翼を生やした人影のようなものが映っていた。

「!? これは!!」

「コイツが大橋を崩壊させた本人か!?」

「何だ? あの片翼は?」

「左手に持っているのは長刀でござるか?」

驚くネギ達。

「もっと詳細にできないのか?」

「ちょっと待て、今処理してる」

千雨がそう言った時、

「………遅れてすみません」

「リーダー、状況はどうなってるんですか?」

到着が遅れていたジンとサクラが作戦室へと駆け込んできた。

「うむ、大橋が崩壊したのは知ってるな」

「はい………」

「一体何があったんですか?」

「人為的な破壊工作だ。今、犯人と思われる者が映っていた映像を解析している」

「犯人の映像?」

ジンとサクラはここで初めて、メインモニターの映像に目を向けた。

「「!!!!」」

その瞬間、2人の顔が驚愕に包まれた。

「ま、まさか!?」

「…………」

「!? 何か………!!」

知っているのかと言おうとして、機龍は閉口した。

ジンが途轍もない殺気を放ち始めたのだ。

まるで重力が2倍になったかのように場が重くなり、ビリビリと空気が震える。

「ジ、ジン………さん………」

「あわわわわ………」

慌てふためくまき絵とこのか。

「「う〜〜〜ん…………」」

鳴滝姉妹はあまりの殺気に気絶した。

ネギと小太郎、そして武闘四天王とエヴァは身体が戦闘態勢に移行するのを抑えられなかった。

「ジンくん!」

何とか持ち堪えている機龍がジンに声を掛けた瞬間、ジンは神速の如く作戦室を出て行った。

「「「「「…………」」」」」

何も言えず呆然となる一同。

「千雨ちゃん! この映像、もっと詳しくできないの!!」

と、サクラがオペレーター席に向かって叫ぶ。

「え!? あ、ああ!! ちょっと待ってくれ!!」

我に返った千雨が慌てて映像修正を行なう。

「一体どうしたっていうんだ、サクラくん!」

「ジン殿のあの殺気………ただ事ではないでござろう」

事情を知ると思われるサクラに質問が飛び交う。

「それは………」

サクラが答えようとしたその時、

「処理ができたぞ!!………って、オイ!! これは!?」

「何々!?」

「ええ!?」

「嘘………」

「そんな………」

オペレーター組の驚愕の声が響き渡る。

「どうした!?」

「こ、これを!!」

修正した映像がメインモニターに廻される。

「なっ!?」

「「「「「「ええーーーーーっ!!」」」」」」

今度は戦闘班が驚愕の声を挙げた。

「ジン………くん?」

そこには、肩当のついた漆黒のロングコート着て、左手に2メートル半はあろうかという長刀を持ち、右背中から漆黒の片翼を生やしているジンの姿があった。

「やっぱり………」

サクラだけが、それを見て納得した顔になる。

「やっぱりって、どういうことなの!? サクラさん」

「あれはジンじゃない………エンよ」

「エン?………どういうことだ」

「説明は後で!! リーダー、急いでジンを追わないと!!」

「う、うむ………分かった。オペレーター組、鳴滝くん達を頼む! 心配なようなら和泉くんを呼び出してくれ! 残りの者は、出撃だ! 急げ!!」

「「「「「「りょ、了解!!」」」」」」

全員が一瞬戸惑った返事をした後、それぞれに与えられた命令を遂行していった。











崩れた大橋の郊外側の近く………崖の傍のある森林地帯………

ジンはその木々の中を走り抜けていた。

やがて開けた場所へと出ると、その中央で立ち止まり、辺りの気配を探る。

「ヤツなら………この辺りで待ち構えているはず………出て来い!!」

ジンがそう叫んだ時、途轍もないプレッシャーが発生し、木々に止まっていた鳥達が逃げるように飛び立った。

「!! そこか!!」

すぐさまジンはバスターブレードを抜くと跳躍し、鳥達が飛び立った場所へ振り下ろした。

振り下ろされたバスターブレードが何かに当たり、衝撃波が木々を吹き飛ばし、砂埃を上げた。

やがて砂埃が納まると、そこには衝撃でできた巨大なクレーターの中央で、2メートル半はあろうかという長刀でバスターブレードを受け止めているジンと瓜二つの男の姿があった。

「フフフ………久しぶりだな………ジン」

顔を上げるジンと瓜二つの男。

………否、ただ1つ、オッドアイの色が左目が青、右目が赤と左右反転していた。

「!! やはり貴様だったのか………エン!!」

「フッ!!」

エンと呼ばれた男は長刀をバッと振って、ジンを振り払う。

「うわっ!!」

ジンはバック宙するようにして受け身を取り着地する。

そして、エンを睨みつける。

「相変わらずのようだな………我が不出来なる弟よ」

「俺は兄さんとは………アンタとは違う!!」

普段のクールさからは想像もできない激情したようすで言うジン。

「ならば来るがいい………どれほど使えるようになったか………見極めてやろう」

エンがそう言った瞬間、空中に呪法陣が出現し、中から右背中に片翼に漆黒のカラーリングのオニの改造機………漆黒鬼が出現した。

「舐めるな!!」

それに呼応するかのように、ジンもJブレイダーを呼び出す。











「兄!? ジンくんに兄がいたのか!?」

PFに乗り、ジンを追っているガイアセイバーズ達。

通信機越しにサクラから事情を聞く機龍達。

「はい………ジンの双子の兄………エン・ミスラトル。嘗て力を求めるあまり、アルサレアを裏切り、ヴァリムへと就いたんです」

「そんな………自分の母国を裏切るなんて………」

「しかも、その際に彼は………自分の家族を殺したんです!!」

「「「「「ええーーーーーっ!!」」」」」

あまりの話に声を挙げる3−A一同。

「そして、ジンだけが奇跡的に一命を取り留めたんです」

「なる程………つまり、ジンくんにとって兄であるエンはまさに仇というわけか………」

「はい………でも」

「でも? どうした?」

「エンはアルサレア戦役でジンに倒され………戦死したんです」

「なっ!!」

「「「「「ええーーーーーっ!!」」」」」

再び驚愕の声が挙がる。

「じゃ、じゃあ、あの写真に写っていたのは一体!?」

「まさか………怨霊!?」

混乱するネギ達。

と、

「………反魂の術」

刹那がボソリと呟いた。

「反魂の術? 桜咲くん、それは一体?」

「呪術の中でも禁忌とされる高等術です………この世に恨みや未練を持つ死者の魂を黄泉路の国から呼び出し、蘇生させる禁術………」

「そんな術が………」

「兎も角、急ぐんだ!! ジンくんといえど、今の冷静さを欠いた状態では危ない!!」

「「「「「了解!!」」」」」











その頃、ジンとエンは………

「でぇやーーーーっ!!」

「フ………」

Jブレイダーと漆黒鬼は、ハイパーバスターブレードと機体の全長よりも長い日本刀型の長刀………黒炎を操り、地上で斬り合う。

あまりの激しい打ち合いに、刃が交えるたびに火花がプラズマのように飛び散る。

その激しさは、お互いが避けた際に木や岩に斬撃が当たると、切断面が摩擦で燃え上がるほどだった。

と、2人が互いの斬撃を受け止め合い組み合った。

「ほお………前よりさらにできるようになったな………何がお前を強くした?」

「貴様に答える必要はない!!」

「フン………」

ここで漆黒鬼の前蹴りが炸裂し、Jブレイダーが後ろに転がる。

「ぐおっ!!………くっ!!」

Jブレイダーは、左手に大口径ハンドガンも持つと漆黒鬼に向かって数発発砲した。

「無駄だ………」

だが、漆黒鬼は左手の黒炎を手首を回して回転させ、銃弾を絡め取ると一直線に地面に並べた。

「お返ししよう………ハッ!!」

そして、黒炎で打ち返した。

「チッ!! てやぁぁぁーーーーっ!!」

ハイパーバスターブレードで銃弾を真っ二つにして逸らすJブレイダー。

無言に睨み合う2体。

「何故もっと力を求めない? お前ならできるはずだ………」

「言ったはずだ………俺は………アンタとは違う!!」

「愚かだな………」

漆黒鬼が居合いのような構えをとる。

「!!」

それを見て、緊急回避をとるJブレイダー。

次の瞬間!!

「………次元斬………」

とエンが呟き、漆黒鬼が黒炎を振ると、なんと剣風だけで正面にあった全ての物が斬り刻まれた!!

「ぐうっ!!」

[左腕欠損!! エネルギー供給、カットします!!]

完全に逃げ切れなかったJブレイダーも左腕を持っていかれた。

「………幻影剣………」

さらに今度は、漆黒鬼の周りに結晶状の剣が無数に現れ、Jブレイダー目掛けて飛んでいった。

「ぬうっ!!」

Jブレイダーは残った右腕だけで、ハイパーバスターブレードを振り、幻影剣を叩き落す。

しかし、幻影剣は段々と数を増していき、捌き切れなかったものがJブレイダーにダメージを与えていく。

[損傷率、徐々に増大!! ジンマスター!! このままでは!!]

「分かっている!!」

苛立ち気にジンが叫んだ瞬間!!

幻影剣の1本がJブレイダーの右足を貫いた。

「!! しまった!!」

[右足損傷!! 姿勢維持、できません!!]

膝を着くJブレイダー。

その瞬間、漆黒鬼は一瞬で接近し、黒炎をコックピットに突き付けた。

「終わりだな………」

「くぅっ!!」

最後の抵抗とばかりにモニター越しにエンを睨みつけるジン。

「フフフ………良い目だ………憎しみに溢れたな………」

エンがそう言って、漆黒鬼が黒炎を振りかぶった瞬間!!

発砲音がして、散弾が漆黒鬼目掛けて飛んできた!!

「むっ?」

しかし、漆黒鬼は黒炎を一振りしただけで、全て斬り落としてしまう。

「何者だ?」

エンが、銃弾が飛んできた方向を見やると、ショットガンを構えたJフェニックスカスタムが降り立った。

「おいおい………散弾を一振りで斬り落とすなんて………どんな斬撃だよ?」

ショットガンをしまいながら、今度は二刀を抜き放つJフェニックス。

「リーダー!!」

「ジンくん、独断先行は重大な軍規違反だぞ」

「ジ〜〜〜〜〜ン!!」

「「「「「ジンさ〜〜〜〜ん!!」」」」」

さらに遅れて、Jランチャー・サクラスペシャルと3−A組が参上した。

「サクラ!! 皆!!」

「大丈夫、ジン!?」

「アンタ、ジンさんに何すんのよ!!」

「いくらお兄さんだからって許せませんよ!!」

ジンを守るように、展開するサクラと3−A組。

「よかろう………纏めて殺してやろう………」

それを見て、不敵な微笑を浮かべるとゆっくりと歩を進める漆黒鬼。

「来るアルか!!」

「掛かってきなさいよ!!」

得物を構えて臨戦態勢を取る3−A組。

と、しかし、

「皆、下がっていろ。コイツの相手は俺がする」

機龍が一歩前に出て、漆黒鬼の前に立ちはだかった。

「機龍さん!?」

「ちょっと、何言ってるんですか!?」

「残念だが、君達が相手をできるレベルではない」

「そんなこと………」

ない、と言おうとしたアスナが黙り込んだ。

漆黒鬼から凄まじいまでのプレッシャーが放たれて始めたからだ。

「な………何………コレ………」

「こ………恐い………」

「ハア………ハア………息が………できない………」

(バカな! この私が震えているだと!?)

先程の基地でのジンと同じくらい………いや、それ以上の殺気を当てられ、全員が………あのエヴァまでもが息が詰まりそうになる。

「フッ………他愛もない………この程度で動けなくなるとはな………」

エンは失望したような表情を浮かべると、呪術を発動させようとする。

と、そこへ!!

「貴様の相手は俺だと言った筈だ!!」

Jフェニックスが二刀で斬り掛かった。

「むっ………」

黒炎で受け止めると、後ろへ飛んで距離を取る漆黒鬼。

「ほう………二刀流か………だが………私には勝てんぞ」

「どうかな!!」

再び斬り掛かるJフェニックス。

二刀流と長刀が激しく斬り結びながら、上空へと舞い上がる。

「リーダー!! クッ!!」

慌てて割って入ろうとするJブレイダーだったが、損傷が大きく、まともに動かない。

「ジンさん! 無茶ですよ!!」

「待っててな、今、ウチが直したるわ!!」

Jブレイダーに駆け寄るGウイング(このかアーティファクト装備型)。

「そんな悠長なことを言ってられるか!! ヤツのとの決着は俺が!!」

それを振り払おうとした時、

「バカーーーーーッ!!」

サクラの怒声と共にJランチャーが、Jブレイダーにキックをお見舞いした。

「ぐおっ!?」

「「「「「へっ!?」」」」」

あまりの光景に目が点になる3−A組。

「サ、サクラ!?」

「ジン!! この前言ったこと、もう忘れちゃったの!!」

「えっ!?」

「………心配してる人がいるって、忘れないでよ」

「あ!………」

Jブレイダーはハイパーバスターブレードを杖代わりに立ち上がる。

「………そうだったな………スマン、サクラ」

「ジン………」

通信モニター越しに見つめ合う2人。

と、

「「「「「ゴホン、ゴホン………」」」」」

3−A組がワザとらしく咳払いする。

「御2人供、失礼ですがそういうことは戦闘の後にしていただけませんか?」

皆を代表するようにあやかが言う。

「あ、いや………スマン………」

「ほえぇぇぇ〜〜〜………」

ジンは珍しく照れた表情を浮かべ、サクラも頬を染めるのだった。

「よし!! 機龍さんの援護に行くわよ!!」

「「「「「おお〜〜〜〜〜っ!!」」」」」











一方その頃、漆黒鬼と戦うJフェニックスは………

相変わらず、空中で激しい斬り合いを続けていた。

(ぬう………コレほどの長刀を持ちながら、何と柔軟な太刀筋、素早い連撃………しかも1撃1撃が重い!!)

しかし、段々とJフェニックスは防戦一方となる。

「どうした? さっきから防いでばかりだぞ?」

「くっ!!」

「ハッ!!」

繰り出された一振りで、弾き飛ばされるJフェニックス。

「どわっ!!………何の!!」

だが、すぐにスラスターを吹かし、姿勢制御をして体勢を立て直す。

そして、漆黒鬼にカメラを合わせる。

が、

「!? いない!! どこへ行った!?」

そこには既に漆黒鬼の姿はなかった。

次の瞬間!!

「後ろだ………」

漆黒鬼は、いきなりJフェニックスの後ろに姿を見せた。

「なっ!!」

「終わりだ………」

黒炎がJフェニックスを両断しようとしたその時!!

ガキィンッという音がして、黒炎が巨大な剣で受け止められた。

それはこのかのアーティファクトで損傷を修復したJブレイダーのハイパーバスターブレードだった。

「エン!!」

「むう?………」

「ジンくん!!」

そのまま漆黒鬼を弾き飛ばすJブレイダー。

「「「「「機龍(さん)(リーダー)!!」」」」」

遅れて、Jランチャーと3−A組も、機龍の周りに展開する。

「皆!! 大丈夫なのか!?」

「ハイ!! 問題ありません!!」

「いつまでもあんなのにビビッてられないわよ!!」

全員が再び得物を構える。

「フッ………力無き者達が集まったところで、何ができる?」

「知らないんか? 1人1人の力は小さくても、1つに集めれば無敵なんやで!!」

「戯言を………幻影剣」

幻影剣を無数に飛ばす漆黒鬼。

だが!!

「えーーーーいっ!!」

前に出たGヴァルキューレがハマノツルギを一振りして掻き消す。

「何!?」

エンは初めて驚愕の表情を浮かべた。

「チェストォォォォォォーーーーーーーッ!!」

「ハアァァァァァーーーーーーーッ!!」

そこへ、さらにJフェニックスとJブレイダーが飛び出し、2人掛かりで攻撃を加える。

「フッ………無駄だ」

しかし、漆黒鬼は難なく2人掛かりの攻撃をいなす。

「2人掛かりで、尚いなすか………」

「だが………それぐらい予想済みだ!!」

いきなり、バッと漆黒鬼から離れる2機。

「む?」

そしてそこへ!!

「闇の吹雪!!」

「魔法の射手・戒めの風矢!!」

黒い吹雪が左腕ごと黒炎を凍らせ、風の矢が鎖となってさらにその上から封じる。

「小賢しい………」

封を外そうとした時!!

「斬空閃!!」

「喰らうでござる!! 大手裏剣!!」

「ホアッターーーーーッ!! 布槍術!!」

「シュツルム・アングリフ!!」

間髪入れず、今度は武闘四天王の一斉攻撃が襲い掛かる。

「ぬう! おのれ………」

だが、漆黒鬼の損傷は少し装甲が欠けた程度だった。

「耐え抜いた!?」

「しぶといでござるな〜」

「だが、私達の役目はここまでだ」

「後は任せたアル!!」

離脱する武闘四天王。

「逃がさん………」

漆黒鬼が追撃しようとすると、後ろから弾丸が無数に命中した。

「む?………」

大した損傷はなかったが、漆黒鬼の注意はそちらに向く。

そこにはバード・ファミリアを周りに展開したGマジシャンが構えていた。

「…………お願い!」

ザジの命令と共に、バード・ファミリア達が漆黒鬼の周りを飛び回り攻撃を加える。

「くっ!! 力無き者が!!」

ここでついに、エンは怒りを露にする。

黒炎と左腕に纏わり付いていた氷と風の鎖を強引に外すと、バード・ファミリアを斬り落とそうとする。

「Gボーーーールッ!!」

しかし、またも背後からビーム粒子のボールが当たり爆発する。

「ぐわっ!! 貴様!!」

怒声と共にGノーベルに襲い掛かる漆黒鬼。

「うわわわわっ!?」

「まき絵、離れて!! ハリケーントルネード!!」

だが、地上のGマーメイドから発せられた竜巻が漆黒鬼を飲み込む。

「うおおおぉぉぉっ!?」

「まだ続きますわよ!! フラワーハリケーン!!」

さらにGレディが、ハリケーントルネードにフラワーハリケーンの花びらを乗せる。

竜巻内で無数の爆発光が挙がる。

竜巻が晴れると、右足を失った漆黒鬼が姿を見せた。

「おのれぇぇぇぇっ!!」

最早激昂状態となるエン。

その隙を付くようにGジェットとJランチャー・サクラスペシャルが全武装を展開する。

「行くよ〜〜〜〜〜っ!!」

[フルファイヤ!!]

ミサイル、レーザー、ビーム、実弾の嵐が漆黒鬼へと向かう。

「調子に乗るなぁぁぁぁーーーーーっ!!」

しかし、漆黒鬼はビームとレーザー回避し、ミサイルと実弾を黒炎で斬り落とした。

「おっと、本命はこっちや!!」

そこへ、上空からメテオハンマーを構えたGウルフが攻め掛かる。

「!!」

「終わりや!! 無に帰せぇぇぇぇぇぇっ!!」

メテオハンマーを漆黒鬼に振り下ろす。

「ぐうぅぅぅぅっ!!」

右手で受け止める漆黒鬼。

しかし、メテオハンマーに内蔵された超振動装置によって受け止めた腕が分子崩壊を起こして消えていく。

「!! 何!?」

そのまま、メテオハンマーは本体へと迫る。

「チイィッ!!」

咄嗟に漆黒鬼は右腕を自切し、離脱した。

ボロボロになった漆黒鬼の前に再び展開するガイアセイバーズ。

「どうだ!!」

「これが私達の力よ!!」

ネギとアスナが勝ち誇ったように言う。

だが、次の瞬間!!

まるで映像を巻き戻ししたかのように、漆黒鬼の損傷が再生した。

「「「「「「なっ!?」」」」」」

驚愕する一同。

「そんな………」

「反則じゃない!!」

「各員、臨戦態勢を取れ!!」

機龍の号令と共に、得物を構え直す一同。

しかし………

「なるほど………言うだけのことはあるな………今日のところは退いてやろう………」

「何!?」

漆黒鬼の片翼が自機を包み込む。

「しかし、忘れるな………いずれお前達は私に殺される運命にあるのだということを………」

そして次の瞬間、黒い羽根が舞い散り、漆黒鬼は姿を消した。

「エン・ミスラトル………恐ろしい敵だった………」

「もし今度現れたら………僕達は勝てるんでしょうか?」

不安そうに言うネギ。

「大丈夫だ」

それに答えたのは他ならぬジンだった。

「ジンさん………」

「例えヤツが何度来ようと、俺の………いや! 俺達の敵じゃない!!」

「その通り、我々には奴等にはない力がある」

機龍が同意する。

「その力とは?」

「決まっている………仲間を信じる心だ」

その言葉に誰もが無言で同意するのだった。

「よし! 全員帰還せよ!!」

「「「「「了解!!」」」」」

夕日の中、機龍達は仲間を信じる心を再確認し、基地へ帰るのだった。









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