第64話


昼休み、麻帆良学園都市内の一角………

「コラーーーーッ!! お前達!! 何をやっとるか!!」

路上に屯って、タバコを吸っている不良達に怒声を浴びせる学園広域生活指導員『鬼の新田』こと、新田教諭。

普通の不良達なら新田の迫力に負け、逃げ出すか説教を喰らうところだ。

しかし、今回の相手は一筋縄ではいかなかった。

「オイオイ、見ろよ、新田だぜ」

「あん? 何だよ、ウゼェーな」

不良達は新田を一瞥すると、再びタバコを吹かす。

「お前達、未成年だろ!! タバコなんか吸って良いと思ってるのか!?」

「ダリィ〜な………」

新田は説教を始めるが、不良達は意に介さない。

「オイ、コラ!! 聞いているのか!?」

「うっせぇ!! 化石ジジィ!!」

と、不良の1人立ち上がると、新田に蹴りを入れるという暴挙に出た。

「うわっ!! 教師に手を上げるとは何事だ!!」

尻餅を搗きながらも、新田は毅然とした態度を崩さない。

「うるせぇんだよ!! 俺は偉そうに説教垂れるヤツが大嫌いなんだよ!!」

不良は尻餅を搗いている新田にさらに追い討ちを掛けようとメリケンを填めた手を振り上げる。

「コ、コラッ!! やめなさい!!」

新田の抗議も虚しく、拳が振り下ろされ、新田に当たる………

と思われた瞬間!!

横から伸びてきた手が不良の拳を受け止めた。

「あん?」

「何をやってんだ、貴様?」

「!! 機龍くん!!」

いつの間にか新田の隣に機龍が現れていた。

「何だ、テメェーは!!」

不良は受け止められた手を引くと、今度は機龍に向けて放つ。

だが、機龍はあっさりとその拳をかわすと、不良の背中を掴んで両腕でリフトアップする。

「おわっ!? この、降ろせ!!」

「あいよ」

そしてそのまま、近くのゴミ箱へ放り投げた。

「ギャアッ!!」

ゴミ箱に放り込まれ、気絶する不良。

「なっ!!」

「テメェーーーッ!!」

仲間がやられたことで逆上したのか、他の不良達も立ち上がり、機龍を睨みつける。

「おやっさん、大丈夫ですか?」

しかし、機龍はそれを気にも留めず、新田に手を貸し立ち上がらせている。

因みに、おやっさんというのは、機龍が新田に親しみと尊敬を込めて呼んでいる愛称である。(もちろん、由来は仮面ラ○ダーの立花藤○衛から)

「あ、ああ。それより機龍くん、早く逃げ………」

「うおりゃーーーっ!!」

別の不良が機龍に飛びかかる。

「甘い」

しかし、それよりも早く、機龍がアイアンクローで不良の喉を掴む。

「ぎゃっ!!」

「ラ○ダァァァァーーーーーきりもみシュゥゥゥゥーーーーーットッ!!」

そのまま再び両腕でリフトアップすると、回転させて投げ飛ばした。

「うぎゃぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

遥か上空へ舞い上げられた不良は、やがて真っ逆さまに落下し、地面から下半身が生えている状態となった。

「コノヤローーーーッ!!」

別の不良が飛び蹴りを入れてきたのをかわし、顔面に肘を叩き込む。

「へげっ!!」

「最後はお前だな」

残った1人に向かって言い放つ機龍。

「クソッタレめ!!」

最後の不良が機龍へと突進する。

「むんっ!!」

それを受け止めると、右肩に逆さまに抱え上げ、足から固定する。

「トオッ!!」

そしてそのままジャンプ!!

「キ○肉バスター!!」

そして勢い良く着地した!!

「げぼっ!!」

吐血して倒れる不良。

「これに懲りたら、もう不良行為はやめることだな」

倒れている不良達に向かって言う機龍。

新田はその後ろで事の成り行きを複雑そうな表情で見ていたのだった。











放課後、日没後………

「ういぃ〜〜〜、さっちゃん、もう1杯」

屋台超包子のカウンターにて大量に酒を飲んで泥酔している新田。

「新田先生! 飲みすぎですよ!!」

それを止めようとしている連れ合いの瀬流彦。

〈そうですよ。もうやめたほうが………〉

五月も新田を気遣う。

「構わん、飲ませてくれ〜〜」

今の新田は、普段からは想像できないような情けない姿だ。

と、そこへ、

「こんばんは、四葉くん。炒飯と餃子、それと麻婆豆腐頼むよ」

機龍がやってきて、新田の隣へ座った。

〈あ、はい、ただいま〉

調理に掛かる五月。

「おお〜〜、機龍くん………」

「あれ? おやっさん、どうしたんですか? そんなに酔っ払って」

「すまない機龍くん。どういうわけか新田先生、落ち込んでて………」

「いや〜〜、どうだね? 機龍くんも1杯」

新田が機龍に酒を勧める。

「あ、いえ、自分は未成年ですので………」

「ああ〜〜、そうだったな。では、瀬流彦くん。代わりに飲みたまえ」

「ええ〜〜〜、僕ですか!?」

「私の酒が飲めんのか!!」

「ひいぃぃぃぃ〜〜〜〜〜(涙)!!」









閉店間近となった超包子のカウンターに残る3人の影………

泥酔しながらも相変わらず酒を飲み続けている新田。

カウンターに突っ伏して、完全潰れている瀬流彦。

そんな2人を気遣って残っている機龍の3人だった。

「ういぃぃぃ〜〜〜………」

「おやっさん、もういい加減にした方が良いですよ。飲みすぎは身体に毒ですし」

流石に心配になって機龍も、新田に静止を促がす。

「う〜〜〜、放って置いてくれないないか………」

そう言って、また酒をかっくらう新田。

「一体、どうしたんですか、おやっさんらしくないですよ」

と機龍が言うと、不意に新田は酒を飲む手を止めて、陰りのある表情になる。

「………実はな………正直、教師としての自信を失くしてきてしまってな」

「え!?」

思いも寄らぬ新田の言葉に驚愕する。

「昼間のことですか? あんなの偶々ですよ、そういう事もありますって」

「あれが始めてではないのさ………よくいるんだよ。私が注意しても聞く耳持たず、それどころか私に暴力を加える者が不良が………」

そう言う新田の顔はさらに陰りを帯びていた。

「それだけじゃない………最近、授業をしていても生徒に舐められるようになってな………ボイコットする生徒まで出る始末だ」

「おやっさん………」

「やはり、私のような古い人間は時代の波に呑まれ、消え行く運命にあるのかもしれん………」

自嘲気味の顔をしながら新田は、機龍を見る。

「若さとバイタリティー、情熱に溢れた君が羨ましいよ………私の若い頃を見ているようだ」

「何言ってるんですか、おやっさん!! 情熱に歳なんか関係ありませんよ!!」

機龍はバッと立ち上がった。

「え!?」

「そう!! 心に太陽にも負けない熱さと終わらない夢があれば、人は幾つになっても輝いていられるのだーーーーっ!!」

ポーズを取りながら、機龍は熱く、そりゃ〜もう熱く語った。

「…………」

新田は黙って聞いていたが、フッと笑った。

「………ありがとう、機龍くん。君なりの励ましなんだろうな」

新田は、コップに残っていた酒を飲み干すと、勘定をカウンターに置いて立ち上がる。

「ヒック! さっちゃん、ご馳走様。どうもありがとう」

そのまま帰路に着くが、やはり飲み過ぎているのか足元が覚束ない。

「ああ! ちょっと!! しょうがないな………四葉くん、お金ここ置いとくよ。おやっさーーーん、送りますよ!!」

機龍は同じように勘定をカウンターに置くと、瀬流彦を肩に担ぐと、新田の後を追うのだった。











同時刻、麻帆良某所………

「それで………尻尾巻いて逃げてきたのか?」

「す、すいやせん………」

昼間、機龍にやられた不良達が5人の目上らしい不良達に睨まれていた。

「まったく何やってやがる」

「まあ、相手があの神薙 機龍じゃしょうがないだろ」

黒色で背中に初心者マークの付いた学ランを着た不良と、赤色で背中にドクロマークの付いた学ランを着た不良が言う。

「最近、やたらと広域指導員やら先公やらの戦力が強化されてるからな」

「ここいらで、俺達の力を見せ付ける必要があるな」

黄色で背中に渦巻きマークの付いた学ランを着た不良と、水色で背中に十字マークの付いた学ランを着た不良が言葉を繋げる。

「よし、手始めに、その神薙って先公を血祭りに挙げてやるか」

そして、最後にリーダー格らしき緑色で背中に星のマークを付けた学ランを着た男が結論を出した。

「し、しかし、かなりの実力者ですよ! 一体どうやって………」

「ク〜〜〜クックックック………バカかお前? アイツは先公だぜ」

黄色い学ランを着た不良がパソコンを弄り始める。

「ヤツのクラスの生徒でも何でも掻っ攫ってくりゃいいだろ」

「!! なるほど!! 人質にするんですね!!」

その手があったか、という顔になる下っ端の不良達。

「それと人数を集めろ。100人ぐらい」

「ひゃ、100人ですか!?」

と、今度は、赤い学ランの不良の命令に驚く。

「そうだ、我々の強さを見せ付けるには徹底的にやる必要がある」

「二度と起き上がれない身体にしてやれ」

「決行は明日………我々『毛炉炉小隊』の力を見せ付けてやれ!!」

リーダー格の緑色の学ランの不良が高らかに演説し、そして………

「ゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロ」

「タマタマタマタマタマタマタマタマ」

「ギロギロギロギロギロギロギロギロ」

「クルクルクルクルクルクルクルクル」

「ドロドロドロドロドロドロドロドロ」

何故か共鳴し始めた………











翌日の放課後………

寮へ向かって歩いている真名、ネギ、のどか。

「ネギ先生、最近めっきり腕を上げたじゃないか」

「え? そうですか?」

「私も、逞しくなってると思います」

3人で会話して歩いていると、人気の無い路地裏に入る。

すると、数十人の不良達が3人を取り囲んだ。

「キャア!!」

「むっ!?」

「何ですか!? 貴方達は!?」

「神薙 機龍のクラスのヤツだな?」

不良の1人が前に出てきて言う。

「だったら何だ?」

「一緒に来てもらおうか」

「断る!!」

「ならば力ずくだ!!」

不良達が一斉に襲い掛かる。

「無駄だ!!」

しかし、真名は素早く隠し持っていたデザートイーグルを抜くと、次々と不良を撃っていく。(注:ゴム弾です)

「「「「ギャアァァァァーーーーーッ!!」」」」

「なっ!? この女、銃なんか持ってやがる!!」

「クソッ!! ガキの方を狙え!!」

真名には敵わないと思ったのか、不良達はネギの方に標的を切り替える。

「肘打ち!! 裏拳!! 正拳!! トゥリャー!!」

だが、ネギも次々に不良達をブチのめしていく。

「「「「ウギャァァァァーーーーーッ!!」」」」

「このガキもメッチャ強えぇ!!」

「コナクソ!!」

飛び蹴りを入れてきた不良をタワー・ブ○ッジを掛けると、そのままジャンプして逆さまになる。

「逆タワー・ブ○ッジ!!」

「ゲボッ!!」

またも1人地に沈める。

しかし、ネギと真名の快進撃もここまでだった。

「そこまでだ!!」

「キャア!!」

いつの間にか、のどかが不良に捕まり、顔にナイフを突き付けられていた。

「!! 宮崎!!」

「しまった!! のどかさん!!」

「動くな!! 動くとコイツの顔に一生残る傷を付けることになるぞ!!」

「卑怯な!!」

「うるせぇ!! 武器を捨てろ!!」

仕方なく真名とネギは、デザートイーグルと杖を捨てる。

「よ〜〜し、それじゃ、俺達についてきて貰おうか? 妙な真似はするんじゃねーぞ」

「くうぅ………」

「不覚だ………」

2人は苦い顔を浮かべるしかなかった………











一方その頃、麻帆良学園女子中等部職員室………

新田は自分の机に腰掛け、深くタメ息を吐いていた。

と、懐から1つの封筒を取り出す。

封筒には『辞表』と書かれていた。

(やはり、私にはもう………)

その様子を離れた自分の机から窺っている機龍。

(おやっさん、まだ昨日のことが尾を引いてるのかな?………)

気になって声を掛けようとした時、自分の机の電話が鳴った。

「おっと………はい、麻帆良学園女子中等部職員室です」

「神薙 機龍は入るか?」

「はい、私ですが………」

「お前のクラスのやつを預かっている」

「えっ!?」

一瞬、我が耳を疑う機龍。

「どういう事だ!?」

思わず声を荒げる。

何事かと思った他の職員が注目する。

「返して欲しかったら、今すぐ1人で街外れの廃倉庫へ来い。他の奴等に知らせたら、人質の命の保障はない」

そう言って電話は一方的に切れた。

「もしもし!! もしもし!! チッ!!」

投げ捨てるように受話器を置く機龍。

「どうしたんですか、機龍先生? 今の電話は一体?」

「スイマセン!! ちょっと失礼します!!」

瀬流彦が声を掛けて来たが、それを無視して隣を通り抜けると、慌しく職員室を出て行った。

「な、何だ!?」

「さあ〜?」

機龍の慌てぶりに首を傾げる職員一同。

(まさか!?………)

と、ただ1人、新田が悪い予感を覚えていた。











街外れの廃倉庫………

軽く100人はいる不良達が、機龍の到着を今か今かと待ちわびていた。

奥の方では、真名、ネギ、のどかの3人が縄で縛られ、床に座らされていた。

「すみません、ネギせんせー、真名さん………私のせいで………」

「いえ、のどかさんのせいじゃありませんよ」

「大丈夫だ、必ず機龍が助けに来てくれる」

機龍の助けを信じ、じっと待つ3人。

「ゲ〜〜ロゲロ、残念だな、今日がその機龍ってヤツの最後の日だ」

それ聞いて、小馬鹿にしたような笑みを向ける緑色の学ランを着た不良。

「機龍はお前達のような連中に負けない!」

「そうです!!」

「そ、そうなんです!!」

即座に反論する3人。

緑色の学ランを着た不良が再び何かを言おうとした時、

「毛炉炉さん!! 来やしたぜ!!」

不良の1人が声を挙げた。

見ると、開かれた倉庫の入り口の逆光の中に機龍が立っていた。

ゆっくりと、倉庫の中に入ってくる。

途端に不良達が周りを取り囲む。

「ゲ〜〜ロゲロ、逃げずによく来たな」

水色、黄色、赤色、黒色、緑色の学ランを来た不良達が機龍の前に出る。

「何だ、お前達は?」

「ドロドロドロ、俺は土炉炉!!」

「ク〜〜クックック、俺は苦流流!!」

「ギロギロギロ、俺は義炉炉!!」

「タマタマタマ、俺は多間間!!」

「ゲ〜〜ロゲロゲロ、そして、俺が毛炉炉!!」

「「「「「我等!! 毛炉炉小隊!!」」」」」

バッとポーズを取る毛炉炉小隊。

不良達が紙吹雪を散らしている。

「家に帰ってガ○プラでも作ってろ!!」

しかし、機龍は冷めたツッコミを入れる。

「ゲ〜〜ロゲロゲロ、威勢が良いな。しかし、こっちには人質がいることを忘れてもらっては困るな」

毛炉炉は親指で真名達を指差す。

近くにいた不良がナイフを取り出し、真名達に突き付ける。

「むう………」

「ゲ〜〜ロゲロゲロ、よし、テメェ等、やっちまえ!!」

「へへ、人間サンドバックだぜ!!」

「オラーーーーッ!! やったれーーーーっ!!」

「「「「うおおぉぉぉーーーーーっ!!」」」」











一方、

機龍を追いかけて来ていた人物がいた。

「ゼエ、ゼエ………確かこっちに走っていったと思ったんだが………」

新田だった。

あの後、新田も機龍の後を追い職員室を飛び出していったが、歳には適わず、廃倉庫の近くで見失ってしまっていた。

「コノヤローーーーッ!!」

「死ねーーーーッ!!」

と、廃倉庫の中から、怒声と騒音が聞こえてきた。

「!?」

慌てて廃倉庫の入り口に近づいて、中を覗き見てみる。

そこには、100人近くの不良にフクロにされている機龍の姿があった。

「!! 機龍くん!!」

助けに入ろうとして、ふと思い止まる。

(いや………私が助けに入ったところで、助けには………)

自信喪失がまだ尾を引いていた。

一方、機龍は………

一方的に攻撃されて、ボロボロになり、流血までしていた。

だが、決して倒れることはなかった。

何度も何度も起き上がり、不良達を睨みつけ続けた。

「チッ!! 何てしぶとい野郎だ!!」

「貴様等の蚊が刺したような攻撃が効く………」

明らかに強がりだったが、その迫力に不良達は思わず後ずさる。

「何故だ!? 何故テメェは立ち上がる!!」

毛炉炉の質問に機龍は不敵に笑った。

「簡単だ。俺が………教師だからだ!!」

「!!」

その言葉に、一番の衝撃を受けたのは、他ならぬ新田だった。

(教師だから………そうだ!! 私だって教師だ!! ここで尻込みしてどうする!!)

「ええい!! もっとやれ!!」

「「「「うおおぉぉぉーーーーーっ!!」」」」

再び不良達が一斉に襲い掛かろうとしたその瞬間!!

「コラーーーーーーッ!! お前達ーーーーーーっ!! 何をしとるかぁぁぁーーーーーーっ!!」

新田最大の怒声が木霊した!!

空気がビリビリと震え、思わず不良達は全員固まってしまう。

その瞬間を機龍は見逃さなかった。

「ジュワッ!!」

素早く飛び上がると、身体を高速で何回もスピンさせる。

「ス○ローーーキィィィィック!!」

そして、真名達にナイフを突き付けていた不良にウルト○マンタロウのス○ローキックをお見舞いした。

「ヘベショッ!!」

「ぬお!? し、しまった!!」

素早く真名達の縄を引き千切る。

「形勢逆転だな………」

怒りを発しながら言う真名。

「ひ、怯むな!! こっちは100人いるんだぞ!!」

「それが?」

ネギがペキポキと手を鳴らす。

「覚悟しろ………溜めてた怒りはデカイぞ!!」

熊もビビりそうな睨みを効かせて言う機龍。

その時、不良達は悟った。

俺達は無事じゃすまないと………

その次の瞬間に、羅漢銭、48の殺○技、ロ○ン戦法が炸裂した。

「「「「「「ギャアァァァーーーーーーッ!!」」」」」」

不良達は高く宙を舞い、床に叩きつけられ、気絶した。

「ふう〜………終わったか」

口元の血を拭いながら言う機龍。

「機龍!! かなりやられてたが、大丈夫なのか!?」

心配した真名が駆け寄ってくる。

「大丈夫、あれぐらいで応えるような軟な鍛え方はしてないさ。それよりも………」

機龍は新田の方を見る。

「ありがとうございます、おやっさん。御蔭で助かりました」

「ハア………ハア………いやいや、私なぞ、大した役には立っておらんよ」

限界まで叫んだせいか、息切れしながら答える新田。

「いやいや、そんなことないですよ。おやっさんは………!!」

その時、機龍の視界の端にナイフを持って起き上がろうとしている毛炉炉の姿が映った。

「おやっさん!! 危ない!!」

「え!?」

「死ねやぁぁぁーーーーっ!!」

毛炉炉はナイフを持ったまま、新田に突撃する。

だが、機龍が素早く間に割って入り、自らの身体を楯にナイフを防いだ。

「ぐっ!!」

脇腹にナイフが突き刺さる。

「き、機龍くん!!」

毛炉炉を鉄拳で気絶させると、ナイフを抜く機龍。

「う!! くっ………」

途端に膝から崩れ落ち、うつ伏せに倒れた。

「機龍さん!!」

「機龍先生!!」

「機龍ッ!!」

大慌ててで駆け寄る真名達。

傷口からは血が滲み出て床に赤い水溜りを作っていく。

「しっかりしろ!! 機龍!!」

「新田先生!! 救急車を!!」

「あ! ああ!!」

「機龍先生!!」











麻帆良内の病院入り口………

「お〜〜、イテテ! やっぱ刺されると痛いもんだな〜」

ケロッとした顔で脇腹を擦る機龍。

「普通、刺されたら痛いじゃすみませんよ………」

呆れ顔でそんな機龍を見るネギ。

何と、刺された脇腹の傷は筋肉の表面で止まっていて、大事には至っていなかったため軽い治療を受け、その日に退院したのだった。

おそろるべき肉体だ………

「お前、本当は人造人間とかなんじゃないのか?」

真名まで疑惑の目を向ける。

「でも、よかったじゃないですか、大した事なくて」

「いや〜〜、寿命が縮まったよ」

のどかと新田は、純粋に機龍の無事を喜んでいる。

「じゃあ、新田先生、俺この後警備の仕事があるんで………」

「何!? 今日ぐらい休んだらどうかね?」

「こんなの怪我の内に入りませんって」

そう言って、歩みを速める機龍だったが、やはり痛かったのか、脇腹を押さえて立ち止まる。

「やれやれ………」

見かねた真名が歩み寄り、肩を貸す。

「オイオイ、真名。大丈夫だって」

「良いからこうしてろ」

「機龍さ〜〜ん、僕も手貸しますよ〜」

「わ、私も〜〜」

ネギとのどかも、それに続いて機龍を支えて去っていった。

「フフフ………やはり君は凄いな、機龍くん」

新田は笑顔でそれを見送ると、懐から辞表を取り出し破り捨てるのだった。










そして、翌日………

「コラーーーーッ!! お前達!!」

今日も麻帆良に新田の怒声が響くのだった。










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