第66話


スキー合宿2日目………

今日も一同はスキーに洒落込んでいた。

「カットバックドロップターン!!」

華麗にスノボーで技を決めるネギ。

「凄ーーーーいっ!!」

「ネギくん、カッコイイ!!」

黄色い声を送ってくる生徒に手を振って答えるネギ。

「ぬおーーーーっ!! 負けるか!!」

それに対抗意識を燃やした小太郎が、さらに難しい技に挑戦しようしたが………

「へべがっ!!」

お約束に失敗して、雪玉になってゲレンデを転がっていった。

「ギャアッ!!」

「うわっ!!」

「めぎゃっ!!」

途中、勇輝、機龍、エヴァを巻き込み、木にぶつかって止まった。

「ハラホロヒレハレ〜〜〜〜」

目をグルグルに回しって気絶する小太郎。

「テメェー!! 上等だコラ!!」

「そこに直れ!! 挽肉にしてやる!!」

「まあまあ!! 落ち着け!!」

小太郎に報復しようとする勇輝とエヴァを必死で止める機龍。

………しかし、そのこめかみには、怒りの4つ角が立っていた。

「「「「「アハハハハハ」」」」」

そんな3人に周囲の生徒達は、笑い声を挙げるのだった。











そんな様子をゲレンデの上の方から双眼鏡で覗く者達がいた。

「あれがこちらに派遣されたアルサレア軍の連中、その協力者、そして裏切り者達か………」

「あーんな連中に苦戦させられるなんて、信じらんなーい」

「うけけけけけ、でも、それも今日でおしまいだなぁ」

3つの影がそう言葉を漏らす。

デブでハゲで変なヒゲの男と、バラを持った青っぽい色の髪で化粧の濃いオカマと、カメレオンのように目がギョロギョロと動いて舌がやたらと長い狂人だった。

この3人の名は、順にロベルト・ドュヒナー、ミッシェル・パウナース、マルコ・ニナリッチ。

ヴァリム第1独立戦隊、通称『タルカス3人衆』の連中だ。

こいつ等を表す言葉として、適切なものが2つある。

濃ゆいと小悪党だ。

アルサレア戦役でグレンリーダー率いるグレン小隊に敗北して以来、碌な戦火を挙げておらず、第二地球へと左遷されて来たのだ。

3人は名誉挽回のために、機甲兵団ガイアセイバーズを倒そうと、ここまで来ていた。

「見ておれ、ガイアセイバーズとやら。今日がお前達の最後の日だ! ダ〜〜〜ッハッハッハッハ!!」

「ホ〜〜ホホホホホホ!!」

「うけけけけけけけけけ〜〜〜!!」

馬鹿笑いする3人の後ろで、頭を抱えているハクヤの姿があった。

(何故俺がこんな奴等の監視役をしなければならんのだ………)

不満タラタラの表情を隠しもせず浮かべ、ハアァ〜と深くタメ息を吐く。

ヘルキラーズ隊に配属されたタルカス3人衆の監視役にヴェルとフォルセアはハクヤを任命した。

ぶっちゃけ、厄介回しだ。

「オイ! とっとと行くぞ!! 今回の作戦はお前達が考えたもんだろ!!」

苛立ち気に3人衆に言い放つハクヤ。

「チッ!! 人が良い気分になってる時に………」

「分かったわよ! 行けば良いんでしょ、行けば!」

「ったく、最近の若いヤツは………」

ブツブツ文句を言いながら、3人衆は待機させていたキャタピラ式雪上車に乗り込んでいった。

ハクヤは一瞬、機龍達の様子を眺めると、その後に続くのだった。











その時、その光景を偶然目撃した少女がいた。

〈アレは………ハクヤさん!?〉

五月だった。

「どうしたアルか? 五月?」

疑問に思ったクーが声を掛ける。

〈あ、いえ………何でもないです〉

「ホントアルか?」

追求しようとしたクーだったが、

「クーちゃん! 競争しようよー!!」

サクラが、クーに挑戦を持ちかけてきた。

「むむむ!! 勝負を挑まれたからには、逃げるわけにはいかないアル!! 勝負アル! サクラ先生!!」

それを聞いたクーは、凄まじいスピードでゲレンデを滑り降りていった。

〈見間違いかな………ううん、あの白い髪は確かにハクヤさんだった………上の方に行ったみたいだったけど………〉

そう考えていた五月の近くには、偶然にも上行きのリフトがあった。

〈…………〉

五月は少し考えた後、意を決したようにリフトに乗り込んでいった。











そのまま、時は過ぎ………

「全員集合ーーーーっ!!」

機龍の号令に集まる生徒達。

「今日はこれで終了とする。明日は麻帆良へと帰ることとなるので、各自、宿に戻ったら荷物を纏めて置くように」

「機龍先生! さっちゃんがいません!!」

「何!?」

驚いて生徒達を見渡す機龍。

確かにそこに五月の姿は無かった。

「一体、どうしたんだ?」

「確か、最後に一緒だったのはくーふぇさんですよね? 何か知りませんか?」

クーに尋ねるネギ。

「アイヤー、分からないアルよ………いや、そういえば」

「何か思い当たる節でも?」

「確か………山の上の方を見ていた気がするアル」

「山の上の方を?」

機龍は、雪山を見上げる。

一緒に目に入った空は鉛色の雲が覆い尽くしていた。

「まさか山頂に!?」

「でも、一体どうして!?」

と、ネギ達が騒いでいると、白い粒がふわりと舞い降りてきた。

「!? 雪か!?」

そのまま雪はドンドン降り始め、風も吹雪いてきた。

「こりゃマズイ、吹雪になるぞ! 全員、ひとまず宿へ引き上げるんだ!!」

「でも、機龍さん! 四葉さんが!!」

「地元の山岳警備隊に連絡しましょう。まずは、生徒達の安全を確保しませんと」

「………分かりました」

ネギは苦い顔をしながら、生徒達を宿へと誘導して行った。

(四葉くん………無事でいてくれ)

機龍も五月の無事を祈りつつ、生徒達を誘導していった。











一方、山頂付近では………

3機のタルカス、そしてシロヤシャが吹雪の中に立っていた。

その足元には、大量の爆薬が用意されていた。

「よーし! これだけ有れば良いだろう」

集まった爆薬に満足そうにヒゲを弄りがら言うロベルト。

「そろそろ説明して貰おうか、今回の作戦について」

それを聞きながら3人衆に尋ねるハクヤ。

「ホホホホホホ、簡単よ! この爆薬で巨大な雪崩を起こして、麓にいるガイアセイバーズの連中を一気に始末するって寸法よん!!」

バラを抱えながら言うミッシェル。

ハクヤは、その作戦内容にピクリと眉を動かす。

「………無関係な民間人まで巻き添えにする気か?」

「うけけけけ。どうせヴァリムがこの星を制圧した後には、この星の連中は全員駆逐される運命にあるのだ。それがちょっと早くなるだけである」

さも当然のように言い放つマルコ。

「そんなことより、お前は侵入者がいないか、周りを見て来い」

「…………」

ハクヤは無言でその場を立ち去った。

「チッ! 愛想の無い奴じゃ」











そして、四葉は………

山頂とスキー場の丁度中間地点で、吹雪の中を山頂目指して歩いていた。

〈は………ハクヤ………さん………〉

激しい吹雪に体温と体力を根こそぎ持って行かれ、五月は限界状態になっていた。

それでも歩き続けているのは、もう1度ハクヤに会いたいという一念だった。

〈あ…………〉

しかし、とうとう力尽き、雪の上に倒れこんだ。

〈ハク………ヤ………さん………〉

そのまま、五月の意識は闇に沈んでいった。












そして、宿では………

生徒達を宿泊室に待機させ、教師陣はホールに集まって対策を練っていた。

「山岳警備隊への連絡は?」

「今、レイが電話を掛けています」

「吹雪が酷くなってきましたね………」

「四葉くんは大丈夫なのか………」

あーだこーだと話し合う教師一同だが、結局は打開策は見出せなかった。

「大変だーーーっ!!」

そこへ、レイが叫びながら走ってきた。

「どうした、レイくん。そんなに慌てて?」

「どうしたもこうしたもないですよ!! この吹雪で他のスキー場や山でも遭難者が続出して、山岳警備隊は全員出払ってしまってるんですよ!!」

「な、何だって!?」

驚愕に包まれる教師一同。

「それで、都心の方から警視庁の山岳救助レンジャー部隊を回してくれるそうですが、到着が何時になるかは分からないそうです!」

「何てことだ…………」

教師一同の脳裏に最悪の事態が浮かぶ。

と、

「自分が探しに行ってきます!」

機龍が名乗りを挙げた。

「!! リーダ………機龍先生!!」

「危険ですよ!!」

「大丈夫です。陸自にいた頃、雪山での救助訓練を受けたことあります。まだまだ腕は衰えてはいませんよ」

「しかし………」

なおも反対しようとする教師一同だったが………

「………分かった。頼んだぞ、機龍くん」

「!! 新田先生!!」

新田が承認した。

「了解! すぐ準備します!!」

そう言い残し、機龍は自分の宿泊室へと走って行った。

「新田先生、良いんですか!?」

「彼ならやってくれる。確信はないが、そんな気がするんだよ」











「よし! じゃあ、行ってくる!」

宿の入り口前で、装備を整えた機龍が集まった惑星Jのメンバーに言った。

「リーダー、本当に大丈夫なんですか?」

「やっぱり私達も一緒に………」

「いや、君達は何かあった時のために待機していてくれ」

ジンとサクラは付いて行こうとしたが、機龍はそれを制す。

「機龍、本当に大丈夫か?」

「全員とは言わないが、せめてもう2、3人は連れて行ったらどうだ?」

「いえ、万が一何かあった時にネギくん達だけじゃ苦しいですから、統率者がいないと………」

レイとアーノルドも心配そうに言うが、気丈に返す機龍。

「何かあったら遠慮なく呼んでくれ」

「すぐに駆けつけるからな」

「ありがとうございます」

レッディーとゼラルドは非常の際の救援を約束する。

「機龍さん、気をつけて」

「おう、お前は生徒達………特に近衛くんを守ってやれよ」

「え! いや、あの………了解」

顔を赤くして敬礼するゼオ。

「ま、お前は殺したって死なないからな。心配はしてないぜ」

「随分な言い様だな。まあ、そのとおりだがな」

憎まれ口のような激励をする勇輝。

「リーダー。安心してください、骨は自分が拾ってきます」

「………死ぬこと前提で行ってこいってのか?」

「あ、間違えました」

「縁起悪いんだよ!!」

相変わらず妙なボケをかますシリウス。

「まあ、兎も角、後のことは頼んだ」

「「「「「「御無事で!!」」」」」」

走り去っていく機龍を、全員が敬礼して見送った。











機龍はスノーモービル乗り場に立ち寄ると、移動の足に学園宛に経費で1機買い取った。

「よし、これがあれば雪山でも機動性を確保できる」

学園長に小言を言われそうだなと考えながら、機龍はスノーモービルに跨った。

と、その後ろに誰かが跨った。

「ん?」

「やっぱり………こんなことだと思ったよ」

「!! 真名!!」

聞きなれた声に振り返るとそこには、同じように装備を整えた真名がスノーモービルに跨っていた。

「四葉を探しに行くんだろ? 私も連れて行って貰うよ」

「ダメだ! 危険過ぎる!! 宿へ戻るんだ!!」

「イ・ヤ・だ!!」

そう言って真名は、機龍に背中からしがみ付いた。

「お、オイ!!」

「連れてってくれるまで離れないからな」

頑として引き下がらない真名。

機龍はタメ息を吐くと、スノーモービルのエンジンを点けた。

「しっかり掴ま………ってるか、もう」

「ああ」

「行くぞ!」

「了解だ!」

機龍はスノーモービルを山頂へと走らせた。











その頃、山頂とスキー場の丁度中間地点では………

膝立ちしたシロヤシャの前で、ハクヤが、千草から貰った札で式神スノーモービル隊を出現させていた。

「イーーーッ!!」

「ギーーーッ!!」

戦闘員のような奇声を発する式神隊。(実際、見た目も戦闘員のようだ)

「行け! 辺りを見回って来い!!」

「イーーーッ!!」

「ギーーーッ!!」

ハクヤの命令に従い、式神隊は散開して去って行った。

「フン………」

それを確認すると、ハクヤはシロヤシャに乗り込もうとする。

とそこへ、

「イーーーッ!!」

1体の式神が引き返してきた。

「ん? 何だ?」

「イ!! イィーーーーッ!!」

ついて来て欲しいと言ってるような仕草をする式神。

「ったく、会話機能ぐらい付けておけってんだ」

ブツクサ言いながら、ハクヤはスノーモービルの後ろに跨った。

式神はそれを確認すると、自分が来た方へスノーモービルを走らせた。

少し行くと、雪の中に誰かが倒れているのが見えてきた。

式神はその近くにスノーモービルを停めると、倒れている人を指差した。

「イーーーッ!!」

「何だ、遭難者か………放っておけ! どうせここの連中はいずれ………!!」

と、ハクヤは倒れている人の顔を見て驚く。

「四葉!? 何故ここに!?」

倒れていたのは五月だった。

「イーーー?」

「煩い!! お前は見回りに戻れ!!」

「イーーーッ!!」

怒鳴られて、慌てて立ち去る式神。

ハクヤは五月をお姫様抱っこで抱きかかえる。

その身体はかなり冷たくなっていた。

「クソ!! 確か、近くに登山者用の小屋があったな………シェン!! 聞こえるか!! すぐ来い!!」

ハクヤは無意識の内に五月を助けようといしているのだった………











一方、機龍&真名のコンビは………

「吹雪が酷くなってきたな」

「大丈夫か?」

「問題ない。惑星Jのブリザードに比べりゃ、カワイイもんさ」

吹雪を物ともせず、山頂目指して突き進んでいた。

「お〜〜い!! 四葉く〜〜〜ん!!」

「五月〜〜〜〜!! 返事をしろ〜〜〜〜!!」

五月の名を叫びながら、辺りを見回す。

「ん?」

と、真名が何かを感じ取った。

「どうした、真名?」

「何か近づいてくる………」

「四葉くんか?」

「いや、違う………もっと邪悪な気配が………」

と、次の瞬間!!

「イーーーッ!!」

「ギーーーッ!!」

雪の中からスノーモービルに乗った式神隊が飛び出してきた。

「何!?」

そのまま2人を取り囲むように展開する式神隊。

「機龍! コイツ等、式神だ!!」

魔眼で正体を見抜く真名。

「ってことは、ヴァリムが!?」

機龍がそう言った瞬間、

「イーーーッ!!」

1体の式神が、呪炎を飛ばしてきた。

「おっと!!」

しかし、難なく交わす。

「考えるのは後だ! まずはコイツ等を叩くぞ!!」

「そうだな!!」

真名はデザートイーグルを抜き、機龍は片手でスノーモービルを操りながら、もう片手に刀を持った。

「ギーーーッ!!」

「くらえ!!」

隣に並んできた式神を撃ち抜く真名。

「ギーーーッ!!」

撃ち抜かれた式神は、スノーモービルから落ち斜面を転がって行き、紙型に戻った。

「イーーーッ!!」

今度は正面から突撃してくる。

「ハッ!!」

だが、機龍が刀でスノーモービルごと斬り捨てる。

「イーーーッ!!」

爆発したスノーモービルから吹き飛ばされ、紙型に戻る式神。

「そらそら!!」

次々に式神を撃ち抜いていく真名。

と、隙を突いて隣に接近した式神が真名の両腕を掴んだ。

「あ! しまった!!」

「ギーーーッ!!」

そのまま引き摺り落とそうと、引っ張る式神。

「うわっ!! 離せ!!」

「トオッ!!」

しかし、機龍が蹴りを放ち、逆に式神を蹴落とした。

「ギーーーッ!!」

「気をつけろ!」

「すまない!」

適わないと悟ったのか、残りのスノーモービル隊は次々に引き上げていく。

「逃がすか!!」

「追いかけろ!!」

機龍と真名は、距離を取ってその後を尾行して行った。











その頃、五月は………

(暖かい………何だろう、コレ?)

ぼんやりとした意識の中、五月は目を覚ました。

視界に入ってきたのは丸太を組んでできた天井だった。

ゆっくりと身を起こしてみると、そこは山小屋の中だということを認識した。

すぐ傍に暖炉があり、炎が燃やされていた。

自分のスキーウェアは脱がされ、別の防寒着のような物を着せられ毛布まで掛けられていた。

〈あれ? 私、確か………吹雪の中で倒れて………それで………〉

あやふやな記憶を手繰り寄せていく五月。

とそこへ、扉が開き、1人の男が入ってきた。

「………気がついたか?」

〈!! ハクヤさん!!〉

ハクヤだった。

〈ハクヤさんが助けてくれたんですか? ありがとうございます〉

「………お前には借りがある。それを返しただけだ」

ハクヤは、相変わらずぶっきら棒な態度を取りながら五月に近寄る。

〈やっぱりハクヤさんは………本当は………優しい………人………で………す………〉

まだ、回復しきっていなかったのか、五月は再び倒れるように眠ってしまった。

ハクヤは、五月に毛布を掛け直してやり、再び外へと出る。

吹雪の寒さを感じながら、ハクヤの胸中には何とも言えない感情が渦巻いていた。

(優しい………俺が優しいだと?………何を馬鹿なことを………)

五月の言葉が頭の中で繰り返し響く。

「ん?」

とそこへ、何かが近づいてくるのを感じ視線を向ける。

「イーーーッ!!」

「ギーーーッ!!」

現れたのは式神隊の2体だった。

「どうした? 何があった?」

ハクヤがそう尋ねた瞬間!!

銃声がして、式神が撃ち抜かれ、紙型に戻った。

「何!?」

慌てて右腕の鎖を解くと、銃弾が飛んできた方向を睨む。

やがて、モーター音が聞こえてきて、2人乗りした1機のスノーモービルが現れた。

スノーモービルは、ハクヤの前に横滑りしながら停まった。

「お前は!?」

「ハクヤ!? やはりヴァリムが来ていたのか!!」

乗っていた2人………機龍と真名は飛び降りると、デザートイーグルと二刀を構えた。

「神薙!? どうやってここに………いや、そんなことはどうでもいいか………今こそ決着を………」

と言いかけて、ハクヤはハッと山小屋の方を振り向いた。

「? どうした?」

怪しむ機龍。

ハクヤは、少し苦悩したような顔をすると、鎖を右腕に巻き直した。

「!? 何の積もりだ!?」

「四葉がこの中で寝ている。連れて帰れ」

「何だって!?」

「!? 四葉くんが!?」

驚く機龍と真名。

「後、タルカス3人衆が山頂で雪崩を起こし、お前達全員を生き埋めにする作戦を立てている」

「何!?」

「ハクヤ!! お前………」

「勘違いするな。お前達の味方をするわけではない。ただ、今回の作戦は気に入らない………それだけのことだ」

ハクヤは、そう言い残すと山小屋の隣に待機させてあったシロヤシャに乗り込み、空へと去って行った。

「やっぱり、あいつは………」

「機龍、感傷に浸ってる時間はないぞ」

「おっと、そうだったな。真名は四葉くんを連れて下山してくれ。俺は山頂へ行く」

「分かった、気をつけろよ」

「ああ! コール! フェニックス!!」

左腕の腕時計通信機に向かって叫ぶと、魔法陣が出現し、Jフェニックスが現れる。

「トオッ!!」

機龍はすぐさまコックピットに飛び乗り、バーニアを吹かし、山頂へと飛んで行った。

「頼んだぞ、機龍」











そして、山頂では………

「よーし! 爆薬セット完了だ!!」

「じゃあ、さっさとやっちゃってちょうだい!!」

「うけけけけけ、では爆破するのだ!!」

マルコのタルカスが、爆薬にバズーカを向ける。

と、そこへ!!

「待てぇぇぇぇーーーーーーいっ!!」

上空から現れたJフェニックスが、マルコ機の頭部を踏み潰した。

「ギャアァァァーーーーーッ!!」

「マルコ!!」

「貴様は!?」

タルカス3人衆と距離を取って対峙するJフェニックス。

「機甲兵団ガイアセイバーズ隊長、神薙 機龍!! 見参!!」

「おのれ!! 貴様がガイアセイバーズの隊長の神薙か!?」

「そういうお前達はタルカス3人衆か………」

「あ〜〜ら、見ず知らずのアルサレアの一兵卒がアタシ達の事を知ってるなんて、光栄だわ」

バラを弄りながら言うミッシェル。

「ああ、よく知ってるよ。性格、パイロット技術、PF性能、全てにおいて五流の連中だってな」

それを聞いた途端、タルカス3人衆の額に、怒りの四つ角が立った。

「貴様ーーーッ!!」

「舐めるんじゃないわよーーーーッ!!」

「ブッ殺す!!」

一斉に襲い掛かるタルカス3人衆。

しかし、機龍は焦らず二刀を抜き、構えを取った。

「神薙二刀流………風神竜巻!!」

二刀を回転するように振り、その際発生した風圧でタルカスを3機全て上空に巻き上げた!!

「「「ギョワァァァァァァーーーーーーーッ!!」」」

「忘れもんだ、受け取れ!!」

さらに、Jフェニックスはセットされていた爆薬を取り外し、投げつけた。

タルカスにぶつかり、爆薬は爆発した。

「「「覚えてろ〜〜〜〜っ!!」」」

黒煙の尾を引いて、タルカス3人衆は空の彼方へ飛んで行った。

「任務完了!」

[お疲れさまです、少尉]










その後、機龍は下山途中だった真名と五月に合流し、宿へと戻った。

真名が勝手について行ったことで叱られそうになったが、機龍がフォローした。

翌日………

一同は麻帆良へと帰って行った。

帰りのバスの中でも、ハイテンションな3−Aの中、五月は1人静かにハクヤが残して行った防寒着を抱きしめていた。

〈ハクヤさん………〉

(ハクヤ………お前はやっぱり………)

思い人へさらなる思いを募らせる五月と、ライバルへの戸惑いを隠せずにいる機龍。

果たして、この物語に行く末は!?










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