ブレイブVII 愛しき者と再会する勇気



「ふ〜、時間が掛かってしまったわね」

空港に一人の少女が降り立った。美しく長い金色の髪を持ち、動きに優雅さを感じ、ゴルフクラブを入れる袋のような形状の荷物とかばんを持っていた。

「さて、麻帆良学園は・・・・と・・・」

そう言うと、少女は地図を開いて場所を確認し始めた。その時少女は気づいていないが、表情が少しにやけていた。

「ふふ・・・・待っててね。ネギ・・・・・・・和樹ちゃん」

少女は嬉しそうに微笑むと、その場を後にした。


場所は変わり葵高等部2−B。教室内では朝からとある話題で持ちきりだった。

「仲丸聞いたか!!明日ウチのクラスに転校生がくるそうだ」
「何!?そいつは金持ちか美人か策士家か!?」

仲丸は目を¥マークにして浮氣に詰め寄るが、具体的な情報はなく、チラホラと情報があるだけだった。

「一つ確かなのは、日本人じゃないって事だ。確か、イギリス人だったはず」
「おお!!それならありもしない日本の常識を教え込んで、我等2−Bの一員にするのも悪くないな〜〜〜!!」

仲丸がそう言い高笑いをする中、和樹は一人自分で作った弁当を食べていた。

「イギリス人・・・ねぇ」

和樹はなにかが頭で引っかかりつつあるのを感じていた。すると、クラスメイトの沙弓がパックのジュースを片手に近づいてきた。

「・・・どうしたの式森君?」
「杜崎か?あ〜実はね、仲丸がぎゃーぎゃー言ってる発言の中で、イギリス人って単語が気になってね」
「確か・・・式森君も生まれはイギリスよね?」
「うん。といっても田舎のウェールズだけどね」
「そっか・・・で、なんでイギリス人が気になるの?」
「実はね、あの中等部2−Aの子供先生いるだろ?あの子の姉で僕と同い年の娘がいて・・・さ。会えたら嬉しいなって・・・」

そう言うと、再び箸を取る和樹。すると、沙弓は残っていたジュースを飲み干し、一息つきながら和樹の側に立った。

「・・・会えるといいね」
「ありがと。杜崎がそう言うなんて珍しいね」
「私だって・・・・そこまで2−Bに堕ちてない」
「はは、ごめんごめん」

和樹はそう言って軽く謝る。それを見た沙弓はプイっと視線を窓の外へ向けた。和樹も同じく窓のほうを見ながら小さく呟いた。

「会いたいな・・・・・ネカネちゃん」


同時刻。2−A改め3−Aは、新学期最初の身体測定をしようとしていた。しかし、まき絵が倒れていると亜子から連絡があり、急遽まき絵の様子を見に行っていた。

「どうしたんですか、まき絵さん?」
「なんかね、桜通りで寝ていたらしいんよ」

亜子の説明を受け、首を傾げるネギ。すると、それを見ていた明日菜と楓が小さくネギに尋ねた。

「どうしたの、ネギ?」
「何か考え事でござるか?拙者でよければ、力になるでござるよ」
「え!・・・・いや・・・その・・・」

うやむやにしようとするネギを見て、あ〜と唸りながら明日菜はネギの頭をグシャグシャ撫でる。

「あぅ!!明日菜さ〜ん」
「あのねぇ。もう十分に巻き込まれてる身なんだから、少しは手伝わせなさい」
「自分だけで解決できないなら、誰かに頼るのも大切な事でござるよ」

そう言う二人を見たネギは、まき絵からわずかに魔力が感知された事、そしてもしかしたら別の魔法使いが絡んでいるかもしれない事を話した。

「ん〜別の魔法使いね〜」
「拙者が知る限り、ネギ坊主か和樹殿しか知らないでござるな」
「ですよね〜」

ネギが肩を落とすと、明日菜が背中をバンっと叩く。

「安心しなさい。調査するなら付き合うわよ」
「拙者もでござる。担任が困っているのを、ほっとく事は出来ないでござるよ」
「明日菜さん・・・長瀬さん」

そして放課後、ネギ・明日菜・楓の三人は桜通りにて何かが起きないか調査する事になった。そして一時間が経った頃・・・。

「暗くなってきたわね〜」
「さすがにもうここを通る人はいないですかね」
「いや、油断は禁物でござるよ。ここぞのタイミングで逃すというのが、案外あるものなのでござる」
「そうなんですか・・・・あ!誰か来ましたよ」
「どれどれ!!・・・あ、あれって本屋ちゃん?」

三人が見た方向には、震えながら歩くのどかの姿があった。

「あぅ〜・・・怖いよ〜〜〜」

ビクビクしながら歩くのどか。すると、突如一陣の風が吹いた。すると、街灯の上にマントを羽織り、魔法使いのようなトンガリ帽子を被った・・・・吸血鬼が立っていた。

「ひ・・ひひゃ!?」
「宮崎のどか・・・・・悪いが、少し血を分けてもらうぞ」

そう言うと、街灯から飛び降りのどかに迫る。

「あ、のどかさん!!」
「任せるでござる!!」

ネギを止め、楓がどこから取り出したか巨大な十字手裏剣を投げつける。

「・・・ち!!」

吸血鬼はそれを紙一重でかわすと、地面に降り立った。その時、被っていた帽子が外れ・・・そこから現れたのは・・・。

「え・・・・エヴァンジェリンさん!?」
「さすが・・・さすがあの息子だけはあるな。ネギ・スプリングフィールド先生」

3−Aの生徒であり吸血鬼、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの姿があった。

「・・・・な、なんでそれを!?それに何でこんなことをするんですか〜〜〜!?」
「フン・・・・教えておいてあげるよ先生。この世には、正義の魔法使いもいれば・・・対極の悪が存在するんだよ」

そう言うと、フラスコを取り出し、のどかに向けて放った。ネギはそれを止めようとするが間に合わず、のどかの服は破け、ネギの服の袖も凍り付いて砕けてしまった。

「さぁ・・・・付いて来い先生!!知りたいんだろう、奴のことを!!」
「ま・・・待ってください!!」

そう言うと、ネギは箒に跨り上空へと舞い上がったエヴァを追い始めた。

「楓ちゃん!!私たちも!!」
「そうでござるな」

そう言って二人も後を追おうとすると、突如何かが飛来し二人の足元に刺さった。それは、複数の小さなナイフだった。

「ケケケ・・・・・・ココヲ通リタイナラヨ・・・・」

影の中から、ガチャンと音を立てて・・・刃を逆手に持つ人形が降り立つ。

「コノチャチャゼロニ勝ッテカラニシロヤ」


「ふぅ・・・時間かかっちゃたわ・・・ここが麻帆良学園ね」

一人の少女が学園に到着した。どうやら道に迷ったらしく、結構息が上がっていた。

「それにしても、これが学園というのは信じられないわね〜。ウェールズの何倍あるのかしら・・・?」

少女が周りの建物をキョロキョロ見渡していると、突如ある方角から強い魔力同士のぶつかり合いが発せられているのを感じた。

「もぅ・・・いくら夜だからと言ってこれは・・・・もしかして・・・ネギ!?」

少女はすぐに魔力を探知し始めた。すると、発せられている二つの魔力の片方が自分の覚えのある魔力と一致した。

「大変!!すぐに助けにいかないと!!」

そう言って少女が袋を開くと、中から縦1メートル半・横15センチメートル・高さ10センチメートルの金属の箱のような物を取り出した。そしてその箱らしき物のある部分を押した次の瞬間、箱が姿を変え、十字架型の小型ガトリンク砲へと変わった。

「和樹ちゃんにも会いたいんだから・・・・・すぐに終わらせる!!」

そう言った瞬間、少女は宙へと跳躍し、一気に空へと加速していった。


「待ってください、エヴァンジェリンさん!!」
「ははは!!止めたければ本気でくるんだな!!」

ネギとエヴァが空中での攻防戦を行っていた。ネギの魔力の強さもあり攻めきれるはずが、エヴァの戦術と生徒への攻撃という意思からエヴァが優勢になっていた。

「ラステル・マ・スキル・マギステル」

ネギは詠唱キーを唱えながら杖で急降下すると、真下から魔法の射手を連続で放った。

「フン!!10歳でこの魔力か、恐れ入ったよ!!」

エヴァはフラスコ同士をぶつけ氷楯を作り出しそれを防ぐ。

(やっぱりこの人・・・凄腕なのに魔力が弱い。今だ!!)

ネギは急旋回してエヴァの前に回りこんだ。

「風花!!武装解除!!」

ネギは詠唱を終えると、エヴァの羽織っていたマントが蝙蝠となって分散した。それにより、エヴァは女子寮の上に着地した。それを見たネギもまた着地する。

「こ・・・これ僕の勝ちですね。教えてもらいますよ、何でこんな事をしたのか、そして・・・・・どうして僕の父さんの事を知っているのか・・・」
「お前の父・・・・即ち、サウザントマスターの事か?」

その言葉を聞き、ネギが愕然した。しかし次の瞬間、突如ネギは後ろから誰かに羽交い絞めにされてしまった。

「あう!!・・・・・ぐぐぐ!!」
「よくやったぞ、茶々丸」

そう、ネギを羽交い絞めにしたのは、茶々丸だったのだ。

「き、君は僕のクラスの・・・茶々丸さん・・・・」

ネギが何故といった表情をしていると、エヴァの口が開く。

「簡単のことだ。その茶々丸が、私の従者だからだよ」
「ちゃ・・・・茶々丸さんが・・・・・」
「申し訳ありませんネギ先生。マスターの命令は絶対なので」

驚くネギを拘束したまま茶々丸が答える。

「フフフ・・・・貴様の血を飲めば、私はここの呪縛から開放される。さぁ、覚悟するんだな!!」
「うわーーん!!誰か助けてーーーー!!」

ネギが泣きながら抵抗するが茶々丸の拘束が解けるわけもない。エヴァが近づきネギとの距離が1メートルとなった瞬間、茶々丸が突如ネギを離しエヴァを抱き跳躍した。その瞬間、エヴァいた場所に大量の弾丸が放たれた。そして宙から薬莢が落ち音を鳴らす。

「だ・・・・・誰だ貴様!!」
「全く。人の弟に手を出そうだなんて、それなりの覚悟はあるんでしょうね?」

声を共に一つの影がネギの前に舞い降りる。そして月を隠していた雲が消えた瞬間、月光を浴び一人の少女が現れる。その姿を見た瞬間、ネギは驚愕する。

「ね・・・・・・ネカネお姉ちゃん!!」
「ええ。・・・・“ガンシスター”ネカネ、ネギを助けるためにズバっと参上ってね♪」

そう言って、最高の笑みをネギに向けた。右手に構えた十字架型のガトリンクはエヴァたちに向けたまま。

「貴様・・・・・そのセリフは・・・」
「ええ、和樹ちゃんのお得意のセリフよ。スキルでよく使うのよね♪」
「あの男のスキルを知っているとはな。よほど互いを知った存在のようだ」
「ええ、だって私の・・・・・最高のダンナ様なんだからね♪」
「フン・・・・こざかしいわ!!やれ、茶々丸!!」
「了解、マスター」

そう言うと、茶々丸は背中から大量の小型ミサイルを発射した。そしてそれはネカネへと向けられる。

「なんの!!防御術式、『防壁の弾壁』!!」

放たれたミサイルを、ネカネはガトリンクで六亡星を描き防壁を作った。しかし、一発だけ破壊出来ず掠ったミサイルは方向を外れ・・・・初等部の共同寮の屋根へと直撃した。それにより、初等部の寮からは火の手が上がっていた。

「・・・!!弾丸により弾かれた部分での軌道・予測できませんでした!!すぐに救助と消火に向かいます!!」

そう言うと背中のブースターをフル回転し、茶々丸は初等部へと向かった。

「チ・・・・・」
「ど、どうするのお姉ちゃん!!このままじゃあそこに住んでいる初等部の皆さんが!!」
「大丈夫よ。もう動き出してると思うから」

初等部が燃えているにも関わらず、ネカネは何か策でもあるかのように平然としていた。

「貴様・・・・何を待っている?」
「ふっふっふ・・・・アレよ」

そう言ってネカネはとある方向を指さした。その方角には和樹たちの住む寮があり、そこから初等部へ繋がる道を一台の少し車体の長いパトカーが走っていた。

「ふん・・・あんなものなんぞでは」
「さて、それはどうでしょうね。そう思うならあのパトカーから聞こえる音と現象を見れば分かるわよ」

ネカネの言葉にエヴァがパトカーのほうを見て、聴覚を最大限にして聞く。すると、パトカーの中から一つの単語が叫ばれた。それは・・・。

「着火!!!!」

その単語が叫ばれた瞬間、突如白かったパトカーが変形を始め、見事に真紅のパトカーへと姿を変えた。

「な・・・・・なんだアレは!?」
「何って・・・“ウインスコード”よ。ちなみに今は変形して“ファイヤースコード”だけどね」
「だから何なのだアレは!?」
「あ!“バイクル”に“ウォルター”もいる〜♪これだけいれば安全ね♪」
「だ〜か〜ら〜なんだと聞いているんだ!!」

無視するネカネについにエヴァが切れた。するとネカネは満面の笑みを浮かべながらエヴァのほうを向いた。

「彼らはね、“平和を愛し友情を信じ、人の命を守る”者たちよ♪」

その笑みは、絶対的な信頼を持ったものだった。


場所は変わり、明日菜&楓がチャチャゼロと戦っていた。といっても、明日菜は素人なためチャチャゼロの繰り出す斬撃を回避するので精一杯だった。

「うわ!!危ない!!」
「今ノ避ケルトハ大シタモノダゼ!!」
「拙者は忘れてはござらんか?」

気配を殺していた楓が手裏剣を振りかざす。しかしそれをチャチャゼロは紙一重でかわし、逆手持ちにしていた刃を振るう。それが楓を切り裂いた。

「ケケケ!!」
「油断でござるよ」

チャチャゼロが切り裂いた楓が消え、その後ろから再び楓が攻撃を仕掛けようとした。その時、突如空にミサイルが飛び、初等部のほうに直撃した。

「な、なんなの今の!?」
「ア〜ア、誤射シチマッタカ」

明日菜の驚きにチャチャゼロは全てを悟った様子だった。すると、突如明日菜たちに向かって一台の白いパトカーが走ってきた。明日菜たちがその場をあけると、そのパトカーは変形を開始し真紅に変わり、更に加速を上げて初等部へと向かって走りだした。

「な、何・・・今の・・・・」
「明日菜殿、まだくるでござるよ」

楓の言葉に明日菜が道を空けると、緑色のロボットが飛行し、黄色のロボットが胸部の車輪を回転させ地面を走っていた。ちなみに明日菜たちのどいた道を通ったときに喋っていた言葉は・・・。

「式森隊長、私たちがいる事を忘れないでくださいーーーーー!!」
「和樹隊長〜!!待ってくれだぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

というものだった。その時、二体のロボットが言った単語を聞き楓は何かを悟ったのか、そのロボットを追って駆け出した。


場所は変わり初等部寮。そこの屋上ではミサイルによる影響で炎が燃え、最上階は火が覆っていた。下には避難した子供たちで溢れていた。

「うわ〜ん!!怖かったよ〜〜〜!!」
「煙たいよ〜〜〜〜!!」

子供たちが騒ぐ中、ブースターで飛んできた茶々丸がその場に到着した。

「あ、茶々丸〜!!」
「大丈夫ですか?」
「うん。でも、上に友達が二人大変なんだ!!助けて茶々丸さん!!」
「了解しました。待っててください」

そう言うと、茶々丸はブースターを再び全開にし、最上階へと向かった。そしてそのままガラスを破って中へと入っていった。

「大丈夫かな・・・茶々丸」
「大丈夫だよ!だって茶々丸さんだもん!!」
「でも、この火事だよ・・・いくら茶々丸でも」

子供たちが話していたその時、その場に一台の真紅のパトカーが停まった。そしてドアが開くと、赤い鎧を着た戦士が姿を見せた。

「君たち、怪我はない?」
「う・・・うん」
「だ、誰なの?」
「僕かい?僕は“ファイヤー”」

ファイヤーと名乗る戦士が説明していると、先ほどの緑と黄色のロボットも現場に到着した。

「隊長!!ぶっ飛ばしすぎです・・・」
「そ〜だぎゃ〜。おかげで追いつくの大変だったんだぎゃ」
「ごめんごめん。・・・二人とも、準備はいい?」

ファイヤーの言葉を聞き、二人は頷いた。そしてファイヤーが叫ぶ。

「ウインスペクター、出動!!」


場所は変わり初等部寮最上階。そこは、炎により発生した煙によって充満していた。

「ごほごほ!!・・・・大丈夫?」
「こほんこほん!!・・・うん、でもこのままじゃ」

少年二人はハンカチで口を塞ぎながら煙から避けていたが、さすがに火の手が強くなり逃げ場が無くなり始めていた。すると、近くのガラスが割れ、茶々丸が姿を現した。

「あ、茶々丸・・・・さん・・・ごほごほ」
「お怪我はありませんか?」
「大丈夫。だけど・・・・煙吸っちゃって・・・ごほ」
「分かりました。すぐに脱出しましょう」

そう言って二人を抱きかかえ窓へと戻ろうとすると、突如天井が崩れ、窓があった場所は埋まってしまった。茶々丸がロケットデコピンをフルパワーで放つが、瓦礫が多すぎて破壊できなかった。

「あ・・・・どうしよう〜〜」
「もうダメなの〜〜〜〜」
「大丈夫です。私が必ず助けますから」

泣き出す二人をなだめながら茶々丸が状況を打破するか考えようとすると、再び天井が崩れ、今度は茶々丸たちがいる場所に落ちてきたのだ。茶々丸は咄嗟に少年たちを庇い瓦礫を背中に受けてしまった。そのため、背中のブースターが破損してしまった。

「だ、大丈夫茶々丸さん!?」
「しっかして〜〜〜〜!!」
少年二人はなんとか瓦礫をどかそうとするが、所詮子供二人の腕力ではビクともしなかった。そして再び爆発が起き、天井からの瓦礫が迫る。

(非常処置プログラム。全身の回路崩壊条件に、全リミッターの解除)

茶々丸が最後の手段を使おうとしたその時!!突如壁をぶち破って何者かがその瓦礫を受け止めた。

「大丈夫!?」
「・・・・え?」

突然現れた存在に、茶々丸の思考は停止した。目の前に立つのは、真紅の鎧に身を包んだ戦士。しかし茶々丸には、子猫を守ろうとした少年と同ように見えた。すると、ぶち破った壁からウォルター・バイクルが姿を見せた。

「隊長!!」
「ウォルター!!マルチパックで周りの炎を消し止めてくれ!!バイクル!!バイスピアで脱出路を確保してくれ!!」
「了解しました!!」
「了解だがね!!」

ウォルターは頷くと、背中に背負っていた機械から消化液を巻き始めた。一方バイクルは背中に装備されていたス二本のスピアを引き抜き、壁の一部を綺麗に切り裂いた。すると、ちょうど正方形に裂け、完全な道が出来、周りの炎も消えた。

「よし!!二人とも、この子たちを頼む!!」
「了解です!!」
「隊長は、どうするんだがね?」

バイクルが尋ねると、ファイヤーは背中の破損した茶々丸のほうを向いた。それを見た二人は即座に納得する。

「了解です」
「隊長が無事に帰ってくると、信じてますだぎゃ!!」

そう言うと、二人は少年たちを抱え上げ、そこから一気にジャンプした。そしてその場には、ファイヤーと茶々丸が残される。

「あの子達を助けていただいてありがとうございます・・・ですが、私の事は・・・」
「ダメだよ」
「え?」

自分を残していけと言いたい茶々丸の唇に指を当てファイヤーが答える。

「僕はこれ以上大事ながは死ぬのは見たくない。だから、君も助ける!!」

そう言うと、ファイヤーは茶々丸を抱きかかえた(お姫様だっこ)。そしてバイクルが切り開いた場所から、大跳躍した。そして、見事なまでに着地した。それを見た周りは、驚きと歓喜の叫びを上げた。

「先生〜!!」
「怖かったよ〜!」

助けれらた少年二人は、泣きながら先生に抱きつく。その様子を見届けたファイヤーたち(茶々丸を含む)は、その場を離れたのだった・・・。そしてそれを影から見守っていた少女がいた。

「あれが・・・・・・先輩なのでござるか・・・」


初等部から離れエヴァの別荘。そこにウインスコードが停まった。そして降りたファイヤーは、被っていた仮面を取った。するとそこからは、ファイヤーではなく和樹の姿が現れた。

「式森・・・・・先輩」
「大丈夫、茶々丸ちゃん?」
「あ・・・・はい・・・・大丈夫・・・・です」

和樹の笑顔に顔を真っ赤にする茶々丸。すると、ウォルターとバイクルも合流してきた。

「隊長、ご無事でしたか」
「心配しただがね」
「二人とも、力貸してくれてありがとう」
「いえ、私たちは隊長の力になれる事が」
「すげえうれしいんだぎゃ」

そう答えると、和樹も満足げに微笑む。その時、ちょうど雲がかかっていた月から雲が消え、月光が辺りを照らした。すると、和樹たちの覆うように一つの人影があった。四人がその影の放つ方向を向くと・・・・・和樹にとってはとても大切な少女の姿があった。
それを見た瞬間、和樹が呆然とつぶやく。


「ネカネ・・・・・・・ちゃん?」


その言葉が引き金となり、ネカネは弾丸が如く走り出した。そしてそのまま・・・・和樹の唇を奪った。

「あ・・・・・」
「これは・・・・・」
「見せ付けてくれるだぎゃ〜w」

茶々丸は突然の光景に固まり、ウォルターは何か久しぶりなものを感じ、バイクルはその光景に微笑んでいた。少ししてネカネが唇を離した。そして・・・・。

「和樹ちゃん・・・・・ただいま♪」

最上級の笑みを見せた。和樹はそれを見て同じく微笑みながら答える。

「おかえり・・・・・ネカネちゃん」

月明かりの下、再会が起きた。そしてそれは・・・・・和樹の最大級の女難の始まりでもあった・・・。


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