ブレイブVIII お見合いでメカを呼ぶ勇気



月光が地面を照らす中、和樹とネカネは互いに見詰め合っていた。すると、後ろのウォルターとバイクルもネカネのもとに駆け寄った。

「ネカネさん、お久しぶりです」
「7年だぎゃ〜」
「うん、本当に久しぶり、ウォルター♪バイクル♪」

ネカネは二人の頭を優しく撫でた。するとウォルターはそれを静かに受け入れ、バイクルはバタバタと喜びを表現していた。すると、突如二人の気配が希薄になり始めている事にネカネが気づいた。

「・・・そっか。もうタイムリミットだっけ・・・」
「申し訳ない。本当ならもうちょっと話したいのですが・・・」
「スキルで呼ばれる時間には限度があるだぎゃ」

二人はそう答えると、和樹のほうを向いた。

「隊長、また危険が迫ったときは、我々を呼んでください」
「いつでも力になるだぎゃ」
「ああ。二人とも、ありがとう」

和樹の言葉を聞き終えた二人は、自然と姿を消した。そしてその場に残されたのは、和樹・ネカネ・茶々丸の三人だった。

「あの・・・・先輩」

状況を理解できていない茶々丸が和樹に尋ねた。

「ん?何、茶々丸さん」
「その方は・・・・一体?」

茶々丸の言葉を受け、和樹は説明する事にした。

「この娘は、ネカネ・スプリングフィールド。君のクラスにいるネギのお姉さんだよ」
「初めまして・・・えっと、茶々丸さん?」

茶々丸が頷くと、ネカネはいきなり頭を下げた。

「ごめん!!私が完全に防ぎきれなかったから、あんな火事になってしまった・・・」
「いえ・・・弾かれた際の予測修正に誤差が出てしまった事は、私の責任です」
「いえ、やっぱり私が・・・」
「責任は私に・・・・・・・」

二人が自分の責任を言い合っていると、自然と二人は顔を見合わせた。そして次の瞬間、クスクスと二人は笑った。

「なんか私たち、似た者同士ね♪」
「そう・・・でしょうか?」
「ええ、だって・・・」

そう言うと、ネカネは和樹の腕を抱きしめた。するとそれに茶々丸が「あっ・・・」と反応してしまった。

「やっぱり♪貴方を和樹ちゃんが好きでしょ?」
「いえ・・・あの・・・・私・・・」
「別にいいよ、和樹ちゃんが好きでも」
「・・・え?」

ネカネの言葉に茶々丸が驚きの表情を見せる。

「和樹ちゃんを独り占めしたいのは本音だよ。でも、だからと言って和樹ちゃんにむりやり好きになってほしくないの。あくまで、和樹ちゃんが選んだ人と幸せになってくれれば、私は構わないの。ただ、やっぱりちょっと妬いちゃうけどね♪」

そう言って舌をチロっと出して笑うネカネ。それを見た茶々丸は、ある種の感動を覚えていた。

「えと・・・・・何の話?」

話についていけず困っていた和樹は二人に尋ねた。

「和樹ちゃんが好きだって話♪」

ネカネは当たり前のように答えた。

「あ、背中の傷どうしよう」
「大丈夫です。大学部へ行けば修理してもらえますので・・・では」

そう言うと、茶々丸は二人にお辞儀をして歩き出した。

「大丈夫かな・・・」
「大丈夫よ。あの娘なら」

ネカネの言葉を聞きなんとな納得する和樹。すると、和樹は何かを思い出した。

「あ、そういえばなんで支援に来てくれなかったのネカネちゃん?来てたならフォローしてよ〜」
「実は向かっている時に、弟のネギが闇の福音に教われていたのよ。で、血を吸われそうになっていたのを私が止めに入ったのよ」

それから大体の内容を説明すると、和樹も納得していた。

「それに和樹ちゃん。私はスキルを使えないし、魔法使いがあんな公の場で行動を起こすのは難しいわ。それに、既にウォルターやバイクルが出ている以上、私がかえって邪魔に・・・」

そう言うと、ネカネは顔を下に伏せた。

「ごめん・・・ネカネちゃんの意思を無視した発言して・・・・」
「ううん、分かってくれればいいの」
「あ・・・そうだ。とりあえず中等部の学園長に事情説明しにいかないと」
「そうね。いきましょう」

そう言うと、二人は跳躍し、学園長室へと向かった。


「ふむ・・・・なるほど、先ほどの火事はそういう事だったんじゃな?」
「はい、学園長」

和樹とネカネは学園長室にいくと、すぐに先ほど起きた火事について、そしてエヴァが行動を起こした事実を伝えた。

「しかし・・・・火事じゃからの・・・さすがに茶々丸君には・・・」
「学園長!!」

悩む学園長の耳に和樹の声が響く。驚きながら学園長が和樹を見ると、そこには地面に額をつけ土下座する和樹の姿があった。

「し・・・式森君!?」
「お願いします!!茶々丸ちゃんへの処分は無しにしてください!!」
「私からもお願いします!!あの娘は身を挺して少年二人を守ろうとして背中に怪我までしていました!!どうか、処分はやめてください!!」

二人の強い意志が伝わったのか、学園長の表情が微笑ましいものに変わった。

「分かった。処分はワシがなんとかしよう」
「あ・・・ありがとうございます!!」
「ただし・・・式森君に一つ頼みがあるんじゃが・・・聞いてくれるかの?」
「はい、喜んで!!」

和樹が答えると、学園長は一枚の写真を取り出した。そこには、見知った顔が一人。

「この娘・・・・このかちゃんですよね?」
「そうじゃ。ワシの大事な孫じゃ」
「で、このかちゃんが頼みとどう関係するんです?」
「・・・凄く個人的な用件なんじゃが・・・式森君」
「はい」
「このかと・・・・お見合いしてくれんか?」

学園長の発言の瞬間、部屋の空気が氷点下にまで下がった。和樹は固まり、ネカネは何時の間に取り出したのか十字架型のガトリンクを学園長の額に突きつけていた。


「学園長・・・・頼みとかでそういう恋愛方面へ勧めようというのは・・・・・余程寿命を短くしたいようですね」
「ね・・・ネカネ君!!違うのじゃ!!話を最後まで聞いてくれ!!」


学園長の必死の説得により、ネカネはしぶしぶガトリンクを下ろした。

「実はのぅ・・・・近衛家は呪術の家系として有名じゃが、実質的にこの麻帆良を管理しているようなものなのじゃ。故に、権力目当てでこのかに接近しようとする輩もおるんじゃ。大抵はワシが信用している相手をお見合いさせているが、今回は財政界でもちょっと力を持っている輩の息子がおっての。はっきり言えば女癖が悪いんじゃ。で、式森君には明日の日曜日に行われるお見合いパーティーに参加するフリをして、このかを護衛してもらいたいんじゃ」
「そのお見合いパーティーっていうのは、止められないんですか?」

なんとか元に戻った和樹が学園長に尋ねた。しかし、学園長は首を横にふった。

「そうですか・・・分かりました。その依頼、お受けします」
「そうか・・・ありがとう式森君」

そして、和樹が部屋を出て行こうとしたその時、ネカネが学園長に尋ねた。

「あの・・・・学園長」
「ん、何かね?」
「そのパーティー・・・女性の出席者はこのかさんだけなんですか?」
「今のところはの。いずれ幾人かがリストアップされるじゃろうな」
「学園長」
「ん?」
「そのお見合い・・・・私も参加します」

違う意味で、また部屋が氷点下にまで下がったのだった(笑)そしてその部屋に、聞き耳を立てる一人の忍の姿が・・・。


翌日、場所はお見合いパーティーの行われる会。そこは、若い男女が大勢いた・・・いたのだが・・・。

「ねぇ・・・ネカネちゃん」
「何?」
「昨日の会話・・・誰かに聞かれたかな・・・」
「聞かれてないと思うけど・・・」
「じゃぁ・・・何故僕が知ってる人が結構いるのかな〜・・・」

そう。会場内には、3−Aの生徒が数名来ていたのだ。和樹は、近くにいたこのかに駆け寄る。

「このかちゃん」
「あ、来てたんや先輩」
「まぁ、ちょっとね。このかちゃん、何故3−Aの娘がいるの?」
「あ〜実はな〜〜〜」

このかは罰の悪そうな顔をして答える。

「昨日の夜、ウチがお見合いパーティーにでるんゆうのを楓ちゃんたちが聞きつけてきたらしくてな。なんか拙者もとか私もとかの声が出てもうて、しゃ〜なくじいちゃんが許可したらしいんよ」

ちなみに、3−Aで来ているのは、真名・楓・クー・刹那(護衛のため)の四名である。和樹はネカネから離れると、窓から外を眺めている真名のもとに向かった。

「あ、真名ちゃん」
「和樹先輩か。奇遇だね、こんなところで会うなんて」
「・・・楓ちゃんから聞いたんでしょ?」
「ははは、バレバレか」

そう言って和樹の方を向いた。その服装は、薄い緑色のドレスを着ており、露出する褐色の肌とマッチしていた。その美しい姿に一瞬見とれていた和樹に、真名が不敵な笑みを浮かべる。

「どうした先輩?ジロジロみて?」
「いや・・・綺麗だな・・って」

予想外の素直な感想に、真名は顔を赤く染めた。すると、後ろからチャイナ服姿のクーと楓が姿を見せた。

「あ、和樹アル♪」
「奇遇でござるな〜♪」
「それ二回目だよ」

和樹は苦笑しながら答えた。

「あら、また和樹ちゃんに惚れちゃった娘たち?」

いきなりトンデモ発言をしながらネカネが和樹の横に立った。それを聞いた瞬間、真名たちは頬を赤く染めながら尋ねる。

「あの・・・・貴方は?」
「私?和樹ちゃんの幼馴染で一応だけど、婚約者♪」

それを言った瞬間、真名たちが石化した(笑)なんとか固まりが止まった真名が和樹に銃を突きつけながら尋ねる。

「先輩・・・・事実ですか?」
「うん。一応事実だよ」

それを聞いた瞬間、真名たちはガーンとショックで壊れそうになった。しかし、ネカネが茶々丸にも言った説明をすると、真名たちはなんとか立ち直った。

「あ、そうだった。このかちゃんは・・・」

そう言い、和樹が辺りを見回すと、そこには学園長から見せられた男がこのかに近寄っていたが、それを刹那が止めていた。すると、男は無理やり刹那を押し飛ばしたのだ。

「な!?」
「なんて奴アルね!?」
「許せぬでござるな」

三人がそれぞれの言葉を発していた。

「何よアイツ・・・・ねぇ・・・あれ?」

ネカネが和樹に同意を求めようとしたが、横に和樹の姿が無かった。


「なぁ〜?こっちこいよ〜」
「は、離してや〜〜〜!!」

男はこのかの手を掴むと、刹那が夕凪に手をかけようとした。すると、突如それを止める手があった。

「え・・・あ、貴方は」
「下がってて」

刹那にそう言うと、和樹はこのかの腕を掴んでいた男の手を払った。

「て・・・テメエ何しやがる!?」
「女の子にそうやって手を上げるとは・・・・ナンセンスだよ」
「なんだと!?」

そう言って、男が拳を放った。しかし和樹はわずかな動きでそれを避けると、腕を掴み・・・・グルンと回したのだ。その回転力により、男は転がりながら側にあったテーブルへと突っ込む。その反応で、テーブルに置かれていたシャンパンが男にかかった。

「テメエ・・・・・もう芝居はやめだ!!皆の者!!」

男がそう言うと、パーティーにいた和樹たち以外の人間が突如紙へと代わり、次の瞬間には、紙が異形の怪物へと姿を変えた。

「な・・・なんなん一体・・・」
「このかお嬢、我々関西呪術協会と来てもらうぜ」

そう言うと、男も服を脱ぎ捨て陰陽術師のような姿へと変わった。

「お前・・・・・全部仕組んでいたって事か・・・」
「ああ。悪いが企業のボンボンは地下の駐車場で眠ってもらった。悪いが式神で拘束させてもらうぞ・・・かかれ!!」

言葉と共に、数名の怪物が和樹に襲い掛かった。しかし次の瞬間、ガトリンクとハンドガンの弾丸が怪物たちを一掃した。

「女の扱いに慣れてないな」
「全く、女の子はデリケートなのよ!!そんな人にはオシオキだわ!!」

そう言い、真名とネカネが構える。すると、クーも構えを取り、楓もどこから取り出したのかクナイを逆手に構える。

「和樹殿に刹那殿!!ここは拙者らがなんとかするでござる!!このか殿を!!」
「分かった!!」
「分かりました!!ありがとうございます!!」

楓の言葉に促され、和樹と刹那はこのかを連れ、その場を離れた。

「逃がすか!!」
「お主の相手はこっちでござるよ」

そう言い、男の前に立つ楓。両目は開き、全開モードである事を示していた。

「フフフ・・・俺たちが何の準備もしてないと思っているのか?」
「何・・・」

男の言葉に僅かに動く楓。

「このかお嬢の奪取のため・・・切り札も用意してあるんだよ!!」

そう言うと、男は札を手に持った。

「さっさと・・・終わらせるでござる!!」


「はぁはぁはぁ」
「なぁ・・・・せっちゃん。どこまで走るん?」

走りっぱなしで息が上がるこのかを見て、刹那は胸を締め付けられる思いだった。何故こんな事に巻き込んでしまったのかと、ただ悩んでいた。

「もうすぐ出口だ。行くよ!!」

そう言うと、和樹たちは最後のスパートをかけ出口に出た。しかし不思議な事に、周りには人が全くおらず、どことなく暗い空気が漂っていた。

「これは・・・・」
「人払いの結界です!!それもかなり広範囲に渡るものです!!」

刹那の言葉を聞いた瞬間、和樹は刹那たちを押し飛ばした。すると、空いた隙間に爆発が起きたのだ。

「な!?」
「誰だ!!」

和樹が辺りを見回すと、そこには青い武者の鎧を鬼が立っていた。

「・・・・逃がしはせぬ」

そう言うと、鬼は刀を引き抜いた。その刀からは、すざまじき邪気が放たれていた。

「刹那ちゃん・・・・ここは僕が相手をするから、このかちゃんを連れて結界から脱出して」
「しかし・・・」
「早く!!」

和樹はそう言うと、鬼に言い放つ。

「君は強い奴と戦いたいだけだろ?だったら、僕が相手になる。だから、その二人を逃がしてほしい」
「フン・・・奴等の命令があるが・・・いいだろう」

その言葉を聞き、和樹は構える。その決意を見た刹那は、このかの手をつないだ。

「行きましょう・・・お嬢様」
「せっちゃん!!先輩が・・・」
「大丈夫です。先輩は強い方です・・・今は任せて逃げましょう」

そう言い、刹那がこのかを連れて逃げようとした次の瞬間、鬼は刃から放つ邪気を刹那たちに向けて放った。

「危ない!!」

和樹が庇おうとするが、距離的に間に合わないと思われた次の瞬間・・・このかを庇って刹那が背中で邪気を受け止めた。

「せっちゃん!!」
「刹那ちゃん!!」

二人が駆け寄ると、刹那の背中は黒いアザが出来ており、そこから刹那の身体を蝕んでいた。更に出血もひどく、すぐに手当てをしなければ死に至るほどだった。

「はっはっは!!そんな口約束なんぞ信じた貴様たちが悪いのだ!!」

先ほどとは違う醜悪な態度をむき出しにして鬼が笑う。

「せっちゃん!!しっかりしてや!!」

このかが涙を流していると、和樹は何かを決意した表情をした。そして次の瞬間、和樹は魔力を右手に込め始めたのだ。

「・・・!!いけませ・・・ぐ・・・先輩・・・魔法を発動したら・・・先輩の命が・・・」
「このかちゃんと・・・刹那ちゃんの絆を無くしたくないんだ!!」

叫ぶと同時に、和樹は膨大な魔力を刹那に注いだ。すると、刹那の傷跡がみるみる直っていったのだ。

「せっちゃん・・・先輩・・・ありがとうな〜〜!!」
「礼を言うのは後だよ・・・僕は・・・アイツを倒す!!」

そう言うと、和樹は鬼のほうを向いた。

「先輩・・・あの鬼を相手にするのは・・・」
「忘れてないかい刹那ちゃん?僕の力?」

和樹の言葉を聞いた瞬間、刹那は納得して壁によりかかった。

「せっちゃんに先輩、はよ逃げないとあかんえ!!」
「大丈夫ですお嬢様・・・・あの人は・・・」

刹那の表情は、完全に安心しきっていた。

「ははは!!お前のようなガキが相手か!?」
「ガキかどうかは・・・・戦ってからだ!!こい、インローダー!!」

高笑いを上げる鬼に対し、和樹は持っていた時計を握った。すると、時計はインローダーと呼ばれる赤い箱状の物へと姿を変えた。そしてインローダーの一部分がカシャリと音を立てて上に上がった。

「いくぞ・・・・」

和樹はそう言うと、精神を集中させ・・・・あるキーワードと共にその上がった部分を押し、元に戻した。・・・その単語は。

「装着!!」

すると、和樹の身体は一種のコマンドスーツのようなものに包まれ、胸にあったアタッチメントに赤い箱を差し込んだ。すると、赤い粒子が和樹の身体を覆い、纏った粒子は赤い鎧へと姿を変えた。そしてそれは全身を包み、和樹を一人の戦士に変えた。

「お前は・・・」

鬼が脅威の存在と確認しその姿を見た。その外見は、真紅の鎧に身を包み、腰には鞘に納められた刀、そして背中には赤いマントを羽織っていた。そして戦士は己が名を上げる。


「ジャスティライザー・・・グレン!!見参!!」


ライザーグレンと名乗る戦士が、鬼の前に立った。

「先輩・・・?」
「待っててこのかちゃん、すぐに終わらせるから」

そう言うと、グレンは拳を握り締め構える。

「いくぞ!!」
「返り討ちにしてくれる!!」

グレンが鬼に向かって駆け出した。鬼はすぐさま刃を振り下ろす。しかしグレンはそれを避け際に蹴りを打ち込んだ。

「ぐ!!」
「まだまだ!!」

腹部への蹴りで一瞬動きの止まった鬼にグレンが畳み掛ける。そのまま鬼の腹部を階段にして宙へと舞い、頭部へと更なる蹴りを叩き込んだ。それにより、鬼は動きがふらつく。

「更にいくぞ!!グレンソード!!」

そう言うと、グレンは鞘を付いた刀を手に持った。そしてそのまま地面を前転で転がり鬼の前にいくと、鞘で腹部を一度・二度殴りつけ、よろけたところに鞘でアッパーをかました。

「がああああああ!!」

一気にくる攻撃に完全に対応が遅れ、鬼は混乱していた。グレンはその様子を見て、鞘から刀を引き抜いた。

「はあああああああああ!!」

グレンは一気に加速して鬼へと向かう。

「なめるなーーーーーーー!!」

鬼がそれを見て最大加速で刃を振るった。互いが右に振るい、刃が交差する。

「なんの!!」

しかし、グレンはその刃を受け止めた瞬間、更に捻って左から鬼の刃を払ったのだ。それによりがら空きになった鬼の身体に、グレンが刃を振るった。

「ぐはああああああああああああああああああああああ!!」

強力な斬撃により、鬼は吹っ飛ばされてしまった。それを見たグレンは刀を一度納めた。すると、鞘にあるゲージがMAXになると同時に鍔の向きが変わった。そのまま刃を再び引き抜くと、グレンの持つ刀には炎が巻きついていた。

「喰らえ!!レイジングフレイム!!」

グレンは刃を宙で円を作るように回しながら、振り下ろした。すると、そこから炎の刃が鬼めがけて放たれた。

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!」

炎の刃が鬼の身体をすり抜けた瞬間、炎によって鬼は浄化された。

「あ・・やったんかえ?」
「みたいですね」

二人が安心したが、結界が見つからない事に不審感を抱いていた。

「何故・・・・まさか!!」

刹那が何かに気づいたその瞬間、鬼が浄化された場所から闇色の煙が空高く上った。そしてその中から、先ほどグレンが倒した鬼が巨大化して現れたのである。

「そんな・・・・・あの鬼自体が結界そのもの・・・」
「あんなん・・・・勝てるわけあらへんやん・・・・」

刹那とこのかはその大いなる存在に絶望し始めた。すると、グレンと化した和樹が二人の頭を撫でて落ち着かせる。

「大丈夫。僕に任せて」

その言葉には、優しく心強さがあった。そしてグレンは、胸部の左側に付属していたアタッチメントに手を触れると、その手を天へと向けた。


「幻星獣ライゼロス!!召喚!!」


天への放たれた光に導かれるように、一つの銀色の光が地に降り立った。それはまさしく、機械の守護鳥獣。


「ダイブ・・・・・・イン!!」


グレンが言葉を発すると、赤い光に包まれた。そして、その光はライゼロスのコクピットへと送られる。

「さぁ・・・・・いくぞ!!」

今ここに、幻星獣と邪鬼の戦いが始まる!!


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