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「ううん……いいの。あたしもね、槍溝さんの事は好きよ。
でもね、榎木君と両方、って言うのはもう無理かも知れないな、って」
優しく、諭すように話しかけるしな子に、
泣きやんだ愛は視線はそのままで肩から少しだけ顔を離して小さく呟く。
「そう……そうね。私もそう思うわ。
一度、拓也君から距離を置いた方がいいかも知れないわね」
「うん。卒業したら、中学校に上がる前に榎木君の所に一緒に行こう」
「ええ。また……電話するわね。……それじゃ、今日は本当にごめんなさい」
この場から逃げ出すようにそそくさと立ちあがろうとした愛の腕を、しな子が掴んだ。
不思議そうに自分の方を見る愛に、しな子は少し恥ずかしそうに笑ってみせる。
「……ね。最後に、しよっか」
「いいの?」
ついさっきまで激情をぶつけあったばかりでさすがに愛は恥ずかしいのか、
やや消極的に答えるが、しな子は愛の頬に残る涙をそっと指先で掬いとってやると、
そのまま両手で挟みこんでゆっくりと唇を重ねる。
もう、最初に感じた気持ち悪さは無かったが、
今まで感じていた心が満たされるような感覚もなかった。
身体が先に反応して後から気持ち良さが頭に伝わってくる、そんな感じだった。
愛もそれは同じなのか、キスを終えてもそれ以上積極的に触ろうとはせず、
ただしな子の手を握りしめる。
しな子はその手をそっと握り返しながら、愛の腰にもう片方の腕を回す。
「そういえば、初めて槍溝さんとしたのもここだったわね」
「……そうだったわね」
懐かしむようにしな子が言うと、愛も小さく笑いながら頷く。
「あの時はね、本当にびっくりしたんだから」
「……私だって驚いたわよ。それまでほとんど話もした事なかった人にいきなり
拓也君のお尻触ってるでしょ、なんて言われたんだから」
「だって……」
片思いだった人に知らない女の子が近づいて来たら気になるのは当然じゃない。
しな子はそう思ったが黙っている事にした。
「ね、結局拓也君に何回触ってもらったの?」
愛は途中で口を閉ざしたしな子をそれ以上は追求せず、
再びしな子の胸に手を這わせながら、悪戯っぽく尋ねる。
「え? えっと……んっ、ちょっと待って、数えられないってば」
頭の中で律儀に数えようとするしな子だったが、
その都度愛が優しく爪を立てて邪魔をするので遂に諦めてしまった。
お返しに口をとがらせるとちょっとだけ自慢気に秘密を告げる。
「でもね、榎木君に触ってもらうようになってから、少し胸大きくなったのよ」
「本当? 私は全然変わらないけど」
嘆く愛にしな子は少し首を傾げて考える表情をすると、
何かを思い出したのか、励ますように囁く。
「……槍溝さんね、良く笑うようになったよ」
「そ、そうかしら?」
思ってもみなかった自分の変化を指摘されて頬を染める愛に、
しな子は自信たっぷりに頷く。
「うん。最初の頃はね、ほんとはちょっと怖かったんだけど、
今はそんなことないもん」
「……ありがとう」
妙に照れくささを感じながらも、愛はお礼を言う。
それはきっと、拓也だけでなく、しな子のおかげでもあったから。
心が軽くなった気がして、ふと愛は今年の初めの拓也との事を話してみる気になった。
「この間ね、拓也君に思いきって聞いてみたのよ。
私と深谷さんとどっちが好きかって。そしたら何て言ったと思う?」
「……もしかして、実君、とか?」
「そう。全く嫌になっちゃうわよね。結局私達のことなんてどうでも良かったのかしら」
「……ううん、そんなことないと思う。
だって榎木君の方からあたし達に声かけてくれることが多くなったもん。
それに、あたし達そんな榎木君を好きになったんだし」
「そうね、そうだったわね。ごめんなさい、適当なこと言って」
「……でも、本当はちょっと悔しいけどね」
小さく苦笑いするしな子に、大きく頷いて同意すると、
不意に愛の心を何かが衝き動かして、最後の秘密を打ち明けさせる。
「……それからね」
それを言ってしまうのはかなりの勇気を必要としたが、
やっぱりしな子には全部話しておきたかったから、
慎重に言葉を選びながら告げる事にした。
「それと……その時ね、拓也君と……したんだけど、……その……何にも着けずに……」
か細い声で途切れ途切れに打ち明ける愛の言葉を聞いた瞬間、しな子の顔色が変わる。
「それって……! ね、大丈夫だったの? その後ちゃんと来た?」
「え、ええ……それは来たんだけど……」
「良かった……だめよ槍溝さん、気を付けなきゃ」
大きく息を吐き出して安心するしな子に
心底自分の事を心配してくれる気持ちを感じ取って、
愛は今更ながらに自分の軽率さを深く悔いていた。
「ごめんなさい」
「ううん、大丈夫だったらそれでいいんだけど。……ところで」
しな子は急に口調を意地の悪いものに変える。
「やっぱりあたしの知らない所でこっそり会ってたのね」
「! ……あの、それは……」
普段の愛なら上手くごまかしただろうその質問も、今日はすぐに答えに詰まってしまった。
どんな表情をしたら良いかわからないらしい愛が可愛くて、
しな子はもう少しだけ意地悪を続ける。
「それで、どんな事したの?」
「……足の間に座っただけよ」
「え? それだけ?」
自分よりもずっとその手の本を読んでいる愛は、
きっともっとすごい事をしているに違いないと思っていたしな子は拍子抜けしてしまう。
「ええ。その後は……その、普通にしたけど」
「ふーん……普通って?」
余計な一言を言ってしまったことに気がついた愛だったが、
いつのまにか尻を撫でまわしているしな子の手のせいで少し興奮してしまったのか、
口ごもりながらもその時のようすを説明し始めた。
「拓也君に、上に……なってもらって……」
「それで?」
「拓也君の……を……掴んで、こすってあげた……の……」
目を閉じて思い出しながら、かすれた声で語る愛。
その頬が朱に染まっているのを見て、しな子は更に追い討ちをかける。
「榎木君の、何?」
「……おちんちん……」
そう言うと、愛は恥ずかしさに耐えかねたようにしな子の上にもたれかかる。
「その時もこんなになってたの?」
愛の身体を受け止めてやりながら、しな子はぐったりとしてしまった愛の尻の間に手を滑らせて、
湿り気を帯びている場所を下着の上からさする。
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