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「う……あ……」
自分でも触れた事の無いような場所まで潜りこまれて、
閉じる事も出来ない口の端から唾液があふれ出してしまう。
それはエリーの唾液とひとつになって軽く泡立ちながら滑り落ち、アイゼルの服に小さな染みを作った。
しかし、その事にも気付かないくらい、
アイゼルは自分の口内を犯すエリーに惹きつけられてしまっていた。
それまで相手にしてもらえなかった舌を、ようやく絡めとってもらう。
下側から持ち上げられて、そこから円を描くようにねぶられると、
全身の神経がそこに集中したように心地よい。
自分の弱い所を知り尽くしたエリーのキスに心が蕩けて何も考えられなくなり、
快感だけがアイゼルの全てになっていった。
キスが終わってもアイゼルは余韻に浸るようにしばらく目を閉じたままだった。
かすかに肌を撫でるエリーの鼻息が耳の方に移動するのに気付いて、そこに神経を集中する。
それでもエリーの舌が耳朶に触れた瞬間、思わず首をすくめてしまっていた。
エリーは軽いタッチで何度も耳に触れながらそっと次の命令を囁く。
「アイゼル、よつんばいになってよ」
「え……? ……ここで?」
「うん。大丈夫だよ、扉は閉めたから」
ベッドの上でエリーにそういう格好をさせられる事はあっても、
灯りのある場所で、しかも自分からそんな格好をする事など出来るはずがない。
アイゼルはすがるようにエリーの瞳を見つめるが、
エリーは無言で見つめ返すだけだった。
仕方なくアイゼルが口を開こうとした時、首元で鎖の音が響く。
「……」
その小さな音はアイゼルの心を挫けさせ、背筋を泡立たせる。
(あたし……だめ、おかしく……なってる……わ……)
しかしそれがおかしいのか、本当はそれこそが本心なのか、
アイゼルはもう解らなくなってしまっていた。
「……わかったわ」
アイゼルは心地よいクッションから降りると、エリーの方に向き直ってまっすぐ立った。
いつの間に背中のボタンが外されていたのか、肩口から衣服が滑り落ちそうになってしまう。
慌てて押さえようとしたが、どうせすぐにエリーに脱がされてしまう事を考えて
そのまま落ちるに任せる事にした。
音を立てて服が床に落ち、凝った装飾の下着が姿をあらわす。
それはいつもエリーが褒めてくれる、アイゼルもお気に入りの下着。
特に、エリーの手がそれを脱がせてくれる瞬間が好きだった。
エリーよりも少し大人の、けれど少女と女性の中間をようやく越えたくらいの身体。
特に胸はエリーが触るようになってからはっきりと大きくなって、
エリーはいつも「アイゼルの触り方が足りない」と本気で悔しがっていた。
胸の大きさなどアイゼルは別にどうでも良かったが、
エリーの胸を触るのは願ってもない事だから、アイゼルも一生懸命手伝ってはいるのだが、
こればかりはどうにもならない事だった。
服を脱ぎ終えたアイゼルは、所在なげにその場に立つ。
うっすらと桃色に染まっている肌とそれを覆う純白の下着に、
首元で漆黒の鈍い光を放つ首輪だけがその存在感を示す。
それは、見る者を異様なまでに興奮させる色彩だった。
エリーも例外でなく、心を奪われたようにアイゼルの身体に視線を向け、
何度も上から下まで往復させた。
ねっとりと絡みつくような視線に、
アイゼルは頭の中にもやのような物がかかっていくのを感じながら床にしゃがみこむと、
ゆっくりと言われた通りの体勢になる。
軽く顔を上げてエリーを見ると、エリーも同じように自分を見下ろしていた。
視線が絡みあった時、アイゼルの背筋を戦慄が走る。
それは最初に首輪をした時よりもはっきりとした形をとりつつある、被虐の感情だった。
まだかろうじて理性で覆い隠す事が出来たが、
膨れ上がるその思いはものすごい勢いでアイゼルの身体の隅々まで染み込んでいく。
そのままエリーの瞳を見ていると感情があふれてしまいそうな気がして、
アイゼルは思わず目を閉じていた。
次にアイゼルが目を開けた時、エリーの瞳は自分と同じ高さにあった。
それも、お互いの瞳の中に自分の姿を見出せそうなくらい近くに。
思わず息を呑むアイゼルに、エリーは見せつけるようにゆっくりと自らの指を口に含んだ。
熱に浮かされたような表情でそれを眺めているアイゼルの頬に、人差し指をなすりつける。
「あ……」
形良く尖った顎まで指を滑り下ろすと、再び唾液を含んで、今度は肩に押しつける。
愛撫とは違うその動きに、アイゼルは不思議そうにエリーの顏を見やった。
エリーはアイゼルと同じくらい頬を紅くしながら説明する。
「これはね、おまじない。私以外の人がアイゼルに触らないように」
その言葉を聞いた時、アイゼルの身体が感極まったように震えた。
それはもう何度となく聞いている愛の囁きだったが、
未だに聞くだけでアイゼルの身体は反応してしまう。
「だめだよアイゼル、途中で動いちゃおまじない、効かなくなっちゃうよ」
エリーは自分の言葉だけで感じてしまうアイゼルに狂おしいほどの愛おしさを感じながら、
少し多めに唾液をつけて、腋の下へ指を這わせる。
「やっ……! っ……ん……」
アイゼルはくすぐったさに腋を締めようとするが、
エリーの言葉を思い出して懸命に我慢する。
そうするとエリーはもっと意地悪したくなってしまい、
何度も何度も同じ所を往復させる。
「はぁ……ぁ……ぅ……」
髪の毛で表情は見えないが、
エリーが羨ましくて仕方が無い端正な唇からは絶え間無く吐息が漏れている。
(ここで終わっちゃったら面白くないもんね)
アイゼルの肩が震えるのを見て、これ以上は限界だと感じたエリーは次の場所に進む事にした。
下着に包まれた、形の良い胸を軽く指で押すと、ぷにぷにのように揺れる。
その様が面白くてつい何度もつついていると、アイゼルが恥ずかしそうな声を上げる。
「ねぇ……そんなことして面白いの?」
「え? うん、面白いよ。たぷたぷ揺れるし」
「そんな言い方……止めてよ」
アイゼルは口ではそう言ったものの、本当はもっと強く、握るように触って欲しかった。
こんな触られ方では物足りなさだけが募ってしまう。
しかし、アイゼルの願いも空しく、エリーの指はあっさりと胸の膨らみを離れてしまった。
下着の線を背中に向かってなぞっていき、
ほっそりとした背中に浮き出た背骨に沿って指を這わせる。
脇腹まで進んだところで、ぐるりと腹側に指を回した。
身体の真ん中に開いた小さな穴の周りを撫でる。
(アイゼル、ここ弱いんだよね)
エリーの期待通りアイゼルはすぐに反応して、逃げるようにお腹をへこませる。
「んあっ、あ……いや……ん……」
円を描くように、爪先で筋をつけるように。
「アイゼルって、おへそも可愛いんだよね。羨ましいなぁ」
「あ、あなただって…素敵じゃない」
素敵、というアイゼルの言い方がおかしくて、エリーは小さく笑う。
「ありがと」
褒めてもらったお礼にエリーはアイゼルの一番好きな場所を触れてあげる事にした。
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