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俺の言葉にイシュタルは恥ずかしそうに答える。
抱く度に新たな技を披露しても、恥じらいは残したままというのがまた俺を惹きつける。
今も彼女の答えに反応したのは下半身の方が先だった。
まだ何もされていないのに、もうこれ以上は無理なほど血が一点に集まる。
待ちきれずに先端から溢れる液を彼女の密生した茂みに擦りつけると、
彼女の手が優しく俺を導いた。
「まだ夜は長いのに……途中で寝たら嫌よ」
「寝たらマハジオで起こされたって文句は言わないよ」
俺は真っ暗な地面に手を付いて身体を起こし、彼女に楔を打ちこむ準備を整える。
たまには柔らかなベッドの上で抱きたいと思っても、
イシュタルは生命が感じられないと嫌だ、と土や草の上でないとすることを拒む。
俺は逆に緑色でない草や茶色でない土はどうも慣れないのだが、
こういう時男が弱いのは全世界共通だ。
身体を離すと彼女の体にまとわりつく小さな薄衣が目に付き、
本当にその役目を果たしているのか疑問を抱きつつも一気に剥ぎ取る。
そのまま最初の挿入をしようとしたが、その寸前に彼女の掌が胸に押し当てられた。
一番興奮する瞬間を妨げられて俺は不満気にイシュタルを見たが、彼女は冷静に耳うちした。
「ねぇ……誰かが見てるわよ」
さすがは大女神、性を愉しんでも、溺れはしなかった。
俺も彼女の胸に顔をうずめながら気配を探ると、
確かにそれ程遠くない何処かから俺達を覗く視線を感じる。
出歯亀ならば別に構わないが、襲ってこられると流石に困る。
キスをするふりをして素早く作戦を立てた俺達はすぐに行動に出た。
俺の首に巻きついていたイシュタルの掌から衝撃が疾る。
巧みに狙いを外したそれは、不心得者の足元で土埃を上げた。
「きゃっ……!」
瓦礫の向こうから小さな声がして、何かが倒れる音がその後に続く。
その声が若い女性の物だったことに、俺とイシュタルは顔を見合わせると声の元に走った。
月明かりを頼りに人影を探すと、薄暗がりの地面に見覚えのある赤い衣が尻餅をついていた。
「菊理姫!」
そこにいた人物の意外さに俺達は思わず揃って声を上げる。
「あ、あの……」
名前を呼ばれた菊理姫は怯えたように声を上げ、突然手で顏を覆ってしまう。
一瞬後に俺は彼女の行動の意味を知った。
それはそうだろう、今まさに挿入する寸前だった俺の一物は猛々しく天を向き、
尻餅をついている菊理姫の丁度目線の位置にあったのだから。
と言って今から服を取りに戻るのも間抜けな気がして、
俺は迷った挙句とりあえずしゃがんで菊理姫からは直接見えないようにした。
それにしても。
俺は自分の格好は忘れることにして、菊理姫を見る。
紅白の着物に身を包んだ彼女は、イシュタルとはまた違う、清楚な美しさを放っていた。
ただ、それは花で言うなら蕾の硬さをも感じさせる美しさだったが。
正直言って、俺は菊理姫に何らかの思い入れを抱いて用いている訳ではなかった。
有り体に言えばイシュタルが居る今は戦力としての彼女に用は無く、
タイミングさえあればいつ合体材料にしても構わない位だった。
俺は彼女を意識して避けていた訳では無いが、彼女も敏感に察していたのか、
歩いていても俺と会話を交わす事はほとんど無かったし、
俺とイシュタルの馬鹿騒ぎにも呆れたように遠くから見ているだけだった。
そんな彼女が事もあろうに人のセックスを覗こうとしたことに、
俺は少なからず興味を抱いて彼女に近寄った。
「皆還したはずだが……驚いたな、自力で出てきたのか?」
確かにここは魔界で、人間界よりは簡単に現れることが出来るだろうが、
それでも悪魔召喚プログラムの助けなしでは莫大なマグネタイトを消費してしまう。
「ちょっと待ってな」
それに気が付いた俺は立ちあがるとハンドヘルドコンピュータの所に走った。
下着だけを履いて菊理姫の所に戻ると、改めて召喚してやる。
あのまま話を続けていたら最悪、菊理姫がスライムになってしまう所だった。
「あ……ありがとうございます」
菊理姫はまた俺の物を直視してしまわないかと恐る恐る顔を上げると、小声で礼を言った。
「そんな事はいいんだけど……何かあったのか?」
「あ、あの、昼間、主様とイシュタル様が喧嘩なさっていたようでしたので、
心配に思いまして……」
嘘だ。俺は直感でそう悟っていた。
俺達のあれは今日に始まったことでは無いし、その後もごく普通に会話をしているから、
あれを喧嘩などと思う奴はいないだろう。
菊理姫は最初から俺達の交わりを覗こうとして出てきたに違いない。
しかしそれに対して何か言おうとする前に、イシュタルが何か考え付いたのか、
俺の口を人差し指で軽く塞ぐと菊理姫に語りかけた。
「心配してくれてありがとう。私達なら大丈夫よ」
菊理姫の言葉を否定せず、その気遣いにまず感謝する。
全てを包み込む母性に、菊理姫の顔が落ちつきを取り戻す。
しかし、イシュタルのイシュタルたる所以はそれだけではもちろん無かった。
急に表情を悪戯っぽいものにして、興味津々と言った風情で尋ねる。
「それよりも、ね、どうだった? 私達」
「え? あ、あの……楽しそう、でした……」
男女が裸で転がり回っている所を見てどう、も無いものだが、
女神としての格が違うのか、気圧されたように菊理姫は答える。
「でしょ? 実際、とても楽しいのよ。それに気持ちもいいし。
……ね、良かったらあなたも一緒にやってみない?」
傍で聞いていると突拍子もない提案も、
全てを包み込むようなイシュタルの笑顔でそう言われるとつい頷いてしまいそうになる。
菊理姫もそうだったらしく、数瞬の間イシュタルの顏を黙って見つめていたが、
あと少しと言う所で我にかえったのか、慌てて首を横に振った。
「わ、私は縁結びの神なのですよ。そのようなこと」
「でも君は、俺とイシュタルを覗いていた」
「それは……」
「俺とイシュタルがこういうことをするのを、見たかったんだろう?」
単の上から胸をまさぐると、驚いたように身体を震わせて俺の手を跳ね除ける。
そのあまりに初々しい反応は、彼女が恐らくまだこの手のことを経験してはいないのだろう、
と俺に確信させた。
「あ、あの……申し訳ありません」
菊理姫は俺の手を跳ね除けたことを律儀に謝ったものの、
俺が少しにじり寄ると、警戒するように足を固く閉じて壁を作る。
膝を立ててあくまでも俺を近づけようとしない菊理姫に、
俺は困ってイシュタルの顏を見た。
随分と情けない顏だったのか、
イシュタルは軽く吹き出すと菊理姫の背後に回ってゆっくりと語りかける。
「いいのよ。私も出来ればあなたと一緒にしてみたいけど、嫌だったら断っても構わないの。
大丈夫。この人すごくいやらしいけど嫌がることはしないから」
目の前でこき下ろされた俺はイシュタルを睨みつけたが、
彼女はどこ吹く風と言った顔で受け流すと、菊理姫の手を握る。
「どうする? やっぱり嫌?」
「………………嫌じゃ、ない……です……」
長い沈黙の後、ほとんど聞き取れない声でようやくそれだけ言った菊理姫は、
余程恥ずかしかったのか、立てた膝の中に顔を隠してしまう。
その為に彼女は気付くことはなかった。
後ろでイシュタルがごく弱い効力のマリンカリンを唱えていたことに。
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