<<話選択へ
<<前のページへ 次のページへ>>
(4/5ページ)
義姉の欲望のいけにえにされてしまった哀れな少女は、さっそくキスの雨を浴びせられている。
美少女と美女がくちづけを交わしているというのは確かに絵になる光景で、
割りこむ余地もなく、龍麻はいかにも柔らかそうな唇がくっついては離れる、
繰りかえしだけれど同じものはひとつとしてない場面を眺めていた。
「ふえ……」
数分に及ぶ濃密なキスからようやく解放されたマリィの囁きは、全くろれつが回っていない。
龍麻ですら葵の本気のくちづけを受けた後は身体中の骨を抜かれてしまうのだから、
いくら毎日鍛えられているといっても、まだ幼いマリィではひとたまりもないだろう。
大きな瞳をとろんとさせるマリィに龍麻は同情するが、葵はまだ義妹を休ませてやるつもりはないようで、
ぐったりしているマリィを、ベッドではなく床に寝かせた。
その横に自分も身体を横たえ、マリィの髪を梳いている。
居場所を失った龍麻がマリィを挟んだ葵の反対側に寝ると一瞥をくれたが、追い出しはしなかった。
これはもちろん寛大になったのではなく、マリィに夢中で他はどうでもいいのだろう。
恋人として本来ならしょげかえってもいいところだが、龍麻はそうはならなかった。
元が図太いのか、それとも単にスケベなだけなのか、まるで意に介せず、
葵がそうしているように青い果実に手を伸ばしてしまっていた。
龍麻と葵に両側から愛撫を受けるマリィだが、
窮屈そうにしながらも無垢な笑みを浮かべて、当人はむしろ嬉しそうだ。
「なんだかパパとママみたい」
この時龍麻は下着姿で添い寝する母親なんていないだろ、と思い、
葵はもう少し、せめて二人まとめて幸せにしてやる、くらい言える甲斐性がなければ
パパとは認められないわね、と分析していたが、少女の前で喧嘩をするのは情操教育に良くない、
という点では暗黙の一致を見て、無難に微笑を注いだ。
左右に首を振って微笑みを返すマリィは、まさしく落ちてしまった天使で、
葵ですら魔の手を伸ばすのは止めにしようか、と怯ませるほどだったが、
ゆっくりと閉じられ、やがて開かれた瞳には、それまでと異なる色がにじんでいた。
「ね……二人はいつも、どんなふうにするの?」
まさか天使からこんな質問が出るとは、うかつに近づきすぎていた悪魔二匹は
爆風をまともに喰らってしまう。
「どんなって、ねえ」
「なあ」
マリィの視線の届かないところでお前の教育が悪いからだ、
いいえあなたがだらしないからよ、と責任を押しつけあってみたが、何の解決にもならない。
そこにマリィから更なる爆弾が投げこまれた。
「キス……だけじゃないんでしょ?」
狼狽しきる龍麻に対して、葵は立ち直るのが早かった。
「そうね、マリィも知りたいものね」
「うんッ」
一瞬で悪事を正当化する剛腕に、龍麻はもはや言うことなどなかった。
これから、おそらく一生言いくるめられる人生が待っているだけだ……それも、おそらく二人に。
だが、それもそんなに悪くないかもしれない、と思いながら龍麻は、
すでに葵がはだけさせているマリィの胸に遅れじと触れた。
まだ女性らしい性徴がほとんどないマリィの胸は薄く、
さすがに龍麻の情欲をかきたてるというほどではなかったが、ゆっくりと、力を加えずに撫でてやる。
硬く、うっすらとしか肉がついていない身体は、乳暈もやはり薄く、肌に埋もれてしまっているかのようだ。
これでは義姉のように敏感に反応することはないと思われたのだが、驚いたことに、
龍麻を見る瞳にはわずかながら喜悦の色が混じっていた。
「マリィ……もしかしてここも、葵に触られてる?」
「え? うん」
今度はさすがにため息をついて、龍麻は葵を見やった。
学校では欠点が一つもないとさえ噂されている聖女は、睫毛を伏せて軽く唇を尖らせた。
「……だって」
だってじゃないだろ、と龍麻は言わなかった。
せっかく一生に数度はなさそうな、圧倒的優位に立っているのだ。
そんなつまらない嫌みで消費してしまうのはあまりにもったいなかった。
葵には何も言わないことで貸しを作り、こんな義姉にもらわれなければもう少し
まっとうな道を歩めたかもしれない少女に、ちょっぴり同情しつつ囁く。
「どんな感じ?」
「わかんない……頭がぼぅっとして……少し……熱い……」
それはきっと、正しい反応なのだろう。
まだ熟しはしない、甘みと酸っぱさが微妙に調和する長くはない期間。
もしかしたら果実のそれよりも短いかもしれない少女の、大人と子供が切り替わるほんの一瞬の刻。
その刻を見誤またず摘み取ろうとした葵の判断は、やっぱり的確というほかなかった。
異性であろうと同性であろうと龍だろうと義妹だろうと、気に入ったものは手籠めにしていく聖女に、
龍麻が感嘆と畏怖の視線を送ると、対して葵は、当然と誇りとをミックスした笑顔で返してきた。
それは確かに魔王も神も虜にしうる、龍麻も駄目だとわかっていつつ逃れられない微笑みではある。
けれども今日は天使がそばにいるからか、反撃、というほどでもない、
ささやかな抵抗を試みてみようかなどと、普段なら決して考えないことを思いつく龍麻だった。
「でも、嫌な気持ちじゃないだろ?」
「ウン……どっちかっていうと、気持ちいい」
「女の子はね、おっぱいを触られるとそんな風に気持ち良くなるんだ」
「そう……なの……?」
義姉にはないマリィの素直さに、龍麻は思わず輪っかのない天使の頭を撫でてやる。
頬を薔薇色に染めるマリィに、軽くくちづけをして、そこからは早口で話した。
「ああ。葵だって、マリィと同じに気持ち良くなるんだよ」
「アオイオネエチャンも……?」
「そうだよ。ためしに葵のおっぱいに触ってごらん」
「ちょっと龍麻」
葵が声を尖らせたのはもちろん義妹にではなく、けしかけた男に対してだ。
黙って聞いていれば変な方向に話を持っていって、
今日はまず何をさておいてもマリィという最高のフルコースを余すところなく
味わわなければならないというのに。
しかも困ったことに、マリィは龍麻の台詞に如実に反応して、好奇心も露に乳房に手を伸ばしてきた。
「アオイ……オネエチャン……」
「マ、マリィ」
龍麻の手なら爪を立ててつねりあげても罪悪感をおぼえることなど全くないが、
飴細工のような義妹の肌に傷をつけるなど、葵は自分自身であっても絶対に許さない。
かくして義妹に胸をまさぐられるのを、容認するしかなくなってしまい、
待ち焦がれたフルコースは中断せざるをえなくなってしまった。
「どんな感じがする?」
「やわらかい、ふかふかで……」
余計な質問に律儀に答えるマリィは、ブラの上から乳房を触っている。
もちろん愛撫ではなく、触りたいように触っているだけなのだろう。
小さな手では乳房をひとつかみというわけにはいかず、場所を変えて幾度も揉みしだき、
葵の反応にもさほど関心を払ってはいない。
それがかえって葵には新鮮なくすぐったさで、できることなら今は抑えたい情動が膨らんできてしまった。
「ね、マリィ、もういいでしょう?」
「アオイオネエチャンも、気持ちいい?」
核心に触れる質問には、できれば答えたくなかった。
けれども義妹には嘘をつかない、と葵は自己に制約を課しており、それを破るわけにはいかなかった。
「……ええ、気持ちいいわ。マリィに触られて、とっても」
真実を伝え、義妹を喜ばせると同時にもう一人に対する牽制も兼ねた、見事な返事だ。
しがみついてくるマリィを魔の手から守るように抱えこんで、葵はおまじないのキスを与えた。
マリィは絶対に渡さない――義姉の犯した過ちを、繰りかえさせるわけにはいかないのだ。
牽制が効いたのか、龍麻は唇を噛んでいる。
そうしていれば少しは可愛げもあるのに、と葵が思ったのも束の間、
鉄槌で叩きつぶされてもめげないしぶとい男は、その本領を発揮してまた馬鹿なことを言い出した。
「マリィはママのおっぱい覚えてる?」
「ううん」
「じゃ、葵のこと新しいママだと思って、おっぱいもらってごらん」
マリィが横を向いた分、空いたスペースに転がってきた龍麻は、
言うなり葵の背中にまで腕を伸ばし、ホックを外してしまう。
マリィを抱いていたのが仇となり、葵は制止する暇もなく、瞬く間に乳房を露にされてしまった。
ブラから解き放たれてわずかに形を変えた、たっぷりとした質感の双丘の頂は、
当然まだ授乳できるようになどなっていない。
けれどもマリィは興味津々で目の前にある膨らみを観察しているし、
龍麻はマリィを盾にして葵を仰向けにさせると、
構わず淡いピンクの尖りを一度撫で、いきなり口に含んだ。
「あ、ん……っ」
いきなり訪れた熱い刺激に、葵は思わず声を出してしまっていた。
義妹の前で痴態をみせるなど、自身の羞恥心からも、情操教育の点からも断じて避けねばならない。
それには実力行使に及ぶのが一番手っ取り早いのだが、義妹が抱いているであろうイメージを考えるとそれもできなかった。
そうこうしているうちに、こういうことだけは上手い男が、口全体を使って愛撫を与えてくる。
いつもいやらしい黄龍の器だかなんだかいううさんくさい男は、今日もいやらしく、乳首だけに的を絞って責めてきた。
「ふぅ……んっ」
軽く歯を当てて固定し、たっぷりと唾液を乗せた舌で舐めまわす。
かと思うと乳暈ごと口に含み、耳を塞ぎたくなるような音を立てて甘く吸いあげる。
普段はあまりねちっこい愛撫はさせない葵だが、桎梏から解き放たれたかのように技巧を駆使する龍麻は、
これまで葵が経験したことのない快感をもたらした。
じわじわと、それも龍麻を先に興奮させ、そこから焦らすのが好きだった葵は、
一気に高められ、しかもそれが続く感じ方に流されてしまう。
「タツマも……おっぱい飲むの? もう大きいのに、なんだかおかしいね」
マリィが微笑と共に言った台詞は完全に正しく、反省することに一縷の望みを託して葵は龍麻を見た。
しかし、この見た目だけは若干良くても中身は普通の男以下に助平だった男は、
乳首から口を離さず、頷く動作さえ愛撫に利用した。
「も……う、龍麻……っ」
甘い感覚が拡がっていくのを、葵は隠さなければならなかった。
マリィが全く悪気なく言った、おっぱいを飲むというキーワードに、龍麻も、そして葵も感化されていた。
甘く、弱く、弱く、甘く、赤ん坊が乳を飲む動作を気色悪く真似し、そこに急に強い刺激を混ぜる。
平時なら説教に加えて使役コース一時間というところだが、
義妹の方にも意識を振り分けねばならず、葵は翻弄されていた。
「ほら、マリィもやってごらん」
優しい、葵は一度たりともかけてもらったことのない声で、龍麻がマリィをそそのかす。
しかし、その声に腹を立てるよりも先に、義妹がその小さな口で乳首を咥え、怒る機会は失われてしまった。
「ん……っ」
禁断の果実は囓った方にも、囓られた方にも恍惚をもたらす。
見ていた、というよりも叶えようとしていた夢が思いもかけず実現され、
葵は軽く乳首を吸われただけで肉体的な悦びではなく、精神的な至福によって達しそうになっていた。
もしも乳房を求めているのがマリィだけだったなら、葵は本当に軽い絶頂を迎えていただろう。
それが妨げられたのは、図体が大きいくせに気色悪く胸にしがみつく男の存在によってだった。
葵の好きなされ方を龍麻は熟知しており、こんな時にも遺憾なくそれを発揮する。
円を描くように舌で乳首を転がされ、舌腹で抑えつけられながら吸われると、
じんわりと快感が胸を満たし、それが龍麻の頭だとしても抱きかかえたくなってしまうのだ。
それは気持ち良くはあっても、幸福とは違うのだ。
可愛らしいくすんだ金色の髪の隣に並ぶ、艶もキューティクルもない黒い頭。
叩けば良い音がしそうだが、そういうわけにもいかない。
義妹の能力の十分の一でも使えれば、その少し長すぎる前髪を焦がしてやれるのに、
などと、およそ聖女らしからぬことを考える葵の眼下で、
義妹と、名称不確定――義弟は論外だし主人は熟考の余地がありすぎる――の男は、
のんびりと会話など交わしていた。
「マリィもね、ときどきオッパイ触るんだよ」
「へえ」
「た、たまによ、ほんとにたまに。一緒にお風呂に入った時に、マリィがどうしてもっていうから」
頷きつつもこのうえなく底意地の悪い笑顔を向ける男に、葵はジハードを発動したい衝動に駆られた。
しかし愛する義妹の前では理想的な姉でいなければならない。
悪鬼は時には折伏されなければならないのだとしても、
無垢なる天使にそんな穢れた場面を見せるわけにはいかないのだ。
その悪鬼は、口は離したもののすかさず指を乳首に添え、弄んでいる。
言いたいことがあるなら言ってみろ、とばかりの小癪な触り方に葵の思考の半分は怒ったが、
残る半分が溶かされてしまう。
キスは下手なくせに愛撫は上手い男は、どこで覚えたのか近頃では焦らすようにまでなってきた。
そのじんわりとした触り方に怒っている方の思考も溶けていくのを、葵は止められない。
顔のすぐ下で行われているはずのやり取りが、どこか遠くからにしか聞こえなかった。
「そうなのか、マリィ?」
「うん、アオイオネエチャンのオッパイがぷかぷかしてるとね、すごく触りたくなるの」
「ぷかぷか……」
無邪気な重大発言をしたマリィから、思わず龍麻は視線を転じる。
確かにこれだけ大きければ、浮き輪がわりにだってなるかもしれない。
一度掴まってみたいものだと思い、そこではっと視線を上げた。
ふたつの浮き輪の持ち主が、龍麻のいやらしい視線に凄まじく敏感なのを思いだしたのだ。
特に義妹の躾に厳しい義姉は、マリィの周りにそういった有害なものが存在するのをひどく嫌う。
一応恋仲であるはずの龍麻でさえマリィのそばにいる時は有害と無害――有用、ではない――の
間をいったりきたりしているようで、今この瞬間は間違いなく有害であり、
有害なものに対しては叩き壊して破片すら粉々にせんばかりの聖女に、龍麻は割と本気で恐怖を覚えていた。
しかし、善悪の審判を下す天秤がどちらに傾くか、わずかな傾きでも容赦はしないとばかりに
目を凝らす天使のような顔をしていた葵から、裁きの鉄槌は下されなかった。
そばにいる天使見習いを巻き添えにしてしまうのを怖れたのかもしれない。
いずれにしてもこれはチャンスだ。
天使にして悪魔にして菩薩にして聖女である美里葵に、
世の中は彼女中心に回っているのではないのだと思い知らせる絶好の。
張りきってさてどこから手をつけようかと、子供にはとても見せられない面持ちで女体を検分する。
その作業にあまりに夢中でしばらくマリィに見つめられているのにも気づかなかった龍麻は、
小さな手で頬に触られてようやく気づき、かなりわざとらしくせきばらいをした。
「ねえ、タツマ」
「ん?」
「もし、マリィのオッパイが大きくならなくても……キライになったりしない?」
傍らにある大きなオッパイをちらりと見るライトグレーの瞳に、さすがの邪龍も胸をぐっと打たれてしまう。
落ちかかる前髪をそっと梳いてやりながら、龍麻は心からの台詞を少女に与えた。
「嫌いになんてなったりしないよ」
「ホント?」
「ああ。それに、マリィのおっぱいはきっと大きくなるから大丈夫だよ」
そういえばこのおっぱいはどうやって大きくなったのだろう、
とマリィの憧れの対象に対して龍麻は素朴な疑問を持ち、おっぱいだけなら確かに聖女である女性の方を見た。
むろん葵は龍麻の内心の疑問になど答える必要を認めず、彼女が愛を注ぐ少女の方をだけ向いて言った。
「ええ、そうよ。これから私が毎日、マリィの胸が大きくなるおまじないをしてあげるから。
だから心配しなくていいのよ」
龍麻が何か言いたそうにしているが、やはり答える必要はない。
身体を起こして嬉しそうに抱きつくマリィを受けとめ、ひとつめのおまじないとばかりに、
その豊かな乳房を無垢な肌に擦りつけた。
「ん……」
よほど心地がよいのか、マリィはうっとりとしがみついている。
そのミルク色の肌を、ハープを弾くように撫でる葵も恍惚とした表情をしていて、
自分が愛撫を受けているわけでもないのに、龍麻は息ができないほどの興奮を覚えた。
身体中を細やかに撫でられたマリィは、目を閉じて半ば眠りに落ちているようだ。
葵は彼女の左胸に掌をあてがい、円を描かせる。
「それが……おまじない?」
「ええ。その人のことを大好きな人が、こうやって胸を触ってあげると大きくなるの」
おまじないを何度も繰りかえしながら、葵は龍麻に目くばせする。
龍麻がマリィを受けとると、両手を自由にした彼女は、心底幸福そうな笑みを浮かべ、
さらに丹念に義妹の小さな膨らみにおまじないを施した。
<<話選択へ
<<前のページへ 次のページへ>>