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「んッ……ほ、ふッ……んふッ……」
鼻から息を抜きながら、さやかは舌を止めない。
続けているうちに諸羽の気持ち良い場所が判ってきたのか、息遣いに余裕が感じられるようになり、
一方で諸羽はせわしなく身をこわばらせる回数が増えていた。
「顔を前後に動かしてみるのもいいわよ、さやかちゃん」
葵のアドバイスに従って、さやかは顔を動かす。
彼女に全くそぐわない、口の端から抜けるグポッという音が、聞いているだけの龍麻を追いつめる。
それに加えて舐められている諸羽の窮状たるやいかに、龍麻は先程から一転して後輩に同情した。
さやかは足を外側に開いて正座し、上体をかがめて諸羽の股間に顔をうずめている。
龍麻達はそれを真横から見ているので、彼女の乳房も丸見えだった。
公称で八七センチとなっているバストが、顔の動きに合わせて揺れている。
葵と比べるとまろやかさに欠ける分、瑞々しさに優るだろうかと龍麻は考え、
不埒な想像が指先を通じて伝わってしまっていないか、そっと葵を見た。
葵は気づいていない――後輩の指導に夢中で、少なくとも気づいていないように見えたので、
龍麻は安心して、ついでに眼球を五ミリほど下に向けて、自分の検討が間違っていないか確認した。
葵は何センチか、彼氏であっても聞いたことはないが、九十はありそうに見える。
初めて触れた時、つきたての餅のような柔らかさに感動し、
そんな柔らかいのにきれいな半球の形を保つ人体の神秘に驚嘆したものだ。
頭の中で、龍麻が葵がさやかと同じ格好をした時を想像すると、
やはり葵の乳房のほうがゆさゆさと揺れていた。
だが、質感はやはり触ってみなければわからない。
さやかの乳房まで、物理的には身を乗りだせば届く距離ではあるので、触れることはできるだろう。
ただし一時の欲求に負けて果実をもいでしまうと、その後が恐ろしい。
果実の所有者に怒られるならまだしも、龍麻(・・)の所有者に天が割れ、
地が裂けるほどの怒りをこうむる可能性が大とあっては、
たとえ不老不死になれる桃であっても、手をのばす勇気は龍麻にはなかった。
予想した陰の未来に、陽物がただちに影響を受けて若干萎える。
その途端葵の手が離れたので、龍麻は腰を抜かしそうになったが、
葵は別に恋人に愛想を尽かしたわけではないようだった。
「さやかちゃん、そろそろいいと思うわ」
諸羽の射精が近いと見て、次の段階に進ませることにしたのだ。
さやかが諸羽の股間から顔を離す。
しどけなく開いた、唾液が薄くまぶされた口と、ほんのわずか焦点を失っている瞳は、
写真集のどこにも乗っていない表情だ。
おまけに着ているのはパンティ一枚だけで、ほとんど輝いてさえ見える肢体に、
萎えていた龍麻の陽物はたちまち威厳を取り戻した。
乱高下する龍麻の興奮を知ってか知らずか、葵は流し目で次を促す。
躾けられた犬のように、龍麻は意図をすぐに察して横になった。
「霧島君も、龍麻の隣に」
龍麻を寝かせ、諸羽にも指示を出した葵は、龍麻の腰の上に膝立ちになると、さやかの方を向いた。
「こうやって……ゆっくり腰を落としていくの。少しずつよ」
そそり立つ屹立を逆手に持ち、葵はさやかと諸羽に見えるように挿入していく。
男性器を手ずから膣内に挿入する仕種にも二人の目は釘づけだったが、
腰を沈め、龍麻を迎えいれた瞬間に葵が見せた恍惚の表情は、特にさやかに衝撃を与えた。
どれほどの幸福を感じたら、あのような表情ができるのか。
肉体と精神の両方が満たされなければ、とても浮かべることはできないだろう。
束の間諸羽のことさえ忘れて、さやかは敬愛する先輩の艶姿に魅入った。
騎乗位が好きかと言われれば、好きではないと龍麻は答えるだろう。
葵に主導権を渡して快楽を、それも期待以上の快楽を貪れるのは至上の悦びではある。
だが、愛する女をこの手に抱き、組み敷いて征服する恍惚にはやはり及ばないと思うのだ。
思うのだが、宗旨変えを迫られるほど今日の葵は淫靡だった。
二人によく見えるようにだろうが、両手を繋いでの前傾姿勢ではなく、
龍麻の起こした膝に後ろ手をついて腰を突き出し、上下ではなく前後左右の動きで交合している。
彼女の腹部が場末の踊り子もかくやというほど淫猥に形を変えるたび、
根本まで咥えられた陽物が媚肉と密着し、彼女の体内で溶けてしまうのではというほどの快感に苛まれるのだ。
後輩の前ですぐに果てるわけにはいかないと龍麻は歯を食いしばるが、
快感の全てを葵に支配されていてはいかにも心もとなく、早く教育とやらが終わるのを願うばかりだった。
腰を自在に動かして膣路をくねらせる葵を、諸羽とさやかは瞬きもせずに見ている。
龍麻と深く繋がったまま白い肌を朱に染めて、優美といえるほどに快感を貪る姿は、
男女の交わりが秘すべきものではなく、互いをもてなし、愉しむものだと二人に知らしめた。
「あッ、あぁ、あッ……ン……」
振りつけであるかのように手の甲を口に当て、時に生々しい呼吸を漏らし、葵が喘ぐ。
ときどき切羽詰まった感じになるのが、いかにも心底気持ちよくなっているようだ。
大きく揺れる乳房と尻は、特に諸羽に大きな刺激を与えているようで、ずいぶん落ち着かない様子だ。
とはいえさやかも諸羽を責める気にはなれず、二歳上の女性が見せる、
妖艶な腰つきに目を奪われっぱなしだった。
興が乗ってきたのか、葵はいよいよ激しく龍麻との交合を二人に見せつける。
後傾姿勢から上体を前に起こすと、床につけていた膝を上げて大きく開いた、
蹲踞のような姿勢をとったのだ。
そこからさらに上体を倒し、龍麻の腕の横の床に両手をつく。
妖艶から卑猥に変貌を遂げた葵は、その姿勢から尻を今度は上下させはじめた。
「……!!」
葵の股の間を肉柱が出入りする。
愛液が撹拌される粘った音に、穴の中に棒を出し入れする時に抜ける空気の音、
さらには尻たぶが龍麻の腿にぶつかる音までが、異様ともいえる重なりで室内に響く。
ある意味で根源的ともいえるその音楽は、諸羽とさやかをこれまで以上に刺激した。
アイドルと彼女を護る者という立場も、異能の『力』を以て東京を護る戦いに身を投じている
という宿命も今このときは関係なく、他人のセックスにあてられて興奮する、ただの若い男女でしかない。
美しい裸身を軟体動物のようにくねらせて自ら男性器の抽送を繰り返す葵と、
その下で彼女を支え、時に下から突き上げて快楽を愉しむ龍麻を、二人は生きた教科書として五感で学んだ。
「さあ、二人とも、やってみて」
二人に充分に騎乗位のやり方を見せた葵が、一度龍麻から離れる。
蝋のような愛蜜を淫唇にまとわせたまま、眼を見開き、鼻腔を膨らませた諸羽に近づくと、
彼を龍麻の隣に横たわらせ、次にさやかの手を取って諸羽の腰の上に導いた。
すっかり淫熱が頭の芯まで回っていたさやかは、導かれるまま、半ば自分から諸羽に跨がった。
「そうよ……霧島君のを握って、腰を落として」
諸羽の性器が自分の秘部に触れたとき、さやかは一度動きを止めた。
だがそれは恐怖ではなく、これから体内に入ろうという、今手で握っているものの硬さと熱さに酔ったのだ。
「霧島くん……」
「さやか、ちゃん……」
いつもよりも諸羽の声が遠いのも、さやかを酩酊させる。
快楽への期待をベースに、自分が主導権を握って諸羽を気持ちよくさせるのだという成分を加えたカクテルは、
さやかの新たな一面を引きだそうとしていた。
「挿れ、るね……!」
淫口を押し広げ、諸羽が挿ってくる。否、挿れていく。
いつも歌う時に使うマイクと同じか、それよりも少しだけ短いだろうか。
目で見て、手で握り、大体の大きさは把握しているはずなのに、
記憶よりも遥かに巨きな肉の杭は、身体の真ん中までも貫いたような気がした。
「はぁっ……はぁっ……!」
大きな息遣いで呼吸を整える。
凄まじい熱量で頭がくらくらする。
たまらず床に手をつくと、その拍子に諸羽と目が合った。
「さやかちゃん……」
いつもさやかを見ている、好意に満ちた誠実な目ではなかった。
途方もない欲望に溺れかけている、男の――牡の目だった。
さやかの裡で感情が渦を巻く。
彼にそのような目をさせたのは、自分なのだ。
悔いはない。
あるのは、もっと諸羽を欲望の深みに沈めたい。
浮かびあがろうとしたらその頭を抑え、もがく彼と一緒にどこまでも潜っていきたいという邪欲だった。
それは一人で抱いたならば、決して表層に浮かびあがらせることはなかっただろう。
しかし美里葵という少女が、女は――愛する男を見つけた女は皆、同じ欲望を持つのだとさやかに教えた。
快感を求めてあられもなく腰を振り、濡れた唇を男の肌に好きなだけ押し当てても良いのだと、身を以て示してくれたのだ。
「霧島くん……っ」
見つめあい、手を握る。
ごく自然に、一分の呼吸の乱れもなく行われたそれは、淫らな舞踏の始まりを告げる合図だった。
葵がやっていたとおりに、前後に腰を動かす。
はじめは加減がわからなかったが、すぐにコツを掴み、滑らかに腰をくねらせるようになった。
移動するヘビのように一切の無駄がない屈曲は、アイドルとして受けたレッスンの賜物か、
動きだけなら葵をも上回るかもしれず、ここにいる男達の目を奪わずにおかない。
それどころか、本来龍麻をたしなめる立場の葵でさえも、
教えに忠実な弟子の成長を喜ぶかのように微笑を浮かべていた。
三人から注視されていることにも気づかず、さやかは新たに覚えた快楽を貪っている。
これまで男性器と女性器の形状から、前後の動きのみが快感に繋がると思っていたさやかだったが、
肉壁に擦りつけるような動きも、同じかそれ以上に痺れるような気持ちよさを得られることに気づいた。
身体を倒して尻を突きだすようにして、どこが気持ちよくなれるのか探る。
「あ……あっ、ん……」
場所を見つけるとそこを集中的に擦る動きに変え、さらには快感の強さをもコントロールできるように習熟していった。
腰だけを卑猥に降って覚えたての快楽を貪る現役のアイドル、という構図は、
特に龍麻にとって刺激が強すぎるもので、横目で後輩たちの行為を見る彼の屹立は、
いよいよはちきれんばかりにそそり立っている。
葵に途中で放置された哀れな逸物を、自分でしごいてしまおうか、いやそれはあまりに情けない、
と葛藤をしつつ、斜め前方という結合部分も腰の動きも余すところなく視界に収まる特等席で、
ほとんど瞬きもせずにさやかの痴態を眺めていた。
龍麻のパートナーである葵は、愛欲よりも後輩たちに対する指導欲の方が勝るのか、
恋人の方には目もくれず、優秀な教え子が自ら愛の沃野を開拓していくのを上気した瞳で見守っていた。
そしてわずかな差ではありながら、四人の中でおそらく最もセックスに対する欲が薄かったであろう諸羽もまた、
半ば開いた口から艷やかな声を紡ぐさやかを凝視していた。
可愛いとだけ思っていた少女が身に詰まった淫欲を弾けさせ、妖花へと変じたのだ。
影響を受けないわけがなかったが、さやかに較べて師に恵まれないためか、
どうすれば良いのか判らず、今はまださやかのされるがままになっていた。
「あ……あッ、さやかちゃんっ、こんな……っ」
「気持ち……いいの? わたしで気持ち良くなってるの、霧島くん?」
快楽に顔を歪める諸羽に微笑みかけるさやかは、毒婦めいた貫禄さえ感じさせる。
女というものはかくも恐ろしいのか、と恐ろしい女二人を左右の眼でそれぞれ見た龍麻は思った。
「凄いよ……あうッ、溶けちゃいそうだ……ッ」
あまりに感じているのか、諸羽は感想をそのまま口にしている。
それはさやかにとってはドーピングに近い効用をもたらすらしく、
時折身体を震わせつつも腰の動きは激しさを増すばかりだった。
とはいえ、一つの体位ではできる動きも、得られる快感にも限度がある。
さやかの腰振りが少し緩やかになったところで、この場を掌握している葵が、
さやかの渇望まで読み取ったかのようなタイミングで話しかけた。
「身体を起こして、膝を立ててみるといいわ」
それは少し想像すれば、一人の時でさえできないような恥ずかしい姿勢だった。
だがすっかり浮かされているさやかは、葵の提言を吟味する気配も見せずに従った。
諸羽の腹部に手を置いて膝を立て、重心を後ろに移す。
「……!!」
息を呑んだのは一人ではなかった。
アイドルらしく丁寧に手入れされたヘアも、生々しくも男根を咥えこんでいる秘部も、
むしろ見せつけるように露わにしたさやかに、男二人は同時に息を呑み、唾を飲み下したのだ。
上体を起こすことでより深く諸羽を迎え入れたさやかの顔に、一瞬、あどけない少女らしからぬ顔が浮かぶ。
それは性の悦びの深奥に達した顔であり、禁断の悦びを知ってしまった顔だった。
儚くも消えたその悦びを求めて、さやかは腰を上下に振り始める。
乱暴に、尻を叩きつけるように、諸羽の男性器を幾度も貪った。
「き、霧島くんがいっぱい……いっぱい、わたしの中に……っ」
ピストン運動が繰り返される秘唇からは、歌手としても将来を嘱望されているさやかから
紡ぎだされるとは信じがたい、卑猥に濁った愛液と空気が撹拌される音が絶えず生みだされている。
それはいくら美男美女の愛の交歓といえども、いささか激しすぎるもので、
二人の守護天使でさえ持ち場を離れて耳をふさいでいただろうから、
龍麻などはもう全身の血液が股間に集中するのではないかというほど滾っていた。
なんなら一人でしごいてしまいたいくらいだったが、後輩たちの目の前と、
何より葵の前でそれはいかにも情けなく、必死で自制した。
その葵はといえば、この場で龍麻と結合まで果たしているのに、
モデルでも務めているかのように身じろぎもしない。
顔はもちろん龍麻ではなく優秀な教え子たちの方を向いており、
龍麻は一人取り残された気分を痛切に味わわされていた。
この状況があと三分も続けば、快楽と疎外感を同時に抱くという稀有な経験をすることになっただろうが、
幸いなことに、諸羽とさやかのセックスは終わりを迎えようとしていた。
「霧島くんっ、わたし、もう……っ……!」
「ぼ、僕も、さやかちゃんッ……!」
異口同音に叫んだ二人は、手を握り合って絶頂に至る最後の階を登ろうとする。
愛情と淫靡さが絶妙に混ざりあった光景は、龍麻に自分たちがこんなセックスを
最後にしたのはいつだっただろうかと顧みさせるほど美しく、ふと、隣りにいる女性に目をやった。
残念なことに葵とは全く視線が重ならなかった。
葵もまた若い二人の生命の煌めきに目を奪われているのだろうから仕方がない、
とあえて良い方に考える龍麻の小指に触れるものがある。
先程の一本で龍麻を押さえつけるような意図は感じられない、
温かなものが伝わってくる葵の小指は、偶然か否か。
それ以外は毛一本でさえ龍麻の方を向かなかったから、真意を汲むことはできなかったが、
やはりあえて良い方に考えることにした龍麻だった。
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