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剣呑な雰囲気を保ったまま、絵莉が突然話題を変える。
「ね、龍麻君もどう?」
目の高さに掲げられたグラスには、濃紫の液体が妖しく揺らめいていた。
龍麻はまだアルコール自体にはさほど興味が無かったが、
その雰囲気がもたらす大人の世界にはおおいに興味があった。
それに、先程までのやり取りからして、ここで断るのはあまり賢明ではないと考え、
勧められるままに手を伸ばした龍麻に、マリアの鋭い声が飛ぶ。
「ちょっと、仮にも教師の前で生徒に飲酒を勧めないでくれる?」
「あら、私達だけ飲んで龍麻君にはおあずけさせるの? 龍麻君だって興味あるわよね」
「は、はぁ……まぁ」
「あら、あんまり積極的じゃないわね。……もしかして、興味があるのはこっちかしら?」
マリアの言う通り教師に止められては悪いことも出来ず、龍麻は消極的に頷くしかない。
それをつまらないことを言う、とばかりにマリアを軽く睨んだ絵莉はグラスを引っ込めると、
シャツのボタンをひとつ外して胸元を見せる。
あまりに唐突な絵莉の行動に、龍麻は口に含んでいるものをもう少しで吹いてしまうところだった。
「顔真っ赤にしちゃって、可愛い」
「ちょっと絵莉! ごめんなさいね龍麻、
この子いつもはこんなじゃないのだけど、今日はどうしたのかしら」
「そりゃ、龍麻君がいるからに決まってるでしょ! 大体、この子とは何よこの子とは!
そりゃマリアの方が歳はいってるけどね、私だって子供扱いされる歳じゃないわよ」
歳の話題が出たことで、マリアの眉がピクリと動いたが、
年上の嗜みなのか、激発はせず、毒のこもった口調で対抗する。
「どうかしらね。年齢だけ重ねても中身がついてきていないようだけれど」
「なんですって!? 見せてあげるわよ、中身を」
売り言葉に買い言葉、とはこのことだった。
絵莉は、口の中のものを呑みこんでいる間に物凄い方向に進み始めた事態に
うろたえるばかりの龍麻の前に立ち、軽くかがみこむ。
「良く見ててね」
大人の狡さで動きを封じこみ、ボタンを外す。
肌は見えるが、それ以上を見ようと思ったら顔を動かさないといけない──
そんな絶妙の罠で誘う絵莉に、龍麻はまんまと乗ってしまった。
「そう──良い子よ」
龍麻が顔を動かした瞬間、顎に指が触れる。
その指を離さずに龍麻の膝の上に跨った絵莉は、スッと顎を撫で上げた。
指紋でさえ抵抗になってしまっているような撫で方に、龍麻の全身が総毛立つ。
「あ……ぁ……」
何を言いたいのか判らないままぼんやり口を開くと、その唇を絵莉の親指がなぞる。
純情な少年はそれだけで動きを封じられ、意志を失った木人形と化してしまった。
「ふふッ──外してみたい?」
絵莉は返事を待たずに龍麻の手を握り、爪にルージュをつける。
たちまち魔法にかかり、絵莉の支配下に置かれた手がのろのろとボタンを外していく。
もどかしい時間の中で、最後のひとつが外されると、
絵莉は満足したようにアルコールを含んだ熱い呼気を吐きかけた。
ほのかな女性の香りと強い酒精が混じったそれは龍麻をくらくらとさせ、かけられた魔法を強化する。
シャツの内側でその時を待っていた、女性としての円熟に達する寸前の身体は、
愛撫に歓喜のさざめきを返しながら龍麻の掌をいざなった。
くびれた腰から、女性特有の胸の膨らみへ。
未だ触れたことのなかった神秘を目の前にして、龍麻は夢中で手を動かしていた。
年上の、ほのかな憧れを抱いていた女性が今、素肌を晒し、触れることを許してくれている。
多少強引な状況だったとしても、抗えるほどの意志の強さを龍麻は持っていなかった。
「ぁ……ん……」
ほっそりと浮き出ている骨をなぞると、絵莉の口から微かな声が漏れる。
少し掠れた声は、アルコールなどよりもずっと龍麻を酔わせ、隠されていた欲望を引き出させた。
掌は更に絵莉の身体を上り、二つの丘に辿りつく。
ややほっそりとした身体つきを纏める乳房は、それでも充分な大きさと、
何より吸いつくような柔らかさを有していた。
震える手でブラを押し上げ、直に触れる。
掌にすっぽりと収まってしまう大きさの膨らみからは、恍惚とさせる温かさが伝わってきた。
「…………っあ……ん」
掌底でやんわりと揉みしだくと、再び甘い旋律を伴って、酒香が鼻腔を掠めた。
触れている乳房と、頬を軽く染めた絵莉の表情。
味覚以外の全てに酔わされた龍麻は、軽い上目使いで絵莉を見やる。
心得た表情で頷いた絵莉は、龍麻の為に胸の頂を差し出した。
色素の沈着もあまり起こっておらず、十代の少女のような色づきの乳首は、
しかしそうではないことを示すように龍麻の口の中で急速に膨らみ、硬さを増していく。
舌が触れる度に逃げ惑うそれを夢中で追っていると、絵莉の口から歓喜の喘ぎがこぼれた。
「んっ……龍麻君、結構……激しい、のね……どこかで、もう経験済みなのかしら?」
「そッ、そんなこと……ありません。初めて……です」
「そう。……それじゃ、お姉さんが教えてあげるわ」
恥ずかしそうに首を振る龍麻に優しく微笑んだ絵莉は、
目はしっかりと龍麻の瞳を見据えたまま、手だけを動かしてズボンのファスナーを下ろした。
大胆な行動にわずかに意志を取り戻した龍麻は、成り行きとは言えこんなことをしてしまって、
恐る恐るマリアの反応を覗う。
目が合ったマリアは、蒼氷の瞳に興味を湛え──ゆっくりと近づいてきた。
「あッ、あのッ」
「龍麻──」
龍麻の視界が金に、次いで蒼に染まった。
きつい香りが鼻と口の中に侵入してくる。
驚きの余り目を閉じることも忘れ、マリアの顔を至近で見つめる龍麻の口を、
生温かい物が舐めまわした。
「! っ、…………ぁ…………」
遠慮無く這い回る舌に、心が痺れる。
耳の辺りをしっかりと掴まれて、強引に歯列を割られると、頭の奥が煮立ったように熱くなる。
後はもう、別の生き物のように巻きつき、吸い上げるマリアの舌に為す術なく蹂躙されるだけだった。
肉厚の舌が、意志を宿しているかのように力強く、そしてねっとりと侵入する。
息をすることすら許されず、表面のざらざらした部分も、裏側のねめった所も全てをまさぐられ、
龍麻は全身から力を奪われるのを、薄い膜がかかった頭の中で感じていた。
「キスも──初めて?」
「は……はい」
「そう──」
龍麻の返事に笑みで答えたマリアは、そっと指を伸ばした。
口の端に付いていたキスの残滓を掬い取り、自らの口に含む。
身震いするほど淫靡な動作をだらしなく口を開けて見ていた龍麻は、ふと股間に外気を感じた。
そこに見た光景に、咄嗟に声も出ない。
いつのまにかズボンは脱がされ、
完全に反応している分身が憧れの女性二人の眼前に晒け出されていたのだ。
慌てて隠そうとした両手も、右手は絵莉に、左手はマリアに掴まれ、どうしようもなくなってしまう。
ならばせめて、と鎮まるよう下腹に力を集中させてみても、
絵莉の乳房とマリアのキスの後では言うことを聞くはずもなく、
それどころか一層硬くなるだけだった。
「大きいのね……」
そっと撫でさすりながら、絵莉がうっとりと呟く。
龍麻の持つ不思議な力と関係があるとは思えないが、
そう勘ぐってしまいたくなるほどそれは大きかった。
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