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「この臭い……」
インセンスですよ」
もはや逃れる術がないのを知っているのだろう、絵莉が訊ねると龍麻はあっさりと種を明かした。
ベッドの端に絵莉と向かい合って腰を下ろし、愉しそうに彼女の膝を撫でる。
葵と違って拘束されているわけではないのに、軽く触れる指先が絵莉を動けなくしていた。
「聞いたことはあるんじゃないですか? 
リラックス効果があったりする臭いって、雑誌とかでも取り上げられてますよね」
もちろん絵莉はその存在を知っていた。
存在、というほど大げさなものではなく、
香りと人間の精神についての研究は遥かな昔から広く行われており、
日本ではたまたま最近話題になっただけに過ぎない。
「映画とかじゃないんですから、嗅いだら誰でも淫乱になるとかそんな効果はないですよ。
せいぜい少し肌が火照って気分が良くなる、その程度です」
龍麻の手は太腿の半分も進まず、膝の近辺を行ったり来たりしているだけだ。
それがもどかしく、また、感覚を求めてしまいそうになり、絵莉は強引に意識を戻した。
「でも彼女は」
「葵はね、好きなんですよ。セックスが」
「なッ──」
「正確にはセックスそのものじゃないみたいですけど。
雰囲気とかそういうのに酔うのが好きみたいです。な、葵」
葵は答えず、ベッドに腰掛けた龍麻に肌を擦りつけ、快楽を享受しようとしている。
彼女に一顧だにくれないまま龍麻は己のズボンに手をかけた。
「ふッ……うんっ……」
それだけで葵は餌を求める犬のように龍麻の下半身に顔を埋め、下着の上から屹立を舐める。
龍麻はそれを止めず、彼女に奉仕させながら、ただ絵莉の膝の辺りを擦るだけだ。
その余裕に満ちた態度が、絵莉を息苦しくさせる。
それは龍麻の次の囁きで一層増した。
「あと……絵莉さんも。でしょう?」
「な──」
「さっきも言いましたけど、この香ね、そんなに効くはずないんですよ。
僕とマリア先生はちょっと理由わけありですけど、少なくとも今の絵莉さんみたいになっちゃうことはないんです」
「何が……言いたいの」
絵莉の問いに龍麻は答えず、まだ口淫を続けていた葵を抱き起こすとベッドに軽く突き飛ばした。
乱暴に見える行為もベッドが柔らかい為か葵を怯えさせることはなく、
更に上着を脱いだ龍麻が彼女に覆い被さることで、甘い、期待に満ちた吐息を紡がせた。
「は……ん……」
耳を塞ぎたくなるような嬌声に、別の声が被さる。
それは縛られた葵を見た時よりも強い衝撃を絵莉にもたらすものだった。
「フフ……ワタシも忘れてはダメよ、龍麻」
「マ……リア……」
葵よりも更に妖艶な、濃紫のランジェリー姿のマリアが、ベッドに乗り、龍麻にしなだれかかっていた。
年上で、分別もあるはずの友人が晒す痴態に、絵莉の喉がひりつく。
女性二人に挟まれる格好になった龍麻はすぐに残りの衣服も脱がされ、彼一人が全裸になった。
身体を絡め、随所にキスを落としながら誘惑する二人に身を委ねる龍麻は、
恥ずかしげもなく性器を絵莉に見せつける。
逞しい筋肉に備わる雄大な牡は、否応無しに牝を惹きつけた。
まだ完全に勃起していないながらも、その兆候を見せ始めている屹立から、絵莉は視線を離せない。
理性でどう否定しても、あれを胎に迎えたい、全身を刺し貫かれたいという欲望が
臍の裏から染み出すのを止めることが出来ないのだ。
インセンスの催淫効果が自分をおかしくしているのだと唱えても、
それがどうしたのだ、といわんばかりの疼きに心を嬲られると、
覆すべき理性はみるみる弱くなっていった。
代わりに、奔放に牡を求める二人を羨ましいと思う感情が裡に芽生える。
一秒ごとに着実に高まっていく己の劣情を、絵莉は懸命に抑える。
膝を閉じ頑なに情欲を拒む絵莉に、愛撫する手を止めた龍麻は、軽やかな笑みを湛えて彼女から離れた。
「しばらくそこで見ててください」
性的な興奮をしているとはとても思えない爽やかな表情と、その下腹に息づく屹立に、
絵莉は返事をすることも忘れてただ魅入っていた。

全裸になった龍麻がベッドに横たわると、待ちかねたように二人がその横に傅いた。
マリアが上半身を、縛めを解かれた葵が下半身を受け持ち、
己の肢体を存分に活用して牡を悦ばせようとする。
二人の物腰に迷いはなく、どちらが龍麻の寵愛を受けられるか競っているようにさえ絵莉には見えた。
マリアは首筋から鎖骨の辺りにかけてを、まるで吸血鬼のように口を吸いつかせ、
甘噛みしながら刺激していく。
「んっ……ふぅッ……」
鼻にかかった声を隠そうともせず唇をめくりあげさせて、
引かれた口紅に劣らないくらい鮮やかな舌を卑猥に這わせていた。
龍麻が尻に手をかけると、焦らすように腰を振り、淫靡に戯れる。
その仕種には余裕があり、龍麻と対等、あるいは手玉に取っているようにすら見えた。
一方の葵は一心不乱に屹立を口に含み、ただ彼に快楽を与えることのみを目指しているようだ。
「ふっ……んふぅっっ……うふんっ……」
それだけに彼女は己の全てを用いて奉仕しているらしく、
頬はいやらしくへこみ、唾液が卑猥な水音を立てている。
龍麻が髪を撫でると一度は止むものの、すぐに、
より大きな音を立てて屹立を喉の奥に含んでいくのだった。
絵莉にとっては初めて見ることとなるフェラチオを、葵は巧みにこなしている。
まだ二十歳にも満たない、それも優等生の彼女が行う姿はひどく扇情的で、
目の前で見る男女の交わりを、絵莉は乾ききった唇を舐めまわして鑑賞していた。
やがて胸板にキスを浴びせていたマリアも葵に合流し、二人で屹立を刺激し始める。
頬張っていた葵が口から屹立を抜くと、濡れ光ったそれにマリアが愛しげに口付ける。
葵もまだ飽き足らないのか、反対側から同じように舐めあげ、
時に舌どうしを絡めてしゃぶっていた。
粘質の塊が軟体動物のように蠢き、間にある肉の柱に唾液を塗りたくる。
二人のあさましい姿はしかし、絵莉の心にもりのように撃ちこまれ、確実に理性を抉ってきた。
そのような行為に嫌悪すら抱いていたのが、気付けば口の中に唾が溜まっている始末だ。
幸いにして龍麻達は自分達の快楽に夢中で自分には気が付いていないようで、
絵莉は口元を拭い、唇の端に滲んだ唾液をそっと拭った。
手の甲に付着した透明な液体を、塗り広げたいと思ってしまう。
汚いはずである唾を、思う存分になすりつけたいという淫らな欲に取り憑かれてしまう。
そしてそう考えると、新たな恥蜜が下着を濡らすのを、絵莉はもう堪えることが出来なかった。
凝視しているのを知ってか否か、龍麻は不敵な笑みを浮かべ、二人を屹立から引き離す。
すっかり硬くなり、不規則に脈打つ屹立に酔った眼差しを向けたマリアと葵は、
褒美をねだるように身体を起こし、龍麻に顔を近づけた。
物欲しそうに口を開ける二人それぞれと深いキスを交わした龍麻は、
まずマリアの方から味わうことにしたらしく、彼女の背後に回る。
「あッ……お……っ」
黒々とした隆起が白い身体の中に収まると、マリアが感極まったように吼えた。
腰だけを高く持ち上げて突っ伏し、身を強張らせる彼女の姿が、絵莉の網膜に焼きつく。
絵莉の知る限りでは近くに男の影はなく、自然にそうなのだと思っていた彼女が、
こうも性に溺れ、快楽に耽る姿は、葵の痴態以上に絵莉をおののかせていた。
そしてそれを見ていると、とめどなく蜜をあふれさせてしまう自分の身体にも、
絵莉は恐怖すら覚えるのだった。
膝立ちの龍麻がゆっくりと腰を動かし始める。
それは滑稽であり、卑猥であり、絵莉を惹きつけずにはおかない光景だった。
「うッ……ン……」
龍麻の動きに合わせ、糸を引くような喘ぎがマリアの口から零れる。
龍麻が肉付きの良い背中を撫でると、心地良さそうに身を震わせ、尻を振った。
もう幾度とない交わりで心得ている龍麻はすぐに抽送の速度を速める。
「はッ……あッ、うんッ」
屹立が根元まで浸かる極上の感触と共に彼女の尻肉が揺れる様に更なる興奮を誘われて、
マリアの上体を引き起こし、豊満な胸を掴む。
握り潰され、醜く形を変える左の乳房と、
後ろから突かれる度に重たげに揺れる右の乳房が、絵莉の視覚を奪った。
「うんッ……ああっ、龍麻……いい……わ……ッ」
背中を反らせ、はしたなくも快感を口にする友人の姿に、鼓動が踊る。
女としてほぼ理想のプロポーションを有するマリアが、柔肉を震わせて悶える光景は、
絵莉の脳に直接淫欲となって訴えかけてきた。
ほとんど無意識に手が動く。
熱く潤っている源に触れそうになって、慌ててスカートの端を掴んだ。
それは龍麻に見られる羞恥よりも、歯止めが効かなくなりそうな恐怖に根ざすものだったが、
二人の交わりはいよいよ狂熱の度合いを高め、絵莉をも巻きこもうと弄ってくるのだ。
容赦無く腰を振りたてる龍麻に、マリアはすぐに追い詰められたようだった。
バランスを崩しそうになりながらも、一段と背を反らせ、その一方で尻を突き出し、
より深く屹立を咥えこもうとしている。
「う……あ……ッ、あんッ」
彼女が好んで着けている深い赤の口紅は妖しく濡れ光り、
一時たりとも留まることなく形を変え続け、蟲惑的な音階を奏でていた。
そしてその下方にある、大きく開かれ、ペニスを深く咥えこんでいる淫唇からは、
泡立った蜜がかき混ぜられ、捏ねられる音が。
力強い抽送に堪えきれなくなったマリアがくずおれる。
龍麻はその上からのしかかるようにして屹立を撃ちこみ、とどめの一撃を放った。
「あぁッ、龍麻……ッ、駄……目っ、あぁァッ……!!」
腹の奥まで貫くように激しく突きこむと、深奥がびくびくと震える。
それはすぐに屹立全体を包みこむ蠕動となり、
龍麻は精を放ってしまわないよう堪えながら脊髄を走る快感を味わった。
媚肉の痙攣が薄れていくと共に、マリアの身体も弛緩していく。
ずるりと抜けた屹立がまだ力を失っていないことに満足気な笑みを浮かべ、
龍麻は一旦ベッドの上にあぐらを掻いた。



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