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「ひッ……あ、あ、せんせい、マリアせんせいっ……!」
 顔をくしゃくしゃにし、涎を撒き散らしながらろれつの回らない声で叫ぶ葵に
優等生の趣は微塵もない。
一方で教え子を抱きかかえ、仮借ない指技で女の二穴を責めるマリアの顔にもおよそ
聖職者の面影はなく、裸身で絡みあう二人の女性は妖美に過ぎるものだった。
「あァ……美里サンのヴァギナ、とても嬉しそうよ」
「あぅぅ、お腹……指、動い……苦し……っ」
「苦しいだけではないでしょう? ちゃんと言ってごらんなさい」
「ああ、でも、そんな……」
 理性の残りかすで葵はなお耐える。
だが、懸命の努力もマリアの前では蟷螂の斧に過ぎなかった。
「正直に言わないと、またお尻を叩くわよ」
「……! い、言います、気持ちいいですっ」
「どっちがいいのかしら? こっち? それともこっちかしら?」
「りょ、両方です、両方とも、んぅ、あぁッ」
「両方ってどことどこかしら? 美里サンなら言えるわよね?」
 熱を孕んだ口調で言いながら、マリアは葵のアナルに埋めた指の根元を、
孔を拡大するように渦を描かせる。
もちろん実際に拡がるわけがないが、葵を恐慌に陥らせるには充分だった。
「……お、おまんこと……お尻の、孔……です……!」
「良く言えたわね、美里サン」
 淫語は龍麻にも何度か言わされているのに、未だに羞恥で死んでしまいそうな顔をする葵に、
一転して難問を解いた生徒を称える甘い声を発したマリアは、
もう何度か達している葵の、膣にもう一本指を挿れた。
「さァ、もっと気持ちよくしてあげるわ」
 膣内の二本の指が隘路をくつろげ、弄る。
男性器よりも細い指は、しかし縦横に自在に淫壁を擦りあげ、
龍麻にも与えられたことのない快感を葵にもたらした。
「んふぅ、あ、あ、嫌っ、あっ、ん、ひぐぅッ……!」
 蠢く三本の指に膣道と尻路がひとつになったかのような錯覚を覚え、
快楽と痛みが不可分の大きな塊となって下腹から昇ってくる。
頭の中に雷鳴が轟き、葵は渾身の力でマリアにすがった。
「フフッ……イキなさい、美里サン……!」
 マリアの声は葵に届いてはいても、伝わってはいなかった。
膣内でマリアの指が腹の側を擦る。
そこは葵も知らなかった急所で、強く擦られた瞬間葵の意識が飛んだ。
同時に、もう一番奥まで挿っていたと思っていた、尻を塞ぐマリアの指が、さらに奥へと伸びた。
「んあッ、ああぁあ――!!」
 苦痛と快楽、二種類の刺激が同時に葵の身体を駈けのぼる。
それらが頭の中で混ざり、閃光となって弾けた。
「――ッあ、ひ、あァ――!!」
 がくん、がくんと大きく二度、弾けたばねのように身体を弾ませ、葵は達する。
これまで彼女が経験してきた中でも激しい絶頂は、容易に彼女の意識を断ち、
一瞬全身をこわばらせたかと思うと、一気に弛緩した。
 官能の震えを全身で受けとめたマリアは、葵が放つ濃密な匂いを深く鼻腔に導きいれる。
咲き誇る少女がエネルギーを放出してしおれるさまは、
何百年味わっても飽きるものではなかった。
「とても可愛かったわよ、美里サン……また、しましょうね」
 紅い舌で葵の耳朶を舐めたマリアは、甘美な囁きを聞こえるはずのない耳に注ぐ。
そうして彼女の二つの穴に収まっている三本の指を引き抜くと、
てらてらと光る己が指を愛おしそうに眺めるのだった。
 気を失った葵を、マリアはベッドに寝かせてやる。
前菜は十二分に堪能したので、いよいよメインディッシュの番というわけだ。
「少し休んでいなさい、美里サン……」
 葵に優しくシーツをかけたマリアは、もう一人、
居間で幸せそうな顔をして寝息を立てている少女の許に向かった。

 息苦しさに、アン子は目を覚ました。
目を開けて最初の世界との接続は、普段通りの視界の悪さだ。
眼鏡を常用する人間の、登録された無意識下の行動として、
目の前をクリアにするデバイスを手に取ろうとする。
しかし、眼球よりは言うことをきくはずの右手は、がちゃりと不自然な音を立てただけで、
普段なら顔の右側にはずの眼鏡に伸びようとはしなかった。
「ちょッ、ちょっと何よコレ、どうなってるのよ!」
 右手に加えて左手も動かない。
それどころか両足さえも意のままにならず、アン子は自らの悲鳴に頭痛を覚えつつ、
ようやく事態の異常さを悟った。
慌てて記憶を逆再生して、身に生じた危険を把握しようとする。
「おはよう、遠野サン。よく眠れたかしら?」
 しかし、耳元で聞こえた粘り気のある声に、頭痛などどこかへ吹き飛んでしまった。
今どこで、誰と何をしているのか瞬時に思いだす。
けれども声の主の方を向くことは、アン子にはできなかった。
「マ、マリア先生……」
「ずいぶん気持ち良さそうだったけれど、そんなにあのワインが美味しかったかしら?」
「い、いえ……それより、どうしてあたし拘束されなきゃならないんですか?
未成年にお酒を勧めるし、人権問題だと思うんですけど」
 この時アン子を支配していたのは恐怖で、ゆえにマリアに対しても強く出たのだ。
 糾弾されたマリアは動じるでもなく、アン子の顎を人差し指でなぞる。
甘くも冷たい指先が、アン子にこれまで抱くことのなかった感情を抱かせた。
「アナタ、家に来たときは来る途中で美里サンに会って、
美里サンの方が一緒に来たい、そう言ったわよね」
「……! さ、さあ、そうだったかしら、忘れちゃいました」
「美里サンは遠野サンに無理やり連れてこられたと話しているのだけれど、
どちらの言い分が正しいのかしら?」
 疑問の形はしていても、マリアは明確に断定している。
大人の女性の凄みを感じさせる笑みに、アン子は喉が干上がるのを感じた。
「ワタシは一人で来て欲しかったのだけれど、遠野サンは違ったみたいね」
「それは……」
 どう言えばこの場を切り抜けられるだろう。
アン子は唯一自由である思考能力をフル回転させようとした。
だが、有効な言葉を一言すら生みだす前に、顎がつままれ、横を向かされる。
至近距離でまともに蒼氷の瞳を見てしまったアン子の心は瞬時に凍ってしまった。
「あ、あの、あたし」
「なあに?」
 マリアの声は教え子に対するものではなく、ペットに向けるものだ。
それを皮膚で感じたアン子の、背筋が総毛だった。
 口をつぐんだアン子にマリアは怒るでもなく、乱れたアン子の髪に手櫛をいれる。
どこまでも優しいが、なぜか物理的な冷たさを感じさせる手つきに、
アン子は奇妙な安らぎを覚えた。
「その……先生のことが嫌だとかそういうんじゃなくて、
ただ、先生はずいぶん……激しいからそれがちょっと怖くて」
「そうだったの」
 指が耳に触れる。
ずいぶんと熱くなっていたらしく、冷たい指がとても気持ちいい。
輪郭をなぞる爪の硬質な感触も快くて、アン子は小さく身じろぎした。
「心配させたみたいでごめんなさいね」
「い、いえ、約束を破ったのはあたしですから」
 先に謝られると、いかにも自分が子供っぽく思えて、アン子は赤面する思いだ。
だから微笑を浮かべるマリアに、彼女が大きく安堵したのは無理からぬことだった。
「んッ……」
 赤と紫の中間の色をした唇が近づいてくる。
ソフトクリームの滑らかさと冷たさを併せ持った唇を、アン子はごく自然に受けいれた。
「あ、あぅ……う、ん……っ」
 顎をつままれ、口を開けさせられた状態で、アン子はキスを受ける。
 マリアの舌は、舌とは思えない力強さで口内を蹂躙していった。
他人に無理やり何かをさせられるのを嫌うアン子だが、マリアにはなぜか不快感を感じない。
それにマリアは若干行き過ぎではあっても、大人の快楽を教えてくれる女性でもあり、
受けた洗礼は刷り込みに近くアン子を支配していた。
 拙いながらもアン子が、教わった舌の動きを披露してみせると、
マリアは嬉しそうに応じてくる。
もちろん師匠、というか本家に及ぶわけがなく、しばらくするとアン子の舌は
肉厚のマリアの舌にいいように弄ばれる一方になるのだが、
粘膜が触れあうただれた快感にアン子は浸り、学校ではおよそ見せないだらしのない顔を、
むしろ倒錯した悦びをもって自覚的にしていた。
「あの、でも」
「なあに?」
「拘束は、できれば解いて欲しいかなって思ったりしてるんですけど」
 長いキスが一度終わり、唾液が糸を繋ぐ距離で二人は見つめあう。
この雰囲気なら言える、と判断したアン子は、思いきって要望を告げた。
「遠野サン」
「は、はい」
「遠野サンは勉強も良くできて、将来のこともきちんと考えている優秀な生徒だと
ワタシは思っています」
「そ、それはどうも」
「でも……嘘はいけないわ。特に自分のために吐く嘘は、許されないものよ」
「……」
 マリアは案外根に持つ性格かもしれない。
若干悪くなってきた雲行きを、どう回避しようかアン子は思案する。
しかし、雨雲はアン子の予想を超える速さで接近していた。
「美里サンはきちんと罰を受けたわ。
だから遠野サン、アナタにも罰を受けてもらわないといけません」
 葵がいったいどんな罰を受けたのか、気になったアン子だが、
視界は著しく制限されている上に眼鏡まで奪われていてマリア以外ほとんど見えない。
わからない、というのがどれほど恐怖を生みだすのか、アン子は実感する。
 マリア・アルカードは真神全生徒の憧れと言って良いくらい絶大な人気を誇る教師だ。
その彼女と一対一で向き合えるというのはアン子も含めて嬉しいはずなのだが、
昼よりは夜を、夜明けよりは黄昏を想起させる今のマリアは、
親しみよりも遠ざかりたい存在だった。
 マリアの手がアン子の身体をなぞる。
冷たい手が肌に触れることで、アン子は自分が裸であることを知った。
ただ、それはアン子に相応の驚きと恥ずかしさをもたらしはしたものの、
声を出して騒ぐといった事態にまでは及ばない。
四肢の拘束の方に度肝を抜かれていたので、裸程度では焦らなかったのだ。
 降りてきた指先は、当然のように胸に着き、乳首を弄ぶ。
指先と爪を交互に使った巧みな愛撫に、アン子は昂ぶりを覚えた。
「……これが……罰ですか?」
「いいえ、まさか。……遠野サンは早く罰を受けたいのかしら?」
「そうじゃないですけど、嫌なことは早く済ませたい主義なんです」
「そう……わかったわ。それなら、始めましょうか」
 マリアは立ちあがり、彼女の全身をアン子は見ることができた。
 日常のどこでこんな下着を着用する機会があるのか全く思い浮かばない、
深い紫のブラジャーとパンティにビスチェ、
それにパンティストッキングとガーターベルトといういでたち。
いやらしさもさることながら、どこか戦闘的にも見えるコスチュームは、
アン子に不安しかもたらさない。
 アン子の目の前でマリアは後ろを向き、見事な、そして丸出しのヒップを晒す。
初めて目にする本物のTバックに圧倒されて声も出ないアン子の前から、
マリアは一旦姿を消した。
 葵には平手でスパンクしたマリアは、アン子に対しては同じ手段を使うつもりはなかった。
 アン子の見えない場所に行き、アン子を不安にさせる音と共に、何かを取りだす。
彼女が手にしていたのは、一本の鞭だった。
先端が台形になっている乗馬用の鞭は、マリアのような女性が持つといかにもサディスティックで、
これから始まる惨劇をいやでも想起させる。
 手首と足首を繋がれたままうつぶせにされたアン子には、
マリアが鞭を手にしたのは見えず、もし見えていれば、いくら大抵の男より肝が据わっている
彼女でも恐慌に陥ってしまっただろう。
 戻ってきたマリアは、アン子をうつぶせにさせた。
「ちょッ、先生、何するんですか」
 手首と足首が繋がれているアン子は、自動的に尻を掲げた姿勢になる。
柔らかな枕を敷かれて顔は辛くなかったものの、高まる不安は彼女の声を尖らせた。
 マリアはそんなアン子を全く無視し、手にした鞭を悠然と構える。
「さあ……始めるわよ、遠野サン」
「――ひッ!? い、痛……あぅぅッ!!」
 乾いた音と尻を襲った鋭い痛みは、アン子にとって全く予想外だった。
立て続けに二発、左右の尻に痛打を浴びたアン子は、ほとんど狂ったように暴れた。
「い、嫌ッ、先生ッ、あたしが悪かったですッ、だから」
 懇願を遮って乾いた音が炸裂する。
吸血鬼のマリアが本気で鞭を打ったら、アン子の皮膚は避け、肉を抉っていただろう。
当然彼女の打撃は充分に手加減されていたが、アン子がそれを知る由もなく、
また、知ったところで灼けるような激痛に感謝することなどとてもできなかったに違いない。



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