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 落石から更に三十分ほど歩いた頃、ようやく景色に変化が訪れた。
「向こうに明かりが見えるぜ」
 地下に灯りがあるはずもなく、京一が示した先が深きものどもの巣窟なのは間違いなかった。
懐中電灯を消した龍麻達は、そっと光の源に近づいていった。
「ここが……その『門』とかがある場所なのかな、葵」
 核心に近づきつつある興奮からか、声を上摺らせて小蒔が囁く。
しかし、葵から返ってきたのは、苦しそうな呻きだった。
「……身体が……熱い……」
「葵ッ!」
「何かが、流れこんでくる……苦しみ……悲しみ……憎悪……」
「どうした」
 異変に気づいた龍麻が、狭い通路を無理やり彼女に近づく。
膝をついてしまった葵の肩に触れた龍麻の掌に、膨大な『氣』が伝わってきた。
そのほとんどは禍々しいものであり、眩暈を起こしそうな陰氣であったが、
それらはすぐに清涼なものへと変わっていく。
 葵の『力』が、不浄の氣を清めているのだった。
ただしそれにも容量があり、あまりに膨大な量が一度に集まったために、
浄化される前の氣が彼女の精神に悪影響を及ぼしたのだ。
「もう……大丈夫」
「無理だと思ったら、すぐに退がれ」
「ええ」
 龍麻の肩を借りて、葵は立ちあがる。
半強制的に連れてこられたにせよ、仲間に迷惑をかけたくないという思いもあった。
「どうなっているんだ、ここは」
「おい、醍醐、あれを見ろッ」
 広間の様子を覗っていた京一が、醍醐の肩を掴んだ。
葵を龍麻に任せ、京一の隣に立った醍醐が見たものは、圧倒的な数の深きものどもと、
彼らを率いるように岩の上に立つ水岐の姿だった。
下水道で会った時とは違う、力感に溢れた立ち居で何事か叫んでいる。
「罪深き邪教の申し子よ。汝等の慟哭の歌声と噴き上げる泉の如き鮮血が、
破壊の神──汝等の父たる者を蘇らせる。その時こそ、世界は変わるであろう。
目を閉じて、大いなる父の姿を思い浮かべよ。さあ、今こそ迎えよう、大変容の時を!!
いあ、いあ、だごん!!」
 水岐の声に合わせて、深きものどもが唱和する。
人間の口ではないものから叫ばれる声は、鳴き声に近いものであった。
自らの絶叫に興奮しているのか、深きものどもは全くこちらに気づく気配もない。
見つかる心配はなさそうだが、この数が相手では容易に突入などできない。
 顔を見合わせる京一と醍醐に、近づいてきた如月が言った。
「膨大な量の瘴気が溢れ出しているな……『門』が開きかけているのかもしれない。
あの化け物どもの氣が、水岐とかいう男の近くに吸いこまれている。
どうやら、あそこが異界への入り口らしい」
 京一が改めて水岐の方を見ると、確かに『氣』が竜巻のように渦巻いている。
化け物数十体ほどの氣が一箇所に集まって、目視出来るほどになっているのだ。
「気をつけて〜、『門』が開いちゃったら、石の力も役に立たなくなるわ〜」
 やはり京一の傍らにやって来たミサが、これだけ化け物の絶叫が響き渡っている中、
何故かはっきりと通る声で囁いた。
「石……って、ああ、これか。何か意味あんのか?」
「これを持っていれば〜、あの子たちは手を出せないの〜」
「そうだったのか。それでさっきも」
 得心したように醍醐は頷いたが、京一はどこか半信半疑のようだった。
 そうしている間にも、水岐の声はいよいよ声量と狂熱の度合いを増していく。
「さあ、使徒たちよ。新たなる同志と共に、大いなる父を呼ぶのだ。
その呼び声で、異界の地に縛られた我等の神、父なるダゴンを呼び戻すのだ──!!」
「がががががががぎぎぎぎいいががぎいいいい……」
「まずい、一段と瘴気の濃さが増している」
 これ以上相談している暇はなさそうだった。
木刀を握り直す京一の横で、醍醐は上着を脱ぎ捨て、雨紋も槍を取り出している。
目だけを後ろに走らせた京一は、葵は無事だと龍麻が頷くのを確認すると、
化け物の合唱に劣らぬよう、闘いの高揚を乗せて声の限りに叫んだ。
「よし……行くぜッ!」
 しかし、京一が機を測り、隠れていた岩場から一気に飛び出そうとしたまさにその瞬間、
足元に何かが突き刺さった。
それ自体よりも、それが切り裂いた空気によってこそ存在を知らしめる。
薄暗い洞窟内とはいっても、拾いあげなければその正体が解らないほど、
投擲されたものは闇に溶けこんでいた。
それは禍々しい黒色をした道具で、十五センチほどある全体の長さの、半分ほどが四角錐になっている。
岩盤にその四角錐の半分ほどが易々と埋まっているところを見ると、
その切れ味も、投擲した人物の腕も相当なものと言うべきだった。
「苦無……だと?」
 拾い上げた如月は、それが見知った道具であることに驚きの声を上げずにいられなかった。
 四百年の血が知る、忍びの武器。
自らも懐に何本かを忍ばせていた道具を用いた人物を、如月は思わず探していた。
刺さっていた角度から暗闇へと、視線を真っ直ぐに伸ばし、求めるものを見つけ出す。
如月の視線を受けてか否か、濃色の古風な装束を纏い、鬼の面を被った人影は、
普通の人間では到底無理な距離を一飛びに近づいてきた。
「このような処に、大きな鼠がおるわ」
「てめえは……鬼道衆ッ!!」
「いかにもわらわは鬼道五人衆がひとり、水角ぞ」
 顔は鬼の面に阻まれ、身体つきも忍者装束に隠されて窺えないが、
声と、肩の辺りで縛られている長めの髪が、女性だと推察させた。
もちろん女性だからと言って、鬼道衆を名乗る者に手加減するつもりなど、龍麻達には微塵もない。
しかし、やはり目的のためなら手段を選ばない非道な連中の中に女性がいたことに、
意外さは隠せなかった。
「てめえら……あんな化け物の崇める神なんざ復活させて、何を企んでやがる」
「神? ほほほッ、そのようなものどうでも良いわ。
我等の目的は、あの『鬼道門』を開く事にこそあるのじゃ。
あの男はその為に役だってもらっただけよ」
「何だと……?」
「あの『門』より魑魅魍魎どもが溢れ出し、この憎き江戸の地を焼き払う事こそ我等が悲願」
 江戸、と言う言い回しに、その時代から連綿と続く飛水の家系に連なる男が眉を跳ね上げた。
「鬼道衆……どこかで聞いた名だと思っていたが、そうか、貴様らが──」
 相手は如月以上にお互いの宿縁を意識しているようだった。
向ける声に、憎しみがこもる。
「忌々しき飛水の末裔よ、あの時、あの者らと貴様等一族に受けた屈辱、
ひとときたりとも忘れた事はないぞえ」
 もちろん如月は彼女が言う屈辱とやらを知る訳ではない。
しかし、彼女の宿怨の念は、それが尋常なものではないと伝えていた。
「この真上は徳川共の眠る増上寺、そして『鬼道門』を封じておるのは徳川の残した霊力じゃ。
じゃが、それももういくばくも保ちはしまい」
 勝ち誇るように笑った水角は、岩場に立つ水岐に向けて何事かを呟いた。
「ほほほほ、もうあやつは用済みじゃ。じゃが、もう少し役に立ってもらわねばの」
 すると突然、水岐が苦しみ始めた。
頭を抱えて激しくくねる身体から、光が放たれる。
光は水岐が身体を折るごとに明度を増し、それに伴って恐ろしい現象が起こっていた。
「ううう……ううううああいあああいういいいいうういいあいあ!」
 おぞましい悲鳴を上げながら、目の前で、水岐が輪郭を失っていく。
あまりに冒涜的な光景に、龍麻達は一歩も動くことができなかった。
線は細いながらも整っていた顔立ちは見る影もなく崩れ、人ならざる物へと変じていく。
眼球は魚のように膨らみ、鼻はこそげ落ち、口はだらしなく開いていく。
「僕は、彼らを導き、この腐敗した世界を、う、海……海に……う……いういいあいあいいい」
「ほほほ……我等が外法の力、とくと見るがよい」
 水角は更に何事かを呟く。
まばゆい光が水岐を包み、それが失われた時、既に水岐涼はそこにはおらず、
半魚半人の忌まわしい存在があるのみだった。
「こん……な……」
 決して好いてはいなかったにせよ、同世代の人間が異形のものに変わり果てる様を見せられて、
さしもの龍麻達も恐怖と嫌悪に身が竦んでしまっていた。
いっそ完全な化物だったら、こうも怯えはしなかっただろう。
 水岐だったものはその恐怖を糧とするように慄然たる叫びをあげ、襲いかかる。
頭では判っていても、龍麻の足は動かなかった。
もちろん氣など練れるはずもなく、無防備に立ち尽くすだけだ。
水角の嘲笑と共に、深きものが飛びかかる。
しかし、口を開け、龍麻を呑み込まんとしたその瞬間、深きものは大きく弾き飛ばされていた。
「キヒィッ!」
 獣じみた絶叫が洞窟に響き渡る。
ようやく恐慌から立ち直った龍麻が見たものは、
両手を前にかざし、何かを打ち出すような姿勢を取っているミサの姿だった。
「裏密……さん」
「ダゴンが復活してしまったら〜、次はクトゥルフが目覚めてしまうわ〜。
そうなったら人類はおしまいよ〜」
 いつになく真剣な表情で告げるミサに、龍麻達もなんとか恐慌から立ち直る。
彼女の言うことが本当かは判らないが、陰氣はいつしか洞窟を満たし、
不快な瘴気となって精神に影響を及ぼすまでになっていた。
こんなものを糧にする何かが復活すれば、大変なことになるのは明らかだった。
「裏密の言う通りだ。ダゴンだかなんだか知らねぇが、ヤバい氣がどんどん集まってやがる。
なんとかしねぇと」
「よし、行くぞッ!!」
 木刀を構える京一に答え、龍麻は深きものどものただ中へと突っこんでいった。
大半は『門』を開くために氣を吸い取られているが、
それでも十体を優に超える深きものどもが襲いかかってくる。
「緋勇サンっ、スペースを作ってくれッ!」
 雨紋に頷いた龍麻は醍醐と背中合わせになり、深きものの肩を狙って氣を放つ。
もともと足が短い深きものは、容易にバランスを崩しよたよたと倒れた。
反対側では醍醐が力任せに蹴りを見舞い、二体まとめて吹き飛ばしている。
そこに出来た空間に、大見得を切るように雨紋が踊りこんだ。
「せいッ!」
 一瞬も止まることのない動きで槍を振るう。
黄の残像が線を描き、鮮烈な軌跡をこの場にいるもの全ての網膜に焼きつける。
雨紋は己が手の一部のように操る槍の先端から雷の氣を疾らせ、
近寄って来る深きものの腹に容赦のない斬撃を叩きこんだ。
しかし、深きものどもは意外に耐久力があるのか、
斬られて吹き飛んでも再び起きあがり、襲いかかってくる。
辟易しながらももう一度槍を振るおうとした雨紋の目の前で、
いきなり深きものが真横に吹き飛んでいった。
頭から落ちた化け物はべしゃり、という嫌な音を立て、それきり動かなくなる。
驚いた雨紋が化け物が吹き飛んだのとは反対の方向に目を向けると、
まだ彼が名前しか知らない、裏密ミサという真神の女生徒が両手で三角形を模ったポーズをとっていた。
「もっと〜、氣を練らないと駄目だよ〜。槍の先に集める感じで〜」
「お、おう」
 全く瞳が見えない底の厚い眼鏡をかけ、
口だけを笑わせているミサは不気味さを抱かずにはいられない風貌だったが、
離れた場所から武器も使わず一撃でこの化け物を倒した彼女の実力は雨紋を圧倒していた。
 改めて槍を握り直した雨紋は、言われた通り、練った氣を穂先の一点に集めようと意識する。
 春に突然宿った『力』を、意識して操ろうとしたことはなかった。
槍術に自信があったからでもあるが、これまではそこまでの必要もなかったのだ。
しかし、今対峙している、ここが東京の地下だと忘れさせるような異形の怪物には、ほとんど通用していない。
倒さなければ、やられる──その危機感は、雨紋の集中を途切れさせることはなく、逆に極限まで研ぎ澄ました。
新たな敵が近づいてきていたが、まだ動かない。
「おい、雨紋!」
 危機を呼びかける龍麻の叫びも無視し、氣を撓める。
動きを止めた雨紋に対し、ためらう理由などない深きものが、
その大口で獲物を呑みこもうと一気に跳躍した。
 瞬間。
みっともなく口を開けて飛びかかった深きものは、顎から脳天までを貫かれていた。
断末魔の悲鳴を上げることさえ許されず息絶えた怪物は、
雨紋が槍を引きぬくと、どさりと落ちて大きく一度痙攣したきり、動かなくなった。
氣を放出したことによるわずかな虚脱感と、それ以上に大きな満足感が雨紋の裡を疾る。
これまで漫然と振るっていた『力』が全身を流れているのを、今ははっきりと感じることができた。
血液の循環と共に新たな氣が生まれ、狂おしいほどの活力を与える。
一度要領を掴んでしまえば、あとは面白いように不可視の力を制御できた。
会心の笑みを浮かべて倒した化け物を見下ろした雨紋は、そのきっかけを与えてくれたミサに、
素早く視線を滑らせ、目だけで礼を言うと、新たな敵に向かっていった。
 混戦から巧みに距離を取った水角が、龍麻を狙って苦無を放つ。
正確に龍麻の頭部をめがけて放たれた苦無は、しかしその寸前、
突然勢いを減じて地面へと落ちた。
「お前の相手は、僕だ」
 声の主が言い終える前に、新たな苦無が水角の手から投げられる。
状況判断といい反応速度といい、常人が到底反応出来る疾さではなかった。
事実龍麻への一投目を防ぎとめた声の主も、自分を狙った二投目にはただ立ち尽くしているだけだ。
しかし、眉間をめがけて投擲された苦無は、またしても突然落ちた。
場違いな程澄んだ音を立てた苦無には、多量の水分がついている。
玄武を奉る飛水の血筋を引く如月が、その力を以って水を操り、弾き落としたのだ。
「鬼道衆とやら……飛水の一族として、江戸の平穏を妨げるものを許す訳にはいかない。
引導を渡してやる……覚悟しろ」
「飛水の末裔め……幾百年の刻を経て、なお我らの邪魔をするか。
引導を渡すのはこちらの方よッ!」
 憎々しげに呻いた水角は、標的を如月に変えて襲いかかった。
 現代の東京で、江戸を転覆させようとする者と、徳川を護る定めを持つ者が相撃つ。
話だけ聞けば滑稽であったが、当人達は真剣であり、そこには命を賭した闘いがあった。
 悪い足場をものともせず、常人ならざる体術で岩場を駆け上り、空中で短刀を撃ち交わす。
交差する瞬間に三合交えた刀もお互いの身体にかすり傷さえつけることは出来ず、
サーカスのように合した二つの影は一度別れた。
着地し、ひねりを加えてもう一度飛ぼうとした如月は、
足先が地面を捉える寸前何かを察知し、向きを変えず、力も溜めず、
水面に置いた紙を踏むが如き軽やかさで小さなステップを踏む。
果たして、水角から放たれた苦無が着地する間さえ与えず如月を襲ったが、
足を縫いつけようと撃たれた苦無はその目的を果たせず、己のみを地面に束縛した。
「甘いッ!」
 しかし、苦無が地面に刺さった時にはもう新たな跳躍をしていた如月が、
飛び越した水角を宙で振り向きざまに放った、水角のものとは少し形の異なる苦無もまた、
標的に命中することはなく、地面に空しく刺さる。
余裕をもってこれを躱し、その勢いを利用して宙へ飛んだ水角が、
極少の動作で新たな苦無を取り出し、投げようとしたその時。
突然、彼女の背中に小さな衝撃が加えられた。
如月が天井の岩盤に含まれた水分を操り、囮に使ったのだ。
普段ならば取るに足らないほどの小さな衝撃は、一瞬を削り取る死闘において致命傷となりうる。
 何分の一秒かの間、水角は如月を見失う。
その間隙に水角の背後を取った飛水の忍びは、
敵の落下する勢いに自らの体重を加え、頭から地面に叩きつけた。
さしもの忍びも、両手を極められては脱出する術なく激突する。
「こ……このような処で、このような処でェェッ!! こ、九角さまァ──ッ」
 鬼の面から血を流し、まさしく鬼神を思わせながら、
水角はなお手を伸ばして立ちあがろうとしたが、もうその力は残されていなかった。
宙を掴んだ手は、そこで勢いを失って落ちる。
 刀を構え、とどめを刺すつもりであった如月は、敵手が屍と化したのを確かめ、ゆっくりと構えを解いた。
「邪妖……滅殺」
 片手で印を結ぶ彼の瞳に、後悔は浮かんでいない。
それが一族の定めであり、彼の持つ宿命であったから。
 龍麻達を援護しようと踵を返そうとした如月は、
うつ伏せに倒れている水角の身体に異変が生じているのに気づき、足を止めた。
確かに息の根を止めた水角が、突然まばゆい光を放ち始めたのだ。
「これは、一体……?」
 それは先ほど水岐が悪しき力によって怪物に変えられた時の光にも似ており、
深きものどもを殲滅させた龍麻達も近寄ってくる。
「どうした、如月」
「いや、僕にもわからない」
 水角の身体を見えなくするほどの輝きは、しかしすぐに小さくなっていき、
収まった後に彼女の姿はなく、小さな珠が転がっていた。
顔を見合わせ、代表となった龍麻が近寄って覗きこんでみる。
特に害はないように思われ、充分に注意しながら手に取ってみても、
珠は何の変化ももたらさず、ただ鈍い輝きを放つのみだった。
皆に見えるように差し出した珠を、小蒔が鼻がつきそうなほど近くから観察する。
「なんだろう、これ……模様があるね。龍みたいに見えるけど」
「持ってってみようぜ。何かの役に立つかも知れねぇ」
 頷いた龍麻は珠をしまい、仲間達の無事を確かめた。
どうやら全員大した怪我もないようで、『門』とやらを開くのを阻止することもできたようだった。
「瘴気が薄れていく……どうやら間に合ったようだな」
「ああ……良かった」
 如月は口許を、かろうじて視認できる範囲で半瞬だけ笑う形にした。
それでも慣れないことだったのか、如月は照れを隠すようにひとつ咳をした。
「それにしても、君たちの『力』を見くびっていたよ」
「いや、如月こそ。本物の忍術を拝めるなんて思ってもなかった」
 互いに称え合ったあと、如月は、ややためらいがちに言った。
「君達は……今後も戦い続けるのか?」
「ああ……この『力』の謎が解けるまでは、そうすると思う」
「そうか……」
 一度言葉を切り、再び口を開いた如月の声には、それまでとは異なる波動があった。
「緋勇君。もし良かったら僕にも、鬼道衆からこの地を護る手伝いをさせてくれないか?」
「一体どういう風の吹き回し──ぐッ」
「俺達にだって東京を護りたいっていう気持ちはある。こっちこそよろしく、如月」
 一言多い友人のわき腹にしたたかなひじ打ちをくれた龍麻は、
新たな仲間となった男に向けて手を差し出した。



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