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はじめに柳生の処に辿りついたのは京梧だった。
乱れる呼吸を意地でおさえつけて、なお抜刀しない柳生に迫る。
「やい、柳生とか言ったな手前ェッ、引導を渡してやるから覚悟しやがれッ!」
「雑魚が……貴様等ごとき、何人来ようと俺の敵ではない」
「手前ェッ……!!」
完全に沸騰した京梧は上段に振りかぶって跳躍した。
荒ぶる猪さながらの防御を捨てた、岩をも断つであろう必殺の斬撃を見舞う。
だが、あろうことか鞘から刀を抜きはなった柳生は、京梧の渾身の一撃を片手で止めた。
「なッ……!!」
水平に掲げた刀を斬りふせることができず、京梧は目を見開く。
大きな隙を生じた京梧の腹に、重い拳がめりこんだ。
「ぐあッ!!」
吹き飛ばされた京梧は素早く立ちあがる。
大きな隙を晒した京梧に、柳生は鼻を鳴らした。
「剣士といってもこの程度か、たわいない。これでは俺が創りだす修羅の世に生きるなど到底無理か」
「修羅の世……だと……?」
「いかにも。間もなく富士は猛り、大地を割る。
愚昧なニンゲン共は滅び、強き者のみが生きる修羅の世となるのだ。
まずは日本、その後は清国。そして最後にはこの世の全てを最も強き者が統べるのだ」
「……ッの野郎……!!」
言い放つ柳生に、低い喘ぎを漏らした京梧は、腹の痛みを無視して再び斬りかかった。
「ここまで登ってきた度胸は褒めてやるが、そこまでだったようだな」
京梧の剣を受けとめた柳生は、力で押し返すと、力負けした京梧に生じた隙を逃さず、刀を袈裟に振り下ろす。
かろうじて受けた京梧だったが、体勢を立て直す暇もなく柳生の剣が襲ってきて、防戦一方に追いこまれた。
「くッ……!」
重く、速い太刀筋が京梧を圧倒する。
技巧や駆け引きなどまるでない、全てが必殺の剣撃は、押し返して間合いを取ることさえ許さず、
京梧は少しずつ斜面を後退させられていた。
「どうした、威勢の良いのは最初だけか」
「ふざけるな手前ェッ……!!」
柳生の嘲弄に京梧の怒りは頂点に達するが、圧倒的な実力の差は如何ともしがたい。
重く疾い剣を何合と受け続け、両腕の痺れは限界に近づいていた。
右、左、再び右。
刃が打ち交わされる音が一つに聞こえるほどの連撃を、京梧はかろうじて凌いだが、
ひときわ強く打ちこまれた最後の剣に、大きく刀を弾かれてしまった。
胴体ががら空きとなり、京梧は死を覚悟する。
しかし、絶好機に柳生は刀ではなく、左足で京梧を蹴るに留めた。
バランスを崩した京梧は尻餅をついてしまうが、一命は取り留める。
何が起こったか解らぬ京梧の前で柳生は向きを変え、吹きつけてきた一陣の風を防いだ。
赤い色をした風は、京梧に劣らず鋭い打ちこみで柳生を守勢に回らせる。
京梧の命を救ったのは、敵対していた鬼道衆の長、九角天戒だった。
「大丈夫か」
「あ、ああ、すまねェ」
京梧は急いで体勢を立て直す。
その間にも烈火の勢いで九角の剣は柳生に迫っていた。
京梧が唸るほど九角の剣は鋭く、烈しい。
このまま柳生を屠るかにさえ見えたが、日本を破滅させようという狂気を抱く魔人は、
やはり容易には崩れなかった。
「二人がかりなら勝てると思ったか」
十数合に渡って九角の剣を受けきった柳生は、九角の呼吸が限界に達し、
息を吸った一瞬の隙に、あまつさえ先を取って九角に斬りかかる。
意表を突かれた九角だが、冷静に太刀筋を読んで防いだ。
激突した刃から火花が散り、瞬間九角と柳生を照らす。
両者の顔には共通して剣士としての凄みが浮かんでいたが、柳生のそれは九角に較べて余裕があった。
「ふん……多少は腕が立つようだが、貴様如きの腕で俺は倒せぬ」
「ほざけ、下郎ッ!」
交えた刃を離し、返す刀で斬りつける。
太刀筋が美しい弧を描く、見事な斬撃だったが、またも柳生は防いだ。
京梧や九角よりも刀身の長い太刀を自在に操り、疲れる色も見せない。
京梧も九角もひとかどの剣士であるのに、二対一の有利にありながら
未だ柳生に手傷を負わせることができないでいた。
「くそッ……!」
十何度目かの斬撃も受けとめられて、京梧は激しく舌打ちした。
武者修行で諸国を巡ったこともある京梧だが、柳生宗崇は間違いなく一番の強敵だった。
認めたくはないが九角と二対一でどうにか渡りあえている有様で、
それも徐々にだが劣勢に陥りかけている。
九角が回りこもうとするのだが、柳生は一対多も心得ているのか、牽制してなかなか側面を取らせない。
ようやく京梧が斬りこんでも、渾身の一撃は柳生の体勢を崩すこともできず、
九角に斬りかからせる隙すら作れずに押し返されてしまうのだ。
九角と共に柳生の元に着いた澳継も、主君を救いに乱戦に踏みこむことはできない。
激しく移動しながら繰り広げられる刀での戦闘に無手の澳継が加勢する隙はなく、
九角の危機を歯ぎしりして見つめるしかなかった。
柳生の振った刃が、暗黒の大気を断つ。
冷気を裂いた刀勢は、受けた九角の体勢を大きく崩した。
重い金属音が鳴り止まぬうちに、柳生の刃は向きを変える。
柳生の剣が大振りと見るや踏みこんだ京梧だったが、凶つ剣の速度は京梧の予測を超えていた。
「……ッ!!」
振りぬこうとしていた剣を強引に防御に向ける。
だが、踏みこんだのが災いし、完全には受けとめきれなかった。
左の上腕から鮮血が噴きあがり、白雪を濡らす。
赤く咲いた大輪の花を、よろめく京梧の足が踏みにじった。
「フン、命拾いしたようだな。だがその傷ではもう刀は持てまい。仲間が死ぬところをとくと眺めるが良い」
京梧は痛みよりも屈辱で心が灼ききれそうになった。
卓越した身体能力が死を免れたともいえるが、剣士として刀を握れなくなることは死に等しい。
まして止めを刺されずに捨て置かれるなどと、何にも勝る恥辱だった。
柳生の凶刃は新たな血を求めて九角を狙う。
九角天戒は男性の平均身長が百五十センチ台の江戸時代にあっても、
龍麻と肩を並べる背の高さだったが、柳生宗崇は九角をさらに十センチ程度上回っている。
体格差では一回り以上あり、攻撃を受け続けるだけでも九角の消耗は激しい。
防戦一方に追いこまれた九角は、それでもよく凌いでいたが、
右上段からの打ち下ろしに続く、左下方からの斬り上げを防ぎきることはできなかった。
異様に澄んだ音が響く。
九角が持っていた刀は、意志に反して彼の手を離れ、空高く舞った。
無防備となった九角に、上段に構えた柳生は、一切のためらいをみせずに振り下ろした。
銀色の軌跡が九角の頭上へと落ちる。
この場にいる誰もが、九角の死を予感した。
「ぬッ――!!」
側方から突きこまれた殺気に、柳生は振りを強引に止め、大きく飛び退いた。
止めを刺しきれなかった憤怒に顔を歪ませ、闖入者に向き合う。
「邪魔だてするか、痴れ者が」
呪詛めいた叫びにも、槍を構えた闖入者は眉一つ動かさなかった。
「龍蔵院流、九桐尚雲、参る」
言うが早いか鋭い中段の槍を繰りだす。
いかに柳生が剣の達人であっても、槍の間合いに入るのは容易ではない。
しかも不動明王と大黒天の加護を得て、常ならぬ筋力が宿った尚雲の槍さばきは、
柳生をわずかながら後退させていた。
巧みに、九角と柳生との距離を開けるように移動した尚雲は、
九角が安全圏へと離脱したのを見届けると、牽制的な攻撃から一転、激しい攻勢に転じた。
直線的な武器である槍を、薙刀のように操り、日本刀のように振るう。
完璧に制御された両腕は、柳生の鎧を掠め、当世袖を弾き落とした。
「ぬぅッ、雑魚が図に乗りおって……ッ!!」
太刀を握り直した柳生は、六臂を持つが如く縦横に振るいはじめた。
負けじと尚雲も槍の絶技で応酬する。
激しい打ち合いは、いつ果てるともなく続く。
死力を尽くした二人の闘いを、澳継は吹き荒れる二体の人の形をした暴風の外で眺めている。
臆したのかと問われれば、問うた相手を半殺しにしただろう。
しかし、では何故、と訊かれれば澳継は答えられなかったに違いない。
澳継は決して臆病ではない。
鬼道衆の一員として徳川幕府を倒そうと九角の命の下様々な任務をこなし、
帯刀する敵との戦いも一度や二度ではなかった。
その澳継が、動けなかった。
九角の配下である尚雲が身を挺して主君の窮地を救い、闘っている。
九角の右腕を自認する澳継も当然、加勢しなければならないところだ。
だが、九角の相手である柳生宗崇と名乗る男は、刃を交わす尚雲だけでなく、
全身から放つ禍々しい氣で澳継の足まで縫いつけていた。
毒蛇のように巻きつく氣に威圧され、澳継は周囲の状況すら把握できなくなっている。
「おい」
肩を揺さぶられて澳継は驚き、半歩飛び退いた。
いつの間にか、龍麻が隣に立っていた。
「な、なんだよ」
驚いてしまったのと、加勢に行けない後ろめたさが、澳継をやや怯ませる。
しかし、龍麻は彼を責めず、澳継が仰天せずにはいられないことを言った。
「俺が囮になるから、お前はあいつの後ろに回って仕掛けてくれ。そしたら俺が合わせる」
「なッ、何言ってンだ手前ェ。手前ェが突っこんだってすぐ死ぬだけだってのがわからねェのか」
澳継が認めたくはないところだが、龍麻は澳継と同じ流派の古武術を使う。
つまり無手で挑むという宣告を平然と言ってのけた龍麻に、澳継はたまらず怒鳴った。
顔の半分を柳生と尚雲に向け、片方の耳だけで澳継の怒声を聞き流した龍麻は、口早に言った。
「このままじゃ尚雲はやられる。京梧と九角もやられた今、俺達じゃないとあいつは倒せない」
「無理だ、出来るわけねェだろ」
「大丈夫……頼んだぞ」
「あッ、手前ェ待てッ!」
龍麻は返事を待たずに飛びだした。
難題を押しつけていった龍麻を、澳継は呆然と見送った。
あの柳生宗崇という男は、澳継がこれまで出会ったどんな剣士をも超える凄腕の、まさしく修羅だ。
多少氣が使えるからといって無手の自分たちが相手になるはずがない。
おそらく龍麻は敵の実力を読み違えて、無謀にも突っこんでいったのだろう。
この時澳継は、どうやって龍閃組の連中にあの敵を押しつけ、九角を救うかだけを考えていた。
蓬莱寺の方はすでに負傷していて、醍醐も武器は持っていない。
だが、蓬莱寺を救えと焚きつければ、向かっていくのではないか。
澳継は本来こうした策を考える性格ではないが、柳生のあまりの強さに、
主筋を護ることを第一に考えるのは無理からぬことだった。
雷光の突きを繰りだし続けた尚雲も、さすがに動きが鈍っている。
凡人には気づかぬ程度ではあるが、そもそも尚雲の攻撃を何十合に渡って捌き続けられる時点で
凡人には不可能事であり、柳生は、やはり尋常な剣士ではなかった。
槍を繰りだし、手元に引き寄せるわずかな時間。
おそらく一秒とは伸びていない、だが確実に伸びつつある間隙を、
柳生は見逃さず、一気に踏みこんだ。
「――!!」
間合いを詰められた尚雲の顔に驚きが走る。
だが、それが消え去るより先に、柳生の剣がまっすぐに伸びていた。
喉元を狙った突きは、怖ろしいほど的確に急所を貫き、尚雲を絶命させるだろう。
勝利を確信した柳生の刃が、尚雲の喉にあと数センチと迫る。
その時突然、柳生の左肩を衝撃が走った。
「ぬッ……!?」
痛みはほとんどなく、負傷もしていない。
しかし虚を突かれた柳生の体勢は崩れ、死の顎に挟まる寸前だった尚雲をすんでのところで救った。
尚雲はすばやく後方に跳び、危地を脱する。
体勢を崩された柳生は尚雲に構わず、左を向いた。
右手から氣の塊を飛ばした龍麻は、すぐに新たな氣を練りはじめている。
こんなことをやったのは初めてだが、上手くいったようだ。
尚雲が後退したのを目の端で見届けると、柳生に対して油断なく構えた。
「氣の使い手か……貴様、何処でそれを習った」
百三十年後の世界でだ、と真実を教えてやりたくなった龍麻だが、
もちろん余計な情報を与える必要はない。
龍麻は目を細め、無言を貫いた。
「フン、まあ良い……どの道貴様等は全員ここで死ぬのだからな」
言い終えるなり柳生は鋭い突きを放った。
充分に用心していた龍麻は上手くこれを躱したが、それでもそれほどの余裕はない。
剣が通り抜けた跡から漂ってきた死の冷気が皮膚をなぶり、龍麻は震撼した。
恐怖に呑まれそうになるのを呼吸で克服する。
続いて薙いできた刃を身を沈めて躱し、練った氣を掌から放出した。
柳生が刀を振りぬき、流れた体の右肩に命中する。
だが、氣弾は柳生の上体を仰け反らせただけで、負傷させることもできなかった。
「未熟者め……恐るるに足らず」
冷笑した柳生は攻勢を強めてきた。
相手は甲冑も着ておらず、刀も持っていない。
頼みの綱の氣はかすり傷さえ負わせられないとあれば、様子を見る必要もないと見切ったのだろう。
斬撃から突きへ、突きから斬撃へ、柳生の刃が無尽に襲いかかる。
龍麻は横転して雪を巻きあげ、視界を奪おうと試みたが、
柳生はものともせずに雪しぶきごと闇を両断した。
だが、再び現れた暗黒の中に龍麻はいない。
身を低くしてスライディングの要領で柳生の懐に飛びこみ、脛を狙ったのだ。
体重のかかった右足を狙われ、柳生の反応が遅れる。
「小賢しいわッ!!」
具足を蹴られた柳生は、足を引かずにそのまま反撃に転じた。
刀を逆手に持ち替え、龍麻の胴体めがけて垂直に突き刺す。
とっさに身体をひねって龍麻はこれを躱したが、完全には避けきれず、どこかに灼けるような痛みが走った。
怪我した場所を確かめようともせず、今度は柳生の腰を両足で蹴る。
その反動で後転して、距離を開けつつ立ちあがることに成功した。
「痴れ者が……俺を愚弄するかッ」
無手の相手に二度も蹴られ、柳生は怒り狂っている。
地面に突き刺した刀を力任せに抜き、鋭い踏みこみで龍麻に襲いかかった。
横に跳び、皮一枚で殺人剣を避ける。
服が裂け、鮮血が散ったが、今度は痛みを感じる暇もなく、龍麻は掌から氣を放って反撃した。
野球のボールほどの氣の塊が柳生に命中するが、すでに威力を体得している柳生は、
気合いを入れただけで防いでしまった。
龍麻の攻撃はまったく効果がないと知る柳生は、残忍な笑みを浮かべて刀を振り続けた。
為す術がなくなった龍麻はひたすら回避に専念する。
驚異的な反応で致命傷だけは受けなかったが、刃は全身を掠め、いつしか全身が赤く染まっていた。
そしてついに、失った血が龍麻の足を滑らせる。
「引導を渡してくれるッ――」
斬殺を確信した柳生が大きく振りかぶる。
だが、死を携えた両手が振り下ろされる寸前、龍麻に劣らぬ長身がわずかに傾いだ。
「ぬッ――!?」
背中に衝撃を受けた柳生は、予想外の方向からの攻撃に驚き、顔だけを後ろに向ける。
そこには萎縮して遠間から見ているだけだった小童が、両の掌を背中に沿って縦に押し当てていた。
龍の意匠が施された籠手からは、氣が立ちのぼっている。
「邪魔をするかッ、小僧――!!」
柳生が猛ったのは、不意を突かれたのもさることながら、掌打の威力が思いのほか高かったことにある。
身体に流れこんでくる氣の不快さに、無理やり身体をひねって澳継を斬ろうとした。
今度は柳生の腹部に衝撃が疾る。
生じた隙を逃さず、龍麻が澳継と同じように両の掌を柳生に押し当て、そこから氣を注いだのだ。
「ぐッ、貴様等ッ――!!」
赤い髪を憎悪に燃やし、柳生は二人共斬り殺そうとする。
だが、腹と背中から流れこんでくる忌々しい氣は、急激に柳生を蝕みはじめた。
龍麻の陽の氣と、籠手によって増幅された澳継の陰の氣。
二つの異なる氣が柳生の体内で合一し、互いを滅ぼそうと争う。
陰陽はやがて太極となり、巨大な氣の塊となって、柳生を裡から浸食していった。
「ぐわあァァッ――!!」
エネルギーの暴走に身体を内側から食い破られては、いかに柳生でも耐えられなかった。
雷を浴びたように全身から白い光を放つと、一気に両膝から崩れ落ちる。
かろうじて刀を杖代わりにして身体を支えたが、立ちあがる力は残っていなかった。
「馬鹿な……この俺が、ニンゲンごときに……」
「ヘッ、何言ってやがる、手前ェだって人間だろうが」
勝ち誇る澳継に、柳生は顔を歪めたが、一転して悪意に満ちた笑みを向けた。
「だが、もう遅い……刻は満ちた。龍脈は富士の山から噴きあげ、大地を割る。
貴様等にこれを防ぐことはできぬのだ……!!」
言い終えた柳生は最後の力を失い、地に倒れた。
それに呼応するように、富士山が激しく揺れはじめた。
「お、おいッ、やべェんじゃねェのかこりゃあッ!!」
叫んだ京梧が醍醐を見る。
斬られた上膊部からまだ出血は止まっていないが、それどころではない事態に痛みも忘れたようだ。
問われた醍醐も答えは持っておらず、尚雲に助けを求めた。
尚雲はいつになく険しい顔で九角を見る。
だが、外法を用いて江戸の世を騒がせてきた鬼道衆の長も、苦渋に満ちた表情で首を振るだけだった。
「残念だが……術者が死してなお術が止まらぬのであれば、もう止める術はない」
「くそッ……ここまできて手詰まりかよッ……!」
京梧の慟哭が空しく宙に消える。
彼の叫びに追随する者はなく、地鳴りだけが大きさを増していく。
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