<<話選択へ
<<前のページへ 次のページへ>>

(3/5ページ)

二度目のキスは、今までとは異なっていた。
唇が触れた瞬間、龍麻は頭の中で火花が散ったような眩暈を感じ、たまらず小蒔の掌を探る。
小蒔も同じ気持ちだったのか、二つの掌はお互いを求めあってぎこちなくすれ違ってしまい、
必死の努力の末にようやく指先を交え、付け根からぴったりと絡みあわせた。
龍麻のもう片方の腕は小蒔の頭をしっかりと抱え、小蒔の反対側の腕は龍麻の背中を探り当てる。
それは、立っていたなら社交ダンスを踊る時のようにも見えるポーズだった。
もちろん二人にはそんな意識があるはずもなく、ただ、
とめどなく湧きでてくる想いを、唇を通して伝え、受け取るのに夢中だった。
唇を合わせただけのキスでも途方も無く気持ち良かったが、
龍麻は思いきって舌を伸ばし、小蒔の唇に触れてみる。
小蒔は一瞬、身体を固くしたものの、それだけが抵抗らしい抵抗だった。
薄く口が開き、迎え入れる。
しかし、龍麻が舌に触れた瞬間、いきなり小蒔の身体から力が抜けた。
少し浮かせ、しがみつくようにしていた上半身が音を立てて布団に沈みこむ。
「お、おい……大丈夫か?」
「わかんない……急に……力、抜け……ちゃって……」
それがどういうことなのか判っていないらしい小蒔に、
急激に龍麻の欲望が危険水域に入り、今度は自分からキスを仕掛けた。
抑えこむように、乱暴に。
歯にぬめりとした感触が伝わると、小蒔の頭の中は一瞬で真っ白になっていた。
口の中のあちこちに舌が触れ、その度に心臓が大きくジャンプする。
こういうキスがあるのはもちろん知っていたし、映画なんかでも観たことがあったけれど、
こんなに凄いものだとは思っていなかった。
とにかく気持ちいい、ただそれだけ。
知らなかったことに損した気分を抱いてしまうほど、強烈な体験。
もっと、ずっとしていたい。
小蒔は握った掌と背中に回した腕の双方に力を込めた。

背中が押され、舌と舌がより近づく。
龍麻は小蒔よりも幾分冷静さが残っていたが、それもほんのわずかな差だった。
むしろそれ以外の部分は小蒔を上回る情欲に支配され、ただひたすらに舌を差しこむ。
もちろん龍麻も舌を絡めるキスなど初めてだったから、
ぎこちない、というよりも硬いキスだったが、それでも、
続けるうちに少しずつコツのようなものが解ってきて、
小蒔の舌を撫でるように舐め、優しくつつく。
「ふっ……ん……ぅ………んぅっ……」
鼻声を漏らしはじめた小蒔に、一度顔を離し、様子を伺う。
小蒔は戸惑ったように目と口を同時にぱくぱくさせた後、感心したように呟いた。
「すごい……ね」
「あ、ああ……びっくりした。……なぁ」
「うん」
頷きあった二人は再び唇を重ね、今度は最初から舌を求めあう。
強く顔を押しつけて舌を潜り込ませる龍麻に、小蒔は少しずつ身を任せていった。

「小蒔?」
「ん……」
返事はしたものの、小蒔の目はやや頼りなげに宙をさまよっていた。
勝気な眉は柔らかくたわみ、すっきりとした頬は薄紅く色づいている。
つい今まで触れていた唇の艶かしさに誘われて、龍麻は腕を伸ばす。
少し卑怯な気もしたが、身体の内側から膨れ上がる欲求には勝てなかった。
初めて触れる、唇と手以外の場所。
ほとんど一直線に目指す場所に辿りついた龍麻の手は、そのままいきなり胸を掴んだ。
「つっ……」
加減はしたつもりだったが、
武道一筋だった無骨な手ではやはり力が強すぎたのか、小蒔は痛がってしまった。
「あ、わ、悪ぃ」
「ううん……ちょっと、びっくりしただけだから……」
本当は、ちょっと、どころではなかった。
何しろ、自分でもあんまり触ったことのないところをいきなり触られたのだ。
おっきくてあったかいけど、手を繋ぐときとは違う、やらしい手。
怖いような、くすぐったいような感じが、喉の奥辺りで転がりだす。
口を開けるとそれが飛び出てしまいそうで、小蒔は軽く唇を噛んだ。

龍麻はさっき強く握ってしまった反動で、今度は弱々しいほどの手つきで撫でる。
なだらかな膨らみの表面だけを、指の皮だけで。
話には聞き、本で見ていても、やはり実物は全く違っていた。
少し固く、でも、自分の身体の何処にもありはしない柔らかさ。
いくら触っていても飽きることなど全くなかったが、
やがて、中心にある小さなしこりだけに愛撫を集中させる。
まだあまり慣れていない様子で硬くなった乳首は、
それでも、一度反応しはじめるとたちまちにせりあがって形を整えた。
かろうじて指の先でつまめる程度の大きさしかないその手触りを確かめようと、
爪の甲で円を描かせる。
「んっ……」
小蒔の声が、急に掠れた。
その甘い響きの心臓に直接語りかけてくるような感覚に、息苦しさを覚える。
しかし呼吸を整えようともしないまま、もう一度、今度は親指の腹で転がした。
「はぁ……ん、ひー、ちゃん……」
小蒔が腕を掴み、きゅっと握ってくる。
嫌がっているのか、それとも続きを求めているのか判断がつかないまま、
乳房全体をやんわりと掴んだ。
「ん…………っ……」
小蒔の肩が小さく震え、何かを怖がっているように目をつぶる。
「い、嫌……なの……か?」
返事はない。
もう一度尋ねると、小さく顔が横に動いた。
それに勇気付けられるように、そっと揉みあげる。



<<話選択へ
<<前のページへ 次のページへ>>