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だから雛乃は、姉が最も信頼している友達──桜井小蒔──を使った。
彼女は姉よりもずっと判りやすく、姉と自分に思慕の情を向けていた。
それ故に、ほんの少し自分と同じ嗜好を持っていると仄めかすだけで、
後は小蒔の方から堕ちて来たのだ。
これで準備は整った。
あとは舞台を用意して、逃げられない迷宮へと誘いこむだけ。
雛乃は小蒔と相談して、餌を待ち構える蜘蛛のように周到にその時──
今日という日を待ち続けたのだった。
「雪乃も……ボク達とエッチなコトしようよ」
ねっとりと、まとわりつくような声で自分を呼ぶ声に後ずさりを続ける雪乃の踵に、固い物が当たる。
思わず振り向くと、何時の間にかドアの所まで下がってしまっていた。
そのまま身体ごと向き直ってしまえば、この悪夢からは逃げられる。
しかし、それではこの先雛乃と小蒔にどんな顔をして良いか判らない。
逃げるならせめて、事情を話してもらってからだ。
その一瞬の迷いが、雪乃の足を止めてしまう。
次に振り返った時、小蒔の顔が目の前にあった。
驚く程強い力で手首を握られて、そのままドアに押しつけられる。
後頭部がドアに当たって鈍い痛みを覚えた時、柔らかいものが唇に押し当てられていた。
それが小蒔の唇だと知って、雪乃はうなじが総毛立つのを感じる。
抵抗も忘れ、ただ呆然と伝わってくる唇の感触を受け取っていたが、
小蒔の舌が這い出してきて唇に触れると、瞳を見開いて我に返った。
「なッ……何しやがる!」
ようやく離れた小蒔の唇に、雪乃は思わず制服の袖で口を拭うが、
それを見た小蒔の悲しそうな表情に心が怯んでしまう。
「雪乃……お願いだよ……ボクを……ボク達を、受け入れてよ」
「だ……だってよ、オレ達……」
何か話さなければと思っても、喉がひりついて上手く声が出せない。
その隙に再び小蒔が胸に飛び込んできた。
汗と交じり合った小蒔の身体の匂いが漂ってきた時、雪乃は奇妙な胸の高鳴りを覚えた。
自分の心が自分の物で無くなった気がして、声を張り上げることで考えを打ち消そうとする。
「やッ……やめろッ! 離せ!」
だからその声には本心よりも棘が含まれていたが、いつも姉の言うことを素直に聞く妹は、
ただ悲しそうな顔をしただけで、小蒔を諌めようとはしなかった。
それどころか。
「仕方ありませんわ、小蒔様。姉様の手を縛ってしまいましょう」
「うん……そうだね。雪乃、ごめんね」
小蒔は自らの制服のスカーフを解くと、雪乃の手首を縛り上げる。
雪乃は抗おうとしたが、妹の手が手首に触れると何かの術にかかったように動かせなくなってしまった。
もちろん雛乃が何かしらの術を使ったのではなく、
幼い頃からの姉妹の絆が、まるで呼吸をするような無意識さで雪乃の動きを止めたのだ。
「姉様……わたくしの想い、受け止めてください」
「雛乃……」
小蒔と同質の、甘い湿り気を含んだ声に、雪乃は空しく妹の名を呼ぶことしか出来なかった。
視界が、雛乃で覆われる。
西に傾きかけた太陽から放たれている日光が、雪乃の身体を陰影濃く映し出す。
雪乃の両腕は、カーテンレールを使って頭上に高々と縛られていた。
「ボクね……ずっと前から、雪乃の身体、触りたかったんだ」
小蒔の言葉が本当であるのは、その情感を込めた触り方からも明らかだった。
制服の上から、壊れる物を扱うかのような繊細さで撫でる。
「……っ……」
それは感じたのではなく、単に身体を触れられて反射的に漏らしただけの吐息だったが、
小蒔は気を良くして制服の内側へと手を滑りこませた。
汗ばんだ掌をへそにあてがうと、雪乃は腹をへこませて逃れようとするが、
余裕の笑みを浮かべた小蒔は、左手で腰を捉えて徐々に手を上へとずらしていく。
「雪乃は……おっぱい、どのくらいあるの?」
「し……知るかッ!」
「ふふッ……じゃあ、ボクが測ってあげるね」
「よ、よせッ!!」
雪乃は懸命に暴れようとするが、両手を縛られた状態ではどれほどのことも出来ず、
ほどなく小蒔の手に胸を捕らえられてしまった。
握るような動きを、二、三度繰り返され、全体を軽く揉みあげられる。
「う〜ん……ボクよりは大きいかな? でも、雛乃よりは小さいね」
「あら、そうなのですか? わたくしも測ってみたいです」
雛乃が顔を薄い桃色に染め上げながら、そっと雪乃の頬に手を触れさせる。
「ひな……の……」
「姉様の肌、すべすべですね……とても、気持ちいいです」
そう言って雪乃の顔中を撫でまわしながら、
雛乃はさりげなくもう片方の手を制服の内側に忍び込ませた。
小蒔よりも少し温かい手が、反対側の胸に当たる。
「! ひ、雛乃……」
「姉様の胸……とても柔らかい……」
蠢き始めた雛乃の手が制服越しにその形を浮き上がらせると、
すぐに小蒔も同調して雪乃の制服はいびつなしわだらけになってしまった。
「うん……ね、雪乃も気持ちいいでしょ?」
「そ、そんな訳……ねぇだろ……」
しかし、微妙に異なったリズムで刺激を送りこんでくる二つの手に、
雪乃の声にいつもの闊達さは失われていた。
「……そんなコト言われると、ボクとしても後には引けないなぁ」
「小蒔様、直接触ってさし上げましょうか」
「あ、それ名案だね!」
「ちょ、ちょっと待てって!」
思わず雪乃は叫んだが、
普段のおっとりとした雛乃からは想像も出来ない早さで下着がたくし上げられてしまった。
雛乃と小蒔の四本の指先が、胸の小さな突起をつまみあげる。
「は、ぁ……っ」
爪先で引掻くように、指先で押しつぶすように。
雪乃は今まで自慰をしたことが無い訳では無かったが、
その回数は少なく、殆ど通過儀礼のような感じで夢中になったりはしなかった。
しかし今、二人の愛撫はその時とは比べ物にならない快感で胸先を蕩かし、
身体は少しずつ、確実に反応し始めてしまっている。
「ね、雛乃、硬くなってきたよ」
「ええ。姉様も、気持ちよくなっているのでしょう」
「ち、違う……ん、ぁ……」
必死に否定しようとしても、二人の指先が送りこむ絶え間無い刺激に弄ばれるように、
抑えきれない声がこぼれてしまう。
「姉様」
不意にはっきりと自分を呼ぶ声が頭に響き、
思わず顔を上げた雪乃の口を、雛乃のそれが塞いだ。
「!! ぅ……ぐ……っ、ぅあ、んむ……」
妹と、キスしている──その事実は、雪乃の思考を止めてしまうのに充分な物だった。
先程の小蒔とのキスよりも強烈な衝撃に、大きく目を見開いたまま固まってしまう。
その隙に、雛乃の舌が潜りこんできた。
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