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「……わかったわ」
誰にも口を差し挟ませる隙を与えず、立ちあがった葵はリボンを解いた。
少女三人の視線を浴びながら、制服を脱ぐ。
すらりと整った肢体の葵は、服を脱ぐ時でさえも姿勢正しく、
小蒔達は圧倒されてただ見ていた。
一息に脱いだ下から現れたのは、いかにも優等生らしい、飾り気の無い純白の下着だった。
しかし、それが支える乳房の大きさが、清楚な下着を扇情的なものに見せている。
そして、雪乃が思わず羨望のため息を漏らしてしまったほどの胸は、どこまでも白かった。
もちろん胸だけでない、同じ歳とは思えないほど成熟し、
もはや女と言っても差し支えない肢体全てが、白く染め抜かれている。
それでも同じく白い雛乃と較べると、本当に少しだけ朱が混じっていて、
それがわずかな差異を生み出していた。
「ふふっ、大きい胸ですね」
雛乃の声に揶揄の響きは含まれておらず、ただ事実を述べているだけだった。
しかし、脱ぎ始めてから始めて発せられたその声は、ひとり下着姿を晒している葵の心に、
理性が忘れさせていた羞恥心を目覚めさせることとなった。
三半規管が上手く機能しなくなってしまったのか、部屋の中がぐらぐらと揺れているような錯覚に陥る。
今更ながらに早まってしまったかと後悔の念が脳裏を掠めたが、
もう引き返すことは出来なかった。
ただ自分が想いを寄せる少女の顔だけを見て、スカートも脱ぐ。
女性として美しい曲線を描く為の脂肪が充分に乗った身体は、
小蒔や雪乃などとは比較にならず、雛乃と較べてさえ成熟の度合いが進んでいた。
見事な半球を描いている乳房から急速にくびれていく腰。
そこから再び広がりを見せる臀部から太腿にかけては、
色香を醸し出す女肉がみっちりとついていて、下着が小さく見えてしまうほどだ。
そしてその下着からは、黒い蔭りがはっきりと透けて見え、くらくらするような艶美さだった。
小蒔と雪乃はそれぞれの表情で唾を呑み込み、
友人の──そして他人の秘部をじっくりと見る興奮からなかなか離れようとしない。
それよりも少しだけ冷静さを残している雛乃は、
二人の視線から逃れるように片方の足をわずかに折る葵に、容赦無く次の難題をぶつけた。
「下着も、脱いでください」
「! ……それは……」
「ね、雛乃、もういいでしょ。止めてあげてよ」
当然のためらいを見せる葵を、小蒔が庇う。
葵の想いに応えられるかどうかはわからないが、これは少しやり過ぎではないかと思ったのだ。
しかし、皮肉にも小蒔のその声が、半ば朦朧としていた葵の意識を呼び戻してしまった。
「……わかったわ」
「葵!」
雛乃を烈しく睨みつけた葵は、静まりかえる部屋の中でブラを外す。
解放された乳房が、雪乃達の目にもはっきり判るほど重たげに揺れた。
それでも、決して形を崩してはいない、張り詰めた美しい脂肪の塊は、
さながら収穫される時を待つ果実のようであった。
そしてその頂にひっそりとたたずまう薄桃色の乳暈。
手で掴めば、その瞬間に崩れ散ってしまいそうな繊細な膨らみは、
激しい呼吸に合わせて上下動を続けていた。
目の前に女神と見紛う美しい裸体があっては、小蒔と雪乃も観察しない訳にはいかない。
二人の視線に含まれている情欲が、容赦無く葵の柔肌を舐めた。
ブラを畳んで足元に置いた葵は、三人の熱い視線を皮膚に感じ、わずかながら快感を覚えてしまう。
特に、小蒔の口を開いた、自分に魅入っているのがありありと判る表情は、
ほとんど快楽中枢に直結したような快さをもたらしてくれた。
上から親友を見下ろしながら、その視線が徐々に下に向かっているのを確認した葵は、
最も効果的なタイミングを計って最後の下着に手をかけた。
長い黒髪が腕を覆い、その視覚効果に小蒔が下唇を舐めている。
内心でほくそ笑んだ葵は、ちろりと覗いた小さな舌に劣情をもよおしつつ、まず片足からショーツを抜いた。
膝まではゆっくりと、そこからは素早く脱ぐことで、肝心な部分はまだ見せない。
小蒔はもうすっかり親友のストリップに心を奪われている様子だ。
顔を上げ、ちらりと小蒔と目を合わせた葵は、妖しく微笑んでもう片方の足からもショーツを脱ぎ去った。
ブラと同じ場所にショーツを置き、まっすぐ背を伸ばして立つ。
全裸になった同級生の肢体を、改めて小蒔達は眺めた。
その全貌を惜しげも無く曝け出した葵の秘部は、
誰もが認める美少女と同じ身体とはとても思えないほど恥毛が密生していた。
節操無く生えているようにさえ見える茂みは、裾野の広い三角形から始まり、
本来の目的であるひそやかな裂目(から、更にその後ろのもうひとつの孔まで覆っている。
それは男なら間違い無く欲望をそそらずにはいられないであろうもので、
現に小蒔と雪乃は、黒々とした蔭りにすっかり目を奪われてしまっていた。
情欲に駆られた視線が二本、ややコンプレックスを抱いている箇所に刺さるのを、葵は痛いほど感じる。
ちょうど座っている小蒔達の正面に最も見られたくない場所がきていることもあり、
さすがに直立不動を保つことも出来ず片手で覆った。
それがまた、美術の教科書に載っている彫像のような趣を見る者に与え、
小蒔達の呼吸を荒く、熱いものに変えてしまう。
「お願い、あんまり……見ないで」
「あ、ご、ごめん」
羞じらいを含んだ葵の懇願に答えたものの、小蒔はしばらく顔を動かすことが出来なかった。
雪乃などは返事もせず、自分達のどれとも違う蔭りの形に魅入られている。
隠している手など貫いてしまうような視線に、とても立っていられなくなった葵は、
その場に腰を下ろすことにした。
座ったことで、自分を凝視していた小蒔と雪乃の二人と目が合う。
雪乃は慌てて目を逸らしたが、小蒔は真っ直ぐ見返してきた。
親友の瞳に浮かぶ複雑な彩りは、そのまま彼女の困惑を表していた。
何か言おうとした両者は、お互いの口が開きかけているのを見て、慌てて自分のそれを閉じる。
そこに生まれたわずかな間隙に、雛乃が割り込んだ。
「小蒔様」
絶妙のタイミングだった。
大きくもないその声に、弾かれたように振り向いた小蒔は、
そこにあった雛乃の表情に求めていたものを見出したのか、そろそろと葵に近づいていったのだ。
「小蒔……」
両手をついて、四つ足で近づいてくる小蒔を、葵は待ちうける。
決して自分からは近寄らず、全てを彼女の意思で選ばせるという、最後の階(。
その階を上り詰めた小蒔の頬に、葵は震える手を伸ばした。
しなやかな腕が、巻きつく。
漂う爽やかな髪の香りに、葵は目も眩まんばかりの喜悦に包まれた。
さりげなく腕を回し、小さな身体を引き寄せる。
その腕の力は想いの強さが為(させるもので、それを敏感に感じ取った小蒔は、わずかに身体を硬くした。
「葵……ごめんね……ごめんね……」
「いいの……私、小蒔とこうなりたいと……思ってた……」
「葵……」
頬を伝う涙を指で掬ってやった葵は、その指先に意思を伝える。
至近で絡みあった視線が、途切れた。
途切れた? それとも、閉ざした?
どちらでもあったかもしれないし、どちらでもなかったかもしれない。
もう、全ての感覚を小蒔に捧げていた葵には解らなかった。
解っているのは、瞼(の向こう側にいる小蒔が、軽く顔を傾げて目を閉じていること、
頬を伝った涙が顎にまだ留まっていること、そして、やや薄い唇がわずかに開いていること。
それはキスのやり方に戸惑う自分を、導いてくれているように思われた。
軽く息を吸った葵は──ひといきに唇を重ねた。
ずっと昔から──きっと、初めて小蒔に出会った時から──無意識に願っていた夢が、ここに叶う。
それが同情に基づくものだったとしても、今は構わなかった。
想いを遂げた葵は、渾身の力で小蒔を抱きしめる。
キスで点(された想いは、消えるどころか激しさを増していた。
短い髪をひたすらに撫でまわして囁く。
「小蒔……小蒔の身体、私にも見せて」
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