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「龍麻様……愛しております。わたくしは、貴方を愛しております」
「……っ」
充分に予想していたにも関わらず、
龍麻は急激に膨れ上がった万感の想いをせき止めきれず、口から逃してしまうところだった。
慌てて唇を噛んで顎を引く。
とっさに出来たのはそこまでで、後は彼女を強くかき抱き、拙い言葉でそれを伝えることしか出来なかった。
「俺も……愛してるよ、芙蓉。愛してる……凄く」
激情を静めるために口にしたはずなのに、言う度に新たな想いが氾濫してしまう。
とうとう静めることを諦めた龍麻は、ただ肌を触れ合わせ、思いの丈を全身で伝える方法を選んだ。
「龍麻……様……」
見ようによっては冷ややかな、とも受け取れる芙蓉の瞳は、今、一目してそれと判るほど濡れていた。
彼女の手が頬に触れ、そっと滑る。
目を閉じる寸前、龍麻は、心地の良い熱さをまぶたの裏に感じていた。
動きの遅い、ひどく甘いキスを交わしながら、
掌に余るほど大きな乳房を、同じくゆっくりと捏ねあげる。
新雪を固めただけのような白い膨らみは、
触れられるのを待っているかのようにほのかに熱を帯びていたが、
龍麻が指を這わせるとたやすく溶けてしまった。
「ぁ……」
硬くなり始めた頂を掌の中央で転がし、完全に硬くしたそれを爪先で引っ掻く。
「う、ふ……」
キスを交わしたままの芙蓉の口から、色を帯びた呼気がこぼれた。
それは満足しているようにも、より強い刺激を求めているようにも聞こえ、
龍麻は柔らかさと硬さを同時に愉しみつつ、更に愛撫を加える。
下から柔肉を押し上げ、たっぷりとそのまろみを味わってから解放すると、
横になっていてさえ充分な隆起を保つ乳房は、たちまち元の形に戻り、
再び揉みしだかれるのを待つのだ。
しっとりと汗を帯びたきめの細かな肌に、龍麻の手に少しずつ力が篭っていく。
せり出した蕾を指の付け根で挟み、同時に刺激を与える。
肌と同じく、色素が抜け落ちたかのような淡い白桃色の乳首は、
質感のある乳房とは対照的に慎ましく揺れていたが、芙蓉に伝える快感はこちらの方が強いらしく、
指腹で弾く度に顎が小さく跳ねていた。
「んうっ、ぅ……む……」
徐々に大きくなってきた喘ぎに、龍麻は顔を離す。
苦しいのも省みずに追いかけてきた舌を諭すように押し戻し、
既に充分過ぎるほど硬くなっている屹立を、彼女の下腹にあてがった。
確かめる必要もなく濡れている秘洞は、切っ先が触れただけで更に新たな蜜を吐き出し、ひくりと蠢く。
「芙蓉……挿れるよ」
「は……い……」
そう短く前置いて挿入する。
ようやく出番を与えられたそれは、遅いとなじるように一気に秘洞の中へと潜りこんでいった。
「は……ぁッ」
深い吐息は、芙蓉のものだけではなかった。
今日二度目となる彼女の膣は、硬さのほぐれた肉と愛蜜によって桃源と化し、
牡を昇りつめらせるべく待ち構えていたのだ。
ただ埋めただけで、細かな蠕動ぜんどうが絶え間無く刺激し、
どうかするとそれだけで果ててしまいそうな快感を与えてくる。
下品だ、と思いつつ息を吐かずにはいられなかった龍麻は、
組み敷いている芙蓉が自分と同じ顔をしていたことにいささか救われた気分になりながら動きはじめた。
「あっ……龍麻……様……」
ゆるやかに腰を押し進めると、芙蓉が腕を掴む。
汗ばんだ手がきつく肉に食い込んだが、構わず貫いた。
「んうッ……あ……く……」
熱い滴で満たされた洞は、屹立をやんわりと締めつける。
溶け合ってしまったかのような熱さがもたらす結合感に酔いしれ、
激しく腰を撃ちつけると、豊かな胸が一杯に揺れた。
その片方を鷲掴み、なお奥へと屹立を突きこむ。
「んっ、んっ、はぁぁ……っ」
己の下で怜悧な美貌が歪むのは、下腹に力を与える。
梅紅色に彩られた唇から紡がれる悲鳴をもっと奏でさせようと、龍麻は動きを早めた。
「ッ……あぁ、んッ、ん、あ、あっ……」
押し殺した喘ぎは短く、うわずったものに変わっていて、芙蓉もいつもより感じているようだった。
このままではすぐに達してしまうと思った龍麻は一度動きを緩め、
引き止めようとさざめく彼女の膣から己を引き抜いた。
「あ……ッ」
物欲しげな声に思わず果てそうになるのを堪えて、彼女の身体を裏返す。
豊潤な尻を焚きつけるように揉み、そこから腰へと手を滑らせると、ゆるゆると臀部が持ちあがった。
おびただしく濡れている秘唇は開いたままの姿を晒け出し、淫猥にひくついている。
息を呑む淫らさは、待ちきれなくなった芙蓉が腰を揺らすことで一層際立ち、
龍麻はいきなり根元まで屹立を挿れた。
「は、あぁ……っ」
恍惚にまみれた声は、肉がぶつかる音にかき消される。
乳房ほどではないもののたっぷりとした尻は、揺れが収まる前に新たな揺れを与えられ、
小刻みな振動を繰り返していた。
身体の左右に分かたれた髪が隠していた背中に龍麻は手を這わせ、
薄く盛り上がった背骨を愛しむ。
芙蓉はくすぐったさから逃れるように背を反らせるが、すぐに逃げ場を失ってしまった。
「はぁ……ぁ……」
いいように責められ、肩をすくめて耐える彼女に、
龍麻は完全に無防備になっている乳房を思いきり揉む。
「ひ、あ……っ、んうっ」
身体からぶら下がる、文字通り房となっている部分は、重く、手を一杯に開いてもなおこぼれる。
その質感を味わいたくて、小さく彼女を突いた。
「ぅ……」
乳房が手の中でたぷたぷと踊る。
淫欲をかき立てられた龍麻は更に何度か揺らし、己が満足したところで、
のしかかるようにして抽送を始めた。
「くっ……ん、あ……あっ」
より深い角度で突きこまれる男根に、芙蓉は、
尻と、その奥に息づく小さなすぼまりまでもをひくつかせることで歓喜を唄う。
龍麻はその腰を抱きかかえ、彼女のはらを貫こうと媚肉を掻きわけ、抉った。
深く沈む屹立は卑猥な音を立て、彼女を追い詰める。
「んうっ、うっ、あ……ぁっ」
芙蓉の膣がゆるやかな収縮を始める。
彼女の絶頂が近いと感じた龍麻は、もう一度彼女を正面から貫こうと思ったが、
自分の方がそれまで保たないと感じ、そのまま果てることにした。
ほとんど限界であった屹立に最後の力を溜め、先に彼女に絶頂を迎えさせようと動く。
「あぁ……龍麻……様……っ」
か細い啜り泣きが、芙蓉の口を衝いた。
悦びに震えるその泣き声は、龍麻が一際強く屹立を突き挿れた時、悲鳴に変わる。
「あぁッ……あぁぁ……ッ」
感に堪えない嗚咽と共に、芙蓉の身体が跳ねた。
尻を大きく震わせ、全身が突っ張る。
それは彼女の体内にも及び、屹立が収まっている肉壷が急激に締めつけを始めた。
時を待たず、龍麻も耐えていた欲望を解き放つ。
膨れた亀頭が淫肉に擦れ、凄まじい快感が迸った。
噴き出す精液をより奥まで注ぎ込もうと、尻を引き寄せ密着させる。
「はぁ……っ、あぁ……あ……」
芙蓉の嗚咽が絞り出すような声に変わり、全身が弛緩していく。
彼女から屹立を引きぬいた龍麻は、一滴残らず精液を注ぎ込んだという実感と共に横になった。

「お帰りなさいませ」
大学から帰った龍麻を、三つ指をついて芙蓉が出迎える。
こんなボロアパートでそんなことをされては、
暗に甲斐性を問われているのではないかと疑ってしまう龍麻だった。
もちろん彼女にそんなつもりはなく、式神であった頃の所作が出てしまうだけと解ってはいるのだが。
「うん、ただいま」
玄関に座って靴紐を解き始めると、芙蓉が顔を上げる。
そこに浮かんでいるのは、柔らかな笑顔だった。
初めはあまり笑うことに慣れていなかった様子の彼女も、今ではかくも幸せそうに笑っている。
それが自分の功績だ、などとうぬぼれはしないが、自分を褒めたくはなる龍麻だった。
ただし、それは笑顔に限ってのことで、例えば先ほどの三つ指のように、
それ以外の部分にはまだ硬さを残している。
「お食事になさいますか、それともお風呂に」
テレビドラマの新婚夫婦(!)にありがちなこんな台詞も、
浮ついたところの全く無い声で言われると、
なにやら出陣するか否かを問われているように思えてしまうのだった。
靴を脱ぎ終えた龍麻は彼女の手を取って立たせる。
これも別にのろけているのではなく、こうしないと彼女は中々立とうとしないのだ。
「先に飯がいいな」
「承知いたしました。それでは、今しばらくお待ちください」
頷いた芙蓉は台所に向かい、小気味の良い包丁の音を立て始めた。
どこで仕入れた知識なのか、芙蓉は割烹着に三角巾など着て料理を作っている。
まとめた髪と和服の間に覗くうなじと後れ毛は、女の色香をその一点だけで充分に表現するもので、
それに和服を押し上げる形の良い尻と来れば、龍麻ならずともふらふらと近づきたくなるものだった。
もちろん龍麻も一度ならず近づいたことはある。
しかし、後ろから抱きしめても包丁を握る手を全く止めずに「何か」と言われてはどうしようもなかった。
今も後ろ姿を眺めながら龍麻は、和服で乱れる彼女を妄想する。
夜は一度として拒んだことは無い彼女なのに、それ以外の時は頑なに拒むのは、
もしかして伽は夜にしかしてはいけないものだとでも思っているのだろうか。
一度その辺りをきちんと聞いてみたい、でも嫌われたらいやだよなぁ、
と日本中の男が一度は悩みそうなことを悩んでいた龍麻は、
遠くで腹の虫が鳴る音を聞いて我に返った。
瞳の焦点を合わせてみれば、ちょうど食事の用意が出来たところで、芙蓉が料理を並べている。
今日は秋刀魚のようで、香ばしい匂いが漂ってきた。



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