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龍麻の腕が腰に回り、力強く引き寄せる。
それに逆らわず龍麻に寄り添った杏子は、再び画面に目を向けた。
そこには、いっそ自分は二重人格でした、と言って貰った方がまだましに感じる、
ありったけの語彙を動員しても到底表現しきれない恥ずかしい自分が目線をくれている。
思わず顔を逸らしたが、腕がしっかりと腰に回され、逃げることは出来ない。
「ほら、この顔なんてすごくセクシー」
「わ、悪かったわね」
「悪いなんて言ってないだろ」
「セクシーって言われて女が皆喜ぶと思ったら大間違いよ」
妙に色っぽい吐息と共にそう言った杏子の表情を改めて見た龍麻は、
画像の杏子の顔がだんだん変化していることに気付く。
普段のシャープな感じが失せ、どこか輪郭のぼやけたような
──率直に言えば、欲情している顔だった。
杏子が自分で気付いていないのか、それとも気付かないふりをしているのか、
龍麻はかまをかけてみることにした。
「お前さ、撮られてる間に気持ち良くなってきてない?」
「……ッ、なる訳ないでしょッ。何言い出すのよ」
大声で否定するその態度が、確信を深めさせる。
「だってこれ、ほら……だんだんさ、目がとろんとしてきてる」
「ちッ、違うわよ。これは、そう、光の加減よ」
「そんなことない。だって俺もお前もほとんど動いてないんだぜ」
「…………」
普段のうすらぼんやりぶりからは想像もつかない龍麻の冷静な分析に、杏子は反論が出来ない。
黙りこくってしまった杏子に追い討ちをかけるように、龍麻は耳元で囁いた。
「感じちゃってたんだろ?」
「……そんなこと、ない……わよ」
すっかり勢いが弱くなった杏子に、思いきっていきなり足の間に手を入れる。
普段なら鉄拳制裁の上に三時間は口を聞いてくれなくなる行為だったが、
案の定、嫌がりはしたものの、鉄拳はおろか、逃げようとさえしなかった。
「ど、どこ触ってるのよ……ッ」
「あれ? なんか濡れてるぞ」
動かぬ証拠をつきつけられると、
杏子はなまじ理論的なだけに突っぱねることが出来ず、ついに折れてしまう。
「……わ、わかったわよ。認めればいいんでしょう。……ちょ、ちょっとだけ、気持ち良かったわよ」
精一杯の妥協をしたつもりの杏子だったが、龍麻は黙って首を振るだけだった。
「なッ、なによ。まだ文句あるの」
「だって、お前嘘ついてるもん」
「嘘なんてついてないわよ。認めたでしょ」
「……お前、本当はこういうの凄ぇ好きだろ」
「なッ……」
普段強引で要領が良くても、根っこのところが善良な杏子は、
ずばりと言い当てられてしまうと嘘がつけなかった。
加えてもぞもぞと下着の上を動き回る指も少しずつ理性を削り取っていき、
太腿で挟み込み続きを促すと過不足無く応えてくれるそれに、熱に浮かされたように答えてしまう。
「……ほら、また濡れてきた。な?」
「んッ……そう……感じてた……龍麻が……一杯、写真……撮ってくれて……」
微かに声を震わせて告白すると、龍麻はそれを待っていたかのように耳朶に唇を這わせる。
隅々までまんべんなく、ぬらぬらと動き回る舌が、どうしようもなく気持ちいい。
「意外だな。杏子がこんなん好きだったなんて」
「あ、あたしだって知らなかったわよ。自分にこんな……変な趣味があるなんて」
「……もしかしてさ、他にもあったりしてな。こういうの」
「な、ないわよッ」
なんだかどんどん龍麻のペースに巻きこまれていくような気がして、杏子は必死に防波堤を建てる。
しかし、龍麻はそれを易々と乗り越え、心を侵食してしまうのだ。
「試してみようか」
「い……いいわよ、そんなことしなくたって」
「んじゃ、こうしようぜ。もし違ったらさ、なんでも言うこと聞いてやる」
「いつも聞いてるじゃない」
「そ、それじゃ、フィルム買ってやる。いつも足りなくて困ってるだろ?」
「100本ね。それならいいわ」
「100本……」
多分、賭けに勝ったら杏子は本当に買わせるだろう。
しかも遠慮無く最高級なものを。
龍麻は内心で怯んだが、天秤が自分に有利に傾いているのを信じることにした。
「よし、受けた」
「……本気? しばらくラーメン食べられなくなるわよ」
最後の虚勢を張る杏子に黙って頷いた龍麻は、タオルを持ってきて手首を頭上で結わえる。
動きを封じられるのはやはり怖いのか、杏子のいつもの強気な表情はなりを潜め、
少し怯えてさえいるようだった。
「ね、やっぱり止めましょうよ。そうだ、ボツにしたマリア先生の秘蔵写真あげるから」
「眼鏡取るぞ」
「やッ……!」
哀願を無視して眼鏡を取ると、杏子は身体を大きく震わせる。
確かに普段から眼鏡に触れられるのを嫌がってはいたが、この反応は異常だった。
「もしかして、ビンゴ?」
「ちッ、違うわよ、急に顔触られてびっくりしただけよ」
「ふーん……ま、いいや」
龍麻はもう勝ちを確信しているのか、そっけなく応じて上に跨る。
加わった重みが何故か杏子には心地良かった。
「……」
「なッ、何よ」
「眼鏡取っても可愛いんだな、お前」
「……! そッ、そんなことないわよ。あるはずないでしょう!」
「なんでそんなムキになって否定すんだよ」
「……だって、本当のことだもん。眼鏡取るとほとんど見えないから、目つきも悪くなるし」
杏子は拗ねたような表情でそっぽを向いてしまう。
龍麻はその顎をつまみ、無理やり自分の方を向かせた。
「お前、俺が嘘吐いてると思ってんのか?」
「そっ、そうじゃ……ないけど……」
急に厳しい口調になった龍麻に怯えを露にしながら、どこかで頼もしさをも感じる。
「いーや、その顔は疑ってるな」
罰とばかりに顔を腋に近づけた龍麻は、わざとらしく鼻を鳴らして匂いを嗅いだ。
「やッ、やだッ、そんな所……」
「少し、汗掻いてるな」
舌をべっとりと押し付け、汗を舐め取る。
少し塩っぽい味も、嫌がる杏子の態度と秘められた場所を蹂躙している興奮がスパイスとなって
口の中で甘く変わり、幾度も舌を動かす。
「ふっ、っくぅ……っ、や、だ……」
遠慮なく動き回る舌に、杏子は大きく身体を波打たせて悶える。
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