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「でも、告白したのは?」
いつのまにか会話の主導権を握られていたことに気づいた龍麻だったが手遅れだった。
してやられたのはともかく、葵のすました表情が気にいらなくて、
せめてもの意趣返しに龍麻は腰に回した手を少しずつ下におろす。
葵もすぐに応戦してきたが、勢いを減じさせようとしただけで、止めようとはしなかった。
丘陵に取りつき、一定の戦果を得た龍麻は、瞳に促されるまま口を開いた。
「好きだから、だな。思ってる以上に葵のこと好きになるのが早かった」
どう言ったとしても照れくさいのは隠しようがなかったので、
龍麻は真正面から目を合わせて言いきってやった。
それが効を奏したのか、葵の顔がビデオの早回しでも観ているかのようにみるみる赤くなる。
強引な正面突破が葵には効果があると知った龍麻だったが、いかんせんこの方法は自分の損害も大きい。
すでに心臓は限界を訴えており、そうそう使える戦法ではないのが残念だった。
らしくもなく葵はうつむいている。
撃沈寸前なのは間違いなく、ここが踏ん張りどころだと龍麻がたたみかけようとすると、一瞬早く葵が顔を上げた。
虹を溶かしたような表情に、龍麻は言うべき言葉を完全に忘れてしまっていた。
「ほんとうのことを言うとね、私もあなたのことを好きになるの、自分で思ってたよりもずっと早かったわ」
「……いつから?」
鮮やかなカウンターにもう敗北は必至だったが、龍麻は最後の反撃を試みた。
すると葵は瞳に楽しげな光を踊らせ、短くくちづけてくる。
「うふふ……秘密」
みずみずしい唇の感触に、龍麻は全面的に降伏を受けいれた。
「……ん」
離そうとすると、追いかけてくる。
離れそうになると、捕まえる。
お互いを探るようなキスと、唇で会話をするようなキスを、交互に繰り返す。
たわいのない戯れは飽きることなく繰り返され、ときおり流れる軽快な音と、
やはりときおり漂う香りに、龍麻は頭の先まで浸かっていた。
「ん、ふ……」
控えめな吐息に主導権を委ねる。
りんごの味はもうなくなってしまっていたけれども、触れ合う舌先からははるかに甘い味覚が伝わってきて、
龍麻を酩酊させていった。
無心で唇を重ねるうち、ずっと葵の、身体の中でもとくに柔らかな場所に添えたままだったの掌が、
すっかり汗ばんでいることに気づいて、少し位置をずらそうとした。
「……ん?」
指先が異変を察知する。
事実だとすれば重大な異変を確かめるために手に意識を集中させ、
さらに浴衣をつまんで自分の感覚が間違っていないのを確認してから、いかにも驚いたように訊ねた。
「あれ? パンツ履いてないんだ」
「だって……浴衣だから……」
そういえば和装には下着を履かないという話を聞いた覚えがあるが、
そんなことよりも着替えた学校からずっと葵はパンツを履いていなかった、という事実に龍麻は興奮せずにいられなかった。
そうと知っていれば縁日の時もっと凝視したのに、ととても口には出せないことを思い、
しなだれかかる葵を支えつつ、無為に失った時間を取り戻すかのように、ふっくらとした尻を撫でる。
くっきりと浮かび上がった女性の後ろのラインが実にいい雰囲気で、
空いているほうの手でも葵をたどった。
「……ぁ……」
耳を澄ませなければ聞こえないくらいの、か細い吐息。
しかしうぶ毛をそばだたせるには充分で、龍麻は少しずつ変化を遂げ始めた葵を、さらに数センチ引きよせた。
葵は抵抗せず、ともすれば自分からすりよろうとするかにもみえる。
それをあえて気づかないふりをして、龍麻はもうひとつ耳元で囁いた。
「マリィにも履かせないように教えたの?」
「マリィは……まだ子供だから」
「そっか、葵みたいにお尻大きくないもんな」
揶揄して軽く尻を叩くと、抗議のつもりなのか、肩を掴む手に少し力がこもった。
それは龍麻にはくすぐったいくらいで、シャツに立てられた爪が、愛しくさえ思われた。
だから、立てたければ立てればよい、と掌に余る質感を構わず撫でる。
葵は根負けしたのか、爪をもう少し食いこませてきただけで、それ以上は何もしてこなかった。
葵が顔を埋めてしまったおかげで、龍麻は自分の手が蠢くさまをつぶさに眺めることができた。
座っているためにくっきりと浮きあがっている曲線を、滑るように撫でる。
葵が黙っているのをよいことに、ゆっくりと、時間をかけて、肉の質感を存分に堪能した。
少し調子に乗って丘の一部をつまんだりもしてみるが、やはり葵は何も言わなかった。
それならば、とますます調子に乗った龍麻は、今度は指ではなく、掌で大きく揉んでみる。
ふっくらとした丸みはどこまでも柔らかく、手のわずかな動きにも吸いつくように応えた。
穏やかな愛情が変質していくのを自覚しつつ、龍麻は支えている葵の肩を強く引き寄せる。
「……」
葵の息遣いがいっそう近くなった。
この世で最も貴重な、胸にまぶされる砂糖を熱したような吐息に酔わされて、龍麻は手の動きを大胆なものにしていった。
後ろから前へ、浴衣の裾をはだけさせ、太腿の内側を撫でる。
「あ……っ」
臀部にも劣らない、乗せただけで沈んでいきそうな柔肉は、蕩けそうな熱に満ちていた。
力いっぱい掴んでしまいそうになるのを自制して、付け根から膝に至るまでを、
可能な限りいやらしく、そして焦らして撫でる。
五度ほど葵の右足だけを、糸を引くようなねちっこさでさすると、葵がたまりかねたように息を吐いた。
Tシャツなどやすやすと貫いて肌をくすぐる吐息に、龍麻の心臓は灼けんばかりに脈打った。
葵と、自分の欲望に応えるべく、とうとう龍麻は葵の中心に触れる。
茂みに触れ、そこから下へ、慎重に、そして大胆に指を潜りこませた。
ほとりはすでに水に満たされていた。
いつあふれだしてもおかしくないくらいに雫をたたえ、
訪れる人とてない秘境の、妖精が眠る湖のごとく静かにたたずんでいる。
ひそやかに刻まれた溝の周縁を、龍麻は滑るようになぞった。
「ん……」
葵が身体を震わせる。
その途端、葵の周りにたゆたっていた熱が弾けた。
理性を炙る熱くも快い熱を、龍麻は追い求めて指を沈める。
浅く、ほとりに満ちていた雫を攪拌し、掬いだした。
「あぁ……」
再び葵が蒸散する。
濃密さを増した体香と、泉に埋めた指の付け根まで浸していく愛蜜と引きかえに、葵は形を失っていった。
身体の奥深くまで葵を吸った龍麻は、今度は縦に深みを抉った。
「はぁ……っ……」
泥濘にも似た感触の肉の狭間を、行きつ戻りつさせて、少しずつ奥まで進んでいく。
細道はもう待ちきれないとばかりにゆるやかに収縮して指を歓待したが、
それ以上龍麻が愛撫を激しくしようとすると、強い力で止められた。
「待って」
急に我にかえったような理性的な声に、龍麻は驚いてしまう。
何か不手際があったのかと思って息を呑むと、葵は視線をさ迷わせて説明した。
「その……浴衣、汚れると……大変だから」
身体を離した葵はそう言って帯を解きはじめた。
すでに乱れている浴衣がなんとも艶かしい。
葵が手ずから脱いでいくのを龍麻はまばたきもせずに見つめていたが、
突然、こんなチャンスを見逃す手はないと気づいてすり寄った。
脱ごうとしている葵を背後から抱きしめる。
「駄目だってば」
「制服、あるんだろ? あれ着て帰ればいいじゃん」
「それは……」
効果的な反撃が思いつかなかったらしく、葵は口ごもってしまう。
こうなったらあとは強引にうやむやにしてしまえ、と龍麻は浴衣の袷から手を入れ、
単なる変質者のように片方の膨らみを手におさめた。
すると、触れたものが普段の下着と異なることに気づく。
あきらめたようすの葵の肩越しに覗くと、そこには知っているけれど目にするのは初めてのものがあった。
「着物ってさらし巻くんだ」
「胸……大きいと、着物は不恰好になっちゃうから……」
全く和装を着たことのない龍麻には、葵の説明ではいまひとつわからないが、ひとつわかったことがある。
それはさらしというあまり見ないものを着た葵は、やはり普段とは異なる印象があるということだった。
はだけた浴衣とその奥に覗くさらしはなんともいえぬエロチックな装いを醸しだしていて、
普段とのギャップがそれに拍車をかける。
淡い桃の色のうっすらと上気した肌は食される時を待っているかのようで、龍麻は小さく唾を飲んだ。
それにしてもいわゆる姐(さんのように、ぎゅっと胸を押しつぶしているのはいかにも窮屈そうで、
龍麻としては早く解放してやりたいところだ。
少しでも手助けをしてやろうと、まずは浴衣を肩のところからはだけさせる。
「きゃっ……! ほんとうに……このままするの?」
「する」
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