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 小さなため息が、受諾のしるしだった。
葵を座らせた龍麻は、自分もそのまま背後に座る。
改めて胸元に手を滑らせると、葵がもう一度ため息をついたが、聞こえないふりをした。
「胸が大きいと、みんなさらし巻くのか?」
「そんなことはないけれど」
 葵が最初に習った着つけのやり方がさらしを使うものだったから、なんとなくそうするのだという。
いつのまにか両手で乳房を揉みしだきながら、龍麻は、葵に着つけを教えた先生に内心で感謝していた。
 ミイラのようにぐるぐる巻きにされた乳房を、龍麻は幾度か揉んでみる。
そのために巻いたのだから当然だが、たわわな膨らみは見る影もなく、触っていてもまるで面白くない。
初見から数分で早くも邪魔な存在でしかなくなった布切れを、龍麻は取ってしまうことにした。
「くるくる巻いてあるだけなのか、これ」
 浴衣を着たままだからいくらか手間取ったが、情熱に燃える若者を止めることなどできはしない。
なぜか葵も協力的なのもあって、無事にさらしを解くことができた。
「ふう……」
 露になった胸に対して龍麻が何か言うよりも前に、葵は大きく息を吐き出す。
葵にとっては下着を脱がされたのと同じなのに、
あまりに解放感に満ちた吐息だったので、思わず龍麻は葵の顔を覗きこんだ。
「……苦しいのよ、さらしって」
「そうなんだ」
 わざわざ苦しい思いをして、恋人に見せたいからと浴衣を着てくれた葵に、こみあげるものがある龍麻だった。
そして窮屈な思いをさせられていた乳房を愛しんでやらなければと思い、
重みにふさわしいボリュームを取り戻した隆起を、改めて両手で包む。
「もう……少し、待って」
 葵にたしなめられたが、手は乳房とくっついてしまって離れない。
否、乳房が手とくっついてしまったのだ、と龍麻は内心で言い訳して揉んだ。
「んっ……待って、って、言ってるのに……」
 せっかく乳房だけがまろびでているのだから、と狙いを絞って愛撫する。
さらしが包んでいた部分はやはり他より汗が多く、それもまた淫靡な感じがした。
じっとりと湿る肉果を大きな動きで捏ねまわし、掌を押しつけるように揉みしだく。
どんな愛撫の仕方もできるだけの大きさを持った乳肉は、触れるほどに熟していった。
「……ん……っ」
 結局諦めた葵は目を閉じ、身を任せている。
葵は胸が弱いと知っている龍麻は、性急に愛撫を済ませたりはせず、少しずつ性感を高ぶらせていく。
頂にはまだ登らず、水風船のように張った膨らみをやんわりと、たっぷりと時間をかけて弄んだ。
両側から寄せるように押すと、元から豊かな柔肉はいかにも狭そうにせめぎあう。
できるかぎりの情愛をこめ、龍麻は双つの丘を捏ねあわせた。
「あぁ……」
 綿菓子にも似た吐息が手の甲をくすぐる。
足を両側に崩し、くたりともたれかかる葵は、いつになく甘く、愛おしい存在だった。
 半脱ぎの浴衣から覗く美麗な曲線は長く、深く息づいている。
温かな乳房は見た目の美しさに劣らず、あてがっているだけでも快感をもたらしたが、
龍麻はむろんそれだけで満足せず、手の動きを小さく、面から点へと責める箇所を変えた。
手は下から支えるように添え、指先だけで丘の頂でひかえめに色づいている薄桃色の部分を甘く刺激する。
「ん……ぁ…………」
 葵が身体を揺らした拍子に、体香がふわりと匂いたつ。
脳の理性的な部分を刺激する微香を深く吸いこんだ龍麻は、味覚でも葵を感じたくなってうなじに唇を這わせた。
「……っ」
 竦んだ肌が戻っていく、その感触すら愉しむ。
後れ毛ごと口に含み、逃れようとする葵を追いかけ、取りこんでいった。
「や……ん……」
 頭をさかんに振って、葵がむずかる。
子供めいた仕種は浴衣によく似合っていて、龍麻は押し当てた唇を離さなかった。
その間ももちろん胸への愛撫を中断させるようなことはせず、
硬さを増した乳頭をやわやわとしごき、指腹で転がす。
弱い愛撫に、ときおり爪で掻かれるのが葵は好きなようで、逆に声が小さくなっていくのが微笑ましかった。
「あぁ……い、や……ぁ」
 葵はむしろ嫌がるようなそぶりさえみせるが、本気で嫌がっているわけではないのは明白だったので、
龍麻はすっかり硬くなった乳首を執拗に責めたてる。
「ここが好きなんだろ?」
 もっとも、そんなせりふは言えなかった。
龍麻としては言葉で責めるのも大好きだったのだが、以前に言って顔色を失うほど怒られたことがあるのだ。
多分恥ずかしさの裏側にある逆鱗に触れただけなので、いつか機会をみてまた試そうとは思っているものの、
怒られたのがまだ一月ほど前の話だから、もう少し間をおく必要がありそうだった。
「ん……」
 胸を刺激し続けていると、葵が手を添えてきた。
爪の甲を撫でられて、龍麻の背筋はぞくりとする。
意識的に行っているのか、それとも無意識なのか──ぜひとも訊いてみたかったが、やはり龍麻は我慢した。
 腕の中でもぞもぞと動いた葵が向きを変える。
視界に薄朱の肌が広がったかと思うと、唇が熱を感じた。
「う……ん……」
 求めあった舌がもどかしくぶつかる。
荒い鼻息と、下品に触れた器官が粘った音を立てたが、葵はむろん、龍麻も一切余計なことは言わずに行為に没頭した。
 龍麻が葵を抱きかかえなおすと、しなやかな両手が頭に回される。
龍麻と向かいあう葵は胸ははだけ、足も太腿のほとんどが露出しているというあられもない姿だった。
龍麻は帯の辺りを左手で抱きとめ、右手は後ろに腕をまわした。
手に収まらない丘を何度か揉みしだき、そこから下り、今度は深い谷をめざす。
心なしか腰が浮きあがったように思えたのは、龍麻の勘違いだったろうか。
勘違いだったとしても、そう信じてしまえるくらい、たどりついた峡谷は潤沢な水をたたえていた。
太腿のあたりにまで伝っている蜜をなぞり、ひどく複雑な感触をたどって指を沈める。
隠しようもないほど水音のする洞に、とっぷりと指を浸けると、早くも細やかな蠕動ぜんどうを返してきた。
 龍麻が指を鉤のように曲げ、葵の淫路を刺激すると、葵は尻をぶるりと震わせた。
「やだ……何か、へんな……」
「変って、どんな風に?」
「……うまく、言えないけれど、ぁ……なんだか……」
「いつもより感じる?」
 危険を冒して意地悪く訊ねる。
葵の反応はいつもよりもあきらかに大きく、試してみるだけの価値はあった。
と同時に、指を深く沈める。
とたんに葵の身体が何かをこらえるように強張って、甘い熱が舞った。
胸の奥が熱くなる、生命の匂いともいえる香りを龍麻が深く吸いこむと、葵が顔をあげる。
恥ずかしそうにしながら、隠しきれない快感を唇に浮かべた艶色の、
あまりの美しさに、背筋がぞくりとする龍麻だった。
「あっ! ん、もう……。ね、お願い」
 下唇を甘く食まれてそんな風に言われたら、天使だって悪魔と契約するだろう。
すぐに龍麻は葵を組み敷いた。
たっぷりと広がる白い臀部の間にたたずむ生々しい蔭りに狙いを定め、
これ以上ないほど硬くなっている屹立をあてがう。
すでに甘露がじゅうぶんにしたたる秘裂は、牡の誘いに卑猥な蠢きで応えた。
「う……ん……」
 とば口に添えただけで、早くも葵は鼻にかかった声をあげる。
赤子のようにむずかりながら、足は大きく開き、男を迎えいれようとするギャップが龍麻をそそらずにおかない。
うっすらと開いた淫裂に沿って屹立をなぞらせ、愛液をまぶした龍麻はいよいよ先端を沈めた。
「……っ……ぅ……あ……っ」
 粘った音を立てて肉茎が入っていく。
肉が絡み、ひとつになっていくような快感は、何度味わっても慣れることのない、根源的な気持ちよさだ。
すっかり葵の膣に屹立を収めた龍麻は、大きく息を吐いて挿入の快感を満喫した。
「龍……麻……」
 呼んでいるような、嫌がっているような、どちらともつかない呼び声。
それを発した葵もまた、浴衣の上下があられもなくはだけ、一見すれば襲われているようにも見える。
男の救いようのない性を刺激され、龍麻は、ことさら呼びかけを無視して動きはじめた。
「ん、あっ……ん……は、ぁぅっ……」
 いきなり突かれて葵は戸惑っているようすだ。
否定するように首を左右に振り、それでも押し寄せてくる快楽に抗おうとしている。
なまめかしくうねる肉体を串刺すように、龍麻は屹立を沈めた。
「っ……う、ん……んん……」
 葵は唇を噛み、それでもせき止めきれないと知ると手の甲で塞ぐ。
押し殺す嬌声は風情があるが、やはりそれだけでは物足りない。
龍麻は葵の弱いところを探るように腰を使い、なじみはじめた狭隘な肉の路を掘削していった。



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