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隘路が収縮する。
葵を陥落させる術を完全に把握している龍麻は、まず今日一度目の絶頂を彼女に与えた。
三本の指を受け入れている花唇は、無惨に開いている。
その美しく輝く肉襞から指を引き抜いた龍麻は、蜜にまみれた指を乳房にあてがった。
「っ……」
ひくりと跳ねた身体をなだめるように、彼女自身の淫らな証を丹念に塗り伸ばす。
まだ達したばかりの彼女は、拒む気力もなくただ虚ろに見ていた。
自重に耐えかねて潰れている丘が、うっすらと煌く。
その素となる透明な液体が無くなると、龍麻はまた掬いあげて。
泉は、蜜が汲み出されるとそれと同じか、あるいはそれ以上の蜜を吐き出し、
掌で覆いつくせないほど大きな丘にも、易々と薄膜が張られてしまった。
彼女の左の乳房を偏執的とも言える執拗さで濡れ光らせた龍麻は、
右の乳房には彼女の愛液ではなく、自身の唾液によって光沢をまとわせる。
「ゃ……ぁ……」
生温かい舌に敏感な蕾を刺激され、葵が頭に手を置く。
だがはね除けるまでの力はなく、髪の毛を柔らかく掴まれるのは、
龍麻にとってはむしろ心地良い感触でしかなかった。
口の中に唾を溜め、桃色の乳頭に乗せる。
一週間前まで誰にも触れられることのなかった繊細な尖りは、
舌で捏ねてやると面白いように硬くなっていった。
「……っ、く……」
一度達したからか、葵はまだ声を抑えてはいるものの、その音色ははっきりと恍惚を帯びていた。
乾き始めた左胸に手を這わせ、龍麻は同時に右の乳首も少し強く吸う。
「ん……っ!」
透き通るような、媚声。
熱く湿らせた舌で敏感なしこりを包み、歯を立てると、耳にするだけで劣情を駆りたてるそれに、
懸命に堪えようとしているからか、口笛を吹くような奇妙な音が混じった。
抑え難い欲望に衝かれた龍麻は、最もその情動を体現できる部位で、彼女の弱い場所を強く噛んだ。
「……! い、た……っ、嫌……」
恐怖と苦痛の悲鳴。
甘い喘ぎに混じる、あるいは甘い喘ぎの方が混じっているのか、
葵の声にはいくつかの情念が重なっている。
鼓膜を、心を震わせる音色に、龍麻は今度は赤ん坊を扱うよりも優しく彼女を撫でた。
母乳すら今にも出そうなほど張り詰めた頂を舌で転がすと、
その動きに合わせるように葵の身体がよれる。
それを押さえつけ、快感を流しこんでやると、逃げ場を奪われた葵は哀しく身をひくつかせた。
「っ……あぁ……」
肌の上をぬらぬらと這い回る舌。
無理やりに嬲られているというのに、粘質の肉塊が肌を舐めると、
寒気にも似た感覚が皮膚の内側を蝕んでいく。
敏感な──と言っても、彼に触れられるまではそんなに弱いとは思いもしなかった胸の突端。
彼の口に含まれている、わずかなはずの部分が、全身を痺れさせる。
押さえつける全身の力とはまるでちぐはぐな、力を全く加えてこない愛撫。
恥ずかしくも硬くなっている乳首を甘く転がされると、喉の奥から生まれた恍惚が気道を灼いた。
「は……ぁ……」
押し殺そうとしても、熱い呼気は足の間を濡らす分泌液と同じく、
とめどなく腹の中から膨れ上がってくる。
必死に我慢しても、龍麻にほんの少し強く胸を吸われると、
途端に気持ち良くなって声は漏れてしまうのだ。
すると、一度こぼしたくらいでは到底吐き出しきれない恍惚がいちどきに唇を撫で、
全身を満たす豊潤な愉悦にもうどうなってもよいとさえ思ってしまうのだった。
「う……ん……っ」
熱い鼓動が心を揺らす。
遂に口を閉じることさえ出来なくなった葵は、理性を保つために、
愛撫の合間に訪れるほんのわずかな静寂に必死にすがりつくしかなかった。
シーツは既に水分を含みきれないほど濡れており、染みの上に小さな水溜りが出来つつあった。
彼女自身はともかく、身体の方はもう充分に準備を整えていると思われたが、
龍麻はまだ男として彼女を征服しようとはしなかった。
とろとろと蜜を吐き出し続ける淡い泉から、視線をさっきまで弄っていた乳房、
更にその上の悔しげにそむけられている顔へと移す。
頬に張りついた髪を払ってやると、誤解した葵が身を強張らせたが、
龍麻はその隙を利用して彼女の身体を一気にひっくり返し、うつぶせにさせた。
「何……? い、嫌……ぁ」
虚を突かれた葵はとっさに足を閉じようとするが、
龍麻は素早く太腿を押さえると、大きな尻肉に思いきり吸いついた。
「ああっ……」
乳房に続いて、尻をも好きにされてしまう。
しかも、うつぶせで足を開かされるという、死にたくなるような恥ずかしい格好で。
欲望の対象としてしか見られていないにも関わらず、
それに反応してしまう自分の身体が葵は恨めしかった。
全てを忘れてしまうほどの恍惚に苛(まれてしまえば、いっそ楽だったのかもしれない。
後に訪れるのが果てしない自己嫌悪だったとしても、
最も忌まわしい時間の最中だけは忘れてしまうことが出来るから。
しかし、龍麻は、人当たりの良い仮面の下に恐ろしい素顔を秘めていた男は、
理性が崩壊してしまえるぎりぎりのところで、狡猾に快楽を与えてきた。
「嫌……嫌よ、こんな……格好……んっ」
両足を抱えられ、ほぼ真横に開かされてその中央に顔を寄せられるのは、たまらない恥辱だった。
およそ女性が隠したいと考える部分全てを晒けだし、
人間としての尊厳を踏みにじるような体勢を取らされているのだから、
葵ならずとも、舌を噛んでしまいたくなるような惨めさに追い詰められるのは無理もないことだ。
だが葵は、決してその道を選びはしないということを、龍麻は知っていた。
会った瞬間から葵を犯し抜きたい、女、
ではなく個体を貪りたいという狂おしい欲求に囚われたのと同様、
葵も、自分に精を注がれることを魂で望んでいるということを、完全に知り抜いていた。
ただ彼女は、今はまだそれに気付いていないだけなのだ。
だから、嬲る。
彼女がそれを、自覚するまで。
龍麻ががっしりと太腿を押さえつけていると、観念したのか、抵抗が止んだ。
腰を浮かさせても、全身をかすかに強張らせただけだ。
美しい肢体がよれ、皺(やたるみが出来ているのはたまらない劣情をそそる。
女を力づくで屈服させたことに興奮こそすれ、罪悪感など微塵も抱かないまま、
龍麻は背後から、興奮と官能に朱く色づき、ぱっくりと口を開いている淫部に顔を近づけた。
飾り程度に秘唇を覆う繊毛は蜜にまみれ、濃厚な牝の匂いが熱気と共にたゆたっている。
殊更に鼻息を浴びせてやると、頭上の柔肉が切なげに揺れた。
無駄ではない、女を完成させるために必要な脂肪。
まだ十八歳ながら、既に並の女性を軽く凌駕するだけの肉が、葵には宿っている。
同性には羨望を、異性には欲望を与えるその肢体は、結局、春先に転校してきた、
彼女と接して半年程度にしかならない男に奪われることになったのだった。
初めての時から、龍麻は強引だった。
今時では古風とさえ言える貞操観念を持つ葵は、せめて卒業するまでは、と断ってはみたのだが、
幾度目かに断ったある雨の日、彼の部屋から帰ろうとするところを押し倒され、
そのまま犯されてしまったのだ。
信頼から淡い恋心に変わりつつあった彼への心情を裏切られたショックと、
力で組み伏せる男に対する恐怖。
想像すらしていなかった形で処女を奪われた時、
葵が抱いたのはただその気持ちだけだったはずなのだが、
悪夢に魅入られたまま家に逃げ帰った後、枕を涙で濡らした後に思い出されたのは、
どうしてか彼の筋肉質の身体の感触と、汗と混じった彼の匂いだった。
それから後は、坂を転げ落ちるようだった。
あんな形で純潔を踏みにじっておきながら、龍麻は翌日も平然と求めてきた。
心身両方の嫌悪から本気で断った葵だが、衆人環視の中で堂々と手を握った龍麻は、
いかにも恋人同士の風に、その実葵が恐怖するほどの力で自分の家へと連れていき、
今度は前置きすらせず求めてきたのだ。
力では到底敵わない葵は、獣欲に目をぎらつかせている龍麻に、
半ばあきらめ気味に行為を受け入れたが、心だけは屈しない、と深い黒色の瞳を、
彼女らしくない感情にゆらめかせて苦痛に満ちた時が過ぎるのを待ち構えた。
そんな葵を愉快そうに見返した龍麻は、怯(むこともなく前日と同じようにのしかかってきたが、
それ以後の彼の態度は、覚悟を決めた葵の予想とは全く異なるものだった。
優しい、羽毛のような愛撫。
それが単純な、女を屈服させる手段だと解っていても、葵は抗いきることが出来なかった。
誰にも触れられることなく熟していた身体は、悔しいほどあっけなく言うことを聞かなくなり、
押し寄せる快感に初めての、しかも挿入すらされないうちに絶頂を迎えさせられてしまったのだ。
「い……いゃぁぁ……ッ」
手の甲に当たった自分の嗚咽を、葵ははっきりと聞いていた。
全身を満たす気持ち良さと、その後に訪れる倦怠感。
その中で、摘ままれ、吸われた乳首が腫れたようにじんじんとする。
そして、身体の下の部分にも、同じ疼きが。
存在すらおぼろ気にしか知らなかった女核を、白日のもとに晒され、快感の味を教えこまれる。
その時点で、もう葵は龍麻から逃れることは出来なくなっていたのだ。
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