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口の中の勢いが弱まった。
キスが終わってしまうのかと思った雛乃だったが、そうではなかった。
より深く割りこんできた龍麻の身体がのしかかってくる。
袴が捲れあがってしまっても龍麻は構うことなく身を乗り出し、
雛乃の頭をベッドに押しつけると、ほとんど真上からキスを再開した。
心と身体の両方から、文字通りに息が詰まる。
無理な姿勢を強いられ、背中にわずかな痛みを感じたが、
呻き声を漏らしてしまうことで龍麻がキスを止めてしまうのが怖くて必死で堪えた。
龍麻にはその辛さが伝わっていないのか、ますます奥深くまで、抉りこむように舌を入れてくる。
「ふむぅっ……んぁ……ぁふ……ぅ」
痛みと苦しくなった呼吸、それに舌を包む甘い痺れが渾然となって口を衝く。
かき回される口の中がどろどろに蕩けてしまっても、雛乃は舌先で龍麻を求め続けた。
細かく泡立った唾が二人の舌でこね回され、粘り気を増していく。
嚥下しようとしても、喉に絡みつくほどに。
舌の上を這うそれに倒錯した悦びを感じて、雛乃は喉を鳴らして飲み下した。
「んっ……」
無垢の白さをたたえた雛乃の喉が、わずかに動く。
それに呼応するように、龍麻は腕を、雛乃を捕らえるためにゆっくりと蠢かせた。
上半身を絡め取り、巻きつかせた左手で左腕を撫でる。
右腕はその少し下、肩甲骨の辺りを通って乳房の麓に。
そこから下がって細い腰を捕らえ、自分の身体とぴったり密着させた。
囚われる愉悦が、雛乃の身体に満ちる。
もう、服を着ているために体温が感じられないのを残念に思うほど、
雛乃の官能には火が点ってしまっていた。
「んっ……んぅっ!」
激しいキスを続けるうち、最初の波が訪れる。
結わえられた腕のせいで、体内に留めることもできず達してしまった。
蜜が下着を汚し、内腿を伝い出す。
袴が汚れてしまう心配が一瞬頭をよぎったが、すぐに押し流され、
それどころか腰を一層強く龍麻の身体に押し付けた。
「っ、は……ぁ」
吐息をそのまま龍麻の口の中に吐き出してしまって、羞恥に見舞われた雛乃は顔をそむける。
今の痴態を自分自身では見ることが出来なかったが、その方が幸いだった。
龍麻に抱きかかえられているとはいえ、腰を浮かせ、
足を絡みつかせている様は、あまりにもはしたないものだったから。
ベッドの縁に頭をもたれかけさせ、ようやくつけた息に、反りかえった胸が激しく上下動している。
くっきりと白衣の内側に眠るたおやかな膨らみの形が浮き上がり、
手首まである裾も乱れ、二の腕辺りまでが露になってしまっていた。
龍麻はその新雪の如き肌の、袖の辺りに軽くキスを放つ。
「ん…………っ」
普段触れない場所への、甘い刺激。
一度引いた波が呼び覚まされ、新しい官能への期待に細胞が火照りだす。
もっと、触れて欲しい。
もっと、舐めまわして欲しい。
淫らな考えに取り憑かれて、もう少しでそれを口にしてしまいそうになる。
しかし、言わずに済んだのは、雛乃の努力ではなく、龍麻が同じことを考えていたからに過ぎなかった。
口で白衣の袖をまくった龍麻は、少しずつ身体の中心へ舌先を這わせる。
腋の下まで辿りつくと、今度は少しだけずらして、また肘に向かって戻らせた。
張りつめ過ぎてもおらず、無論たるんでもいない極上の肉に、噛み跡を残したくてたまらなくなる。
それを全身の理性をかき集めて防いだ龍麻は、己の欲望に別の供物を与えることにした。
「足……伸ばして」
「は、い……」
急に命じられ、雛乃は言われたとおりに崩していた足を伸ばす。
すると足首が持ち上げられ、足袋越しに、何か固く、熱いものが触れた。
「! あ、の………これ……」
足の先に触れたものの正体に気付いた雛乃は、当然の反応を示す。
驚いて逃げようとする足首が捕らえられ、逆に押しつけられた。
「俺は、雛乃の全部を知りたいんだ……だから、雛乃にも、全身で俺を知って欲しい」
あまりにも出任せに思える台詞。
しかし、指先に伝わる熱と鼓動が理性を麻痺させ、
言われた通りに足先に神経を集中させて感じ取ろうとする。
未だしっかりと見たことは無い男根は、随分と長く、大きく感じられた。
そんな物が、自分の体内に入る──ひそやかな興奮が、また下着を濡らす。
指先で、物を掴むような──姉と違い、雛乃は決してそんなことはしないが──
意識で、指の付け根で円柱を挟むと、龍麻の手がその上から覆い、ゆっくりと上下させた。
「う……ん……」
龍麻が漏らす喘ぎは、雛乃をも快くさせる。
幾度も触れているうち、龍麻の先端から分泌された粘液が足袋に染みこんできた。
気持ち悪さと一体になった快感に、知らず知らずに足袋全体に塗りこんでいくと、
いつしかもう片方の足も掴まれ、両足で挟み込まされる。
甲と裏とを使い分け、何度も擦りあげると、足を握る龍麻の手に力がこもるのが判った。
指先だけでなく、土踏まずや足の裏全てを使って屹立を挟ませてくる。
こんな場所でも快感を感じることに驚きながら、雛乃は龍麻を手伝い、ひたすらに男根を愛しんでいた。
ところが、突然足にかかっていた力が緩んだ。
こんな状況でこんなことをさせられてまで、雛乃は自分に落ち度があったのではと思ってしまう。
「あ、の……」
「ん?」
「何か……良く……なかったのでしょうか?」
「え? ……あ、いや、そうじゃないよ」
そう答えたきり、龍麻は理由を説明しようとしなかった。
不審に思ったもののそれ以上は問えず、雛乃は急速に冷えていく足先を慌てて隠す。
それを見るでもなく見送った龍麻は、身体をずらして耳元に顔を寄せた。
「あの……さ、舐めて……くれないかな」
恥ずかしげにそう言った龍麻の台詞の意味が、雛乃には最初解らなかった。
理解しても、とっさには反応できず、うろたえたように首を振るしか出来ない。
いくら愛しい人のものといっても、口に含むなど、考えたこともなかった。
そのものを目にしてしまっていたら、決して受け入れはしなかっただろう。
しかし、今は。
おそらく口のすぐ前に突きつけられているのだろう、
さっきまで足で撫で擦っていたものからは、ほのかな熱気と異臭が漂ってくる。
それは、今の雛乃には蝶を誘う花の芳香と変わりなかった。
惹かれるままおずおずと舌を出し、先端に乗せてみると、
ぬらぬらとした塊が、想像以上の重みでのしかかってくる。
苦いような、甘いような、とても一言では言い表せないその味は、
しかし、思ったよりも受け入れることができた。
軽く舌を突き出して、幾度か、形を確かめるように舐める。
何か糸を引く液体が口唇につき、
口を閉じ合わせると粘りが広がって桃色の部分を妖しく飾り立てた。
「んっ……、雛乃……咥えてみてくれる?」
エスカレートする龍麻の頼みを聞き入れ、少しずつ口を開き、恐る恐る飲み込んでいく。



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