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「あっ……!」
ミサの指が不浄の孔を通りすぎた時、芙蓉は思わず声をあげていた。
急に反応を見せた芙蓉に、ミサは不審そうな目を向け、その場所を集中的に触る。
「くっ……ぅ……」
下着をぐいぐいと押し込まれ、孔の中に指が入って来ようとする。
人ならば、いや、呪法にかかってさえいなければ
──その時はそもそもそんな場所に触れさせはしないのだが──
せめて下腹に力を入れて侵入を拒めもしただろうが、今の芙蓉は余りにも無力だった。
はっきりと悶え始めた芙蓉に気を良くしたミサは、
一度孔から指を引き抜くと、直接触るべく下着の中に手を入れた。
孔の在り処を確かめようとする動きは、結果的に周辺を刺激して柔らかくほぐす効果を与える。
指に反応して少し膨れた孔に、ぴったりと指があてがわれた。
「うっ……あぁ……」
そこから二つに裂かれるような異物感に、芙蓉の身体が小さく痙攣を始める。
指が入り口を広げるように掻き回し、ゆっくりと押し入って来た。
隧道に入ってきた侵入物を排除しようと腸壁が蠕動した時、
芙蓉は排泄行為が与える快感を初めて体験する事になった。
「っふ……こ……こんな……」
吐き出したかと思うと、すぐにまた入ってくる。
小刻みに繰り返される排泄の快楽に頭の奥が痺れ、腹の中で暴れる指の動きを全神経で追ってしまう。
それは千年の永きに渡って開発された故の快感だったが、
普通の快楽さえ初めての芙蓉には暴力的なまでの愉悦となって彼女を襲った。
「あらあら〜。お尻が気持ちいいなんて、意外〜」
ミサは揶揄するように言ったが、ただ、屈しないように意識を保つのが精一杯で、
芙蓉はその言葉にどんな意味があるのかは解らなかった。
「はぁ、あぁ……っく、あ……ひっ!」
入り口付近を幾度も往復していたミサの指が突然奥まで入ってきた。
芙蓉は思わず呼吸を止め、少しずつ吐き出す。
それでも吐き出す度、わずかに緩む筋肉が更に指を迎え入れてしまい、
歯を食いしばりながらなんとか腹の中の空気を全て出し終えるまでに、相当の時間がかかった。
ただ、いくら穢れていないとは言っても、奥深くまで抉るのはさすがに抵抗があるのか、
ミサの指は半分ほど埋まった所で止まり、
未だ苦しくはあったが、芙蓉はようやく落ちついて息をつく事が出来た。
しかしそれは、次の責め苦への繋ぎでしかなかった。
ミサは一瞬溜めた後、一気に尻孔から指を引き抜く。
「あっっ……がっ!!」
あまりの衝撃に、動かないはずの頭が仰け反り、口の端から涎が飛び散る。
頭の奥で散った火花が、いやにはっきりと瞼の裏に焼きついた。
「もしかして、イっちゃった〜?」
「……それは、どのような状態をさすのでしょうか」
荒く、大きな息をつきながら芙蓉は尋ねる。
彼女は本当に知らないから尋ねただけだったが、説明に困ったミサは黙ってしまった。
「ミサ……様?」
「そんな恥ずかしいこと〜、とても言えないわ〜」
ミサはそれ以上何も言わなかったので、結局それがどんな状態なのか、芙蓉は知る事は出来なかった。
ただ、腰から下の感覚がまるきり失せてしまっているのは判ったので、
そういう事なのだろう、と自分を納得させる。
傍から見ればいささか間の抜けた会話の内に、いくらか呼吸は回復出来たが、
それもわずかな間だった。
尻孔を離れたミサの指は、更に会陰を伝って下に降りていき、未だ使われた事のない女性器へと進む。
「ここ、自分で触ったことある〜?」
「ございませぬ」
芙蓉の言葉に偽りは無かった。
そこがどういう機能を持つのか、それくらいは知っていたが、子も産めず、
食事さえ必要としない自分には不浄の孔と同じく、
全く用の無い器官としてほとんどその存在を忘れていた。
しかしその場所は今、軽く触れられただけで菊座に優るとも劣らない悦びを自分にもたらしてくる。
身体の中心から得体の知れない何かが零れ落ちようとしているのを知った芙蓉は
足を閉じようとするが、外法に捕えられた身は未だ動かせない。
ミサの手が下着をずり降ろした時、湿った布が大腿に触れるのを感じた。
どうしてそんな場所が湿るのか疑問に思った芙蓉が、
真言と、下腹に生じた変化に関係があるのだろう、とおぼろげに考えていると、
ミサが、不意に自分の意識が集中している場所に触れてきた。
自分でも何がそこに起こっているのか判らなかったが、
ただ、恥ずかしいという気持ちが湧き起こってくる。
ミサの指先がぴったりと閉じている谷間を捕え、ゆっくりと前後する。
「何を……なさって、おられるのですか?」
「またまた〜。判ってるでしょ〜」
確かに、ミサの指先がもたらす効果ははっきりと伝わっていた。
指が往復する度、そこから火でも起きているような熱が下腹に溜まっていき、
自ら、もっと腰を揺すりたくさえなってしまうのだ。
芙蓉の内なる願いに応える様に、ミサの指の動きが変わった。
全体を擦る動きから、指腹を浅く陰唇に差しこみ、引掻くような動きに。
「っ、は………ぅ……」
人よりも鋭敏な耳が、自分の蜜が奏でる粘着質の音を細分漏らさず拾ってしまう。
初めて耳にするのに、聞いているだけで新たな蜜が溢れそうな、淫らな音。
分泌が増えるにつれて大きくなっていくその音に羞恥を煽られながら、
芙蓉はただ立ちつくすしか出来なかった。
芙蓉の股の間から指を抜いたミサは、粘り気を確かめるように指を擦り合わせ、
親指と中指の間に透明な滑液の橋をかけると、満足げに頷く。
「ちょっと心配だったけど、ちゃんと濡れてるのね〜」
「それは、何でしょうか?」
「麩質溶剤よ〜。またの名を愛液ともいうけど〜」
麩質溶剤という呼び名は知らなかったが、愛液なら芙蓉にも解った。
女性が性的な興奮をすると性器から分泌される液体。
自分にもそのような物が出せるのか、という驚きと共に、
今股間を濡らしているのが全て愛液だとしたら、少し量が多いのではないか。
そんな不安が芙蓉の脳裏をよぎったが、ミサに尋ねる事は出来なかった。
恥ずかしかったのだ。
ミサの施した呪法の効力なのか、芙蓉はあらゆる感情が昂ぶっているのを自覚していた。
羞恥も、驚きも、彼女は今人と同じか、あるいはそれ以上に感じ、発露していた。
「今の気分はどう〜?」
「なんと申し上げればよいのか…身体が熱くて…このような感覚…初めてで、上手く…言えませぬ…」
ミサの問いに、芙蓉は言葉を選びつつ、なんとか伝えようとする。
術者に使役される為に産み出された存在である式神は、
術者の性格によってはそう言う事があるとしても、
基本的に嘘をついたり問いをごまかすようには出来ていなかった。
まして芙蓉のような陰陽の秘術を尽くして産み出された式神は、
高度な知性を備えるが故にその思考にも大きな制限がかけられている。
だからミサの問いにも答えるのは当然ではあったが、
それよりも、自分の身体に起きている事を言葉にしたい、という欲求が芙蓉を衝き動かしていた。
「うふふふふ〜。芙蓉ちゃんって結構えっちなのね〜」
何故御門はミっちゃんで自分は芙蓉ちゃんなのか、
芙蓉がどうでもいい事を考えていると、ミサの手がシャツにかかった。
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