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「……あぁ」
「……いいよ」
声を低めてそう答えるのが限界だった。
閉じた瞼の端が潤むのを感じ、昂ぶった情を解き放つ。
舌を絡めたりはしない、ごく普通のキス。
それなのに、どんなキスよりも気持ち良く、楽しかった。
抑えつけていた龍麻の腕が動き、背中に回される。
それを止める気などもちろんもう無く、小蒔はただ口唇を合わせていた。

小蒔が顔を離しても、龍麻はまだ目を閉じたままだった。
龍麻は、例えば醍醐や紫暮と較べると特に男らしい、という訳では無いけれど、
今の仕種は妙に女の子っぽくて可愛らしく、
男の子が興奮するのってこういう時なのかな、と納得してしまう。
ひーちゃんが感じる所、もっと見たいな。
そんな思いに囚われた小蒔は龍麻の腹の上に跨り、シャツのボタンに手をかけた。
「脱がせる……ね」
龍麻は何か言おうとして袖を掴んだが、動きを妨げようとはしない。
そんな龍麻を真っ向から見据えたまま、
小蒔は手だけを器用に動かしてひとつひとつボタンを外していった。
全てを外し終えると、手をケーキを切り分けるナイフのように入れ、左右にはだけさせる。
まだじっと見つめあったままの二人だったが、小蒔の指先が、
胸の、色が異なる部分に触れた時、龍麻の顎がわずかに跳ねた。
爪を立てて引掻いてやると、今度は顎を引き、唇を引き結ぶ。
我慢しているのが見え見えのその態度に、小蒔はますますそそられて指をせわしなく動かした。
「男の子ってさ、皆ここで感じるの?」
「っ、当たり前……だろ……」
「本当かな? ひーちゃんだけじゃないの?」
「んな訳ねぇよ」
「だって聞いたことないもん」
「普通は言わねぇよ」
「そうかな〜。でもさ、こんなに感じるのはひーちゃんだけじゃない?」
「……」
指先と同じ位ねちっこい口撃にとうとう言い負かされて悔しそうに黙ってしまった龍麻に、
少しやりすぎたかな、と思った小蒔は、お詫びも兼ねてもっと気持ち良くしてやることにした。
腹ばいになり、首筋にねっとりと舌を這わせる。
くすぐったそうに顔をそむける龍麻に構わず、じゃれつく犬のように何度も舐め上げる。
その舌先を離さずにゆっくりと身体を下方に辿らせ、わずかなしこりを見せている胸の先を口に含んだ。
「……っ……」
「いいんだよ、声出しても」
「男の声なんて……気持ち悪いだろ」
「なんで? 聞きたいよ」
しかし、龍麻はそれだけはすまいと口をへの字に曲げる。
それを無理に開かせようとはせず、更に下を目指して顎を付けた小蒔は、
下唇に先導させて舌を這わせていった。
適度に締まった腹筋を通り、下腹へと妖しく光る道筋をつけ、
トランクスを押し上げているものをそっと擦る。
「……っ」
軽く掌を当てただけで、龍麻の全身が身震いする。
手を包み込む形に動かすと、顎を乗せているお腹の上下動が激しさを増した。
もう少し焦らしてやろうと思っていたけれど、
布地越しにでもはっきりと判る熱い塊を直接感じたくなって、すぐに下着を脱がせてしまった。
勢い良く飛び出てきた屹立をなだめるように握り、舌先でつついて慣れさせる。
漂ってくる臭いは顔をしかめたくなるようなものだが、何故か一杯に息を吸いこんでしまう。
そうするとお腹の辺りがむずむずしてきて、もっとエッチなことがしたくなってくるのだ。
それでもあんまりまじまじと眺める気にはなれなくて、目を閉じたまま唇を当てる。
先端はもうぬるぬるとしていて、龍麻も興奮しているのが判った。
助走をつけるように何回か舐めた後、思いきって口に含む。
「ぅ……っ」
口の中に入ってくる硬い肉茎と、それが放つ臭いにむせそうになりながらも、頑張って離さない。
咥えた時に龍麻が漏らした呻きが、小蒔にそうさせなかったのだ。
落ち着きを取り戻した小蒔は、歯を立てないよう気をつけながら舌をそろそろと絡める。
以前うっかり噛んでしまった時の情けない顔は、
小蒔の記憶にある龍麻の表情集の中でもトップクラスのものだった。
もっとも、その顔につい笑ってしまった後、珍しく半日口を聞いてくれなかったので、
流石にまたしよう、とは思わないけれど。
そんな事を考えながらも、小蒔は少しずつ頭を引いていき、いつしか先端だけを咥える格好になっていた。
そこから意識して唇を少し強く押し当て、再び剛直を呑みこんでいく。
最初と同じところまで咥えたら、今度は止まらずにまた戻る。
舌を自由に動かせる位置まで来て、円を描くようにくびれをなぞると、
面白いように口の中の龍麻が暴れた。
それでもまだ強がってその部分以外の反応を見せない龍麻に、
小蒔は幾度かしているうちに憶えた、龍麻のもっとも弱い、くびれの下側を重点的にねぶる。
「くっ、ぅ……」
舌先を軽くすぼめて穴を掘るように刺激すると、
堪えきれなくなった龍麻の口から、悔しそうな響きを帯びた声が漏れた。
耳に快いその声をもっと聞こうと、小蒔は更に舌の動きを強める。
喉の奥に導くようにきつく吸い上げて、いきなり離す。
肩透かしを食った屹立が不満そうに大きく震えた瞬間、もう一度咥えて舌を転がした。
「うゎ……っ」
「ふふー」
今度は混じり気の無い、剥き出しの快感をそのまま口にする龍麻に、
小蒔は口に龍麻を含んだまま愉しそうに笑う。
後はもう、ちょっと刺激してやるだけで思い通りに声を上げる龍麻を弄ぶだけだった。

龍麻は目を閉じて、もたらされる快楽に身を浸しながら、
唾液が立てる卑猥な音と、時折漏れる小蒔の鼻息に耳をすませていた。
どうした訳か、いつになく積極的な小蒔は、肉棒の下にある袋にまで手を添えながら口淫を続ける。
「ふ……んぅ……む、っぅ……」
唾液を時々足しながら滑らかに顔を上下させる小蒔の奉仕は、
もちろん途方も無く気持ち良いのだが、何か物足りない。
その原因に気付いた龍麻は、何気なさを装って言った。
「小蒔」
「な……に……?」
呼びかけに応じて小蒔は一度顔を上げたが、顎がくたびれてしまっているのか、声に力がない。
おまけに考えるのもほとんど止めてしまっていたようで、
少し呆けたその顔は、たまらなくいやらしかった。
「俺もする」
「するって、何を」
「お前が俺にしてること」
「! い、いいよボクは」
自分から顔に跨れというのだ。
いくらなんでもそんな頼みを聞けるはずがなく、小蒔は思いっきり拒絶する。
しかし、小蒔がそう答えることを予測していた龍麻は動じなかった。
「んじゃこうしよう。これで腰の件はチャラにしてやる」
「きったないなー……」
「ん? ほれほれ、見してみい」
やや引け目に感じていたところを突かれ、更に龍麻のふざけた言い方に急かされて、
なんとなく反論出来ないまま、小蒔は背を向けて胸の辺りに一度お尻を下ろした。
そこから片足ずつ動かして、渋々と言った感じで動いていく。
しかし、小蒔は嫌々のつもりでも、龍麻の目にはそう映らなかった。
そろそろと近づいてくるお尻にすっかり魅了されてしまい、
待ちきれずスカートをがっしりと掴んで引き寄せ、目の前に固定する。
「うわ! 何すんの……っ」
やわやわと両のお尻を撫で、スカートの端をつまみあげる。
ピンク色の下着がちらちらと見えるように上げたり下ろしたりして遊んでいると、
蝿を落とす牛の尻尾のようにお尻が揺れた。
「もう……恥ずか……しい……よ……」
あまりにも恥ずかしい今の格好を忘れようと再び屹立を頬張ろうとする小蒔だったが、
その前に龍麻が美味しそうな内腿に口を当て、思いきり舐め回す。
「んっ……! そ、こ……っ、ふぅ……っ」
その一撃で、それまでの攻守がたちまち逆転することになってしまった。
膝が笑って力が入らなくなった小蒔は、龍麻の舌から逃れる術を失い、いいように遊ばれてしまう。
特に足の付け根からお尻に変わる部分を吸われると、気持ち良くて何も考えられなくなってしまうのだ。
顔の届く所全てを吸った龍麻は、愛撫の矛先を下着に向けた。
「ぁ……ひー、ちゃ……だ、め……」
小蒔の大事な所を包む邪魔な布はもうそれと判る程染みが広がっていて、
舌先に湿った感触を伝えてくる。
その中心に舌を埋めると、更に多量の滴が淫蕩な音を立ててあふれだした。



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