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「なになに?」
「言えるか、んなこと……痛てて!」
龍麻は口を開きかけて、口車に乗せられかけているのに気が付いて慌てて閉じる。
そのままとぼけようとしたが、ほどなく下半身を激痛が襲った。
見れば自分の分身が小蒔の手の中で無惨に変形していた。
情けないほど腰を引きながら、龍麻はまだまだ長い付き合いになるだろう分身を小蒔の手から取り戻す。
「あ、ゴメン。そんな痛かった?」
「なんて事しやがる……」
「ま、それは置いといてさ。なんで?」
男の痛みも理解せず、あくまでもマイペースで聞き出そうとする小蒔に、
怒りと痛みが重なって龍麻の口を滑らせた。
「……そうだからだよ」
「ん? 良く聞こえない」
「お前の身体が壊れちまいそうだからだよ!」
「……あははッ、そっちこそ何処でそんな言葉仕入れてくるのさ。
そんなの真顔で言う人初めて見たよ、ぷっ、だめだ、あははは……でも、ありがと」
お腹を抱えて笑いながら、小蒔は眼から零れた滴を拭う。
それはおかしかったからではなく、
龍麻が自分を大切にしてくれているのが伝わって、感極まって流れてしまった涙だったのだが、
恥ずかしくて龍麻には言えるはずもなかった。
「そんなに笑わなくたっていいだろ」
「ゴメン、だって……あんまりおかしかったからさ」
言いながら、龍麻の頬に自分のそれを擦りあわせる。
身体を重ねるのはそれほど恥ずかしいとは思わないが、こういう仕種の方がかえって恥ずかしい。
龍麻のそんな気持ちを知って、小蒔は都合が悪くなった時などはこうやってごまかす事があった。
もっとも今は本当に親愛の情を込めて頬擦りしたのだが、
それはますます龍麻を恥ずかしがらせてしまうだけだった。
「な、なんだよ、気持ち悪い」
「えへへッ。……好き」
「そッ、そうか。良かったな」
他に答えようもなく、龍麻はそう言うしかない。
ところが小蒔はますます声色を甘いものにして、龍麻が苦手な会話の方向に持ち込んでいく。
「ね、ひーちゃんは? ボクのコト好き?」
「前言っただろ」
「いいじゃん、別にもう一回言ったって」
「そ、そんなのはあんまり軽々しく言うもんじゃねぇよ」
「ちぇッ。ケチ」
龍麻はなんとなくキナくさいものを感じてさっさと下着を脱がせようとしたが、
案の定小蒔にその手を掴まれてしまった。
「んー、ちょっと調子よくない?」
「…………」
龍麻自身もそう思っていたから、返事が出来ない。
小蒔は険しい顔をして龍麻を睨みつけていたが、その顔が余程情けなかったのか、急に噴き出した。
「そんな顔しないでよ、笑っちゃうじゃないかッ」
「元からこんな顔だよ」
どうやら機嫌を直してくれた事にほっとしつつ、憎まれ口で返す。
けれどもいきなりまた下着を脱がせるのはマズいと思い、
小柄な身体を引き寄せ、思いきり抱き締めた。
「ちょっと……痛いよ……」
小蒔は文句を言いながらも、まんざらでも無い様子で身を預けてくる。
もう一押しだと感じた龍麻は、腕を片方離すと小蒔の頬にそっと掌を触れさせた。
「ん……」
目を閉じた小蒔とキスを交わし、今度は気が変わらない内に、素早くホックを外す。
キスを終えた途端額を軽く弾かれたが、その目は笑っていた。
「もう……ホンッと調子いいよね」
「そりゃ、村雨とか御門とか劉とかと仲良くやっていくにはこれくらいはな」
「そんなコト言って……失礼だと思わない?」
「あいつらにはそのうち謝っとくよ」
それより今は。
龍麻は雑念を振り払うと身体を起こし、小蒔を足の間に抱え込んだ。
下着が落ち、なだらかな膨らみが姿を現す。
小蒔は邪魔になった下着を自分から抜き取ったものの、すぐにわざとらしく胸を覆い、
背中に回されている龍麻の腕に体重を預け、支えさせた。
「お前な……俺が手放したらどうすんだよ」
「とか言って、ホントは放すんじゃなくて抱きたいクセに」
龍麻は反論しようとしたが、その前に小蒔が腕をわずかに下ろして胸を覗かせたので、
ここは負けを認める事にして軽く唇を合わせると、小蒔の手がシャツに伸びてきた。
上半身裸になった二人は、それまで軽妙なやり取りをしていたのが嘘のように黙りこくったまま、
しばらくぴったりと身体を合わせてお互いの体温を感じ取るのに集中する。
そのまま眠ってしまいそうなくらい心地良い温もりに龍麻が身を浸していると、
抱き合ったまま、小蒔が静かに囁いた。
「ねえ」
「……なんだよ」
今ひとつ格好のつけきれない声で龍麻は言い、諦めたように首を振る。
しかし小蒔は気にした風もなく、それどころかそれを歓迎するように喉の奥で笑った。
「えへへッ……しよっか」
その言葉に、龍麻は狭い場所に押し込められている下腹が、
さっきからずっと不満を告げているのに気付いて、
彼を解き放ってやるべく小蒔の肢体を静かに押し倒した。
小蒔は床に寝かされても胸は隠したままだったが、龍麻が腕を掴むと抵抗はしなかった。
柔らかく盛りあがった乳房に口付け、中央の頂きを尖らせる。
「っ……いきなり、だね……」
小蒔の口調にはわずかにたしなめるような響きが含まれていたが、
龍麻は構わず右手も使って愛しはじめた。
そのかわり左手は小蒔の掌を捕らえ、隙間も無いほど絡め、閉じ合わせる。
小蒔は諦めたように首を振ると、生まれはじめた快楽に顎を仰け反らせた。
龍麻の口の中で、敏感な部分が転がされる。
こういう事をするようになってから初めて、胸が小さいというコンプレックスに悩んだ時もあったが、
それを龍麻に話してみたら、あの日──一生忘れないだろうあの秋の日──と同じように
そっぽを向いて「そんなの関係ねぇ」と言われてからは身体の中でも好きな場所になっていた。
もちろん、もう少し大きければいいな、とは思い、いろいろと試してはいるけれど。
龍麻の歯が尖りを引っ掛け、押しつぶし、指がその裾に広がる淡い膨らみをなぞる。
小さな痛みとそれを上回る気持ち良さに、声を上げてしまいそうになった小蒔は小指で口を塞いだ。
それでもわずかに吐息が漏れてしまい、自分以外に聞く事の出来ない媚声に龍麻は興奮してしまい、
右手を残したまま、身体をずらして他の場所に向かった。
身体の中央にある小さな穴に舌が触れた時、小蒔がそれまでに無い反応を見せる。
あまりに突然の反応に驚いた龍麻がもう一度試すと、逃げるように身をよじった。
「ひゃっ……! あ、あんま……そこ……さわ……んっ、ない……で……」
「やだ」
小蒔の弱点を見付けた龍麻は、ここぞとばかりに責めたてる事にした。
身体全体で小蒔を抑えつけ、思いきり舐め上げる。



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