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口を、ちょうど指の大きさだけ開いた葵が、ぼんやりとした視線で龍麻を見る。
唾液で濡れ光った唇と相俟って、ひどく劣情を催させる顔だった。
龍麻は形良く尖った顎をつまんで自分を向かせ、ようやく望んだキスを与える。
ゆるやかに、そして深く舌が絡まり、貪る。
目を閉じて快感を高めながら、二人はしばらく口の中で行われる淫靡な舞踏を愉しんだ。
「葵……つば、くれないか?」
龍麻の頼みに葵は軽く目を見開いたものの、
軽く喉を鳴らすと、すぐに言われた通りに唾液を口移しで渡した。
殊更音を立てて嚥下する龍麻に、ぞくぞくと何かが背を走っていくのを感じる。
自分の一部を相手の体内に渡すという考えに、ひどく興奮したのだ。
「私…にも……龍麻の…飲ませて…」
その頼みを予期していた龍麻は可能な限り唾液を溜めると、
直接口の中に注ぐのではなく、唇の上に落とす。
すぐに葵の舌が伸びてきて、零れない様に掬い取った。
その舌を捕らえ、ねっとりと絡める。
「んむッ、ふぅん……ぷぁ、ぁ……」
泡立った粘液が二人の顔を汚す。
少し漂う異臭も、何がしかの味も、唾液が混じり合う濁った音も、
ただ淫靡な雰囲気を演出する小道具に用いて、二人はただれたキスを続けた。
美しい唇を歪めてしまうかのような強さで思いきり吸い上げ、唇の裏側に軽く歯を当てさえする。
龍麻の舌が薙ぎ払うように動いた時、葵は肩が、次いで全身が震え、自分が軽く達したのを感じた。
それでもなお龍麻の舌は離さず、それどころか後頭部を抑え、
人工呼吸の仕種で口を塞ぎ、自らの一部を龍麻の口内へ踊りこませる。
今度は龍麻が感じさせられる番だった。

二人が一度口を離したのは、精神的な理由では無かった。
舌が痺れて動かなくなってしまったのだ。
どろどろに汚れた口の周りを啜ってやりながら、龍麻は囁く。
「お腹に……入った?」
「ええ……龍麻の……たくさん……」
「俺も……葵の、たくさん飲んだよ」
「うふふ、嬉しい……んっ……ふむぅ……」
行為を確認しながらお互いを昂ぶらせ、少しでも回復すれば、すぐにまた求める。
どれだけ舌を絡めても、どれだけ唾液を交換しても、足りなかった。
龍麻の顔を引き寄せ、葵の顔に押しつけ、
意のままに動かない舌にさえ快楽を見出しながら、
二人は欲望のままに口だけでセックスを続けていた。

時間さえ失われた頃、何かの拍子に二人の口が離れる。
「ん……っぷ……ぁ……」
葵が何か話そうとすると、口に膜が出来てしまっていた。
恥ずかしそうに口を閉じる葵の顔を、ついばんで拭いてやる。
あらかた唾液を拭き終わった龍麻は、今度は興味の対象を胸に移した。
制服の襟に入ったストライプに沿って指をなぞらせ、
スカーフを軽く弄んだ後、双つの丘をそっと押し包む。
指先を上向きにきちんと揃えて掌で型を取り、そこから指を開いていく。
一杯に開いてようやく全体を覆える大きな乳房を、全く力を込めずに撫であげた。
「んっ……」
肌を走るくすぐったさに、葵は顔だけを龍麻の方に動かし、潤んだ瞳で続きを誘う。
震える睫毛の端に色を感じた龍麻は、直に触りたくなって制服の内側に手を潜り込ませた。
「待って……制服…しわになっちゃうから……脱がせて……」
「……もう少し、このまま」
まだ残っている理性がそうさせるのか、葵は身体を起こして弱々しく哀願したが、
龍麻の言葉にそれ以上は何も言わず、再び身を委ねる。
龍麻はうなだれた頬にお礼のキスをしながら、ブラの上から極上の果実を鷲掴んだ。
掌を広げて余す所無く味わいながら、人差し指だけを器用に動かして下着の縁をなぞり、
生地と肌の感触を同時に楽しむ。
生地の質感は滑らかなもので、高価なものである事が伝わってきたが、
葵の肌のきめはそれをも上回るものだった。
指をきっかり一往復させた龍麻は、今度は言葉で羞恥を煽り立てる。
「ね、今日は……どんなブラしてるの?」
「……あの、薄い……ピンク……」
「ふーん……結構おとなしめのなんだね。今度さ、この胸に似合う、凄くいやらしいのしてよ」
「そんな……の……持って……ない、わ……」
「だったら買いに行けばいいじゃない。日曜日にでもさ、小蒔を誘って」
親友の名前を出されて、葵は身をすくませる。
小蒔の前で下着を選ぶ自分を想像して感じてしまったのだ。
「ね? 買ったらそのまま着てさ、俺の家まで来てよ。小蒔と一緒に」
「…………」
葵は黙ったままだったが、それはわざとなのが判っていたから、龍麻は容赦しない。
「わかった? それで小蒔にさ、葵が本当はどんなにいやらしいのか教えてあげるんだよ」
「……ええ……わかった……わ……」
語尾に悦びを滲ませて答える葵の耳朶を、褒めるように甘噛みしながら、
下着の上から乳首とおぼしき場所を探り、爪先で引掻く。
指腹で軽く転がされただけで勃ってしまったその場所を、葵は陶然と眺めていた。
「あっという間に硬くなるんだね」
「そ、れは……龍麻が……触ってる……から……」
「そうかな? 本当は誰が触ってもこうなっちゃうんじゃないの?」
「ちが……違う、わ……」
龍麻が本気で言っている訳がないことなど判っていた。
それでも葵は龍麻の言葉を怖れ、懸命に首を振る。
その度に踊り、頬を叩く絹髪の、何本かを口に含みながら、龍麻は双乳をこねあげた。
確かな質感を伴なった乳房が、いやらしく形を変える。
「いやぁぁ……いや……」
「だってさ、葵、まだ時々告白されてるんでしょ? 時々さ、浮気したくなったりしない?」
「しても……いいの?」
しつこく絡んでくる龍麻に苛立ったのか、葵は口を尖らせて反論した。
「駄目。絶対駄目」
思いがけない反撃に、龍麻はやや慌てて、葵の身体を抱き締める腕に力を込めて答える。
はっきりと痛いその力が、葵を安心させた。
小さな咳払いの後、龍麻が続ける。
「葵は……俺だけのものだから。心も身体も、綺麗な所も汚い所も。髪の毛の一本だって、誰にも渡さない」
思いもしなかった答えが得られた葵は、熱い滴りが太腿を伝うのを感じて足を擦りあわせ、
腹にあてがわれた龍麻の腕に自分の手を重ねながら誓った。
「……はい。私の全てを……あなたに捧げます」
「……うん。……ごめん」
「ううん、いいの……わかってるから」
親指の甲を撫でながら頷く葵に、照れた笑みを浮かべた龍麻は、再び胸をまさぐりながら話題を変える。



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