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「落ちつきはりました?」
「ええ……もう大丈夫」
ベネッサは力強く頷いた。
恥ずかしいところを見せたという想いと、これがサラのいる時でなくて良かったという思いが、
幾らかの照れとなって笑みを作らせる。
その唇の端にくちづけた葵は、艶な表情で囁いた。
「ほなら、続きしまひょか」
普段はベネッサが主導権を握ることがほとんどだが、今日は葵が彼女を愛したかった。
それを汲み取ったのか、ベネッサも強く主張はせず従った。
「あぁ……葵……」
葵はベネッサの弱いところを、時間をかけて丹念に愛撫する。
どちらかというと性急に快感を求めるのが好きなベネッサは、
今までこうしたやり方をしたこともされたこともなかったが、
情感のたっぷりと篭った動きは、ともすればそれらよりも深い陶酔を与えてくれた。
乳房をくるんだ掌を、さするように動かしながら、そっと揉みしだく。
しかし、立ちのぼってきた快感が口から逃げ出す前に葵の手は遠ざかり、
もどかしさを伴った熱が身体に蓄積されていくのだ。
ベネッサは、頭の奥では苛立ちを覚えつつも、
こうして葵に身を任せていることに無上の喜びをも抱いていた。
細い指先はさする動きから、搾るような動きへと変わっていく。
少しだけ強まった快感に、ベネッサは呼気を吐き出そうと一度は開いた口を閉じた。
もう少し、焦らされる感覚を愉しみたいと思ったのだ。
その瞬間、尖った乳首の根元を爪で引掻かれた。
数段飛びの快感が疾り、ベネッサはたまらず悲鳴じみた声を発してしまった。
「ひっ、く……ぅ」
「弱い所ひとつ、見つけましたわぁ」
「べ、別に……弱くなんか……」
「あ、そないなこと言うんどすか? ええどすよ、ほなら」
狙いを乳首に絞った葵は、溢れるほどの質量を持つ乳を下から押し上げ、
弄るところをベネッサ自身に良く見えるようにした。
見なれているはずの自分の身体なのに、
ベネッサは葵の手が添えられているだけでひどく恥ずかしく感じてしまう。
「こっちはこないに可愛らしいのに、本人は素直やおまへんなぁ」
指腹は張り詰めた頂をさわさわと転がす。
いまにも乳を噴き出しそうに膨らんだ乳首が、葵の爪先で悶えた。
「あぁ……あ、う……ん……」
「ね? 気持ちええどすやろ?」
「はぁっ、んっ……気持ち……気持ち、いい……わ……」
柔らかさを感じる葵の声が、耳元にずっと残っているようだ。
声そのものに耳を愛撫されているような感じがして、ベネッサは煽られるままに本心を口走った。
「ほなら、これはどないどす?」
「うあぁッ! あ、ぁ……」
何も我慢できない。
注ぎこまれる快感をせき止める理性が完全に消えてしまって、
身体の全てが快楽のための器官と化していた。
「今日は、うちが気持ちようしてあげます」
か細い指先が、羽毛の如き感触で内腿を撫でる。
あまりに柔らかく、肌の表面だけをさざめかせるタッチの愛撫に、ベネッサの足は自然と開いていった。
既にクレヴァスは疼き、触れられる瞬間を今かと待っている。
しかし葵はまたも焦らし、足の付け根にまで指を滑らせておきながら、
あと数センチのところで無情に引き返させた。
「……っ……」
期待を空回りさせられた腰が浮き上がる。
その拍子に触れた指先は、脳が痺れるような恍惚をベネッサにもたらした。
求めて与えられなかった恍惚に、恨みがましくベネッサが葵を見ると、
葵は心得た表情で微笑み、今度は疼きの中心を撫でる。
「葵……っ」
トレーニング用のスパッツを撫で回していた手が、一点で止まった。
そこに広がっている、生地とは異なる感触を確かめているようで、
ベネッサは恥ずかしくてたまらない。
「もうこないに濡れてますの?」
「そ、それは……」
「やらしおすなぁ」
決めつけられ、身体が熱くなる。
秘唇を晒し、舐めさせることさえ恥ずかしいとは思わなくなっていたベネッサだが、
今は葵の一言一句が羞恥を炙った。
「ほら、脱いでおくれやす」
「じ、自分で……脱ぐの……?」
「うちはベネッサはんのおっぱい触らなあきまへんからなぁ」
言葉通り、乳房を触る手を止めない葵に、ベネッサは上体を預けたまま、腰を浮かせてスパッツを脱いだ。
褐色の肌に白い足が絡みついているのが、ベネッサの目に映る。
すらりとした細い足は、自分の、
男性にも見劣りしないほど筋肉のついた足とは比べ物にならないほど女性らしい。
女性らしく、などというものをこれまで意識したことのなかったベネッサだったが、
こうも女性──美しい女性を目の当りにすれば、嫌でも自分との違いを思い知らされてしまうのだった。
歩んできた道が間違っていたとは思わない。
両親の顔すらわからぬ自分を引き取って育ててくれた父には感謝しているし、
身体を鍛え、男と同じ訓練で彼らに引けを取らない成果を出して褒められるのは嬉しかった。
そして成長して自分のいた場所、父が救い出してくれた場所の意味を知った時、
作り上げてきた肉体が『組織』を壊滅させるために幾らかでも役に立ったことに、
ベネッサは感謝したものだった。
だからこれまで、どれほどスタイルが良い女性を見てもコンプレックスを抱くことはなかったし、
むしろ男性に媚びるかのような彼女達をベネッサは醒めた目で見ていた。
だが葵は、合気柔術という不思議な流派を使う日本人の少女は、
闘いという場に身を置きながら、ベネッサですら心奪われるような肢体の持ち主だった。
ベネッサの雇い主であるサラのような完成されたプロポーションではなく、
整っていながらどこかに未完の趣を残した華奢な身体。
そして白人の白さとはまるで異なる、雪の白さを持った肌。
葵の全てがベネッサにとっては美しく見え、愛情の対象となっていた。
その葵は、ベネッサの半分ほどの太さしかない足を腰の辺りから回し、股間で絡める。
それは、柔術で言う裸締めの格好だった。
違うのは葵の両手が掴んでいるのは襟ではなく、二つの大きな膨らみだということだった。
「ちょっとおかしな格好やけど、この方がいっぱい触れますやろ。……どないしはりました?」
「っ、だ、だ、め……この、格好……こんな……」
「……もしかして、感じてはるん? 後ろから抱かれただけで?」
「だっ、て……うぁっ、だめ、い、く……!」
葵に抱きしめられていると思っただけで、ベネッサは昂ぶる心を抑えることができなかった。
自分から抱きしめられないということは、葵が離れるのを止められないということだ。
そして葵は離れない。
腕を回し、足を絡め、全身でしがみついてくれる。
胸に、わき腹に、臍に、葵の体温を感じ、ベネッサは達した。
疼く股間をこらえることもできず、受けた快楽をそのまま垂れながすだけだった。
「ほんまに……潮噴きなんて初めてみましたわ」
以前サラとベネッサに面白半分に見せられたビデオで、
女性にはそういう現象もある、と知ってはいた葵だったが、目の当りにするのは初めてだった。
勢い良くしぶいた愛液は葵の踵から先を濡らしている。
肌を重ねている時でさえどこかに冷静さを残しているベネッサが、
自分の手によって与えられている快楽に溺れているというのは、葵をひどくそそった。
逞しい腕に抱かれ、激しくはあっても愛情に満ちた愛撫をされるのも悪くはないが、
こうして立場を入れ替えてみると、自分の新たな一面を発見したような気もしてしまう。
腕の中で大きく上下動する身体をしっかりと抱いた葵は、濡れた踵をベネッサの鼠径部に当てた。
たったそれだけで、面白いように褐色の躰が跳ねた。
「ふふ、うちもこんなところ使うの初めてやわ」
強く、りりしいベネッサが、踵で性器を刺激されて悶えるさまは、葵の劣情を誘わずにおかなかった。
張りを増した乳房を強く揉みしだきながら、淫唇を踵で押す。
途端にぬらむらとした蜜に濡れた踵が、ひどく気持ちよかった。
「あ……葵……っ」
初めての快楽にベネッサは戸惑い、声をあげる。
葵はそれを妨げるように乳房を掴み、耳朶を噛んだ。
「えろう噴きはって……ちょっとだらしなさすぎるんと違いますか」
「だ……だって……っ」
「だってやありまへん。ほんまベネッサはんはやらしゅうて」
少し歯を立て、抵抗を抑えてからクレヴァスにあてがった踵を上下させる。
愛液とベネッサの柔らかな秘唇が、息詰まるような興奮を葵にもたらした。
「うっ……んぅぅ……」
立て続けに責められて苦しいのか、ベネッサは呻いている。
はっきりと聞こえる荒い吐息は、踵に加える力をほんの少し強めるだけで、
艶やかに音程を変え、葵は両手と舌まで使って褐色の楽器を弾いた。
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