――。
――消してよ。
「か……義章さん?」
あやうく『川島さん』って呼ぶところだった。
「なに?」
「あの、灯りを」
「だって見たいんじゃないの?」
「へ?」
「一昨日、全部見たい、って言ってたじゃない」
やっぱりこの人勘違いしてた!
「ちっ、違いますよ! それは……っ、はぁ んっ」
ちう、とおへそのあたりにキスされた。それだけでひくんと体が動く。
「違うの?」
聞いてくれていそうでいて、こっちに喋らせる気は無いのか、お腹からじわじわと唇が下がっていく。
「やっ、やぁんっ」
パンツを押さえようとしたら、その手を掴まれた。ベッドに押さえつけられる。
「やぁ…っ、だ、だめ! やだ! やです…っふ、あ」
一度見られてるから一緒、と言いたいところだけど言えません。
一緒じゃないよ。
どこからどう見ても子供にしか見えない下半身は、好きな人だからこそ見られたくない。なのに川島さんは唇を滑らせていって、パンツのゴムを咥えるとぐっと引き下げた。
「やああっ!」
「まだそんな声を出すようなこと、してないよ」
平然と言って川島さんはサイドからも引っ張ってパンツを脱がせようとする。
「ひどい! だってやだって言ってるのに!」
抱かれるのと見られるのは別だ。
「僕はしたいのに。結衣は僕のことを好きって言ったよね」
「う……っ」
この卑怯者。そんなこと言われたら困る。
だって私、まだ……。
あれ? そういやまだだ。
まだ言われてない。
『僕のものになれ』とか『一緒に暮らそう』とか言ってくれてるけど、まだ一度も聞いてない気がする。
「だめ! だめです!」
「なんで」
「私のことを好きって言ってくれたこと無いからだめ!」
そうだよ。そこの部分を飛び越えてその先に行っちゃってるんだよ。
だからいまいち私も思い切りよく飛び込めないっていうか、開き直れないっていうか。
「言ってるよ」
「言ってません」
「言ってる。今だって」
川島さんは掴んでいた私の手を離して、ぎゅっと抱きしめてくれた。
腰というかお尻というか、そのあたりに腕を回して、ぎゅっと抱きしめてくれて、パンツが半分脱げてる下半身に頬ずりをするようにしてくる。
川島さんの頭が私の股間に埋もれそう。
「今だって全身で叫んでる」
あー。
そういうずるい言い方をするんだ。
でやっぱりはっきりとは言ってくれないわけね。
「結衣」
川島さんは頭だけ私からすこーし離して、私をまっすぐに見上げてきた。
なんて新鮮な位置関係。甘えられてるみたいだわ。
「はい」
「愛してる」
「はい!?」
言う気が無いのかと思ってたらものっすごく正面から来たよ。
「愛してる」
「え、いや。あの……」
なに、この破壊力。心臓がばくばくする。嬉しいのにとてもじゃないけどマンガみたいに『私も』なんて言う余裕が無い。
「結衣が欲しい」
ぎゃー!
そんなこと言われたら死ぬ! 血が沸騰して凝固して死ぬ!
「か、わしまさん……」
喉がからからだ。
「また『川島さん』って呼んだな」
すう、と目を細めて、冷たい声を出す、その急激な変化に背筋が寒くなった。
「あ、あの」
「二度とそう呼びたくなくなるようにしてやろうか」
「なにをする気ですか!」
「さあ?」
冷ややかな微笑を浮かべて川島さんは起きあがると、
「抵抗したら破れるかもしれないからしないでね」
と言ってほとんど脱げていたパンツを引っ張った。
「きゃあっ!」
足を閉じたくらいじゃ抵抗の内にも入らなかったみたいで、パンツは破れもせず、ゴムが伸びきったりもしないで取られた。
川島さんが無理矢理足の間に体を入れてくる。手も足も肩も使って私を押さえつけてくる。
「やッ! やあ…っ」
川島さんがどのくらいの力を出してるのかわからないけど、こんなに乱暴にされてるのに私は形ばかりの抵抗しかできなくて、もちろん本気で力を出したってかないっこないのはわかってるんだけど、どこかでこのまま無理矢理奪われたいって思ってる部分があった。
がむしゃらに欲望を剥き出しにされてるのが心地よかった。
「っ! い、った! や、いや…っ、川島さんっ」
強く吸い上げられて、歯を立てられて、その刺激に悲鳴を上げながらのたうって、でも咄嗟に呼んだのは『川島さん』だった。
「きみはちっともわかってないね」
足の間で川島さんの苛立った声がした。
「な、んで…っ、だって、川島さんだって んあっ、ア、そこ…ッだめぇ!」
そこは最初の時にも指で、そして舌で撫でられてつつかれて、足の裏はびりびりするし腰は抜けそうになるし、それに、それに。
「ここ、好き? こうするとびしょびしょになるね」
「やだああぁっ」
びちゃびちゃと犬が水を飲むような音をわざと立てて川島さんがそこを舐め上げる。
「や! や…っ」
腰が震える。お尻がベッドの上で弾む。痛いくらい胸の先端が硬く尖る。
「いやじゃないくせに」
「ひ…ぁ」
じゅる、とそこに溢れる液体を川島さんは啜った。
「いやあッ!」
そんな恥ずかしいことしちゃだめだぁっ!
「いや? こんなんじゃ物足りない?」
「ちが…っ」
くぷっ、と音がした。
「二度目だものね。まだきついね」
「ん、あ」
川島さんの指が。
くちゅ、じゅぶ、と音をさせながら川島さんの指が私の中をくじる。
「でも硬さは取れてきてるのかな」
川島さんは、体をひくひくと動かすことしかできなくなった私の横までずり上がってきた。
「や…、もう…」
中でくちゅくちゅと指を動かされながら、びりびり痺れる突起を擦られると涙が出てくる。
「まだ指一本だよ。結衣」
耳元に熱い息がかかる。
「平気だろう? これから何回でも何十回でも。いいや、何千回でも僕はきみを抱く。きみがいないなんて考えられない」
どうして。
おかしいよ。
川島さん、おかしいよ。
ずっと一緒にいる、って約束したよ。一緒にいて二人で幸せになる、って約束したよ。だから私も何度でも川島さんとひとつになりたいよ。
そんなに呼び方が大事なの?
二十歳も年上の男の人を、急に名前でなんて呼べない。だけど。
「よ、ぶから……っ」
「結衣、僕を欲しいって言って」
熱病にかかったようにうわずった川島さんの声。
「すぐ、は…… でも …っ、きっと」
呼ばずにはいられなくなるから。
「待てないよ。結衣。僕はきみよりはるかに年上だ」
「そ、んなの… あ、や…ッ 動か、しちゃ…っ あああ!」
「早く僕を覚えて。目で、耳で、肌で。そしてここで」
ぐぷっ、と粘りけのある液体が溢れた。
「ん、はあっ」
背中が反り返る。川島さんの指がずっと奥へ入り込んでくる。
広げられた足がぶるぶる震える。
奥をぐりぐり押されて、擦られ続けた突起はもう痛いくらいで、それなのに川島さんは許してくれないばかりか、胸に舌を這わせてきた。
「ひあっ、あ、あっ! やあ…んっ! あ、あんっ!」
「胸、好き?」
「ふは…っ! あ、あっ!」
ねろりと胸の先端をなぶられて、寒気に似た震えが体中に走った。
「あ、あーっ、や、やあ…っ! そ、れ…っ! あ、ああああ……!」
震えて、震えた先で、体の奥が熱くなってきゅっと縮む。
「や、やああ!」
腿の筋が痛くなるくらい足を突っ張って、きゅうきゅうと縮む、まだよくわからない『イく』って感じに攫われた。
「ふ……は、ぁ」
喉がかすかにぜいぜい言ってる。呼吸が苦しい。
川島さんはうっとりするような笑顔で私の髪を梳いてくれた。
「きれいだよ。どこもかしこもほんのり赤くなって、すごくかわいい」
「あ、なたは……」
『川島さん』って呼べばまた川島さんはさっきみたいに私をめちゃくちゃにするんだろう。でもまだ『義章さん』って素直に呼べない。
「私を『きみ』って言う」
「うん」
「それ……、よそよそしい、って……思う」
「そうかな」
私が川島さんを『川島さん』って呼ぶのと変わらないと思う。
「でもね、か……。らしい」
また『川島さん』って言いそうになってごまかした。
それがわかったんだろう。川島さんは、ふっ、と鼻から息を抜くように笑った。
「まだね、呼べないの」
「ん?」
「大好きなの。だけど私はまだ子供で、川島さんの横に並べないの」
「そんなこと」
「ううん」
保護されるだけの立場。お金を出してもらって、面倒を見てもらって、私はまだ一人で何もできない。
好きな人に好きだって伝えることさえまともにできない。
好きな人の気持ちを受け止めることもできない。
「だけどね」
待って、って言えない。二十歳も年上の人に待ってなんて酷なこと言えない。
「一緒にいて良かった、って思ってもらえるように頑張るから」
私を選んだのが間違いだった、って思われないように頑張るから。
その頃にはきっと、何も構えたりしないで『義章さん』って呼べると思うから。
「それまで、呼び方ぐちゃぐちゃに混じっても、あんなに怒らないで」
川島さんは、むっとしたような顔をした。でもそれは一瞬のことで、溜息をついたと思ったら、いつもの柔和な川島さんになってた。
「それ、いつだよ、って言いたいけど」
ひょいと首をすくめる。
「きみの気持ちはわかった。譲れるところは譲りましょう」
ほっとして力を抜いたら、
「でもね」
と言いながらのしかかられた。
「うわ! なんですか!」
「それはそれとして、十八になったばかりの結衣を見るのは譲れない」
「見てるじゃないですか」
「いや、もっといろんな姿を」
「さっきのじゃだめなんですか!?」
「あんなの、僕、何もしてないのと同じじゃないか」
川島さんはむくれた。これのどこが、今年三十八なのよー。
「とりあえずここに出してる三個、全部使うからね」
「一度に三枚重ね?」
「これは重ねない! 重ねたら破れるの! 一回一回新しく付けて外すの!」
「はあ……。って、えええ? じゃあ三回するってこと!?」
「そう言ってる」
いっ、いやあああ!
「無理! 無理だから!」
「大丈夫。ちょおっとだけ大変だけど、そこまで衰えてない」
「いや、そういうことじゃなくて!」
「はいはいはい。さ、どこでしようか。やっぱり見たいんだったら風呂場? 鏡あるし」
「ちっがーう! それも誤解です! あの時はこれが最初で最後になるから何もかも覚えておきたいと思って、見たい、って言ったの! あんな入ってるところ……。あ」
今、勢いですごいこと言いかけたぞ、私。
「入ってる? 何が? どこに?」
うっわー。にやにやしながら迫ってくる。
「いや、だから」
「うん。いいよ。ゆっくり聞くよ。夜はまだ長いし、朝になったって構わない」
「構いますよ! 今までに付き合った人とかともそんなだったんですか?」
いないはずはないよね。この年齢だもの。
あれ、考え込んじゃったぞ。
「いや――。こんなことはしてない。というか、自宅に上げたことって無い」
「は?」
「たいていホテルですませてた。女の。あ、失礼。彼女の部屋に行ったことも無い」
それ、付き合ってるっていうのかな。大人は言うのかな。
「自分をどう呼ばれようと特に気にもしなかったな、そういや」
いろいろ思い出そうとしてるのか、額に落ちた髪をかき上げた形で手を止めて頭を押さえて川島さんは言った。
思わずぽかーんとしてしまった。
うっそだあ。
すっごいこだわってるくせに。
「結衣は特別ってことだな」
考え込んでた表情が一転して、にこやかな顔を向けてくる。
う。
そんな魅力に負けたりなんか――負けたり……ま、負けた。
一回目はお風呂に連れて行かれた。
「声、響くからだめですよ」
お風呂の音なんて隣近所に丸聞こえなんだから。
なのに川島さんは、もうすぐ引っ越すんだから平気、と言ってシャワーを出した。バスタブとトイレとが一緒になった小さなお風呂場はすぐに湯気が回る。鏡も曇って見えなくなる。
「あ、しまった」
川島さんはそのことに初めて気が付いたように舌打ちした。
「これじゃ見えない」
そんなことを言いながら手はしっかり人の足の間に入れてくる。
「んぅ、やぁ…ん」
体をくねらせて逃れようとするけどバスタブ自体が小さくて、逃げる場所がない。
本気で逃げるならバスタブの縁を乗り越えて外に行かなきゃいけない。
そこまでして逃げる事じゃない。
だから私の『逃げ』は川島さんを歓ばせたり煽ったりすることにしかならない。
背中を反らすと胸は本当にあばらが浮いた。川島さんはそこへ齧り付く。
子供みたいにまだ色素の薄い乳首を舐めて、周辺と一緒に食いちぎりそうな勢いで歯を立ててくるかと思えば、指の柔らかい部分で優しく撫でてくれたりする。
「ふ…はぁ……っ あ、ああん…っ」
硬くしこった乳首を指でこりこりと摘み上げられて、体がびくびくと震えた。
「結衣、かわいい……」
川島さんの熱い声が聞こえる。
「や…ぁ、うそ…… ん」
「ほんとだよ。もうとろとろだ」
「やだぁ…っ」
嫌じゃない。嫌じゃないから体も反応する。
「結衣、もういい?」
「え?」
「挿れたい」
腰を掴まれて、くるりと後ろを向かされる。
川島さんにお尻を突き出したような姿勢になると、川島さんは私の手首をひとつにして掴んで、かなり上の方の壁に押しつけた。
「ぁ……」
なんか、縛られてるみたい。
「もう少し足開いて」
くちゅくちゅとお尻の方から弄られながら、川島さんが言う。
バスタブの幅一杯に広げてみると、ふふ、と笑う声がした。
「結衣。そこまで頑張らなくていいから」
「え。あ……」
急に凄く恥ずかしくなって膝を折る。でも手を掴まえられてて体を落とすことができない。
「や、やだ……ぁ、 だって…」
「じゃあ、片足だけバスタブの縁に乗せて」
「その方が恥ずかしい…っ」
でも、私のぬるぬるしている部分を弄る川島さんの手が私の太ももを撫でてくると、もう逆らっちゃいけないような気がして、その手が持ち上げるとおりに私は片足をバスタブの縁にかけた。
「いくよ」
「え、ちょ…っと待っ……っ! や、やあ…っん、川島さんっ、コンドーム!」
「心配ない。つけてる」
いつの間に!
ぐっと押しつけられる感覚。立ったままだから肝心の部分が見えないせいか、二度、三度、と口の部分をつつかれて、それからようやくずずっと硬くて熱い物が侵入してくる感触があった。
「ん……っ、はぁ…んっ!」
腰を反らして、お尻を突き出してしまう。もっと、って言ってるみたいですごく恥ずかしい姿勢で川島さんを受け入れる。
「つらく、ない?」
川島さんの声は私の頭の上から聞こえてくる。
じわじわとお腹の中が熱くなってきて、変な気持ちになっていくのに、つむじに話しかけられてるみたいでなんだか笑っちゃいそうになる。
「ん。だいじょうぶ…です」
「結衣、好きだ」
「ぁう… こんな、ときに…っ」
川島さんは何もしてないのに、川島さんの言葉でぞくぞくってする。
「そんなこと、言っちゃ…… っ」
「好きだ。愛してる」
「やああぁ ん、あ…ぁ」
何もされてないのに。私だけがひくひく体を動かして、その動きでまたなんか変になっちゃって、だめだって思うのに声が大きくなる。
「結衣」
「は、い」
「すごいね。何か言うたびにきゅうって締め付けてくる」
「やっ! そんな…!」
「ほら。気持ちいいよ」
やけにあれこれ言うと思ったらそんな理由で……っ。
でも何か言われるたびに川島さんのが私の中でぐんぐん大きくなる気がする。
そんなこと無いと思うんだけど、ぐっ、と奥を押し上げられてるみたい。
私の手首をひとつに束ねていた川島さんの手が外れる。
両手でがっしりと腰を掴まれる。
「んっ…は、あああッ!」
ガツン、と骨どうしがぶつかったような硬い音がした。
痛い。
奥までさしこまれて、串刺しにされちゃったみたいに頭のてっぺんまで衝撃が響く。
「ひッ! あ、ア…っ あ くぅ…っ」
激しく押しつけられる行為に声を上げ続けて、口を閉じる暇もない。
ぷちゅ、ぐちゅ、と粘りけのある液体が小さく弾けて音を立てて、肉と粘膜が擦れあう助けをする。
「や……ぁ、いやあ…っ、すご い、イ…っ」
痛いのか気持ちいいのかわからない。どっちもかもしれない。
自分の体が自分のじゃないみたいに内側から荒れ狂ってる。
「や、やんっ! いゃ…あ、よしあ…きっ」
喉がひりひりしてくる。唾液や涙がお風呂場の壁を流れ落ちる。
足の間を濡らすほどの粘りけは無いけど、私の体はそれらや汗でぬるぬるして、もともとしがみつくような場所もない壁で滑る。
「結衣…っ」
私の奥を抉るような動きで川島さんは腰を入れてきた。
「ひ…は …ッ!」
がくん、と顎が上がる。目を開けてるのに、周りがよくわからない。
がっしりと掴まれていた腰が自由になる。
川島さんはぴたりと体を押しつけてきて、ぎゅうっと私を抱きしめた。
「んぅ…。 は」
こんなに乱れているのに、安心感で思わず甘い吐息が漏れる。
わずかな腰の動きで川島さんは私の奥を揺さぶる。
密着している濡れた肌が卑猥な水音を立てる。
「ふ……ぅん、ん、ああ っ、川島さん…」
「もう戻っちゃうの?」
耳元に吹きかけられた声で、足先までさざ波が走る。
「んん…」
「もう『川島さん』に戻しちゃうの? さっきはあんなにかわいい声で僕を呼んでくれたのに?」
「ゃぁ… ん、そん、な… ふ、は…っ」
ゆらゆらと私を揺さぶる川島さんの動きは優しいものに変わる。
それはさっきまでめちゃくちゃにされていた時に感じていた気持ちよさからすると、すごくじれったくて、私は自分でお尻を動かそうとする。
「いやらしいな。そんなにくねくね動いて」
「ぃやあっ、違う 違うの」
だってさっき凄かった。
川島さんがそれを私に教えた。
だから。
「欲しいの?」
「ぅん、んっ ん、あ」
「ちゃんと言わなきゃ」
「や…ぁっ、いじわる…」
知らないわけじゃない。薬のせいとはいえ――というか本当の本当に薬のせいなのかははっきりしてないんだけど――私は夢の中でもっときわどいセリフも言った。だからどう言えばいいのかわからないわけじゃない。
だけどあれはあくまでも夢だ。私しか知らない、私のどろどろした部分。
それを川島さんは受け入れてくれるだろうか。嫌いになったりしないだろうか。
「ほら、結衣」
「う…。ほ、し…っ」
小刻みに腰を左右に振る。
でもまだ川島さんは許してくれない。
「それじゃわからない」
「う…やぁん…っ、も、 もう… だめ」
苦しい。体の内側から足りなくてくすぶってる感じがせり上がってきて苦しい。
「義章さんが欲しいの…っ!」
限界だ。
これ以上の事は言えそうにないし、もうまともに意味のある言葉を言えそうな気がしない。
「結衣」
ぱくりと耳朶を噛まれた。
「ひぅ んっ」
びくんと背中が伸びた拍子に、べったりくっつけてた体は壁をずり上がって、胸を擦られたようになった。
「ん、あ!」
「あげるよ。たくさん」
壁から引き離されて、抱き上げられる。バスタブの縁に乗せてる足は、膝を曲げてるせいで力が入らない。もう片方は、川島さんに抱き上げられてつま先立ちになって、こっちも重心をかけられない。
「あ、あ、あ…っ やぁ…っ」
川島さんの腕と、繋がってる部分とに私の体重がかかる。
「い、や! いや! 深いの…っ」
こわい。突き破られちゃいそうで怖い。
「大丈夫。結衣、大丈夫だから」
「や! いやあ! たすけ、て…っ よ、しあきさ…」
ぬるぬるとぬめる部分が、じんわりと痺れた熱を持つ。
私が私じゃ無くなるような気持ちよさが始まってる。
そうしてるのは川島さんなのに、私は川島さんにしか助けを求めることができなくて藻掻く。
「い、イ… イっ、ゃ、いい… ぅああ」
頭に血が上って爆発しちゃいそう。
「結衣」
私の体を抱きしめていた腕が、汗でぬるりと滑った。
わざと滑らせたのかもしれない。
その証拠に片方は胸に、もう片方は足の間に前から入ってきた。
乳首を摘み上げられながら、割れ目の先端にある突起を擦られる。
「ヒ、ア! あ、あああっ! や、も…ッ だめ、だめだめ…っ イク…っ」
ふくれ上がって飛んでいっちゃいそうなのに、私のお腹の奥にある何かが、きゅきゅっと甘く縮んだ。
「ああ――ッ」
クリーム色のお風呂場の壁が一瞬真っ白になった。
2009年2月8日