九の巻
「発駕」4.5




by 戸田采女

 惣一郎は右近の耳朶や項に唇を這わせつつ、
「そなたを留守居役になどするのではなかったーー」
熱い息とともに囁いた。
「何を申されます…っ」
「側用人のままなら、片時も離れず予の側に」
「そのようなことを仰って…、堀田様に、叱られますぞ…」
言葉とは裏腹に、右近の唇の間から甘い息が漏れた。
惣一郎は親指の腹を右近の先端に押しつけ、円を描くように動かした。
「殿ぉ…」
もどかしいような疼きに、右近は鼻にかかった声を上げた。

(これ以上はならぬ、今にも迎えが来てしまう…)

 「…もうお時間がっ」
右近が小さく首を振ると、
「構わぬ、待たせておけ」
惣一郎は喉声に叫び、一度右近から手を放した。
「襖を背に座れ」
意図がよくわからず、右近は命じられるままに、畳の上で身体の向きを変えた。
「足を前に出せ」
「殿?」
焦れた惣一郎が、
「こうじゃ」
右近の両足首を持って引っ張った。
足を前へ投げ出した格好に、右近は戸惑ったように見つめ返した。
惣一郎は右近の袴の片足を腰までたくし上げ、下帯から屹立を引き出した。
とんでもない姿に狼狽した右近は、
「何をなさいますっ!」
己の股間に向けて屈み込む、主の肩を押し返したが、
「袴を汚すわけにかぬだろう? 予に任せておけ」
片頬で薄く笑うと、ためらいなく右近のものを口に含んだ。
「殿、なりませぬっ!」
鋭く小声で叫んだが、熱い舌先に絡めとられた瞬間、名状しがたい疼きが股間から駆け上がった。
惣一郎の舌先が、愛しむように右近の形をなぞった。
「ん…っ」
たまらず惣一郎の肩を掴むと、今度はきつく幹を吸われた。
恥ずかしいくらい甘い声が漏れ、惣一郎が一度顔を上げて目を細めた。
「餞別に、そなたの果てる顔を見せよ」
右近の頬にみるみるうちに血が上った。
再び惣一郎が右近のものを銜え込み、思うさま嬲り始めた。

(だめだっ、もう誰か来る!)

 斯様なこと、すぐにも止めねばと思いつつ、右近の弱い部分を知り尽くした巧みな舌技に、腰から下が蕩けそうだ。情けないほどに息が上がる。声を漏らすまいとすればするほど、淫らな快感が右近の中で荒れ狂った。

 惣一郎が時折上目使いに右近の様子を伺った。
右近は惣一郎のこめかみに手を伸ばした。
結い上げた鬢を乱さぬよう、指先で愛おしげに触れると、惣一郎が応えるように舌を絡めて強く先端を吸った。
ねっとりと締め付けてくる感触に、右近はたまらず腰を揺らした。
「あぁぁ…」
引き絞るような声を上げ、右近は眉根を寄せた。
襲いかかる波のごときうねりに負け、
「殿ぉ…っ」
右近は惣一郎の視線を感じながら、小刻みに身体を震わせて己を解放した。
右近の寄せた眉がゆっくりと弛緩し、薄く開いた唇の間から吐息が漏れた。

 惣一郎は迸るものを受け止め、最後の一滴まで吸い上げ、嚥下した。


「発駕」4へ戻る


「発駕」4 | 浄夜・目次


背景は「kigen」さんからお借りしています。


Copyright © 2013 戸田采女
All rights reserved